原作:ダークギャザリング
タグ:R-15 オリ主 残酷な描写 アンチ・ヘイト 転生 憑依 クロスオーバー 呪術廻戦 ドブカス 禪院直哉 投射呪法 独自設定 独自解釈 魔改造 どけ!!!俺はお兄ちゃんだぞ!!!
ざけんなや。呪力が練れん、ドブカスが。
魂を震わせる芸術は世界をも唸らせ、のちに死人と化した俳人本人を人外として蘇らせる、言わずと知れた未曽有の句。
その詠の有り様はまさしく黒閃。
故に禪院直哉には呪術上「重み」が存在する。縛りの対価として、天秤を傾ける「重み」。
かの俳人の名を冠する『別世界』の青年。
何の因果か、漫画「呪術廻戦」として記された禪院直哉の半生。それが魂の記憶に刻まれた転生者という異様な身の上。
しかし脳の構造が非呪術師ゆえ「呪い」に触れられなかった彼に呪霊否、悪霊が襲う。
母の霊魂を目的とした悪霊が輸送トラックの運転手を呪い、成された正面衝突事故。
乗車中の寶月一家めがける衝撃、硝子の雨。
最中、寶月直哉の背をトラックの荷物である出刃包丁が……「刃物が貫いた」。
かの俳人を二度も死へ誘った致命傷を、彼も負う――世界が讃える、完成したと。
死に瀕した負荷により脳が「呪術師」の構造へと変異。その変貌の裏にて、連なる奇跡。
結果――至る、最も理想的な脳のデザイン。
全能感に満たされた脳の働きによって彼の無意識下で縛りが結ばれる。
生前俳人が使用した言葉全て。
一言一句が呪力を活性化させる呪詞「それらのみ」を生涯使い続けるという縛り。
当然成立。
彼は呪術の高等技術「反転術式」を会得。マイナスのエネルギー「呪力」を掛け合わせ、人身を癒し、呪霊を滅するプラスのエネルギーを生み出す、かの現代最強「五条悟」ですら会得に苦戦した技術。
反転術式の再生により、事故発生から救助されるまでの七十八分もの間、出刃包丁が背から心臓までをも裂かれた状態で――生存。
これは現代最強以上の呪力量を宿した特級「乙骨憂太」を凌駕する、彼の呪力量による御業。
「人の心とかないんか?」
ただ廃材で釘打たれた彼は眼前にて死に絶えた父、悪霊に連れ去られる母の魂、外傷は見えないものの気を失った妹へと、手を伸ばすことは出来なかった。
「人の心とかないんか?」
「人の心とかないんか?」
「……殺したる」
呪いが彼を彩った。
・ ・ ・ ・
・ ・ ・
御業の果て、生き延びた寶月直哉は仇を――かの悪霊を屠らんと生を復讐ただ一つに費やす。全てを研鑽に、俗世を捨て、その中にたった一人となった家族夜宵もいたが……妹は目覚めなかった。守れなかった妹に縋り時間を捨てては復讐は為せず、何より悪霊が襲うより先、呪術に目覚めていれば守れたはずなのに、守れなかった自分がどんな顔をして妹の傍にいればいい?
そう考え、いざという時の縛りを課して逃げるように昏睡した妹に背を向けた。
常時発動。
彼の異能「術式:投射呪法」の身体加速、それを絶えず二十四時間廻し続けるという鍛錬。
夥しい呪力量ゆえに漏れ出る呪力ロス、就寝を筆頭に無意識下での呪力操作という無理難題。
並ぶ問題により未だ敵わない極地「二十四時間」。
事故から二年の月日を経て至った到達点は、睡眠中のニ時間半を除いた「二十一時間半」だった。
殺す。これが胸中脳髄を染める殺意を呪力の薪としながら殴り蹴り、疲労空腹眠気を反転術式で度々抹消しながら、投射の高速下で感じ取った霊力を辿り捉えた悪霊を屠り続け、彼是二年を超えようとしていた鍛錬の
「消滅の凶星」
「ドブカスがあッ!!」
寶月直哉の呪いが「神」と対峙する。
「そっか?」
「あはは! お兄ちゃんってば!」
平和。平穏……に手を掛ける悪意。
神代兄妹の骨肉を裂かんと降り注がれる――クレーンより零れた鉄骨の雨。裏に潜むは、悪霊の愉悦。神代衛人、視野の隅にて死神の鎌を捉えた。
「愛依ッ!!」
叫び、突き飛ばす。今際の際、宙に浮く体で呆気に取られる愛依を前に、安心が微笑みへ現れた。
奔り出す思考。最中、脳裏に浮かんでしまうのは運命に呪われた愛しき妹の行末。
神。超常を翳し、雲の上に立つ頂の存在。
神代愛依は「星神」と冠するそれに献上される「花嫁」という名の贄。星神と神代家間の契約より定められた末路。
非道極まりない家を腹立たしく思うも、契約により星神の力を借り受けた神代家に敵わず。
精々成し得たのは、自身の家出に愛依を巻き込んだ事。
そして、この致死の身代わり。
情けなくも、願う。
愛依へ救いの手を。
「ツメが甘いんじゃ、クソ呪霊」
「へ?」
直後、鉄骨が散る。一瞬だったが、尚身を震わせるほど濃密な悪霊の気配を感じ取り最高速度で駆けつけた直哉の手により、間一髪で阻害。
「うわああああああん! よかったよお兄ちゃあああああ!!」
「ちょ、愛依! 引っ付くなって!?」
これを壊そうとしやがった。
「……殺したる」
父に、母に、妹に、害を成した黒陽を想起させる外道。殺意がぐつぐつと滾った兇心が呪力を沸かし、直哉の背を押す。
神代愛依に憑いた少年に伸ばした手に躊躇はない。
呪霊、悪霊は祓う。
あれもこれも変わり無し。例え、相手が特級最上位……両面宿儺だとしても。
結果――右腕を絶たれた。
「ごめんちゃい」
「うおッあ!?」
瞬時治した手。心苦しくも兄妹を裂くように衛人を投げ飛ばしながら、外からの侵入を防ぐ黒い結界「帳」を詠唱破棄で展開。
「誰を殺すって?」
「言わんでも分かるやろ、呪霊」
「生意気だな、人間」
駆ける。笑む悪霊目掛け、敵は「特級」の“最上位”だと脳が叫ぶ中、投射呪法で神速と化して。
敵は、衣装含め全身が白一色。皮肉にも陰陽師のような少年。
意識を失った神代愛依を、眼球と肉塊の塊のような醜悪なナニカで拘束し、式神らしきものに護らせながら侍らせている。その霊力――過去にない膨大な霊力。自身の呪力量を「超えている」という事実が、直哉の躊躇を拭い捨てた。
「精々愉しませろ」
「見下ろすなや!!」
怒気孕んだ応答とともに放つ拳。それを受け流し、嗤いながら撃ってきた悪霊の拳を危なげだが躱す。
打ち合う。拳、脚、肘膝脛甲爪踵……見境無い徒手空拳はまるで技と言うより、暴力と名指す方が合っていた。
「チッ」
「ははは!」
追うだけで精一杯。
遂に打撃を受け、負う投射呪法によるデメリット「一秒間フリーズ」。最中、容赦なく穿つ拳。辛苦が稲妻のように迸る。それがどうした。抉られた肉を、反転術式でぶくぶくと肉を隆起させながら即時再生。
振るわれる拳に食らいついてやる。
ただ……一方的に消耗を受ける状況下だ。未だ小手調べ。ここまで特級呪霊が見せたのは武術。当然行使に霊力の消費はない。圧倒的な差が見える。
「張り合いのない。自慢の霊力が泣いてるぞ」
「どうやろな」
「―――ぐおッ!」
途端、呪霊が弾む。
時間差で殴られた。
逕庭拳――未熟な呪力操作。高過ぎる瞬発力。この二つが組み合わさり偶然生まれた「虎杖悠仁」の二重打撃。
呪力の遅れ。常人の速度では起こり得ない現象を直哉は投射呪法により強引にだが、達成。
加えて、投射呪法を宿す直哉の逕庭拳は――打撃のみに留まらなかった。
「 」
投射呪法。24分割したフレームに、アニメやパラパラ漫画等のように自身の動きを作り、全てを1秒で実行する術式。
動きの製作期限に「脳内時間24秒」が与えられ、失敗すれば1秒間フリーズ。
投射呪法は触れた相手にも製作の強制ができ、逕庭拳命中時、この投射呪法の強制を発動可能。
その上、強制を事前情報なく超えることは不可能に限りなく近い。
「君、死刑やって――
適当ほざきながら放たれるシンプルな呪力放出。だが、寳月直哉が行えば話は変わる――光線大砲。
硬直する呪霊の全身を穿ち、霊体を焦がす。ただ、瞬時再生。愛依を包む百目肉「視肉」から眼球一つがぷつり弾け消え、回復。百目と記したが、眼球は優に百超え。あくまで表面上。視肉内部にも眼球がある可能性。
……思わず眉を顰める直哉。
「しぶと。マジで何なん君」
「そう邪険にするな、お互い不死性を携えた身だ。存分に来い」
と言うが、竦む直哉の脚。
「――ッ!」
呪い。
黒く禍々しく至大なそれが螺旋を描き、指先一つに集中する。極限まで圧縮。黒が、太陽を彷彿とさせる白へ。
生まれたのは「小さな星」。
「『消滅の凶星』」
触れれば死ぬ。まばゆく光る神々しき星は反転術式を持ち合わせる彼に、慄かせた。
「そういえば僕を殺すなどと言ってたが、まだ言えるか?」
ゆらり。少年が指を向け、従う星。一閃――高速。
「見せるのは初めてやったね、領域展開」
違うが???
兎に角その一言により呪術の奥義が“一部に”発動。迎えた凶星を、手に纏う領域が打ち消した。
「なんだと…? ククク、受け流そうともズタズタになる代物なのだが」
領域延展。
本来、必中必殺の結界として運用する領域展開をそぎ落とし「空き」を生み出す。空きへ対象の呪術を流し込み、中和。
必中必殺が可能とする高等領域のみが可能な応用。
ただ空きを必要とする都合上、使用者は術式――投射呪法を使用できないデメリットを抱える。
「鈍間になったな?」
減速。否、通常の速度に戻り、容赦なく放たれるのは四方八方から襲う五つの凶星。投射呪法がなければ対応不可の速度。うねる致死の呪い。寶月直哉が選んだのは。
「領域展開」
違うが???
シン・陰流「簡易領域」
先人が簡略化した対「領域展開」用のための弱者の領域。居合の体形を取ることにより領域を展開。そのプラットな領域に自らプログラムを入力することで改造が可能。直哉のプログラムは領域内の侵入者への自動迎撃。
結果――神速を誇る凶星、迎撃。
「霊力による自動迎撃で補助。はは、器用だな。ならばどこまで耐えれるか試してやろう」
口元が歪む。
先ずはと十。
「真っ向勝負っちゅーわけかい!!」
二十。
「こっちはカウンター前提で動き作っとんのや」
そして三十。
「非道いなぁ人の心とかないんか?」
野球ボールを投げるような気軽さで、死が降る。緻密な操作にて生まれる膨大な霊力の「流星群」。
確実に限界が来る。自動迎撃か、それとも領域展延か。分からない。唯一判明していることは、この果てが濃い死であることが一つ。
四十。
まだ死ねない。
五十。
まだ。
百。
「……ざっけんなや」
死ぬ。
死が隕ちる。
間に合った。
「ぐううぐうああ――!?」
何故か、拳を喰らう。
百の星を透かし、寶月直哉が眼前に立っていた。
投射呪法では有り得ない挙動。
簡易領域の自動迎撃が引き出したスピードである。
呪霊が愉しそうに弄ぶ裏、じわじわと時間を掛けながら伸ばした領域。領域が呪霊の足先に届いた瞬間、簡易領域は彼へ自動迎撃を実行。
遠路を飛び、拳のカウンターは完遂された――黒い火花を散らしながら。
「アッチ側に立つんは俺や!!!」
呪力現象「黒閃」。打撃との誤差0.000001秒以内に呪力が衝突した瞬間、空間は歪み、呪力は黒く光る。
その閃光が生み出す威力は、通常時の2.5乗。
黒閃は威力が肥大化するだけの現象ではない、呪力の核心――黒閃は、スポーツにおける『ゾーン』へ発生者を導く。一時的だが、普段意識的に行っている呪力操作が自然に行われ、呪力出力も引き上がる。
これにより大きな時間が生まれ――呪術の頂きが、広がった。
「領域展開ッ!!」
手印、伎芸天印を結ぶ。投射呪法で加速しながら。この一撃に全てを賭ける。ジャイアントキリングを果たしてやると呪力を奔放させた。
辺り一帯を呪力で塗りつぶし心象風景を結界として現す、呪術の奥義。
血が滴る大地。黒だけの空。咽びそうな赤黒い世界にはただ一つ、美しくも欠けた月。
これが彼の心象風景。
名を――。
「
百回。
この格上を百以上をも祓い続けることは不可能。
だが道半ば。
見据える先はあの黒陽。
こんなところで終わる訳にはいかない。
超えていく。この奥義ならば可能。
あの悪霊と抜群の相性を誇る領域なら――殺せる。いや、殺す。
「はははッ!! 面白い結界だな!?」
領域が齎す効果は主に二つ。
一つは、自身と相性のいい環境の具現化によるステータス上昇。ここは言わば胞月直哉のホームグラウンド。潜在能力を引き出しやすい地であり、彼は120%の能力で闘うことが可能。
もう一つが術式効果の必中。何らかの対策手段を以て防御しなければ強制効果が襲いかかる。
当たれば最期。
今にも術式効果が宿った一本のフィルムテープが刃となって伸び、霊力で弾くも――領域と黒閃によって最大限洗練された直哉の一撃を貰い、再び悪霊フリーズ。
逃さずフィルムテープが突き刺される。弱々しい一撃だが、命中により強制効果が発動した。
「面白い! 霊力の流れから動きが読めん! まるで動きが1秒遅れているかの如く! この結界に付与された速度の力の応用か!」
そう高笑おうと口を動かした瞬間。
「ッ!?」
裂ける全身。
細胞一つ一つが乖離し、一秒以下で悪霊の一切合切を破壊し尽くす。相手へのフリーズを細胞一つ一つへ定めた必殺の強制効果。僅かだろうと動けば、動く細胞と動かない細胞とでズレが起き、全身を裂き殺す。致命傷寸前で動きを止めるも、悪霊の霊体に一撃――直哉による神速の蹴りが襲い掛かった。
「力は重さと速さ!! 最高速度で――ブチ抜いたるッッッ!!」
殴打。フリーズ。逕庭拳。呪力砲。それらに嬲られる度に無論動いてしまう体。都度再生。これが無ければ既に勝負は決していただろう。視肉。再生の源。その眼が再生の度に弾ける――それが止まらない。
再生も「動き」。
再び弾けた。
「そっちの負けや!! この領「『消滅の凶星』超高分裂凝集態――――――…」――!?」
銀河があった。
「棒旋星系」
「ドブカスがあああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!」
・ ・ ・ ・
・ ・ ・
「ふふ……あの一瞬で七十八個の視肉が潰えた。甘美だったぞお前との殺し合い…!」
生きている。
銀河に酷似したあの技に全身を破壊され、肉が融け、今尚余波が全身を蝕み続け、必要最低限の臓器に限定した反転術式を全開にしなければ持たないとは言え、五体を保ち、生きている。
ただ、立ち上がることすら不可能。感覚が無く、そもそも動けば融けた肉から骨がまろび出てしまうだろう。
それでも最善を尽くした結果。
領域が破壊される前に自ら解き、領域延展と簡易領域と反転術式により何とか耐え切った。
足りない。
領域展開直後には正常な戦闘は不可能。膨大な呪力消費。脳への負荷により術式の使用不可。あの必殺技は衝突直前。
脳はあの技とぶつかり合う最中、「脳を一度破壊し反転」という危険ながらも可能な一手を果たし回復。ただ、使用不可状態で「棒旋星系」と衝突してしまっている。
故に気付いてしまった……最後の最後手を抜かれたと。
「死なない程度には回復してやる」
「フ―――ッ、フ―――ッ」
言葉も出ない。物理的にだ。爛れた肉体に悪霊の施しが注がれる。屈辱だった。妹と離れてまで鍛えた結果がこれか。
「お前の技は、型に自らを強引にも当て嵌めたやつ特有の癖があった。自分を殺し、不必要なまで理想に合わせ、独創性に欠けた群の技。洗練されてはいるが発展はしていない、故に伸びしろが見えた」
「フ――――ッ」
「再来を待っててやる――この僕の期待を違えるなよ?」
悪霊が少女の中へと去り、見送るしか出来なかった。心中が嘆きで満たされ、溶解していた筈の胃から吐き気を感じた。
生存。生還。復讐は続けることができる……それでも敗北した事実はなんら変わらない。
「 」
慟哭すら出なかった。
「 」
精神が、肉体が、限界を叫ぶ。徐々に、徐々に、暗く、敗北を象徴するような色に染まっていった。