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2018年 12月24日
史上最強の術師『宿儺』は死に廻る呪いに終止符が打たれた。
呪術界は実質的な死を迎えた天元の展開していた結界に代わる新たな策を講じ始め総監部の壊滅による世代の移り変わりなど新たな幕開けを迎えていた。
数ヶ月後
「はぁ〜〜〜〜〜」
「どうしたの?金ちゃん?」
「混乱に乗じて呪術規定は改定するつまりだったのに結局は術師同士の商闘止まり・・・・・熱が冷めていくのが分かるぜ。」
彼の名は秤金次
呪術高専東京校の三年生であり同時に術師同士の決闘を非術師が賭け合う賭博場『ガチンコファイトクラブ』の胴元でもある筋金入りの博打撃ちである。
隣の彼女の名前は星綺羅羅
彼女とは述べたがその実男であり秤の同級生、共に『ガチンコファイトクラブ』の胴元を務めている。
秤は人生を変えてやろうという欲求、いわば"熱"に対して強い執着を示しておりゆくゆくはこの賭け試合を日本全土に広め熱で日本を支配するという野望を持っておりその夢の第一歩の為渋谷事変の騒ぎに乗じこの賭け試合を総監部公認にするつもりであったがやはりと言うべきか当然認められず術師同士の商闘止まりとなってしまった。
野望が潰えてからと言う物秤からは熱は失せ彼にとっての日常は道端の石を眺めるかの如く退屈な物へと変わっていった。
「・・・・・パチンコに行ってくる。」
「金ちゃん・・・・・」
「あークソッ・・・・・いつもは今頃大勝ちしてるってのに・・・・・」
彼は生まれてこの方甘でもマックスでもパチンコで30回以上ハマった事の無い(本人談)天性の豪運の持ち主なのだがこの日はどう言う訳か台は少しも微笑みを見せず今の彼を嘲笑うかの様に静まり帰っていた。
「・・・・・持ってきた金全部擦っちまった。」
重い腰を上げ秤はパチンコ屋を出た。普段は鼻歌混じりに歩むアスファルトもこの日はコツコツという足跡以外に何も無くその音がまた彼の熱を抑え込んだ。
その時彼女は訪れた。
彼の背筋を伝ったのは人の気配とも呪霊とも違う全く経験した事のない──五条悟や両面宿儺から発せられる圧倒的な風格とも──天与呪縛のフィジカルギフテッドとも違う全くの異物。
秤が振り返るとまるで作り物かと疑いたくなる程の幻想的な美女が長い金髪をなびかせて立っていた。
「秤金次・・・・・であってるわよね?ガチンコファイトクラブの。」
(俺のことを知っている?ガチンコファイトクラブの事も含めて?)
秤の経営している賭け試合は呪術総監部には隠しながら行っている。その事を知っているのはクラブ内の人間、もしくは虎杖達のようなごく一部の人間のみ。
「・・・・・どこでそれを知った?」
「さぁね?ところで貴方・・・・・」
「さぁねじゃねぇ!!どこで知ったか答えろ!!」
秤は彼女に対し底知れぬ恐怖を覚えた。
(コイツの全てを見透かしたかの様な目、この異質な雰囲気、何より気味が悪いのは安心できる要素なんて何一つ無い癖に何故かコイツに安心感を覚えている事・・・・・意味が分からねぇ!!)
「残念だけど私は貴方にその答えを教える気は無いわ、そんな事より早く本題に入りましょう。貴方・・・・・」
「てめぇ「私の熱に浮かされてみない?」」
「なっ!?」
秤の背筋に今まで以上の悪寒が走った。それもその筈、彼女の発言した言葉、それは彼の口癖である。
「なんで・・・・・」
「良い顔するじゃない。」
「・・・・・てめぇの熱ってのはなんだよ。」
「あら、乗ってくれるのね?」
その瞬間空間に歪みが走ったかと思うと彼女の隣に裂け目が生じた。裂け目の中を覗くとその空間もまたこちらを覗いているかの様に無数の目が広がっていた。
呆気に取られていると裂け目が広がり一瞬にして秤を飲み込んだ。
「さあ♪一名様ごあんなーい♪」
秤の視界が闇に覆われると共に段々と意識も薄れて始めた。
「クソッ・・・・・なんだこれ・・・・・」
しかしそんな秤が最後に見たのは彼女の瞳、いや──瞳に映った確かに熱を帯びている自身の姿であった。
「・・・・・へっ。」
小鳥達のさえずりに呼ばれ彼が意識を取り戻すとすぐに洋風の住宅で寝かされている事に気づいた。
「・・・・・ここは?」
彼は頭を振り力の入らない体に鞭を打ち体を起こした。
「あー・・・・・まだクラクラする。」
秤は起きたばかりでまだ碌に回らない頭で先程起きた出来事を振り返り始めていた。
(・・・・・あの美女は結局なんだったんだ?彼女の気配からして確実に人間では無かったんだろうな。だが呪霊とも少し、いや大分違う。そもそも呪霊ならあそこまで会話は成立しねえだろうし会話が成立したとしても呪霊の本能的に気絶した俺を生かしておく訳がねえ・・・・・状況から察するにあの美女の術式か何かの影響で気絶した俺を誰かが拾ってくれたって考えるのが順当だな。)
「・・・・・にしてもここら辺にこんな西洋風な建物なんてあったか?」
秤が徐々に頭のキレを取り戻して来たところにこの家の家主が現れた。
「あら、もう起きたのね。」
「・・・・・あんたが俺を拾ってくれたって事で良いんだよな?」
「その認識で間違いないわ。私の名前はアリス・マーガトロイド、アリスでいいわよ。」
「秤金次、金ちゃんって呼んでも良いぜ。」
二人は自己紹介を終えるとテーブルに移動し本格的に話始めた。
「紅茶は飲める?」
「あんま飲まねえけど飲めなくはないな。」
「そう」
アリスは確認を取ると指をクイックイッと動かして始めた。秤はそれを訝しんだがすぐにその答えが分かった。
二人の元に紅茶が運ばれて来たのだ。それも人形によって
「なっ!?傀儡操術!?」
「えっ?」
「お前元泳者か!?」
「泳者?何を言っているのか分からないけれど私は魔法使いよ。」
「魔法使い?」
漫画やゲームでしか聞かない単語に秤は眉を細めた。もしかして彼女は生まれながらに術式を持っていてそれを魔法だと勘違いしているのかとも考えたが人形や彼女からは一切呪力の流れを感じ取れなかった為一度話を聞く事にした。
「ええ、その名の通り魔法を使えるの。・・・・・その反応を見る限り貴方外の世界から来たようね。」
「外の世界?」
「・・・・・なるほどな。つまりここは俺と居た世界とはまた違う世界みたいなものでここには妖怪や魔法使いのような種族も暮らしているって事か。」
(オイオイオイマジか!?さっきの美女には悪いが今日一ビビったぜ!?ここの住民達は術式とは全く違う力で決闘したりするって事は呪術規定ガン無視で賭け試合できるじゃねえか!!・・・・・だが俺の世界とここじゃ強力な結界とかで区切られてるらしいしどうやって俺の世界に連れてくるかが問題だな・・・・・だが希望が見えただけでも充分だ!!)
「アリスちゃん!!」
「え?」
「仲良くしようネ♡」
「えっ?えっ?はっ・・・はい?」
彼には既に先程までの不調は見る影も無くその瞳には再び彼の愛する"熱"が宿っていた。
こうして秤は幻想郷へと足を踏み入れた。しかしこの先とんでもない大事件に巻き込まれる事を彼はまだ知らない。