成り代わりナツは無条件でモテたい 作:雨天
「マカオー!!いるかー!!バルカンにやられちまったのかー!!」
極寒の山中で俺はマカオに呼び掛ける。
しかし返事はなく、代わりに上から雪の塊が降って来た。
「何だぁ?」
俺が上の方を向いて目を凝らすと、そこには大柄な影があった。
影は上から此方の方へと降って来る。
同時に両腕を振り下ろすので寸前で躱す。
「バルカンだー!!」
バルカンは俺に見向きもせずにホロロギウムに入ったルーシィの元へと向かう。
「人間の女だ♡」
バルカンはいやらしい表情を浮かべるとホロロギウムごとルーシィを連れ去った。
「喋れんのか」
「てか助けなさいよー!!と申しております」
「おう、助けてやるから待ってろ。ってか速いな」
去っていくバルカンに置いてかれないように走る。
バルカンは意外な俊足で何処かへと向かう。
バルカンは洞穴に入るとルーシィを眺める。
相当な女好きらしい。
「やっと追い付いた!!テメェ、マカオを何処にやった!?」
「ウホ?」
「言葉分かるんだろ?マカオだよ!!人間の男だ!!」
「男?」
「そーだ!!」
バルカンは悪辣な笑みを浮かべると俺を手招きした。
俺は警戒しながらもバルカンの誘いに乗る。
「何処だ!?」
「男…いらん。オデ…女好き」
バルカンが俺を崖下に突き落とす。
俺は腕を崖に突き刺して耐える。崖の突起を掴み、上へと這い上がる。
上にはルーシィを襲おうとするバルカンがいた。
「まともに話す気はねえみたいだな」
「ウホ!?」
バルカンは戻って来た俺に驚きながらも氷柱をへし折って投擲してくる。
「火にはそんなもん効かーん!!」
氷柱は俺に当たった端から熱で溶けていく。
バルカンは怒りを顔に浮かべて殴り掛かって来た。
俺はそれを受け流してバルカンの顔面に炎を纏わせた一撃を喰らわせる。
バルカンは吹っ飛んで壁に挟まった。
「挟まっちゃった」
「あーあ……この猿にマカオさんの居場所聞くんじゃなかったの?」
「しかしなぁ…まともな会話が成り立つとは思えん」
俺は逆さになって壁に突き刺さってるバルカンを見る。
あの様子だと話し合いは出来そうにないと思ったんだがな。
と、思案していると急にバルカンの体に変化が起きた。
体が光り出して、次の瞬間には探していたマカオに変化していた。
「猿がマカオになった!?」
「バルカンに
「接収!?」
「体を乗っ取る魔法だよ」
マカオは酷い怪我を負っていて、今すぐに治療しないといけない状態になっていた。
俺はマカオを床に寝かせて鞄から救急キットを取り出す。
体の血を拭き取り、包帯を巻く。
状態はかなり酷く、出血が止まらない。
「バルカンは人間を接収することで生き繋ぐ
「血が止まらねえ……仕方ない。マカオ、耐えろよ」
俺は右手に炎を纏わせ、それをマカオの脇腹の傷に押し当てる。
「ぐあああああ!!」
「ルーシィ、マカオを押さえろ!!」
暴れるマカオの動きを止めて火傷で止血する。
マカオは苦しそうに呻く。
「死ぬんじゃねえぞ!!ロメオが待ってんだ!!」
「クソ……情けねえ…19匹は倒し、たん…だ」
「え?」
「20匹目に……接収され…」
「分かったからもう喋んな!!傷口が開くだろ!!」
マカオはそれでも悔しさに歯を食いしばる。
「ムカつくぜ…畜生……これ、じゃ…ロメオに…合わす顔が…ね…クソ…」
「ロメオからしたら生きてるだけで良いんだよ!!プライドの為に親父を失って、それでロメオが喜ぶ訳ねえだろ!!」
俺はマカオの止血を終える。峠は越えただろう。
ルーシィは見るからに安堵の表情をしていた。
「息子にかっこつけんのも簡単じゃねえな」
「全くだ……」
マカオは苦しそうにしながらも笑みを浮かべるのだった。
◇
マグノリアに帰って来た俺達はロメオの元へ向かっていた。
ロメオは案外すぐに見つかった。
「父ちゃん…ごめん…俺…」
涙を浮かべるロメオをマカオは抱き締めた。
「心配掛けたな。すまねぇ」
「良いんだ。俺は魔導士の息子だから…」
「今度クソガキ共に絡まれたら言ってやれ。テメェの親父は怪物19匹倒せんのか!?ってよ」
ロメオは涙を流しながらも笑みを浮かべた。
そして俺達に向かって声を掛けてくる。
「ナツ兄ー!!ハッピー!!ありがとうー!!」
「おう」
「あい」
「それと…ルーシィ姉もありがとぉっ!!」
ロメオのお礼をそれぞれ受け取って俺達は帰路に就く。
金は稼げなかったが、良い一日になったと思えるのだった。
◇
さて、マカオの救出を終えた俺とハッピーはルーシィの家に遊びに来ていた。
ルーシィは凄く不満そうである。
「そうカリカリすんなよ。手土産持って来たろ?」
「そうね。不法侵入じゃなければまだ許したわよ。アンタらって常識ってもんがないの?」
「これ何だ?」
俺は机に置かれた紙束を手に取る。
ルーシィが素早く俺の手から奪い取った。
「駄目ぇー!!!」
「……ま、良いか。そだ、ルーシィの星霊見せてくれよ」
「嫌よ!!凄く魔力を消耗するじゃない」
「ルーシィは何人の星霊と契約してるの?」
「6体。星霊は1体、2体って数えるの」
ルーシィは6本の鍵を取り出す。その内銀色の3本を指差す。
「こっちの銀色の鍵がお店で売ってる奴。時計座のホロロギウム、南十字座のクルックス、琴座のリラ」
次にルーシィは金色の3本を指差した。
「こっちの金色の鍵は黄道十二門っていう
「蟹がいんのか」
「蟹…」
「うわー…また訳分かんないとこに食いついて来たし」
ルーシィは頭痛を堪えるようにこめかみを押さえた。
「そーいえば、ハルジオンで買った小犬座のニコラ、契約するのまだだったわ。丁度良かった!星霊魔導士が星霊と契約するまでの流れを見せてあげる」
「おおっ!!」
「血判とか押すのかな?」
「血判とかはいらないのよ。見てて。我…星霊界との道を繋ぐ者。汝…その呼び掛けに応え門を潜れ。開け小犬座の扉、ニコラ!!!」
ルーシィが空中に鍵を差し出すと、その先が光り輝く。
「プーン!!!」
「ニコラー!!?」
そしてドリルのような鼻を持つ奇怪な星霊が姿を現した。
どう見ても弱そうな姿に俺は何とかフォローを口にした。
「ど、どんまい!」
「失敗じゃないわよー!!…ああん、可愛い〜!」
「プーン」
「そ、そうか?そうかも」
「ニコラの門は余り魔力を使わないし、愛玩星霊として人気なのよ」
「ナツ〜人間のエゴが見えるよ〜」
「うむ」
「じゃ、契約に移るわよ」
ルーシィはそう言うとニコラと契約内容を詰めていく。
意外にも簡単な契約方法にハッピーが口を開く。
「随分簡単なんだね」
「確かに見た感じはそうだけど、大切なことなのよ。星霊魔導士は契約…即ち約束事を重要視するの。だからあたしは絶対約束だけは破らない…ってね」
「成程ねぇ…約束か、確かに大事だ」
「そうだ!!名前決めてあげないと」
「ニコラじゃないの?」
「それは総称でしょ」
ルーシィは暫く顎に手を当てて悩むとプルーと名付けた。
語感が可愛いらしい。
「プルーは小犬座なのにワンワン鳴かないんだ。変なのー」
「アンタもにゃーにゃー言わないじゃない」
ルーシィの腕の中に収まってたプルーは突然腕から飛び出すとボディランゲージで考えを伝えて来る。
「プルー!お前良いこと言うなぁ!!」
「何が伝わってる!?」
「確かにハルジオンじゃアクエリアスに助けて貰った…星霊は頼りになる。良し!!決めた!!プルーの提案に賛成だ!ルーシィ、俺達でチームを組もう!!」
「チーム?」
「あい!!ギルドのメンバーは皆仲間だけど、特に仲の良い人同士が集まってチームを結成するんだよ。一人じゃ難しい依頼もチームでやれば楽になるしね」
「良いわねそれ!!面白そう!!」
「おおし決定だー!!!」
「契約成立ね!」
「あいさー!!」
俺は早速とばかりに依頼書を取り出した。
「早速仕事行くぞ!ほら、もう決めてあるんだ!」
「もうせっかちなんだから。シロツメの街かぁ……うっそ!!エバルー公爵って人の屋敷から一冊本を取って来るだけで20万J!!?」
「な?美味しい仕事だろ?」
「あら?」
ルーシィが依頼書に書いてあるとある項目に目を付ける。
そこにはエバルーが金髪のメイドを募集していることが書かれていた。
「ルーシィ金髪だもんな?」
「だね!メイドの格好で忍び込んで貰おうよ」
「アンタ達最初から……ハメられたー!!」
「星霊魔導士は契約を大切にしてるのかぁ…そっかそっか」
「ひでぇー!!騙したな最低ー!!」
「さぁ、行くぞルーシィ」
「メイドなんて嫌よ〜!」
「少しは練習しとけよ。ほら、ハッピーに御主人様って言ってみろ」
「猫には嫌!!!」
そうして俺達はチームを組み、シロツメの街へと向かうのだった。
シロツメへ向かう馬車の中でルーシィが意地の悪そうな笑みを浮かべる。
「馬車の乗り心地は如何ですか?御主人様」
「冥土が見える……」
「御主人様役はオイラだよ!」
「五月蝿い猫!!!」
ギルド内でちょっとした騒ぎが起きてるのを俺達は後で知るのだった。