今回のネタは友人の手押し相撲してる時に(いやどんな時だよ)思い付いきました。
恋=手押し相撲はマジで中々いい例えだと思ってます。
ハーメルンには初投稿になります。色々不備があるかもしれません。見つけた場合は気兼ねなくお知らせください。
キャラ崩壊・霖カプ注意。それでも良いという方はごゆっくり。
ちなみにpixivにもあげてます。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=28222290
「手押し相撲」と呼ばれる遊びをご存知だろうか。二人一組で向かい合い、互いに手のひらで押し合って相手のバランスを崩させた方の勝ち、という遊びである。
感嘆に言語化してしまえばそれまでなのだが、意外と奥が深く、力任せに押すだけでは勝てない。相手の手のひらを避けたり、逆に押そうとしてくる相手の手のひらを押して奇襲をかけたりと、駆け引きが必要な遊びである。
時に。これは、恋にも同じことが言えるのではないだろうか?
相手にアタックせねばならないものの、過度にすれば相手に嫌われてしまうし、アタックに夢中になっていたら相手に逆に好意的な仕草をされ不意打ちされてしまう。
が、恋は、手押し相撲よりももっと難しい。なぜならば、恋は手押し相撲とは違って、一対一ではない場合があるからだ。
恋のライバル、と呼称される、同じ対象を好きになってしまった人がいる時は、一対一対一、はたまたそれ以上の乱戦になる。こうなると、対抗馬とどう差別化するかを視野に入れなければいけなくなり、駆け引きが格段に難しくなる。
本題に入ろう。
東の国の山奥深くにある、外の世界とは隔離された楽園、幻想郷。ここでは、乱戦の手押し相撲──要するに、複数人に思いを寄せられている存在はいるだろうか?
博麗霊夢。確かに「思いを寄せられている」という一点では右に出る者はいないだろう。幻想郷を物語の舞台とするならば、まさしく主人公。が、彼女に寄せられる思いは「恋」ではない。
霧雨魔理沙。前述の霊夢と同じような立場であるが、比較して弾幕が派手な分、弾幕勝負に縁のない男達の目に留まる機会は少なくないだろう。が、恋が芽生える事もあったのだろうが、魔理沙の父親のお眼鏡にかなう相手だったと言えば、それは嘘になる。
幻想郷の著名な人物は女性が多い。男性で、幻想少女とも認識のある人物がいるじゃないか。
──いや、易者じゃないって。確かに認識はあるだろうけどもう死んでるから。霊夢に真っ二つにされて死んでるから。
──いやいや、蟒蛇でもないって。抗鬱薬おじさんでもないって。
……この小説のタグを見てないのか?
魔法の森に古道具屋を構える、銀髪金眼の半人半妖がいるじゃないか。
あらゆる恋愛に発展しそうなフラグを折る事から「フラグクラッシャー」の異名を(当の本人は知らないが)つけられている男。森近霖之助が。
この男の何が凶悪かって、「可愛い」「綺麗だ」「見惚れていた」なんて言葉を平気で放つ所だ。しかも、幻想郷の著名な女性は男性の知り合いがあまりいない。となれば、霖之助を異性として見ない、という人物がいるはずがないのである。
因みに誤解されないよう言っておくが、霖之助にそういった欲が無いという訳ではない。本気で思いに気付いていないのだ。鈍感がすぎる。正に暖簾に腕押し状態。
「……はぁ」
霖之助は大きなため息をついた。それもそのはず、彼の目の前には、彼が最も苦手とする人物である八雲紫が現れたのだから。
「あら。目の前の客に対する態度がそれですか?」
「客がいるなら教えて貰いたいものだ」
「それならここに。貴方の時間を買いに来たましたわ。対価は私の時間で」
「香霖堂は生物は取り扱わないのでね。スキマなりなんなりでご引き取り願いたい」
「つれない男ね」
「結構だ」
紫はこうやってスキマから急に現れては霖之助にちょっかいをかける。霖之助は何を考えているかわからない、見透かされているような表情や仕草から紫を苦手と思っている上、読書という至福の時間を邪魔されるのだから、正直鬱陶しいまで思っている。
わからないのだ。幻想郷の創始者の一人である大妖怪が、半人半妖風情に顔を出す理由が。
「まぁまぁそう言わずに。貴方にとっても益のある話なので」
「聞こうか」
非常に掌返しが速い。流石は一応商人といった所か。
「手押し相撲をしましょう。負けた方が勝った方のいう事を出来る限り聞く、って条件で。断ったら……」
「わかってるさ。やるよやるよ。でも、なんで急に手押し相撲に?」
「気分です」
「そうかい」
嘘である。
手押し相撲はそのゲームの性質上、互いの手が触れ合う。
つまり。紫は合法(元々合法だが)で霖之助の手に触れる事が出来るのだ。
腕相撲ならば握る事が出来るものの、ただの力勝負になってしまう為、断られる可能性が高い故の手押し相撲である。
幾ら霖之助が男で紫が女と雖いえども、片や半人半妖、片や妖怪である。霖之助が勝てるはずがないのだ。
互いに向かい合い、手のひらを前にする。身長の差はあまり無く、手押し相撲するには適していた。
「はぁ……まさか境界を操る大妖怪様と戦う日が来るとは思わなかったよ。しかも手押し相撲で」
「御託はいいです。私の気が変わる前に始めましょう」
先に仕掛けたのは紫。両の手を前に突き出すが、手を横にずらした霖之助には当たらなかった。
押そうと何度も手を出すが、その全てがのらりくらりと躱されていく。
「霖之助さん?逃げてばかりじゃ勝てませんよ?」
「逃げてばかりの間はそうだろうね」
一度手を休めて行動の真意を聞こうとしたが、はぐらかされてしまった。文章的にいつか逃げてばかりをやめるのだろう、と紫は推測した。
攻撃をやめ、カウンターの準備をする。
手押し相撲において、相手を押そうとする際、その間は身体の軸が少し前に偏る事になる。しかも、自分が押される事を想定としていない。
その油断している所に不意打ちをされれば、簡単に体勢を崩してしまうのだ。
「来ないのならこちらから行かせて貰うとするよ」
手を出す霖之助。しめた、と紫は思った。ここで霖之助の手のひらを押せばゲームセット。霖之助の手は触れるし何でも一ついう事は聞いて貰えるしの一石二鳥だ。
計画通り押し返す。
「あぇ?」
間抜けな声が出た。声の持ち主は霖之助──ではなく。紫だった。
押し返そうとしたのだが、霖之助は押す途中で手をずらしたのだ。
霖之助の手に当てる算段で体重を強くかけた紫だったが、その目論見は外れ、前のめりになって前に倒れた。
──霖之助の方向に。
「えっ」
またもや間抜けな声が出た。声の持ち主は今度こそ霖之助。
当然である。勿論勝つつもりでやっていたつもりだったが、まさか倒れるとまでは思わなかった。
そして。幾ら自分よりも体躯は小さいとはいえ、倒れこむ大妖怪を受け止める事は霖之助にはできなかった。
つまり、霖之助は紫の押し倒されたのである。
「「……」」
気まずい空気が流れる。
が。その空気はすぐに破られた。
霖之助が口を開いた訳ではないし、かといって紫でもない。障子が開いた音だった。
「……?」
互いに互いの顔から目を離し、障子の方を見る。
そこからは、カメラが覗いていた。
両者が状況を呑み込む前に、カメラが「パシャ」と音を立てた。
そして、また障子は閉じた。
「……ところで、紫。なんでもいう事を聞く、だったね?今僕達の写真を撮った人物を取っ捕まえる事は可能かい?」
「『出来る限り』が抜けています。残念ながらそれは出来ませんね」
「じゃあ、ここからどいて貰うのは?」
「無理です」
「……」
心窩部に当たるたわわに実った双丘が当たっている。
あぁ。こうも自分の周りに節操(と貞操)を守らない人はいないのか。年頃の女の子なのだから、少しは其処の所を弁えて欲しいものである。霖之助は、そう考えながら、呆れて紫を見つめた。
「あーっ。今、厭らしい事を考えましたね?」
「……まぁ、否定はしないよ。こんな状況で考えない男は殆どいないだろう?」
「意外ですね。枯れてるだのなんだの言われてるのに」
「事実無根の悪質なデマだ」
どくん、どくんと心の臓が脈を打つのを、紫は感じた。
目の前の男には平静を装っているものの、内心はどえらい(しかもどえろい)ことになっていた。
近い近い近い近い。視界のど真ん中に霖之助さんがいる。
もう少し近くまでいけば……まるで……キスが出来そうな……。
(心の中で)首を横に振って邪な考えを消した。自分が一方的に愛をぶつけているに過ぎない。身勝手で迷惑だ、と。
「そろそろ本当にどいてくれないかな。心臓が持たない」
「良くもまぁ恥ずかし気もなくそんな事を」
根っからの本心で出た言葉だった。この心を、この思いを、なんの迷いもなく伝える事が出来たのならば、どれだけ楽だろうか。
もしも幻想郷を守る存在ではなく、なんの責務もない妖怪だったのならば──。
「まぁ、実際そうだからね。正直僕は君の事が苦手だが、嫌いという訳でもないし」
「──そう」
手押し相撲は、終わらない。
えっちだ……