常時キチゲ解放という意味で狂人の大罪司教『傲慢』担当   作:仮称 名

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幼女はノーパンであるか否か

 家を出たらそこは異世界でした。

 

 大通りのど真ん中にいた。

 通りを走る馬車のガタガタという音や歩く人々の足音、客引きをする商人の元気な声が満ちている。

 見回せば、道の端には石造りの建物が並んでおり、特徴的な容姿をした人々が大勢確認できる。珍しいのかチラチラと目線を送ってくるのが少し鬱陶しい。

 その特徴はカラフルな髪や瞳の色、獣耳や尻尾といった、the異世界ファンタジーそのものだった。

 

 ……いや、タイミング考えろよ

 家出だったんですけど。

 もうこんな家出てってやる! 俺がいない寂しさを味わえ! 俺の存在に感謝しろ! の勢いで出てってさぁ、ほんとにいなくなるやつがあるかよ。

 帰れないんですけど、あの勢いで行った手前戻れないのはそうだけど、物理的に戻れないんですけど。

 

「テーマパークに来たみたいだぜ、テンション上がるな〜」

 

 ていうか知ってるよ俺、この異世界知ってるよ? 

 アニメとまとめ動画軽く見たくらいだけど、分かるよ。

 リゼロだろ、銀髪のハーフエルフ目の前通ったし、リンガ売ってる強面のおっさんいるし、白金色した髪のロリいるし。

 

 ……おや? 白金色? ッスゥー……マズィですねぇ……。

 

 見えるってことはアレじゃん、勧誘じゃん。

 勧誘されたらフード被った陰キャになっちゃうんでしょ? 知ってる。

 

 ワンチャン素通りしてくんねぇかなぁ……。

 

「!」

 

 ああぁ〜目ぇ合っちゃったねぇ〜……ガン見してたのがいけなかったかな〜。

 

「もし、そこのお方。この本を手に取ってみて下さいませんか?」

 

 死刑宣告来ちゃー……。

 見える、処刑台が。ギロチンの刃が鈍く光ってるのが見える。

 

 だがここで下手に出たり、日本人的な対応をするのは三流。

 ある宗教では、右の頬を殴られたら、左の頬を殴り返せという教えがある。

 やられたままにしてしまっては付け上がらせるだけということだろう。

 かの非暴力不服従を説いたガンジーのように、究極の忍耐を選ばないのであればやり返すしか道は無いということなのだ、中途半端は最もな悪手であると。

 なればこそ、ここは振り切った対応を求められる。

 魔女教という犯罪組織には、同じく犯罪者でなければ格として対抗できまい。

 世界中から恐れられる犯罪組織に対等に立ち向かえるのは何なのか? 

 簡単だ。

 全人類が抱く欲望であり、時を間違えれば軽蔑されるもの、それを表出させて尚、品位を保てる存在。

 そう変態紳士だ。

 幼気な幼女に教えてやらねばならないだろう。

 お前は狩る側ではないッ! 狩られる側なのだとッ! 

 

 俺は近づいてきたパンドラに対し、目線を合わせるように膝を着いて手を差し出す。

 

「失礼、可憐なるお嬢さん、その前に一つ、よろしいでしょうか?」

 

「? えぇ、何をお聞きになりたいのですか?」

 

 聞こえる、某海賊漫画に登場する変態老紳士が今ですと、声高らかに言っている。

 

「パンツ、見せてもらってもよろしいでしょうか?」

 

 勝った……ッ! 

 

「残念ながら……履いておりません」

 

 何いいぃ!!! ノーパンだとおおぉぉぉおお!!! 

 

 その瞬間、眩い光が俺を飲み込み、薄れさせていく錯覚に陥った。

 

 気づけば、真っ白い世界で俺はたゆたっていた。

 

 あぁ……ポンチョのような薄布の下は裸だと? 

 絹糸のように艶やかな白金色の髪、シミ一つない透き通るような肌、微笑みを湛え、柔らかく包み込むような優しさを醸し出す端正な顔立ち、発展途上ながら、服の上へと主張する慎ましい膨らみ、そんなロリガキが……ノーパン? 

 

 おいおい……不思議と穏やかな気分だ……。

 まるで何かから開放されたかのような安心感、憑き物が落ちたような感覚だ、心が軽いぜ……。

 こいつに、俺の求めるものがあったのかもな……。

 

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 

 な訳ねぇだろ!!! 

 危ねぇ! 浄化される所だった……ッ! 

 

 しばらく固まっていたのか、パンドラが心配そうな表情で伺うようにこちらを見ていた。

 

「何か心配事ですか? 証拠をお見せした方がよろしいですか?」

 

 そう言って、ノーパン魔女は上から被っただけの布のような服の裾を摘む。

 あかん、この先はあかん、戻れないところに行ってしまう、変態の道を邁進する勇者になってしまう。

 

「……ああ、いえいえ、知りたいことは聞けましたので、お気持ちだけ頂いておきます」

 

 仕方ない、ここは退くしかないだろう。

 だが間違えてはいけない、これは敗北ではなく、戦略的撤退なのだ。

 狩人は獲物を仕留める際、隙を晒す瞬間を待ち構えるもの、姿を晒さず第二第三の策でもって獲物を弱らせるのだ。

 常々怯えてるがいい、クククッ! 

 

「では、私のお話をお聞き下さい」

 

 パンドラは手に持った黒い装丁が施された小さめの本を差し出してくる。

 

「こちらの福音書を手に取って頂けませんか?」

 

 あぁ〜、そういやそんな話だったね。

 ノーパンの衝撃でそこら辺吹っ飛んでたわ。

 

「もちろんいいよ‪♡キラッ☆」

 

 渾身の笑顔で横ピース‪☆

 パンドラちゃんからのプレゼント〜?! マジうれぴー!! 

 お? 突然言動が変わって驚いたか? 可愛いねぇえ(ニチャア)。

 

「何も……?」

 

 ロリガキは、平然とする俺を見て、不思議そうに首を傾げている。

 

 福音書な〜……確か受け取った瞬間に洗脳みたいな感じで、魔女に信仰を捧げる従順な駒みたいになるんじゃなかったっけ? 福音書に示された内容に沿って行動するとか言う。ペラペラ捲った感じ真っ白のままだし、メモ帳に使お。

 あれ? てことは俺はもう魔女教徒……ってコト……?! 

 じゃあオソロの制服はいつ貰えるんだよ、ハブるなよ寂しいだろ。

 

「……おかしいですね、確かに素質を感じたのですが.」

 

 質問しようとしたら、何やらパンドラがブツブツと言っている。

 どしたん? パンドラちゃん、悩み事? 良かったら話聞こか? 

 そっか〜、それは彼氏が悪いわ、俺やったらそんな思いさせへんのに〜。

 

「ふむ……お名前を伺ってもよろしいですか?」

 

 え〜なになに〜? あーしに興味湧いちゃった感じぃ? しょうがないなぁ〜‪☆

 

「童よ、他人に名前を聞く前に、まず自分が名乗るべきではないかね? んん?」

 

 小娘がぁ! 目上を敬えぃ、カァッ! 

 

「……そうですね、失礼いたしました。私は『虚飾』の魔女パンドラと申します。改めて、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」

 

 パンドラ! あなたパンドラって言うのね! 

 

「おK、俺は魚口南」

 

 星座はかに座、嘘、アヘ顔ダブルピース座〜。

 

「ミナミさんですね、では握手を」

 

 えなにそれ、俺が魔女教に入ったからこれからよろしくってこと? 

 まぁ応じるよね、日本人だからね。アヘってる場合じゃないよ。

 

「こちらこそ、よろしくお願いします」

 

 わ〜パンドラちゃん肌すべすべ〜! ちょーうらやま〜☆!

 

「……やはり、私の……」

 

 また何かブツブツ言い始めたよパンドラ様。

 何? 俺がパンドラの魅了と権能効いてないこと? 

 魅了は効いてないだろうけど、権能は微妙かもね。

 この反応見る感じ権能も効いてないっぽいけど、何されたのか分からんから判断出来ん、今んとこいつも通りだし。

 

「ところでパンドラ様? オソロの服っていつ貰えます?」

 

 そろそろ追加の服が欲しい。

 俺家出したあと1泊くらいしてから帰ろうと思ってたからさあ、服あんまないんだよね。

 こっちのお金なんて持ってないし、

 趣味の悪い黒ローブでも欲しい、あれ戦闘に使えるくらいだから生地しっかりしてるだろうし。

 

「オソロ……? あぁお揃いの服ですね、ご所望であれば今すぐお渡ししますよ?」

 

 ウッヒョー! パンドラ様イカっ腹ー! 

 

「今すぐお願いします、早いとこ魔女教の一員として貢献していきたいです」

 

 具体的には大罪司教になって、部下に仕事を押し付けて楽したいです。

 アニメの大罪司教見てる感じ、めっちゃ好き勝手してる感じじゃん、大前提福音書に従ってるんだろうけど、一挙手一投足全てが全て記されてるわけじゃくて、ある程度の概要というか大雑把に起こる出来事とかやるべき事が記されてるだけなんでしょ?

 つまり、そのレールから外れない範囲であれば好き勝手できるってことでは? 

 というかダメだったらレグルスあたりが白髪通り越してハゲになってる。

 

「まぁ……! なんと立派な志でしょうか……!」

 

 パンドラ様は口元を手で覆いながら、ひどく感動したような声色とともに瞳を潤ませる。

 パンドラってこれ全部演技なんだっけ? あざといですわ〜! でも可愛いからOKですわ〜! 

 

「その志に応えましょう、こちらをどうぞ」

 

 そう言うと、ノーパンはどこからかお揃いの服を取り出し手渡してきた、自身と同じ服を。

 アン〇ャッシュ! 

 お揃いってそっちやないねん、黒ローブの方やねん。誤解を恐れず言うと、ペテルギウスとお揃いがええんやって。

 

「あのー……パンドラ様?」

 

「なんでしょうか?」

 

 何それ首傾げるの可愛い。

 

「流石にこれは着れないというか……色々アウトというか.」

 

「もしや、サイズを気にされているのですか? 心配なさらずとも、いくつか上のサイズをお渡ししていますし、きっとお似合いになられますよ」

 

 微笑みキチィぃぃぃぃぃーーー! 

 絶対気付いてるだろ、俺をいじめて楽しんでるよコレ。

 どうする? 着る? 正直着れなくは無いよ、俺かっこいい&可愛いだし、見ようによってはスレンダー美少女だし。

 けど俺に露出趣味は無いんだよ、せいぜいが近所のガキの性癖歪めるために着てたへそ出しコーデくらいだわ、ちゃんと服は着てるんだよ。

 常時布被っただけの露出狂と一緒にするなよ。

 

「もしや……お気に召しませんでしたか?」

 

 こちらを見つめるパンドラ様の瞳は今にも泣き出す人のそれだった。

 何これ泣き落とし? それとも上司の服装を言外に有り得ないと言ってる俺への社会的な死? 

 

「着ます、お揃いちょーうれしいです」

 

 可愛い彼女とのペアルックがいっちゃんチルい。彼女じゃないけど可愛いからね、問題ないね。

 見なよ……俺のパンドラ様を……、めっちゃ嬉しそうじゃん、照れてますよコレ、俺の火の玉ストレートに照れてます。

 けど覚えてろよ、大罪司教になったらそのポンチョ剥いてやるからな。

 お前の権能が効いてないってことは転生特典か権能があるって事だからな? 

 

「では、服をお渡ししたところでお誘いを、ミナミ司教、大罪司教『傲慢』の座に興味は有りませんか?」

 

 パードゥン? 

 

「入ったばっかなのにいいんすか? 自分魔女教のまの字も知らんっすよ」

 

「かまいません、貴方は自身だけの愛を見つけていらっしゃいます。何よりその謙虚さは、『傲慢』の座に相応しいかと」

 

パンドラ様は、どうですか?と小首を傾げて問うてくる。

 

「是非」

 

拝啓、お母様、お父様。

俺、異世界でニートになります。




上手く書けてたら評価してクレメンス。

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