放課後の第2アリーナBピット。そこで俺は軽いストレッチをしながら、そこから見える観客席を見ていた。
正直、こんな人目に晒される場所は慣れないどころか好きではない。そもそも大勢の輪にも入れなかったやつがこんな所でカッコつけれるわけがない。
──────まぁ、正直今更ではあるし、実験台になって野垂れ死ぬくらいなら人目に晒されて醜態晒す方が幾分かはマシだ。
……だが、あれだ。ISスーツ……着てみたはいいが慣れないな。いくらISの補助の為とはいえ身体に張り付くスーツはどうしてもなれない。別に鍛えてなくてダラしないボディラインという訳では無い。これでも昔の恥を経験してスポーツ部に入ったり、体を鍛えたりしていた。そのお陰もあって腹筋は割と割れてる。体脂肪率だって10%いかないくらいだ。
それでも、羞恥心は襲ってくるものだ。
「それで、これが今日の本題その1か」
右手の人差し指に着いている銀色の指輪を見つめた。
【Calamity】と掘られていることからわかる通り、カラミティガンダムの待機状態だ。
まぁ、ざっくりいえばISを携行するために備えられた一種の形態だ。
先生曰く出ろ!と強く念じれば展開できる、との事だ。
そんな適当なものなのか、何て途中で思ってしまったが、実用性を考えればまぁそんなものなのか。
「よっしゃ、行くか。───こい!」
拳を強く握りしめ、念じた。
………何もないじゃないか。そう思ったのもつかの間、指輪は光を放ち始め、俺の視界を被った。
そこから少し、光が消えると、目の前にウィンドウが写った。
───Check the pilot's biometric data.
───Complete.
MOBILE SUIT OPERATION SYSTEM
G eneral
U nilateral
N euro - link
D ispersive
A utonomic
M aneuver
───Confirmed startup of all systems.
───System all green.
───Calamity, activating.
初期GAT-Xと同じなんだな、OS。まぁ、いいか。問題なく起動出来たんだし。後は動かせるかどうだ。
そう考えながら、右足を上げると、それと同じく機体の右足も上がる。パワードスーツと言えど、悪の3兵器の中で1番軽いと言えど、コレだから重いもんかと思っていたが、重くないどころか、普段よりも脚が軽い気がした。
歩行や、腕の運動も問題なく、視野も広い。そこら辺は問題なしだ。
内心凄いなと感嘆しながらコックピット足部を接続する。
───Catapult Online.
───Injection thrust normal.
───Path clear.
───Calamity, ready for launch.
なんかすっごいテンション上がってきた。だってさ、上がんないわけないじゃん、テンション。こんなの見てさ。
The男のロマンって感じする。
「肆三瀬オルガ、カラミティ───出る!」
姿勢を低くし、構えながら後部スラスターを最大出力で噴出させる。カタパルトはレールにロックされ、電磁投射で前方に勢いよく射出される。
レールの最先端部に到達すると同時にカタパルトと足部の接続が切れ、アリーナ内へ発進した───は、いいものの事件は起きた。
「気持ちぃー───って、うぉっ!」
機体は空中に放り投げられるや否や地面に向かって落ちていく。俺は急いでスラスター各所を噴出させるも、多少勢いを殺すだけであり、落ちていることには変わりはない。
そこから、機体の硬さとスペックの高さで無事怪我はなかったものの、俺はこの機体に引いてしまった。
「こいつ……、こっちでも飛べねぇのかよ…!」
カラミティは元来、水上ホバー等は出来るものの単独飛行ができる機体ではない。しかしISには標準装備としてパッシブ・イナーシャル・キャンセラー、《PIC》が装備されており、その名の通り物体の慣性をなくしたかのような現象をおこす事が可能で、故にISは全身を覆わずとも最低限のスラスターで飛行を可能としている。
のだが、この機体は何故か空を飛べやしない。PICありきでもだ。
ISなんて空中戦を交えた3次元的な戦闘が取り柄みたいなもんだろ。そっから空中戦抜いたらただの兵器じゃねぇかよバカヤロウ。
「機体に損壊はないからいいけどさぁ……。レイダー居ねぇのにどうすんだよこれ……」
泣き言を言ってる暇は正直言って無いのだが、少しくらいは言ったっていいだろ。
───それは兎も角、次は本題その2。火器を扱えるかだ。
操作マニュアルを見てみたところ、思考による補佐2割、マニュアル操作8割程度でほぼマニュアル操作だよりだ。
正直、ISとの戦闘ではバカでかい欠点となっている。
エクバで言えば足遅い機体が大体弱いみたく、ISもエクバ同じスピード重視のものだ。故に移動できない、地走キャラ、操作で足がちょくちょく止まるというクソキャラでしかない。ホバーできるのが救いだ。
「火器管制は……、かなりムズいな……。ガシガシ動かせもんでもねぇし……」
高機動相手にオルガ・サブナックレベルで戦闘するのは無理だろう。やはり凄いな、ブーステッドマン。
まぁ、憧れてるだけじゃどうにもならないのが現実。どうやろうとも結局は練習あるのみだ。
「と言っても、今日はここまでにしよ。別に時間がとてつもなく無いわけではないしな」
そしてカラミティを解除し、指輪の待機状態に戻した。
試合まで残り5日。この間でどこまで成長できるのか、自分でも見ものだな。