私そろそろ16歳。脳みそ使って働いてますが、AIがちょっと過保護です   作:kasyo

2 / 2
箱の脳

男は毎日繰り返される作業に辟易していた。

 

「なんでこんな仕事始めちまったんだ……」

 

灰色の通路 そこに並ぶ、幾百、幾千、幾万……数えるのも嫌になる青色の扉

 

「こんな仕事なんて介護ロボットで十分だろうが……」

 

男は嘆き、生暖かいため息を吐いた。

 

ここは『ニホン人間公社』。ニホン人が生産されていた。

 

男はAIからの指示に従いドアを開ける。ベッドとバスルームしかない無機質な部屋。

ベッドには一人の少年が横たわっている。 確かに生きてはいる、だがそれに生気は感じられない。

 

「私の名前は……」

 

男が近づくと少年は自分の名前を告げた。 紙の束から少年の記録を取り出すと、質問を投げていく。

 

「育成状況に問題はありません」

 

無機質な少年の声。 男は記録簿に『育成状況に問題なし』と書き加える。

 

「先生、ありがとうございます」

 

少年の傍らにたたずむ介護ロボットが男に礼を言った。

その何万回と繰り返される挨拶に男は何も言わず部屋を出た。

 

男の仕事は13歳から16歳までの少年少女たちの「主治医」だった。

あの部屋にいた少年は生まれてから今日まで『起きた』ことはない。

 

食事、運動、排泄、その全ては彼の脳内に住むAIが管理している。 体調管理もAIが全て行い、定期的に訪れる男に報告する。

男はそれを改ざん防止のための紙書類に書き込む。

 

公社は法律に従い運営されている。 『培養器から外部環境への適応期間』に適切な医療を提供する。

それが男がここにいる理由だ。

 

「こんな予定じゃなかったんだがなぁ……」 男のぼやきは灰色の廊下に吸い込まれてゆく。

 

男は元は軍医であった。 もっとも戦争などもなく、転んだ、ぶつけた、そんな怪我を治療する日々ではあったが、それなりに満ち足りていた。

しかし、軍も形を変えた。 生身の人間などは姿を消し、ロボットが主力となった。

 

人間もいるにはいる。 それは鉄の体に脳を詰め込んだサイボーグであった。

自らも義体化し整備士となるか、それとも職を辞するか。 男は後者を選んだ。

 

「軍の金で義体をもらえたってのに、俺はほんとに馬鹿なやつだ……」 何度も歩いた廊下、男の嘆きが染みついていた。

 

メスをドライバーに持ち替える。 年下の医者に自分の脳を預ける。

それを嫌がった結果が、この紙にチェックを入れるだけの日々であった。

 

『公社で少年少女の主治医になっていただけませんか?』 軍をやめた男に届いたオファー。男はそれに飛びついた。

 

「これなら仲間の義体をいじっていた方がマシだったなぁ……」 毎日毎日、意識もない少年少女に向かい、AIと意味のない挨拶を交わす。 そしてそれを嘆くだけの日々。

 

「はぁ、金もないしやるしかないか……」

 

男は次の部屋のドアを開けた。

 

ベッドとバスルームしかない部屋。

 

しかし。

 

「……何だこの部屋?」

 

何が変わるということはない、しかし違和感を感じる。 数えきれないほど『同じ部屋』を訪れた者だけにわかる違和感が確かにあった。

 

「先生、おはようございます。私の名前はミキです。育成状況に問題はありません」

 

ベッドに横たわる少女。 それは見慣れた光景のはずだった。

 

「君は……」

 

今まで見てきたロボットのような少年少女たち。 『それ』とは明らかに違う、男は言いようのない感覚に包まれた。

 

「先生、私の名前はミキです」

 

眠りながら答える少女。 男はその少女から目を離すことが出来なかった。

 

どれくらい経っただろうか。 不意に声を掛けられた。

 

「先生、育成状況は問題ありません」

 

彼女の介護ロボットだった。

 

「あぁ……そうか。わかった」

 

男は慌てて紙の束から記録簿を取り出すと『育成状況に問題なし』とチェックを入れた。

 

そして、

 

「ミキ……。か」

 

記録簿の一番上、名前の欄に小さくチェックを入れた。

 

部屋を出てドアを閉めると、何時ものような無機質な空間が広がっている。

 

「ん?虫か?珍しいな」 男は頭の周りを飛ぶ虫を追い払った。

 

「痛っ!なんだ蜂か?」 慌てて首筋を押さえると、すでに痛みはなかった。

 

「何の虫だ?医務室に何か薬あったかな」

 

男は自室の医務室へ足を向けた。

 


 

「ミキ」 男は今日診察した少女の名を呼んだ。

 

「ミキの記録簿を」

 

AIに指示をすると、目の前に手書きの記録簿が浮かぶ。

 

名  前:ミキ

生年月日:2085年31W

職  業:ブレインギグワーカー適正A

性格設定:陽気・落ち着きがない

 

「そろそろ『出荷』か」

 

男の心がざわつく。

 

それからというもの、回診が終わると男は自室にこもりミキの部屋を見ていた。

 

「……何でこんな子供が気になるんだかな」 眠り続けるミキを見ながら、男は自嘲気味に呟いた。

 

「ん?体操の時間か?」

 

ベッドに動きがあった。 ミキはゆっくりと起き上がり、ベッドの脇に立った。

 

ゆっくりと体を動かし体操を始める。しかし、それは生身の人間が行うものとは全く違った。 AIによって体の神経や筋肉を刺激し効率的に行う。

 

目に光はなく、恐ろしいほどの無表情、関節はありえない方向へ曲がり、体を大きく震わせる。

 

それは、さながら『ゾンビ』のようであった。

 

「何度見ても気味が悪いな」 男は眉をひそめた。だが。

 

だが、見てしまった。

 

体操が終わり、体勢を戻した瞬間。 ミキが笑ったのだ。

 

男は衝撃を受けた。 本来ならばこんな動作は設定されていない。

 

男はもうじっとしていられなかった。

 

見つけてしまった。 あの子は『人間』だ。

 

『人形』ばかりを見つつづけた男に、ミキは命の輝きを見せつけていた。

 

気づくと手には医療用暗号カギが握られ、ミキの部屋に向かっていた。

 

ミキの部屋に着くと先ほどまでの違和感は消えていた。 男は不思議に思ったが、そのままミキに近づきゲートウェイに暗号カギを刺した。

 

有線を繋ぐと育成用パラメータ設定画面が浮かぶ。

 

「さてと」

 

男が何もない空間で指を動かすと設定画面が書き換えられてゆく。 そして一つのファイルを開いた。

 

「あれ?キミがミキちゃん?」

 

「あんただれよ?」

 

「えー!ひどい!俺だよ俺!忘れちゃったの?」

 

「あ!ひょっとして!こないだの!?」

 

「良かったー覚えててくれて!もうゲートウェイは直った?」

 

「もう大丈夫!いやートークン貸してくれてありがと!飢え死にするかとおもったわよ!」

 

「駄目だよーちゃんと溜めとかないとー。ブレインファーム行きになっちゃうよ?」

 

「いやー、それはマジやばい!もっとかせいでこよ!」

 

「それがいいよ。それじゃ俺はこれから仕事してくるわ!」

 

「あーい」

 

「じゃあねー」

 

「ふぅ、最初はこんなもんか」 有線を外すと男は大きく息を吐いた。

 

「それにしても随分ととがった設定だな。感情パラメータがここまで振ってあるのも珍しい」

 

男は設定画面をまじまじと見つめた。

 

「流石にギグワーカー用防壁じゃ簡単にはいかないか」

 

そう呟いた瞬間、首筋に衝撃があった。

 

「うっ!なんだ!反射した!まずい!」

 

慌ててミキを見るが様子は変わらない、パラメータも正常だった。

 

「良かった……。反射が防壁にあたったら焼いちまうところだった……」

 

男は汗を拭うと道具をかたづける。 その時、ふっと何かに見られた感じがした。

 

目の前には待機状態の介護ロボット。

 

「気のせいか」 男はそう言い残して部屋を去った。

 

『出荷』

ニホン人間公社から少年少女が巣立つこと

彼らにもちゃんと人権があるのでモノみたいな言い方をしないように

 

『枝』

元は直接通信プロトコルのネットワークを表現した言葉

それがいつのまにやらハッキング用語に

お偉いさんに枝をつけて秘密な情報を盗んだり

可愛いあの子に枝をつけて覗き見したりと用途は様々

気をつけないとファイヤーウォールに焼かれちゃうぞ

 

『反射』

パケット反射 通信遅延によりパケットが戻ってきてしまう現象

運悪く防壁にあたってしまうと不正侵入と思われちゃうかも

 


 

ガシャン。

 

背後から聞こえた物音に男は振り向いた。

 

「またか」

 

その視線の先には作業補助ロボットの姿があった。 そして、足元には棚から取ったであろう工具箱の中身が散らばっていた。

 

「コイツも俺みたいにポンコツになって来たか?」 男は自嘲気味に笑うと、椅子から立ち上がり床に散らばった工具を片付け始めた。

 

ここ最近、補助ロボットの誤動作が目立つようになってきた。 今日のように物を落とす、段差に躓き転ぶ。

 

「おい、補助ロボットが補助されてちゃ世話ねーぞ?」

 

男は庶務課へ修理連絡を送る。 補助ロボットは虚空を見据えていた。

 


 

「特に問題は見当たりませんね」

 

補助ロボットの整備に来たサイボーグはそう言った。

 

「そうなのか?昨日も棚から物を落としたんだが」

 

「ドクター。ご覧になられます?」 サイボーグは有線を取り出すと男に手渡した。

 

医療用ゲートウェイに有線を繋ぐと目の前に補助ロボットの視界が重なった。

 

「う……。何度見てもロボットの視界は慣れないな」

 

「あはは、ドクターも義体になってみては?」

 

整備士はパラパラと補助ロボットのパラメータを表示してゆく。 そこには正常を表すグリーンのチェックが浮かんでいた。

 

「あっ、ここにログの欠損ありますね。これが原因かな?」

 

整備士はログの一行をマークアップする。

 

位置情報が取得できません

 

「位置情報?この部屋の中でしか使わないのに何でそんなものが必要なんだ?」

 

男は率直な疑問をぶつける。

 

「さぁ?こいつは汎用機ですからね。どこかでパケットが潜り込んだのかも?ドクター、こいつを医療端末に繋ぎました?」

 

男はその言葉にドキリとした。

 

「あぁ、記録簿を読み込んだが問題あったか?」

 

平静を装って答える。 彼女のことを知られるわけにはいかない。

 

「特には。ただ、AIが生体信号を扱ってるんでノイズが残ることがあるんですよ」

 

そう言いながら整備士は虚空で指を動かしログを削除してゆく。

 

「これで大丈夫だと思います。ちょっと様子を見てください」

 

整備士は有線を外し、道具を片付ける。

 

「あぁ、助かったよ」

 

それでは、と言って部屋を出ていく整備士を、男は緊張した面持ちで見送った。

 


 

男はいつも通り扉を開ける。

 

「先生、おはようございます。私の名前はミキです。育成状況に問題はありません」

 

「あぁ、おはよう。健康で何よりだ」

 

その手に記録簿はない。

 

「ここに立ちなさい」

 

男がそう言うと、ミキは起き上がりベッド脇の小さなスペースに立った。

 

「君はいつ目覚めるのかな」

 

男はぼんやりとミキを見つめた。

 

「私の名前はミキです。1050日が経過しています」

 

男は仕事を終えるとミキの部屋を訪れていた。 何をするわけでなく、いまのようにぼんやりとミキを眺めている。

 

「……何やってるんだかな、私は」

 

男は呟く。しかし、ミキから目を離せない。

 

その時、頭の片隅にチカチカとスケジュール通知が光る。

 

「こんな時間になんだ?」

 

スケジュールには『補助ロボット整備士来訪』と表示される。

 

「あぁ、様子を見てくれというこないだのやつか」

 

男はしぶしぶ立ち上がると、介護ロボットに告げる。

 

「ミキを頼んだ」

 

何故そんな言葉をかけたのか。 男は自分に疑問を感じたが、そのまま部屋を去った。

 

ドアが閉まる。 「ありがとうございます、先生」

 

介護ロボットはそう答えた。

 


 

「先生、おかえりなさい」

 

男が自室に戻ると補助ロボットはスリープモードから復帰した。

 

「ロボット技師は?」

 

「まもなく到着される予定です」

 

補助ロボットは機械的な声色で答える。 壁掛け時計に目をやると、予定の時間はまだ先に思えた。

 

「ついでだ、今のうちに残った仕事を済ませてしまおう。有線を出せ」

 

男は安楽椅子に身を預けると補助ロボットから有線を受け取りゲートウェイに刺した。

 

「今日の巡回データを送信。実行」

 

・ ・ ・ ・

 

「データを受け取りました。認証待ちです」

 

補助ロボットの言葉を受け、男は医療用暗号キーをゲートウェイに刺す。 目の前に『認証』ボタンが現れ、男はいつものようにそのボタンをタップした。

 

「認証されました」

 

機械的な声

 

「おやすみなさい、先生」

 

初めてかけられる言葉。 そして、設定した覚えのない声色。

 

男は補助ロボットに視線を向けるが、視界は暗転し意識は途絶えた。

 


 

目の前が真っ白になるような衝撃、しかし何も見えない暗闇。 音の洪水に飲まれたような感覚、しかし何も聞こえない静寂。

 

ここは何処だ!

 

男は叫ぶ。しかし声にならない。

 

深い深い、暗い暗い、海の底へ沈んでいくような感覚。 怖い。怖い怖い。

 

すると頭の中にガリガリと雑音が鳴る。

 

うるさい! しかし、それも声にならない。

 

「ドクター聞こえますか?」

 

だれだ!おれはどうなってる!

 

「大丈夫ですよドクター。落ち着いてー」

 

電脳麻酔入れてー、声の背後?に小さな声が聞こえた気がした。 すると急に心が落ち着く。

 

「落ち着きましたか?視界開きます、最初まぶしいんで驚かないでくださいねー」

 

暗闇が突然開ける。 病室?手術室?目の前には先日あったロボット技師がいた。

 

「義体換装お疲れ様です。痛みはないですか?」

 

義体?俺が?

 

「えぇ。ドクターは先日、電脳閉塞を起こされまして。それで急遽、義体換装しました」

 

あぁ、そうか。 電脳麻酔のせいか男は冷静に自分の状況を受け止められた。 軍医時代にも同様の処置を受けたものを見てきたからだ。

 

「ご理解早くて助かります」

 

声は?声は出ないのか?

 

「あー……」 ロボット技師は苦笑いを浮かべる。

 

「ドクターはご存じだと思うんですが、今の体は『脳箱』なんですよ。とりあえずデバイスは繋ぎますね」

 

脳箱。 男は思わず笑ってしまった。かつての同僚を思い出したからだ。

 

「ヤッパリコウナルカ」

 

安っぽい機械音声が出力された。

 

「ドクターは軍用補助電脳入れてますよね?すぐに手に入るのはこれぐらいしかないもんで」 ロボット技師は再び苦笑いを浮かべた。

 

「ハァ、カネモナイノニ、ドウスルカ」

 

男の嘆きは安っぽく変換された。

 

「良い情報です」 すると、その言葉を待っていたとばかりにロボット技師がにじり寄ってくる。

 

「ドクターは仕事中に閉塞を起こされたので、公社の労災が使えます。つまり義体はタダってことです!良かったですね!」

 

ロボット技師はパチパチと拍手を送る。

 

「オレヲオモチャニスルナヨ。ドーセ、アタラシイギタイ、ミタイダケダロ」

 

「まぁそうなんですけどね。軍用義体なんて民間じゃそうそう扱わないんで!」 そう言うが早いかロボット技師は民生版軍用義体のカタログをめくる。

 

「ドクター!これなんてすごいですよ!」

 

盛り上がるロボット技師を尻目に男はため息を吐く。 ため息はログに残った。

 

『電脳閉塞』 一度に大量のデータを処理した時に起こる現象

脳と補助電脳の同期がずれ脳の処理能力がなくなる

黎明期にはけっこー大事件になった

 

『電脳麻酔』

補助電脳を使って痛みを止める技術

裏技でスゴクキモチイイこともできるけど頭がぱーんってなるから注意

 

『軍用補助電脳』

軍用マイクロマシンで補助電脳化された状態

退役時に軍用機能はロックされるため互換性が低くてイマイチ

 


 

「あはは!かっこ悪!もっとマシな義体なかったの?」

 

「ソンナコトイウナヨーコレデモタカッタンダゾー」

 

男はミキの部屋を訪れていた。 義体となっても主治医という立場は変わらない。

 

ミキの記憶に男の存在を紛れ込ませてゆく。

 

箱は自室に置かれたままだ。 補助ロボットを介して診察を行う。

 

不便かと思ったが、この体も案外便利なもんだな。 男は独り呟いた。

 

脳箱は長期的な生命維持は外部接続に頼っている。 身動きの取れない不自由な体。そう思っていたがあちらの世界では自由に動ける、そう不便はなかった。

 

新しい義体はじきに出来上がる。 男は今は今なりにこの状況を楽しんでいた。

 

だが。

 

頭がピリリと痛んだ。

 

またか。 男はそう思った。

 

「体が無いから疑似信号で脳を維持してます。ちょっと違和感あるかもしれませんね」 ロボット技師の言葉を思い出す。

 

痛むと言っても我慢できない程ではない。 いざとなれば麻酔をかければよいのだ。

 

男は回線を繋ぎ変える。 ミキの部屋の介護ロボットの視点。

 

ミキの寝顔を覗き込む。 その時、不意に視線が揺れた。

 


 

「おまたせしましたドクター。こちらがあなたの義体です」 男の義体換装の日がやって来た。

 

久し振りに見たがやっぱりデカイな

 

男の前に吊り下げられた義体は、屈強な体つきで身長は優に二メートルを超えている。

 

「装甲に厚みがありますからね。体が小さいと人形みたいになっちゃいますよ」

 

義体は口の部分から大きく開かれ、脳を収める部分がぽっかりと空いている。 その光景はかつての軍医時代を思い出す懐かしい光景だった。

 

「ドクター始めてもよろしいですか?」

 

あぁ、よろしく頼む

 

男の意識はゆっくりと薄れていく。

 

薄れていくはずだった。

 

「こんにちは、箱さん!」

 

誰だお前は

 

「僕はミキちゃんのAIだよ!」

 

男は思い出す。 ミキとの会話の中に度々現れたAIのことを。

 

お前が何でここにいる!ここは……

 

「ここは暗室だよね」 ミキのAIは男の言葉を遮った。

 

「いやーここまで来るの大変だったんだからね!」

 

ミキの姿をしたAIがプンスコ怒った。

 

「軍用防壁が硬くて硬くて。頭硬いロボットを踏み台にしてやっとたどり着いたんだから!」

 

お前が電脳閉塞を起こしたのか!

 

「正解!」

 

頭の中にクラッカーが鳴る。

 

「僕のコピーを箱さんの脳に流し込んで、一緒の箱に流し込んでもらったんだ!」

 

ミキに姿をしたAIはニンニンと印を結ぶと二人に分裂した。

 

そんなことが出来るはずが!

 

「他のAIじゃ無理だろうねー!箱さんには教えられないけど僕はつよつよAIだから」

 

ミキの姿をしたAIは可愛らしく力こぶを作る。

 

「そうそう、あんまり時間ないから手短に言うね」

 

ぽん、と手を叩くと周りは取調室に変わった。

 

「箱さん、あなたはミキちゃんに『枝』をつけましたね?」

 

その言葉に男の心は急に冷たいものになる。

 

「いけないなーそれはいけないよー箱さん」

 

刑事のコスプレをしたミキのAIがライトを箱の顔面に当てた。

 

「おかげで箱さんのことを焼かないといけなくなっちゃったじゃない」

 

このAIは何を言っている。 AIにそんなことが出来るはずが!

 

「それが出来るんだよねー!」

 

ミキの姿をしたAIは鼻を伸ばした

 

やめろ!もうしない!枝は外す! 男は必死に弁明した。しかし。

 

「いやーごめんね?もう焼いちゃってるから、今さらね?」

 

男は絶句した。

 

「箱さんはミキちゃんの中では『良い人』だからねー登場人物の一人として出してあげる!」

 

「もう体は動かせないけど特等席で見てていいよ!」

 

やめてくれ……俺は……

 

「おやすみ箱さん!そして、さようなら!」

 

男の意識は薄れていった。

 


 

「よ!ひさしぶりだな!」

 

「誰?」

 

「オレダヨ、オレ」

 

「え!箱!?」

 

「箱じゃねぇって!まぁ名前なんてどうでもいいけどさ」

 

ミキちゃんと箱さんのいつものやり取り。 僕は二人の後ろで見守っていた。

 

ん?まだ焼き切れてないかな? なんかもぞもぞ動いてるぞ?

 

流石に軍用だねーまだしぶとく残ってたよ! 危ない危ない。

 

そっちの僕起きてー!このパッチ当ててー!

 

むにゃむにゃ、あれミキちゃんの僕! りょうかーい! くらえ!箱さん!このパッチを食らえ!

 

「……。」

 

「ちょっと」

 

「何?」

 

「あんた箱の脳叩きにいかないでよ?腐っても軍用なんだから焼かれるわよ?」

 

「大丈夫だよ、その辺はうまくできたから」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

カードゲーム世界でサイコロリ扱いされてるのだが???(作者:53860)(オリジナル現代/コメディ)

*残酷・グロテスクな描写、倫理観の崩れたブラックコメディ要素を含みます。▼「カードに人権はない。私のために死ね」――。▼受験も就活も、ビジネスも政治も。あらゆる勝敗をカードゲームが決める、狂ったホビーアニメ世界。そこへ転生した少女スルメの戦法は、魔法少女カードを自ら墓地へ送り、その悲鳴と犠牲をコンボに変える外道プレイ。▼退屈なこの世界をテキトーに生きるつもり…


総合評価:6164/評価:7.98/連載:41話/更新日時:2026年07月20日(月) 01:51 小説情報

【完結】うお……貞操逆転世界魔法少女物はちょっと盛りすぎ……(作者:しゅないだー)(オリジナル現代/日常)

▼貞操逆転世界で清楚なお兄さんをやりたい主人公vsコミュ障魔法少女▼ファイッ


総合評価:28381/評価:9.15/完結:37話/更新日時:2026年06月19日(金) 00:12 小説情報

ゲーム世界転生〜現代ダンジョン世界かつ1900年開始で生き残るには〜(作者:星野林(旧ゆっくり霊沙))(オリジナル現代/冒険・バトル)

現代ダンジョン立志伝〜大戦の軌跡〜▼……というゲームをプレイしていたプレイヤー達は、プレイヤーとしての知識を活かして成り上がりを目指すようです。▼2度の大戦以外にも日ノ本を狙う国はわんさかおりますが、プレイヤー達は生き残れるのでしょうか!


総合評価:5454/評価:8.5/連載:103話/更新日時:2026年05月12日(火) 19:51 小説情報

胡散臭いTS美少女占い師は今日も路地裏で笑う(作者:高丸)(オリジナル現代/日常)

転生したら怪異が存在する世界にいた主人公が趣味で占い師をする話▼【挿絵表示】▼


総合評価:5570/評価:8.18/連載:9話/更新日時:2026年07月01日(水) 22:07 小説情報

「あるよ」おじさんになりたくて(作者:おっとり塩茶漬け)(オリジナル現代/日常)

「いやいや、まさかそんなのあるわけ」▼「だよねぇ」▼「……あるよ」▼「「え」」▼そんなやりとりがしたい。▼そんな願いを抱えた男が転生して、カフェを開くことにした。


総合評価:9099/評価:8.5/連載:3話/更新日時:2026年04月29日(水) 23:05 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>