一之瀬率いるAクラス 1360ポイント
葛城の率いるBクラス 1091ポイント
堀北の率いるCクラス 691ポイント
龍園の率いるDクラス 421ポイント
※41話、少し話の流れを修正しました。
3月24日、卒業式。
3年生のすべての課程が終了し、いよいよ旅立ちを迎える日。
そんな日に体育館に集められた全校生徒。
教師や関係各位、普段見る事の無い大人たちも列を成して彼らを温かく見守っている。
それは新しい門出に向けて大きな一歩を踏み出す3年生のこと。
彼らが、子どもという枠を超え何になるのか。それは星の数ほど広がっているのだろう。
「では、これより3年間を戦い抜き、晴れてAクラスで卒業したクラスの代表者より答辞を述べて頂きたいと思います」
進行役の大人がマイクを通して話す。それにより、体育館は静寂に包まれた。
「代表、Aクラス──」
その言葉と共に姿を見せた生徒は……
「──堀北学くん、前に」
堂々と壇上へと歩みを進めると、在校生や関係各位へと視線を移す。
「答辞。梅の香りに春の息吹を感じるこの日、我々は卒業式を迎えました」
堀北学の落ち着いた声が在校生たちの未来の指針を示していく───
ゆっくりと話す雰囲気には、どこか穏やかさのようなものを感じられた。
1年前の彼とは違う、柔らかさがそこにはあった。人間は変わっていく生き物で、彼もその1人なのだろう。
堀北学は巣立つ生徒として、温かい眼差しを在校生たちに向けていた。
「この学校で学んでいることはこの先の人生において、何よりも宝となり役立つものになるであろうことをここに約束します」
学生というのは人生で言うなら始まりに過ぎない。彼はそれを指しているのだろう。
「来年、そして2年後。答辞を述べる人にも、きっと理解できる瞬間が訪れるでしょう。
──3年間、本当にありがとうございました」
答辞は生徒たちから、教師たちへと、学校へと向けられていく。
見事な答辞が終わりを告げ、卒業式は終了した。
─────────────────────────────────
竜崎正の独白。
星之宮から今後の流れの説明を受けた後、私は体育館傍にやってきた。
到着すると、丁度体育館での謝恩会が終わったのかついにその扉を開いた。
晴れて卒業式は終わりをつげ、学生たちの公式な最後の交流の場はこの瞬間だけとなった。
──続々と出てくる3年生たち
その姿を見た1年生も2年生は緊張しているようだ。
3年生の中にはこの卒業式が終わった直後の今日、学校を旅立つ者もいるという。
残った卒業生の中に、堀北学の姿もそこにあった。
そしてそんな彼に近寄る生徒がいる──現生徒会長、2年Aクラスの南雲雅だ。
「卒業おめでとうございます、堀北先輩」
素直に賞賛する言葉を投げかけながら、南雲雅が笑みを浮かべた。
「全く、流石ですね堀北先輩。結局、俺はあなたを脅かすことは出来なかったッスよ」
「そうでもない。正直、最後の最後まで俺がどう転ぶかは分からなかった。もしおまえに敗因があるとすれば、それは俺と同じ学年でなかったことだ。どれだけ深く干渉しようとしても、結局は外野に過ぎない」
どれだけ戦おうと願っても、学年という違いだけは飛び越えることが出来ない。
直接試験に参加できない以上、やれることも限られてくるからだ。
「そうッスね。あーなんで1つ年下に生まれたんだか」
しかし不満はなさそうで、むしろ同学年でなかったことを悔やむ姿がそこのにはあった。
「…こんな俺でしたが、最後に握手してもらえませんか」
「もちろん、断る理由はどこにもない」
堀北学も快諾し、2人の間に握手が生まれる。
しばらくの間、沈黙が流れた。
言葉を交わさずとも分かり合える要素は多いのかも知れない。
「おまえにはこの後も、長い1年間が待っている。満足のいく学校生活を送れ」
そこには以前のような南雲の暴走を危ぶむような発言は含まれていない。
むしろ、好きなことをやれと発破をかける言葉だった。
「ええ。先輩がいなくなった後の少ない期間、精いっぱいやらせていただきます。本当の実力主義の学校に変えていきますよ。その準備は整いましたからね」
その発言を、堀北学は正面から受け止め一度頷く。
「年下であることを悔やんでいたが、似たような気持ちかも知れない。おまえの作っていく学校を見られないのは少し残念だ。間近で見れば、もっと理解できたこともあるだろう」
「どうッスかねえ。こればかりは先輩と相容れないと思いますよ。それに年下で言うんだったらアイツもですよね?」
堀北学と南雲雅の力強く繋がれた手と手が離れた。
「…なぁ竜崎?お前の番だぞ」
南雲雅は私の方に視線を向けながら堀北学から距離を取る。それに釣られる形で、集まっていた生徒たちの視線も私は集まった。
「…竜崎か」
堀北学が少し顔を緩めて、私を迎え入れた。
柔らかい、重圧から解放されたような表情は彼がこの一年、どれだけ背負ってきたのかを物語っていた。
「おめでとうございます、よく南雲さんからの嫌がらせを乗り越えてAクラスで卒業しましたね」
その言葉に話を聞いている南雲雅は鼻を鳴らした。三つ巴の状況を望んでいたからこそ私の対応は退屈だったのだろう。
「私も邪魔をしようかと思いましたが辞めました。無粋だから、それが本音です」
彼らの戦いの手を出すのも一つだが、それでは勝利とは言えなかった。なら、認めて欲しいと願う南雲雅を優先する方が合理的だった。
「…そういえば私に頼みたい事があるんじゃないですか?Aクラスで卒業したわけですから」
クラス内投票の少し前、私は堀北学から一つお願いをされていた。
『俺がAクラスで卒業できた時、一つ頼みを聞いて欲しい』彼の言葉を私は覚えていた。
「あぁ、そうだな…」
少し春には早いが、咲いていた桜の花びらが静かに舞い落ちる。
それは、今までの軋轢から
だから、その次に出る言葉に私は納得した。
「──俺と友人になって欲しい」
そう言った時の彼の表情は、いつの日かの綾小路清隆に重なって見えた。
しかし、それは理解出来た。彼らは完璧を求められ彷徨っていたのだろう。目指すべき場所に差はあってもそれ以外の生き方をしらないのであれば表情が重なるのも無理はなかった。
「…また、ですか。貴方たちは揃いも揃って似ていますね」
「また…?」
「いえ、なんでもありません。それに学くんぐらい誠実な人を私は好きなので、是非」
私がゆっくり手を差し出すと彼はそれを強く握りしめた。
それは力が込められていたが、彼なりに緊張していることも感じ取れた。
なぜなら、少し震えて汗ばんでいるからだ。
彼にも人並みの感情が残っていたのか……、そう感心していると私も頼むべきことがあるのを思い出した。
「あ、私からもあるんでした」
握手していた手を解き、私はポケットを漁る。
そしてそこから折り畳まれた紙を取り出し、堀北学の方へ差し出した。
「これ、どうぞ」
「…これは?」
彼はそれを受け取ると、開こうとしたので手で制した。
今は開かれれば都合が悪い。そして彼を信頼して渡しているのだ、裏切って欲しくは無かった。
「私の電話番号です、卒業後も友達で居たいので渡しておきます」
その言葉に彼は目を見開いた後、大切そうに上着のポケットの中に仕舞った。
「そうか、ありがとう。受け取った」
「はい。あ、言い忘れてました…その電話番号使えるか分からないので外に出たら一度電話してください」
「……使えるか分からない?」
自分の電話番号なのに使えるか分からない?その言葉に疑問を持つのは当然だった。
しかしそれを疑問に思う彼だからこそ、託せるのだ。
「家の電話番号なんです。その際家の誰かが出たら『ライト』とでも言ってくれれば伝わると思いますよ」
「分かった…、覚えておこう」
来年への布石を打ち終えた私は…不自然にならないように、近くにいた南雲雅にも話を振る。
「あ、南雲さんにも来年渡しますよ。だからそんな目で私を見ないでください」
「見てない、それに俺も堀北先輩に渡したからな」
どうやら彼も繋がりを持つ選択を取ったらしい。随分としおらしくなったものだ。
色々と思うところがあったのかもしれない、彼もまた成長しているという話だろう。
「じゃあ、私も用が終わったので。2年後またこの日に会いましょう」
そして私はもうこれ以上、堀北学と話す必要は無いと判断した。
彼が私の予想通りの人間なら、この学校を出た後も交流は続くのだから。
「そうだな。お前がAクラスで卒業する事を待ち望んでいるぞ」
「はい、その時は沢山の思い出話をしてあげますよ」
私は一度少し離れた位置でこちらを見ていた綾小路清隆と、そしてこちらを複雑な表情で見守っている堀北鈴音を見据えた。
彼らが、どう成長するのか…私が知る必要はない。
それが願わくば、面白い結末であることを。
そう思い、私は歩みを進めた。
他の3年生と話したいのもそうだが、彼らと同じように成長させるべきだと考えている人間が居るからだ。
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綾小路清隆の独白。
卒業式、そして終業式が終わり春休みになった。
学生たちは競争を忘れ、束の間の休みに入る事になる。
だからこそ、思い思いの休日を過ごし…遊び疲れているのだろう。
だが、オレは選抜種目試験の時の話についてを知る為に人を待っていた。
「こんにちは、綾小路くん」
その生徒は、集合時刻より少し早い時間にやってきた。
私服姿のひよりだ。あれから仲良くなったので名前呼びに変わった。
それを少しだけ、嬉しく思いつつもひよりはオレの事を名前では呼んでくれなかった。なんでも恥ずかしいかららしい。
「すみません、お待たせしました」
「いや、待ってない。それで他の2人は…」
3人で来ると思っていたオレは不思議そうに問いかける。
それにひよりが口を開きかけたその時──、騒がしい声と共に2人の姿が見えた。
「伊吹、歩くの早えよー!」
「っさいわね。近くで大声出さないで」
石崎と伊吹だ。敬遠の中に見えつつも、相性が良さげな2人の姿にひよりは声を出して笑っていた。
今日は、そんな2人を含めた4人で今後について話す予定だった。
本当は龍園も呼びたかったが断られたらしい、オレとは顔を合わせたくないとの事だ。
「では、全員が集まったので早速向かいましょうか?」
その言葉にオレは頷いた。こんな誰に聞かれているか分からない場所で作戦会議は出来る筈もない。
向かう先はカラオケルーム、人に聞かれたくない時によく使う場所だ。
「折角ですから綾小路くん、歌いますか?」
のほほんとひよりは提案したが、石崎が全力で首を横に振った。どうやらこれに乗ると話が逸れるから断れという事らしい。
「すまん、先に用を済ませてからでいいか?」
「それもそうですね、この後龍園くんも来るらしいですから」
「「え?」」
その言葉に伊吹と石崎は驚愕の声を上げた。
オレも同じく驚いてはいた、なにせ断られたと言っていたのだから。
「どうやら予定が無くなったらしく来れるそうです。なので取り敢えず龍園くんが居なくても話せる部分を説明しますね」
ひよりはそんな様子を気にすることなく、敬意を話し始めた。
「まず、私がAクラスとBクラスが同盟を結ぼうと画策しているのではないかと推理したのには理由があります」
「…理由か?」
「はい、まず私があの日話したAクラスの欠点は覚えていますか?」
「あぁ、覚えているな」
竜崎という個が全てを熟しているワンマンチーム。
結束力が強みだがそれだけ。一之瀬と神崎、姫野が実力を伸ばしているが他クラスと比べれば駒が足りない…これの事だろう。
「それで竜崎くんならどうするかを考えたんです」
「竜崎なら?」
「はい、彼はこの状況を良くは思わないでしょう。現状ではAクラスを保てていますが、それも絶対ではない。現に選抜種目試験では負けてしまいましたから」
あの日、オレとひよりは竜崎と坂柳に勝てたがあれはマグレだ。
次戦えば負ける、それぐらいの運が要る勝利だった。しかし、あの勝負が実現したのはそれまでに6勝6敗という状況を作れたからに過ぎない。
「なら竜崎くんはこう考えるはずです。手駒を増やす、他クラスとの同盟が必要だと」
「なるほどな…、一考の余地は、あるか」
使える手札が多ければ、取れる手段も増える。
それらの関係性は良く理解出来た。
「ちょっと良い?」
しかし、そこに伊吹が待ったを掛けた。
「なんですか、伊吹さん?」
「確かに理屈としては分かるけど坂柳が認めるとは思えない。だってアイツはそんな負けを認める真似しないでしょ」
確かに竜崎やBクラスの大半の生徒からすれば利益がある取引なのだろう。
しかし、それはあくまでもAクラスでの卒業に拘りがある者だけ。つまり坂柳のような勝利よりも面白さを優先する人間には通用しない話だ。
「その為に竜崎くんは手を伸ばしていたんです。橋本くんという側近を退学させた冷酷なリーダー、そんなレッテルが貼られている人の言葉に誰が従いますか?次は自分の番、そう考える人が出てもおかしくないと思います」
「ま、それはそうね」
独りよがりでは誰も付いてこない。選抜種目試験でも負けてしまった以上、坂柳派は相当苦しい状況だと言える。
「だから私たちも対抗手段として、一時同盟を結びましょう。期限は竜崎くんとBクラスの同盟が決裂するまで、いかがでしょうか?」
「まぁ、オレからすればありがたい話だから良いが…龍園は了承するのか?」
オレとしてはあの男が納得するとは思えない話だった。
その言葉に石崎と伊吹も首を縦に振って同意する…そんな中で扉が開いた。
「よう、おまえら。なんだ、真剣なツラして…折角勝ったっていうのに真面目だな?」
笑いながら入ってきた男、龍園翔。
そしてその勢いのまま空いたソファに腰を下ろし、石崎に飲み物を注文させた。
「で、綾小路もちゃんと来たんだな。鈴音が居なくて大丈夫か?」
伊吹と石崎はコイツの姿に身を強張らせていた。来るとは思わなかったのだろう。
しかし、龍園はそこまで無責任ではない。来ないと言いながら来たのも怒りを誘発させるなんて理由に違いない。
「アイツをもう使う必要は無いからな」
「そうかよ、化けの皮を被る必要も無いって事か」
龍園は店員が持ってきた飲み物をぐっと飲み干し、ひよりに顔を向ける。
「ひより、どこまで話した?」
「同盟を結ぶ理由についてまでですね」
「そうか、俺としては手を組みたくはねぇ。仲間になるより敵としてお前を潰す方が楽しそうだからな」
そうなのか?とオレが言うと龍園は笑いつつも、睨んできた。
「俺の心が訴えてくるんだよ…おまえを食らえってな?」
それに関してはオレも同じだった。
同盟というのはAクラスへの近道であり、それと同時に温いことだ。
坂柳や一之瀬、堀北と戦い勝ち上がれば龍園もオレを楽しませてくれる存在になる事は想像に難い。
「ならなんで同盟をやるんだ?それならさっきまでの話の意味が分からなくなるぞ」
「テメェと戦うのも確かに良いが、本命は竜崎だ。それは綾小路も同じだろ?」
「それは…そうだな」
龍園にも勝つ可能性はある…だが、竜崎には届かないだろう。
手段を選ばないで勝つ、それだけなら誰にもでも出来る。それでも竜崎は、正攻法に拘ったままAクラスを守った。
──だからこそ、今の龍園では勝てない。
「おまえはそのままで勝てると思ってるのか?上手く成長した方が良いんじゃないか」
「…んな事は俺でも分かってるんだよ。教師みたいに講釈垂れてるんじゃねぇよ」
「そうか、忠告を聞くか聞かないかは自由だ。だが──そのままのおまえでは再戦する前に潰れるぞ」
その言葉に内心で腹を立てつつも、龍園は言い返してこなかった。
コイツもこの1年で竜崎に良いように扱われたことが効いているらしい。今後、龍園の考え出す戦略は磨きがかっているに違いないだろう。
「ま、私としても不服だけど、一方的に嬲られるのは嫌。だから仕方なく組むって話よ」
伊吹が逸れた話を戻すように言葉を吐いた。
「…分かった、ただオレの一存で決めれないぞ」
「いいや、決めれるな」
それに、仕返しと謂わんばかりに龍園が突っかかってきた。
オレへの怒りを滲ませつつも、嘲笑うような視線を向けてくる。
「テメェがCクラスの裏のリーダーであることはもう割れてる…そこのひよりによってな?」
「……」
オレがひよりをじっと見つめても、嬉しそうに笑うだけだった。
「…まぁ、それは良い。どうせ誤魔化しても通じなそうだ」
「あぁ、ひよりの目は確かだからな。それはお前も良く分かってる事だろ」
目の前に居る少女はオレとは全く違う人生を送ってきた、本来なら似ても似つかない存在。
しかし、根本的な考え方や思想など、どこか似ている部分があった。だからこそ、ひよりとオレは思考を合わせる事もある程度なら出来る。
そんな人間の推理は、龍園ですら無視できなかった、それだけの話だ。
「分かった、取り敢えず条件を詰めよう。それから櫛田や堀北にオレから話を通す」
「クク、呑み込みが早いな」
櫛田に関してはスムーズに話が進むだろうが、堀北に関しては不明だ。兄貴との確執がどうなるか次第で変わるといったところだろう。
「だが、今日は折角カラオケルームを借りたんだ…伊吹歌ってくれ」
しかし、折角カラオケというものに来たのだから人が歌っている姿というものを見たい。この中でなんだかんだ頼めばやってくれそうな伊吹に視線を向けた。
「それは良いですねっ。私も伊吹さんのお歌、聞きたいと思ってたんです」
オレの悪ふざけに乗るようにひよりは目を細め、両手を軽く合わせた。
「あんたら…」
「伊吹も可哀そうだな、俺も楽しませてもらうぜ」
そう石崎が伊吹を可哀想なものを見る目で眺めていたが、それを許すオレでは無かった。
「いや、何言ってるんだ石崎?お前も歌うんだぞ」
「え、まじでか」
オレがゆっくり頷くと、石崎は項垂れつつもリモコンを操作し始めた。
だからこそ、その言葉はオレにとって意外なものだった。
「あ、じゃあ綾小路。一つ良いか?」
「ん?」
「Aクラスに上がるための最強の方法があるんだよ、聞きたいか?」
オレが頷くと、石崎は胸を力強く叩いた。
「おまえが俺のクラスに来るんだよ。そしたら竜崎にだって勝てるかもしれないだろ?」
その言葉に何度か瞬きをした後、伊吹がバカにしたように言葉を投げかける。
「はぁ?あんたさっきの話聞いてなかったわけ?コイツらは組むより戦いたいって…」
「クク、そうだな。だが、一つの手ではある。なに、同じクラスになっても勝負は出来るんだからな」
しかし龍園と手を組むか……
「悪い気はしないな」
「あんた、本気?」
気持ち悪いものを見る眼でこちらを見る伊吹。
「だろだろ?仲間になるんだったら歓迎するからよ。綾小路と龍園さんが組んだら100人引きだし、相性もいいと思うんだ」
「それを言うなら百人力でしょ?あんたわざとやってるわけ?」
「え、痛!?てめ、伊吹…足蹴るな!!」
その言葉にオレは返事をしない。どちらにしろ、すぐには実現しないからだ。
クラスを移動するためには2000万ポイントが必要、いくら龍園でもそこまでは溜められていないだろう。
「取り敢えず、時間が迫ってる。早く歌わないとポイントが無駄になるぞ」
「分かった……、つかこっちじろじろ見んな、キモイ」
その鋭い刃に言葉を詰まらせたオレを気にすることなく、伊吹は選曲を始めた。
「ふふっ、綾小路くんってそんな顔も出来るんですね?」
ひよりの呟いた声がカラオケルームに寂しく響いた。
───────────────────────────────
3月31日。
オレにとっても特別な1日がやって来た。
この日は堀北学が旅立つ日だ。
いつものように早めに行動し、正門前へ到着する。
そして予定の時刻の20分前に、堀北兄が姿を見せた。
「生憎と妹の方が来ていないぞ」
「そうらしいな」
堀北はまだ現れない、つまり2人で何かを話す必要がある。ただ沈黙で時間を過ごす事は勿体ないからだ。
「あんたは竜崎の事をどう思うんだ」
オレが口に出した言葉はここには居ないアイツの事だった。
その言葉を受け、堀北兄は少しだけ考えるように目を伏せる。
「竜崎は──俺を変えた男だ」
その言葉の続きをオレは黙って待った。
「模範に縛られていた俺にアイツは多くの選択肢を見せてみた。それは入学時に話した『正攻法で勝つ』という約束を律儀に守っているからだ」
確かに混合合宿でも似たようなことを言っていたな。
「竜崎は勝つことだけを目標にしていない。アイツにとってどう勝つかも同じくらいに重要なんだろう。つまり、手段を制限した状態でAクラスを余裕で守り切ったあの男は……俺の更に上を行っているわけだ」
一度、堀北兄は空を見上げた。
今日は旅立ちに相応しい、快晴だった。
「だから俺は竜崎を信用している」
それはこの男なりの、親愛の形に感じた。
…やがて堀北兄は、携帯を取り出し、画面をこちらに向ける。
「この2つの電話番号を覚えておいてくれ。一つは俺のもので、もう一つは橘のものだ。卒業後に何かあればいつでも相談に乗ろう」
オレはその電話番号を頭に入れながら頷いた。
「卒業する俺からお前に頼んでおく──もしもの事があれば、竜崎を止めてくれ」
「止める?具体的にはなんだ」
その質問に、堀北兄は珍しく答えに迷っていた。
「……分からない、これだけは俺にも分からないんだ。
だが、アイツは何かをしようとしている気がする。竜崎には取り返しのつかないことをしかねない、危うさがある」
「分かった、覚えておく」
そして堀北兄はオレを真っすぐに見た。
「…その上でお前は周囲の記憶に残る人間になれ」
「記憶に残る?…それに何の関係性があるんだ」
「おまえには妹と同じになって欲しくない。巨大な強さを秘めているからこそ、その程度で終わる男では無いだろう。
お前も何かを残すためにこの学校に来たんじゃないのか。ならその為に最大限の努力はすべきだろう」
「それはあんたのような人にしか出来ないんじゃないのか」
そう否定したが、堀北兄は納得した様子を見せなかった。
「もし何を残すか悩んでいるのなら、それはお前自身が正しいと思ってたことでいい。それでも綾小路清隆という生徒がいたという事を、刻まれた生徒たちは忘れる事はないだろう。そしてそれは竜崎を止めるという事にも繋がる」
オレはその言葉の意味が一瞬分からなかった。
「竜崎はきっと俺を…いやこの学校を遊戯だと思っているのだろう。卒業後、煙のように消えてしまいそうなそんな予感がしてならない」
確かに竜崎はオレ達を見ていて、どこか遠くを見ている気がした。
それを堀北兄も感じていたのだろう。
「だからこそ、あの男にもおまえという存在を刻んでやれ」
生徒会長、いや竜崎の友としての激励だった。
「…なるほどな。ただそれ以前に2年や3年の途中で退学するかもしれないけどな」
「おまえが3年を待たずして退学する運命になったとしても、記憶に残すことは出来る。3年間を振り返った時、綾小路清隆が居て良かったと1人でも多くの生徒に思わせることが出来れば、それは成し遂げたのと同義だろう」
改めて言われ、オレの心の中に言葉がしみこんでいくのを感じた。
「…よく考えてみる」
それが今のオレに答えられる精一杯の回答だった。
「それでいい。答えは俺では無く、お前が導き出すものだ綾小路」
この世は成長する材料で溢れている。どこにでも己を高める為のヒントは落ちていて、堀北兄と対峙する今も、そして竜崎と話している間もそうだった。
今までも全力を出してはきたが、それに目的は無かった。ただ、期待に応えただけ…それで満足だった。だが、それは答えでは無かったのかもしれない。この学校に来たことに意味、その通りだ。
「最後に妙に説教染みた話をしたな、許せ」
「いや後輩として先輩から最高の贈り物をしてもらった」
「ふっ……お互いにらしくない一面を見せたな」
正門まであと数メートル。
12時10分を過ぎても堀北妹が現れることは無かった。
来るはずだった妹の不在は、誰にも予想できなかっただろう。確かに情けない姿を見せた、兄妹の仲も拗れてしまった。だが、それを壊すために何年も苦しみ続けていた筈だ。
そして──最後に堀北兄はオレへ向き合う。
「一方的になるが、鈴音を任せた」
その言葉を受け、堀北兄はオレへと右手を差し伸べた。
それをオレは掴もうと手を伸ばした───
「兄さん───!!」
オレの後ろから叫ぶ声。
それが誰の声であるかなど、この状況では疑問にすらならない。
兄貴が振り返った時、その瞳に初めて見る驚きが強く映されていた。
妹が来たことがそんなにも意外なのもあるが、それだけじゃなかった。
驚いた真の理由はオレにも分かる。
「おまえ…」
予定の時刻を過ぎ、焦って走ってきたであろう堀北が息を切らせてオレに並ぶ。
そして呼吸を整えながら兄の下へと一歩近づいた。
「遅くなってしまって、すみませんでした・・・・・!」
そう頭を下げ謝罪する。
どうして遅れてしまったのか、その理由は答えるまでもない。
昨日の堀北と今日の堀北には大きな違いがあったからだ。
これこそがこの学校に入学して、堀北兄がすぐに妹が成長していないことを見抜いた理由なのだろう。
「変われた…いや訂正しよう。昔のおまえに戻れたんだな、鈴音」
それは始まりではなく、原点回帰だった。
「1年…いいえ、何年もかかっていました。どうしてもっと早く自分を取り戻せなかったのか…悔やんでも悔やみきれません」
一歩、堀北は自分から兄の下へと距離を詰めた。
「今何を考えている」
「…正直、まだ混乱している部分が無いと言えば嘘になります」
言葉が上手く続かず、戸惑う堀北。
その様子を穏やかな眼で見つめながら、堀北兄は言葉が紡がれるのを待つ。
「ですが、これだけはハッキリ言えます。私は…ずっと兄さんの影だけを追い続けてきました。だけど、そんな私は、もうここにはいません」
兄のことだけを想い、兄のためだけに生きてきた堀北鈴音。
勉強もスポーツも、全ては自身の兄に認めてもらうため。
「なら問おう。俺の背中を追うことをやめたおまえは、これからどうしていくのかを」
兄からの問いかけ。
堀北は呼吸を整え、更に言葉を紡ぐ。
「もう、誰かの背中を追うのはコリゴリですから。私は私だけの道を探します」
堀北はやっと周囲を見渡せるようになったばかり。
だからそれを示せただけでも、兄にとっては十分な贈り物だったはずだ。
「私は、これからクラスメイトのために自らが前を歩いて行けたらと思っています。
自分の道を見つけるために、この学校で仲間と共に学んでいきます」
「そうか、分かった。なら──」
「待ってください、まだ話は終わっていません」
堀北兄の言葉を止めて、堀北鈴音はなにかを言うつもりのようだ。
長くとも短い、無言の時間の後。堀北はまっすぐと視線を向けて、そう宣言した。
「そして──その上で竜崎くんを超えます」
「超える…だと?」
「はい。私は、竜崎くんの事を良く知りません。それはでも私のせいなんです、彼を一方的に敵視して、何も見えていなかった」
「私は、兄さんを変えた彼を。兄さんですら超えられなかった彼を。超えてみたい、そう思ったんです」
「確かに無理かもしれません…、私も兄さんに超えた彼を簡単に勝てるなんて驕ってはいないつもりです」
「でも、超えると思う事に意味はある気がするんです」
1年前に堀北と出会った時、ここまでの成長を遂げるとは思っていなかった。
人よりも秀でた、ちょっと生意気な優等生。単なる席が近いだけの隣人。
良くも悪くも個の能力しかない、そんなイメージだった。
「そうか。やっと、本当に俺の記憶の片隅に残っていた、昔のおまえに…それ以上の存在になれたのか」
そんなオレとは違い、堀北学には見えていたのかもしれない。
妹の持つポテンシャルを誰よりも知っていて、信じていた者なのだから。
「……俺がおまえを突き放した一番の理由が何だか分かるか?」
「…いえ」
恐らく堀北は兄貴の気持ちまではよく分かっていない。
どうして堀北兄が妹を拒絶するようになったのか、厳しく突き放すようになったのか。
「俺はおまえのことを大切に思っている。
そして、幼いおまえに大きな才能を感じていた。俺を超えるだけの力を身に着けてくれるような期待を抱いていたんだ」
最後の一歩を、堀北兄が詰める。
もはや少し腕を上げるだけで触れられる距離。
「だが、そんなおまえは俺という幻影に囚われた。俺に劣っていると決めつけ、そして追い抜くことは不可能だと諦め、俺の背中に追いつくことを目標として選んでしまった。そのことが、どうしても俺は許せなかったんだ」
兄貴の影を追いかけ、その横に並びたいと思うこと。
確かにそれは悪いことじゃない。ある種立派な目標ともいえる。
だが、言い換えれば兄貴に並んだ時点がゴールになる。
兄に追いつくことを終着とする妹と、追い抜きその先へ進んでほしい兄の葛藤。
それがこの兄妹に大きな隔たりを生んでしまったのだろう。
「他者に強くあれ。そして優しくあれ」
兄は優しく、妹を抱き寄せる。
立っているだけで精いっぱいな堀北を、兄として力強く抱きしめる。
「短く切られた』堀北の髪が揺れる。
「おまえはもう大丈夫だ。俺は、それを今確言した」
もはや、オレが何かを言うことはない。
何も言ってはいけない空間がそこにはある。堀北は自分に出来る精いっぱいの笑みを浮かべ兄に向ける。
そして、それを受け堀北兄もまた今まで見た事の無い柔らかい笑顔を見せた。
「鈴音。2年後、俺は正門の外でおまえを待っている。成長したおまえを見せてもらう」
「はい。精一杯──最後の最後まで戦い抜いてきます」
もはや堀北の成長を妨げるものは、全て取り除かれた。
ここから先、堀北は前を向いてどこまでも走り続けるだけだ。
「綾小路、おまえとも会えることを楽しみにしている。そして竜崎を頼んだ」
「…分かった」
堀北兄はオレの返事を聞いて、深く頷くと時計を見た。
「──そろそろ時間だ」
12時半が近づいている。
気がつけば、バスがやって来るであろう時間が目前に迫っていた。
名残惜しそうにしながらも、両者がゆっくりと距離を取る。
「また会おう」
そう言い残し、堀北兄は正門をくぐる。
こうして、去って行く1人の男。
堀北はその背中を、まっすぐに見つめ、瞬きすら惜しむように見つめ続けた。
堀北学は妹共々、オレにも道しるべを残してくれた気がした。
***
正門から兄の背中が見えなくなった後。
少しの対話を済ました堀北は別れの言葉を残し、寮へと戻って行った。
最後の最後で堀北学は、大きな財産を堀北に残して行った。大きく手助けしなければ成長しないと思っていた堀北だが、それはオレの見立て違いに終わったからだ。
──堀北鈴音は、もう大丈夫だろう。
卒業までの2年で、アイツはもっと大きく成長できる。
それよりもオレは……学から贈られた言葉が、ずっと引っかかり続けている。
生徒たちの記憶に残る生徒になれ、そして竜崎を止めろ。
「とんでもない置き土産をされたもんだ……」
記憶に残る生徒になるために……オレが正しいと思うこと。
──それは生徒たちを育成し、成長させることにあるんじゃないだろうか。
竜崎が成長させた生徒とオレの生徒を競わせ、より高みを目指させる。
その未来を想像すると……ワクワクするとでも表現すればいいのだろうか、どこか楽しそうだなと思えてくる。純粋に戦って勝つよりもそちらの方が楽しそうだった。
「オレの心はきっと成長している」
それは竜崎のお陰でもあるし、アイツが居なければ出来ない事も多くあった。
だからこそ、オレはアイツを止めなければならない。
竜崎は生徒を守ろうとしている。
だが、それによって他人の可能性を奪う危険性がある。
そしてこの楽しい戦いが実現しなくなるのなら……友人として、そしてライバルとして──止め、オレを刻む。
だからこそオレは──
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竜崎正の独白。
昼過ぎのケヤキモール近く。
人はまばらには見えるが多くは無い。そんな中で彼女は空を眺めていた。
今、何を想い…何を感じているのか。それは想像できる。
「こんにちは、一之瀬さん」
「…竜崎くん」
そんな彼女は一瞬だけ視線をこちらに向けると、再び空を見始めた。
空は今日は少し曇りで見ていても何も変わらないというのに眺める、感傷に浸りたい気分なのだろう。
「どうしました、こんなところで」
「んー、何でもない…キミはその言葉を信じるかな」
「いえ、無理ですね」
私が即答すると、彼女は少しだけ肩の力を抜いたのか雰囲気が和らいだ。
「ははっ、キミは変わらないね?」
空を見るのを止め、彼女は私の方へ近づいてくる。
私服姿からか、あの雨降った日とは違う空気がした。
「ごめんね、竜崎くん。折角リーダー任せて貰ったのにダメな姿見せて」
「そうですか、でも頑張ったと思いますよ」
選抜種目試験で負けた事を気にしているようだが、それは要らぬ心配と言える。
あくまでもあれは私の力不足、彼女が自分を責める必要は無かった。
「それでも、私は気にするんだよ」
彼女と私の距離がより近づく。
「私はBクラスに配属されて、勝ちを確信してた。自惚れかもしれないけどとてもいい仲間に恵まれたと思った。その気持ちは今でも変わってないよ」
再確認するように、そう話す一之瀬帆波。
「そして私もその一員として頑張った。でも竜崎くんには追い付けなかった。それぐらいキミの背中は遠い場所に行ってる」
めきめきと頭角を現す周囲と違い、彼女は一歩で遅れている。それを感じても折れない。ただ自分の無力さを噛みしめている。
「あのね…私は今、誰よりも竜崎くんを信頼して──そして疑ってるんだ」
矛盾している言葉だった。
しかし、彼女の成長の結果であった。
「疑うですか?それは何故」
「キミはずっと違う部分を見ている気がする。なにか物足りなさそうな、そんな表情を浮かべている気がするんだ」
一之瀬帆波は、私の目の奥を見抜くような視線を向けてきた。
「いえ、それは無いです。私はこの学校を楽しんでいますよ」
私の言葉に彼女は納得していなかった、だがそれは構わない事だ。
この後に続く台詞こそが本命なのだから。
「来年、私は試験にほとんど参加するつもりが無いんです」
『ホワイトルーム』
綾小路清隆を中心とし、この学校は策略まみれる空間となるだろう。
そして、それで生徒に被害が出る事も出てくるだろう。
私は、それを食い止めなければならない。止めなければ、私の正義と相反してしまう。
「それは一之瀬さんが成長したからでもあり、私の個人的な都合でもあります」
それに、私が関わらなくとも彼女は1人で戦える気がした。
ホワイトルームの刺客が特に動かなければ、試験にも参加できるだろうが難しいだろう。
裏から手助けぐらいはするつもりなので、それを生かすも潰すも彼女次第…といったところか。
「なので、クラスの事は任せました。貴女には貴女の役目があり、それは私も同じです」
自らの正義を、私は信じているのだから。
彼女はその言葉を受け、潤んだ瞳で私を捉えた。聞いていた時に振るえていた身体はいつのまにか落ち着いていて、いつの日か見た覚悟を決めているようにも見えた。
「そっか、なら一つ約束して欲しいな」
「約束、ですか?」
私の言葉に彼女は頷いた。
「うん、1年後の今日。またこうして2人で会いたいの」
そして目を閉じ、胸に手を当てた。
「これから私は竜崎くんに託されたクラスの皆と一緒に突き進む。その過程で、もしかしたら負けるかもしれない。沢山後悔するかもしれない」
開いた瞳には燃え盛る炎のような熱が戻っていた。
いや、戻るでは無いな。最初から灯っていて、私との確認作業でより温度が上がったのだろう。
「でも、それでも……私は全力で戦うよ。もう立ち止まる事は嫌なんだ、だから前を向き続けるの」
お互いが生き残っていれば、この約束は果たされるという事だろう。
一之瀬帆波が率いるAクラスの行く末は私にとっては未知だった。
仲間と戦い抜く、それが彼女にとっての強みで…私たちのクラスの武器だった。
だからこそ、それは現実が見えている証であり大いに期待できる一歩であった。
「それが正しくなくてもですか?」
「正しいかどうかは私が決めるんだ、竜崎くんもそうでしょ?」
一之瀬が笑いながら、そう言った。随分と私への理解を深めているらしい。
「…そうですね。私には私なりの正義があるように貴女にもあるんでしょう」
だから、もう言葉は要らなかった。
「分かりました。1年後、貴女がどう成長しているのか楽しみにしていますね」
そう言い残し、私は一之瀬帆波に背を向けた。
彼女にはこの1年いい意味で期待をし続けていたのだから、興味深い話だった。
いつの日か彼女が私の想定を超えるところまで行けたなら、それは面白い。
そして綾小路清隆は私と同じく成長を促している事だろう。
彼は堀北学と触れ合い、自分の目的を設定する。
それを私は嬉しいと思うと同時に、怖く思う。
私の初めての友達。
『全力で知性と感情をぶつけ合える相手』、対等な人間。
しかし方法を選ばない。勝つためには何をしても良いという思想がある。
それがより悪化すれば、私の正義に触れるだろう。
綾小路清隆が道を逸れては困る。彼は───のだから。
だからこそ私は──
竜崎と、綾小路は今お互いに空を見ている。
1人で、だが同じ空を見ている。
綾小路清隆は思う…竜崎正は間違っているわけじゃない。
あいつにはあいつの正しさがある。
竜崎正は思う…綾小路清隆は間違っているわけではない。
あの人間にも、あの人間なりの正しさがある。
互いに相手を否定することはない。ただ、譲るつもりもない。
二人は、同じ空の下で誓う。
だからこそ──
「「必ずおまえを、止める」」
「オレが」「私が」
「「正義だ!!」」
1年生編、完。
1年生編、これにて完結です。
2年生編もやります、少し時間が掛かりそうですが。
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ここまで読んでくださった皆様には、改めて深い感謝を申し上げます。
約2ヶ月間お付き合いいただき、本当にありがとうございました。
それでは、2年生編でお会いしましょう。