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『高度育成高等学校』
多種多様な個性を持った生徒たちに集団で生活をさせ、クラス単位で競わせるという異質な特徴を持っている箱庭。人材育成の政策の一つとして誕生した高校で、全国から様々な生徒を集め、世界に通用する人材を作り出す場所。
成績が全てではない。学力が秀でていても身体能力は低い生徒。人当たりは良くても、それ以外には取り得が無い生徒。それらをまとめて育成させる。
そして、この学校の生徒達が何故競うのか?
それはAクラスに在籍した状態で卒業を迎えることにある。勝ち抜いた生徒は望みのままに、進学や就職を叶えられるからだ。一流企業、難関大学、それらに入る事が確約される。
だが、楽観視は出来ない……実力が伴わなければその末路は悲惨なものになりかねないからだ。
去年までの学校はそんな夢の切符を、誰もが得ることは出来なかった。
最初に入るクラスだけで全てが決まる、運が勝利に繋がる仕組みだった。
私はそれを疑問視する、最初の条件だけで結果が固定されるのであれば、競争として成立しないからだ。
この学校は卒業するまでの3年間、生徒は外部と連絡が取れなくなる。そしてそれを回避する方法は、退学…しかなかった。私も去年まではそうだった。この学校の中で何が行われているのか、私は外部から把握することしかできなかった。
「『L』…これを」
外部との連絡を取れる通信機器を受け取ったからだ。
あの日、堀北学は私が託した通り、行動をしてくれたらしい。春休みに来賓として潜入してくれたワタリから受け取った機器を使い、色々と情報を集めていた。
『ホワイトルーム』
世間から隠された極秘施設。そこは乳幼児の段階から徹底した英才教育を施し、天才を作り出す目的を持っている。
つまり、そこで育ち最高傑作と呼ばれる綾小路清隆は人工の天才だ…ということ。
彼は卒業後、連れ戻される危険性があると私に教えた。そしてその刺客が送られてくると月城から言われたと。月城が態々それをバラしたのも、私たちへの挑戦だろう。綾小路清隆が私に告げ口する事を考えていない筈が無いからだ。
今年、私は綾小路清隆と友人になった事を活かす気はない。
「清隆くん。貴方がどんな形で勝利しようとしているのか…私は見たい」
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長かったようで短い春休みが終わりついに始業式の日になった。
私は高校2年生となった。現在私たちのクラスはAクラスではあるが、他クラスとクラスポイントでの大きな差はない。
だが、それでもAクラスではある。
登校した私は教室の雰囲気を見て、彼らの様子に落胆した。最後の特別試験で負けて、反省をしていたのは少数で、ほとんどの生徒に、前回の敗北を踏まえた変化が見られない。春休みが明けたばかり…そんな言い訳も出来るがこの気の抜け方は違うだろう。
それよりもやるべき事を済ますべきだ。
大きなモニターには『1年と同じ席について待つこと』と表示されていた。
それに従い、去年までと同じ席に腰を下ろす。
「竜崎、おはよう」
「神崎くん、どうも」
そんな私に声を掛けてきたのはクラスメイトの神崎隆二。
運動、学力ともに優秀で短所は現実主義すぎる…部分だった。しかし、それも変わり彼はクラスに積極的に関わる姿勢を持ち、不器用ながらもクラスを引っ張ろうとしている。
「この前行った映画の続編が発表されたらしいぞ」
「そうなんですか?なら上映された時、一緒に行きましょうね」
「そうだな…、姫野も誘うか?」
「本人に聞いてみないと分かりませんが、3人で行くのも楽しそうですね」
そうやって2人で話していると…
「……私は別にいいけど。ま、行くんならあとで予定決めよ」
いつの間にか、会話に別の声が混ざっていた。その人物は長い髪をツインテールに結んだ女子生徒。
「おはよ、竜崎くん」
姫野ユキ。
学力以外は目立った特徴が無く、平凡という評価を覆せなかった。そして彼女も変わりかけている…運動は難しいにしろ、交流関係を広げ、好きでもないクラスメイトと関わるようになってきた。
「姫野さんは前作をあまり評価していませんでしたよね?」
「……覚えてるの?」
「もちろん覚えていますよ」
「あっそ、別に好きじゃないってだけだし。あと、あんたって無自覚でそれ言ってるのホントウザい」
いつも通りのテンションで、軽く首元を摩りながら姫野はそう言ったが…違和感があった。
そしてそれは隣に居た神崎隆二も同じだったのか、私に目配せして口を開く。
「もしかして…体調が悪いのか?」
それが図星だったのか、僅かにばつの悪そうな顔をして目を逸らす。
「ん、違うし。頭痛がするだけ、片頭痛持ちなんだよね…」
それが強がりであることは明白だったが、神崎隆二は仕方なさげに肩を竦めた。
「…無理はするなよ」
「分かってるって。あんたもおせっかいになったんじゃない?」
「そうか?」
「絶対そう、良い意味で別人って感じ」
その様子を見て、私はふと口を挟みたくなった。
「2人とも随分自然に会話出来るようになったんですね」
もう少しギクシャクしている印象があったが、そんな感じもなかった。
「いや、自然という言葉は曖昧ですね。私は今でも2人の距離が自然なのか、単に慣れただけなのか判断できませんから」
以前とは違う、その変化が互いを近づけた可能性はある。
……あるいは、単に私がそう見ているだけかもしれない。私を除けば唯一と言っても良いクラスの現状を理解している友人なのも、それを加速させていそうだ。
浜口哲也という生徒も最近になって、この輪に加わり始めたが、今はまだ関係性は浅い。
「竜崎、それは本人に言うことなのか?お前はそういうところが少しずれているよな」
「ですが、神崎くんは嬉しそうですね。口元が普段より、5度ほど緩んでいます」
「そんなところに気が付くのか…?」
「はい、人間ですから」
「そういうところが嫌なんだよね、あんた」
姫野ユキが呆れたように、腰に手を当てため息を吐いた。
「そういえば、姫野さん…片頭痛の原因って寝不足では?」
「え…?なに」
「いつもより声に抑揚が無いのもそうですが、会話のレスポンスが数秒遅いです」
「キモいし、なんでそんなとこから気づくの……でも寝てないけど、眠いわけじゃない。これぐらい慣れてるし」
「そうなんですか、お揃いですね。私も睡眠時間は少なくても良いんです。以前は102時間起きて17時間ほど睡眠を取る生活を送ってました」
「…竜崎、それは本当か?普通じゃないぞ」
私の言葉を疑問視したのだろう、神崎隆二が怪訝そうな目線を私に向けた。
「普通とは何でしょう?因みに神崎くんの反応は『普通』なんですか?あと、先程の話は嘘ですよ」
「……お前だけには普通を語られたくはない、そして嘘をつくな」
「いや、神崎くんそれ本当だと思うけど。この前、深夜に連絡した時は普通に既読ついてたし」
姫野ユキは弄っていた携帯を指差しながらそう言った。確かに、私はある程度睡眠を制限している。それにより、連絡が来れば目をすぐに通す事が習慣になっていた。
「流石ですね、姫野さん。素晴らしい記憶力をお持ちで」
「っざい…思っても無い事言われても、うっとうしいだけだし」
「では、本当に褒めていると言ったら?」
「それはそれでだるくてキモイ」
悪びれも無く、私を貶す彼女に神崎隆二は呆れているようだったが、姫野ユキの怖い物知らずな性格は、少なくとも私にとっては都合が良い。だからこそ、私は彼女のこの態度を特に諫める気も、止める気も無かった。
なによりこのやり取りも、去年なら成立していなかったのだから。
……私はそんなことを考えながら、ふと教室を見渡した。
「それよりあの人が居ないようですが…休みですか?」
あの人──今では、このクラスのリーダーとなった彼女の姿が見えない。
仮病をするような性格ではない為、休みならば病気だということになる。
「あ、確かに。でも、休みじゃないし…気にする必要ある?」
「休みじゃない?なんで姫野が断言できるんだ」
神崎隆二がふと疑問に思ったのかそう呟く。
「普通に連絡先交換して話してるだけ。同性同士だし、あんた達に話せない事話せるから」
昨年なら考えにくい組み合わせ、人間関係というものは不思議だ。
好きではない人間と、表面上でも付き合うこともできるらしい。
仮に面倒になっても私や神崎隆二の名前を出せば、逃げる口実が作れるというのも大きそうだ。
「おっはよー!!」
そんな風に雑談をしていると、元気のある声が教室に響いた。
その声にクラスの殆どが反応し、集まっていく。
その人物──それはこのクラスで最も人望の厚い一之瀬帆波だ。
「帆波ちゃん、今年も宜しくね!!」
「うん、こちらこそっ」
一之瀬帆波は、それに笑顔で答えたが…相手が離れた瞬間、ほんの一瞬だけ表情が崩れた。
以前の一之瀬なら、もっと無邪気に笑っていただろう。
今の彼女も笑っているが……その笑顔には以前にはなかった僅かな警戒が混じっていた
「おはよ、3人とも。久しぶり…かな?」
そしてクラスメイトと一通り挨拶をした後、彼女は私たちの方へ近寄ってきた。
「久しぶりって言っても、1週間前に会ったけど」
「あはは、確かにっ。でも、なんだかこうして教室で会うと久しぶりな感覚になるんだよねー」
一之瀬帆波は軽く頬を掻きながら、話を続ける。
「それにしても相変わらず、クラスは平和だね」
そう言って彼女は笑った。そしてその言葉に含まれる真意に気付いた神崎、姫野の2人は気まずそうに顔を顰める…今彼女の変化に気づけているのはそれぐらい少ない。
一之瀬帆波を中心に考え、信頼し、妄信する。信頼しているというより、信頼したいという側面が強そうだが、結果は変わらない。
だが、信頼しても妄信は問題になりかねない。彼女は人間であり、間違うこともある。
現状のままなら、一之瀬帆波が明確な失敗をしたとしても支持する生徒は80%を下回らない。
「取り敢えず、また、1年よろしくね?そろそろ始業式始まっちゃうし、体育館にいこっか?」
私たちはその言葉に頷き、教室を出た。
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体育館へ向かうと、既に多くの生徒が集まっていた。
2年生、そして3年生。新入生の姿はこの場には無い。彼らとは別日行われる入学式が終わった後、顔合わせる事になるだろう。
しかし、そんな3年生の中にもデーター上でしか知らない生徒が居る。それも当然だ。去年までは、他学年の生徒と関わる機会そのものがほとんど存在しなかったのだから。
去年までは同じ学校に通っていながら、学年という壁によって明確に隔てられていた生徒たちが、今は同じ空間に集められている。
だからこそ、私は指定された席に座り周囲を見渡した。
「竜崎くん」
不意に、背後から名前を呼ばれた。
振り返るとそこに立っていたのは、月城理事長代理だった。
「少し、こちらへ。始業式が始まる前に、頼みたい事があります」
月城に案内され、体育館の端まで移動する。
周囲から何人かの視線を感じたが、特に気にする必要はない。
「今年から、学校の制度がいくつか変わります。なので、始業式の場で、全校生徒に挨拶をしてもらいたい」
「理由を伺っても?」
「君は去年一年間で、かなり目立ちましたから」
月城は細目のままに、私を観察するように視線を動かした。
「今年からは他学年との交流も増える。新しい制度によって、生徒同士の関係も大きく変化するでしょう。その最初の場で、君の言葉をもらいたいんです」
「学校側の広告塔というわけですか?」
「そういう捉え方でも構いません」
随分と正直な回答だったが、断る理由はないため返答として私は頷いた。
「ただし一つ条件があります。私が何を話すかについては、口を出さないでください」
月城は一瞬だけ黙った後、笑った。
「もちろんです」
今年から、この学校では多くのものが変わる。
学年の壁、去年までなら決して交わることのなかった人間たちが同じ場所で競い合うことになる。
そう考えていると、時間になったのか始業式の開始を告げる放送が流れた。
壇上には月城が立ち、マイクを手にしているところだった。
「それでは、これより始業式を始めます」
月城の声が体育館全体に響く。
簡単な挨拶と今年度から理事が変わった経緯、そしてこの学校の理念についての説明を終えると、月城は一度だけ生徒たちを見渡した。
「さて……始業式ですから、まずは生徒の中から1人。代表として皆さんに挨拶をしてもらいましょう──では、どうぞこちらへ」
体育館が少しざわつきだしたが、私は気にせず席を立ち、そして壇上へ向かう。
何人かの視線がこちらに向けられる。驚いている者、興味深そうに見ている者…そして、既に私を知っている者。その中には面白そうにこちらを見る南雲雅の姿もあった。彼からすれば、私と戦えるようになったのが相当に嬉しいらしい。
「こんにちは、皆さん──私の名前は竜崎正。
知らない人も居ると思いますから一応挨拶をしておきます」
私は、念のため持っていた白紙を広げつつ、話を続ける。
「去年までは、他学年への関与が出来なかった。
ですが今年から新しいシステムが実装されるのは…皆さんご存じかと思います」
去年も南雲雅が生徒会長になった時に、話したのを生徒の何人かは思いだしたのだろう…
表情に変化があった。
「この後、各クラスであるアプリを入れる事になります、正式名称over all ability……略称はOAA
これにより前年度終了時までの成績を基に学校が作った個別成績が出せます。他クラスは勿論、全学年の生徒の成績を閲覧する事も出来る便利なものです」
学力:筆記試験での点数
身体能力:体育の授業での評価、部活動での活躍、特別試験等の評価
機転思考力:友人の多さ、その立ち位置を初めとしたコミュニケーション能力
社会貢献性:授業態度、遅刻欠席を始め、問題行動の有無、生徒会所属による学校への貢献など
総合力はこの4つの数値から導きだされる生徒の能力。社会貢献性のみ総合力に与える影響は半減される。
「個人スポンサー制度、あとで詳しく話されると思いますが…」
私は、壇上で生徒たちの反応を見つつ、言葉を続けた。
「この制度の最大の特徴は同じクラス以外に投資できる点……つまり、他クラスの生徒に支援出来るんです。あと、それに表示された成績が低くても大丈夫です……なぜならOAA総合力が低ければ低いほど、リターンが大きくなりますから」
OAAでは、各生徒の基礎4項目の他、「特別試験等における多面的な貢献度
その数値が低ければ低いほど…配当金の倍率が跳ね上がる事になる、そして変動幅は1~2倍。
…つまり、これまで活躍していない生徒こそが輝くという事になる。
私がそう言い残して、壇上から降りて席に戻る。
そして席に座れば何人かの、囁き声が聞こえ始めた。
「……低い奴に入れれば良いってことか?」
「単純にそう考えるのは危険じゃない?」
「なんで?」
「だって、低い理由があるんだから。しかもその人が裏切る可能性もあるし、そんな分かりやすい話なのかな?」
そんなこのシステムの核心に近い話が聞こえてきた。
低いOAAの人間に投資すればいいだけ…それだけではつまらない。
「(貴方たちが、このシステムをどう使うのか…)」
これによって、彼らが何を選ぶのか。それだけが、今の私には楽しみだった。
▶現段階の各クラス状況
Aクラス(一之瀬)
一年生の最後で竜崎から一之瀬帆波がリーダーとなった。だが、クラスメイトは竜崎が裏から他クラスを完封したせいで、お気楽さが抜けず仲良しクラスのまま。
Bクラス(葛城)
冬頃までは坂柳と葛城の二大派閥だったが、選抜種目での敗北により実質葛城派閥のみ残存。だが、葛城を疑問視する生徒もいる為、第三派閥が出来始めている…?
Cクラス(櫛田)
原作での櫛田が裏切るイベントが悉く無くなったため、櫛田が確固たる地位を確立している。堀北も卒業式にて覚醒をしたが、成長が遅れたせいで原作ほど立場は強くない。綾小路も学習期間が長く、原作よりは出遅れ気味。
Dクラス(龍園)
龍園が悪辣な方法を竜崎に見破られ、原作ほど学年から嫌われていない。椎名が龍園と早くから交流を持ち、クラスに貢献をしているお蔭でクラスの空気はそこまで殺伐としていない。
ただ、現状を改善しようとCクラスと同盟を結ぶ話が出ているようで…?
L(竜崎)の性格について
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もっと変人成分が多め
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普段は淡白なものの所々に変人成分がある
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結果、確認用