怪物と英雄の狭間で 作:伝説の一般元ブロリスト
三日ぶり……だぜ!!
評価数190ありがとうございます。ここからますます話は進んでいきますので、お楽しみに。
そして最後に関係ないんですが
ガチャは悪!!!!!滅びる定め!!!!
―――それは数日前。
リビングの静寂を破るように、テレビのスピーカーから無機質なアナウンサーの声が流れていた。
『――続いてのニュースです。昨日未明、保須市の路地裏にて、プロヒーロー・インゲニウムが何者かに襲撃され、意識不明の重体で病院へと緊急搬送されました。警察は手口や現場の状況から、『ヒーロー殺し・ステイン』による凶行とみて捜査を――』
画面には、規制線が張られた薄暗い路地裏の映像と、飯田から見せてもらったことのある、あの誇らしげな甲冑姿の兄――インゲニウムの写真が映し出されていた。
「…………」
ブロリーの手から、持っていた湯呑みがカタカタと小さく音を立てて震えた。体育祭の際、ブロリーとの試合を終えた後、彼は急用ができたと言って会場から離れていった。
その理由がこれだったのだとブロリーは知り、胸が苦しくなる。
「飯田……!」
すぐさま飯田に電話をしようとするが――一度そこで冷静になり、止まる。今飯田は電話なんてできる状況な訳がない……彼の気持ちを察し、それはやめた。
そして後日。
雄英へと登校をした時、彼は心配をしていた飯田に真っ先に目をやった。
「兄のことなら心配は無用だ! 心配をかけてしまったな」
いつも通り振る舞う飯田だったが……ブロリーは気づいていた。その表情の裏に隠されている燃え上がっているものを……。
ヒーロー名・体験先の話があった日の夜――ブロリーはついに、我慢の限界を迎え、彼に連絡を取った。
『――ハハハッ、すまないブロリー君。君にもそんな心配をかけさせてしまって……俺は大丈夫だ!』
「………飯田」
『どうした?』
「―無理を、しないで」
スマホを握るブロリーの大きな手が、きつく軋んだ。
電話の向こうで、飯田の息がわずかに詰まる気配がした。
『……無理なんて、そんなことはないさ。俺は本当に――』
「オレも、昔……似たようなことを経験してるんだ」
ブロリーは友の言葉を遮るように、静かに、だが祈るような切実さを込めて言葉を紡いだ。
「……昔、一番大切で、世界で一番強くて大好きだった人が……ヴィランに酷い大怪我をさせられて、目の前で血だらけになって……本当に、死にそうになったことがあった」
『……え』
思い出すだけで、今も心臓の奥が冷たく締め付けられる。
あの夜、鼻をついた鉄の臭い、声を荒げながらその存在を連れていく多くの大人達、自分を落ち着かせようとする知人の声。
――自分の内側から湧き上がってきた、世界中のすべてを破壊してしまいたいほどの、黒く濁った怒り。
「あの時、オレ……目の前が真っ暗になって、頭の中が怒りと憎しみでいっぱいになった。そのヴィランをオレの手で…って、許さない、絶対に………本気で思った」
受話器越しに、飯田の息を呑む音がはっきりと伝わってきた。
「だから、わかるんだ。学校で見た飯田の目が……笑おうとしてるのに、奥のところがずっと真っ赤に燃えてて……あの時のオレと、同じ目をしてた」
『……』
「飯田の体験先……保須市だって聞いた」
その言葉を出した瞬間、電話の向こうの空気が完全に凍りついた。
インゲニウムが襲撃された現場。そして、未だ潜伏しているとされる『ヒーロー殺し』の縄張り。そこに、普段ならトップヒーローの事務所を志望するはずの飯田が、あえて行く理由。
「飯田……頼むから、一人で抱え込まないで。無理に笑わなくていい。怒っていいし、泣いたっていいんだ。でも……一人で、危険なところへ行かないでほしい」
ブロリーは受話器を両手で包み込むようにして、消え入りそうな声で懇願した。
「飯田は、オレの大切な友達だ、だから……心配なんだ」
長い、痛いほどの沈黙が流れた。
数十秒の静寂ののち、受話器の向こうから聞こえてきたのは――震えを押し殺し、感情を無理やり削ぎ落としたような、硬く乾いた飯田の声だった。
『……君は、本当に優しいな。ブロリー君』
「飯田……?」
『だが、本当に心配はいらないんだ。俺はただ、兄の背中を追うために……兄が守ろうとした街の空気を感じ、立派なヒーローになるために保須を選んだ。……それだけなんだよ』
「で、でも――」
『明日も早い、体を休めてくれ。……電話、ありがとう』
ツーツーツー……。
一方的に切れた通話の機械音が、静まり返った部屋に虚しく響いた。
ブロリーはスマートフォンの画面が暗転するのを見つめたまま、その場から動くことができなかった。
(届かなかった……)
誤魔化された。
あんなに冷たく、張り詰めた声の飯田を、ブロリーは一度も聞いたことがなかった。飯田の心の奥で燃え盛っている炎は、もう言葉だけで消せるようなものではなくなっている…ブロリーはスマートフォンをそっと胸に押し当て、暗い夜空を見上げた。
(……上鳴みたいには…できないな)
ブロリーはそう思いながら、しばらく、空を見続けるのであった。
職場体験当日。
A組生徒達はヒーローコスチュームをもって駅に集まる。ここから新幹線やら飛行機やらに乗ってそれぞれが向かうヒーロー事務所に移動する、緑谷とブロリーは同じ場所へ向かうので共に行動をする事に。
緑谷は飯田のことが心配で別れる前に一声掛けた。それでも飯田は一言だけで返事して、東京の保須市へ向かった。その後にブロリーと緑谷も新幹線に乗り、グラントリノが待つ事務所へと向かった。
「緑谷、そんなに緊張しなくても大丈夫だ。おじいちゃんは、とっても優しい人だから………ただ少し、乱暴なだけだ」
「ほんの数秒で言葉の矛盾がでてるよ!?」
「血を吐くことはないと思う、多分」
「多分!!?」
新幹線を乗り継ぎ、たどり着いたのは甲府駅のほど近く――周囲のビル群の隙間にひっそりと取り残されたような、年季の入った古びた建物だった。
剥げかけたペンキ、錆びついた手すり。
お世辞にも『日本トップクラスのヒーローを育て上げた伝説の男の元担任』が住む場所見えない佇まいに、緑谷は抱えたコスチュームケースを握り締め、ごくりと喉を鳴らした。
「ここで……あってる…はずだけど」
「中から人の気配はするから、あってるはずだ」
「じ、じゃあ……」
緑谷が恐る恐るノブに手をかけ、『し、失礼します! 雄英から来ました。ヒーロー科の緑谷出久と八木蕗利――』と挨拶を口にしながら扉を開けた、その瞬間だった。
「……っ!?」
視界に飛び込んできた光景に、緑谷の呼吸が喉元で凍りついた。
薄暗い部屋のフローリング。その中央に、小柄な老人がうつ伏せで倒れ伏していた。
そして――胸から周囲の床へと広がる、おびただしい量の真っ赤な鮮血。
「し、死んでるぅぅぅぅぅぅぅッッッ!!?!」
緑谷の鼓膜を破らんばかりの絶叫が部屋中に木霊した。あまりの事態に腰を抜かしかけ、頭を抱えてパニックを起こす緑谷。しかし、その隣でブロリーはといえば、鼻をクンクンと二度ほど鳴らし、目を丸くして首を傾げていた。
「……あれ? 甘酸っぱい匂いがする……」
「えっ!?」
「生きとる!」
「生きてるゥ!!?」
「ソーセージにケチャップをたっぷりかけようとしたら、足をもつれさせてのぉ、皿ごとひっくり返してしもたんじゃ」
老人は立ち上がり、ベッタリとケチャップのついたパジャマを無造作に叩いた。床に散らばっていたのは、血肉ではなく無残に転がった皮なしソーセージだった。
「おじいちゃん、また転んでたの? 大丈夫?」
「ハッハッハッ!!平気じゃ平気、まだまだワシは……――おお!!ブロリー!!」
先程まで杖をつきながら小刻みに震えていた老人は、目を輝かせながらブロリーの方へと近づき、彼の足をパシパシと強く叩き始めた。
「よぉ来たのぉ〜ブロリー!久しぶりに会ってみれば、こんなにも大きくなってなぁ!ハッハッハッ!」
「おじいちゃんは、変わり無いみたいだね。安心した」
「なぁに、お前がプロのヒーローになるまで、まだまだ死ねんよ!―ああそうじゃ、良いもんやろう、ほれ、お前さんが好きな肉(バカ高い)じゃ。今晩はこいつを食うぞー!」
「楽しみだ」
(本当に……おじいちゃんと孫って感じだ)
「……で――お前さんが……俊典の言ってた、緑谷出久じゃな?」
グラントリノはブロリーの足を叩く手を止め、くるりと踵を返して緑谷を見ながらそう言った。
先ほどまでの孫にデレデレな好々爺の表情から一転、細められた瞳の奥に、研ぎ澄まされた刃のような光が宿る。
「は、はい! 雄英高校ヒーロー科1年、緑谷出久です! よろしくお願いします!」
緑谷が背筋をピンと伸ばして直立不動で答えると、グラントリノは顎に手を当てて「ふむ」と低く唸った。
「雄英の体育祭をテレビで見た――あの力の使い方、てんでなっちゃいねえ」
「!」
「そんでもってブロリー、昔と比べで随分と力を扱い切れるようになってきているが……USJ事件の時、怒りに飲まれて、力を解放しちまったそうだな」
「……うん」
「お前の弱点はそこ、『怒り』だ。ヒーローってのはいついかなる時も冷静に、いかなる時も己を見失っちゃいけねぇ」
グラントリノは自分の個性である『ジェット』を使い、軽く宙に浮く。
「この職場体験の間、徹底的に扱いてやるから…覚悟しておけよ?」
「――はいっ!!」
「よろしく、お願いします」
二人は軽く頭を下げ、グラントリノも何処か機嫌の良い態度をとっていた。そしてここから、二人の職場体験もとい修行が始まるのだった。
「――グッッ!!グラントリノ…!!?何、ですか…⁉︎ この、重たい…服…!!!」
「ワシがとある企業に特注で作らせた訓練用の超重い衣服じゃ。まぁ立てるくらいの重さにはしてあるから、安心しろ」
「これで……!!?」
「因みにブロリーにはその倍を着せておるぞ」
「倍…⁉︎ブロリー君平気なの!?」
「うん、ちょうど良い負荷だ」
「ちょうど良い…⁉︎」
「さあー……始めるぞ? 有精卵共」
ただしその修行は緑谷にとって、入試前の地獄のトレーニングよりも、何倍もキツく、何倍も精神をやられていくような物であった。
そしてブロリーも、今までに無いくらいに、自分を追い込んでいく物であった。
緑谷君の強化入りまーす。
今更ながらキャラ強化のタグって入れた方がいいので入れました、マジで申し訳ないです。