ヒーローアカデミアの喰種   作:きりっと果実

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【金木研プロフィール】

年齢:15歳
誕生日:12月20日
身長:175cm
体重:64kg
血液型:AB型

好き:コーヒー、読書
苦手:大勢の注目


ヒロアカの雰囲気に合うように東京喰種原作よりも身長とかは合わせてます。


第5話【個の強さ、チームの強さ】

 

 

相澤先生の見事な合理的虚偽に騙された翌日。

午前中の授業は英語と数学だった。

……そう、拍子抜けするほど普通だ。

黒板を写して、教科書のページをめくって、指名されて答える。

高校生、だなぁ……

 

いや、文句があるとかそんな事は一切ない。

ただ最初の授業なのもあって大幅には進まず、中学の焼き直しみたいな授業なのもあってどうしても「普通だなぁ」という感想が……

とにかく授業内容も普通の高校生すぎて拍子抜けするくらい普通の時間だった。

 

クラスの空気は昨日より少しだけ緩んでいる。

 

「なぁ金木、数学どこまで進んだ?」

 

授業後に、後ろの席の上鳴君から声を掛けられた。

 

「今は6問目…どうかした?」

「マジ?俺3問目で詰んでんのよ…中学でやった範囲なのにレベル高すぎねぇ?」

「ははは、僕もここは自信あったんだけど結構難しいよね。えっと、ここはね……」

 

まだ全員が仲良しというわけじゃないけどこういう軽さが心地いい。

まさか僕が人に勉強を教える日が来るとは…

頭の良し悪しじゃなくて、単純にずっと避けられてきたから人に教える経験は新鮮だ。

 

***

 

昼休みは大食堂でプロヒーローのランチラッシュが作る一流の料理を安価で食べた。

 

「昨日の個性把握テスト未だに信じらんねえよ……」

「まあまあ、クラスメイトが減らなくてよかったよ」

「なぁ、にしても飯美味くねぇ?白米のツヤすげーもん」

「作ってるのクックヒーローのランチラッシュらしいぜ?」

「はー!そりゃ美味いわけだ!」

 

他愛のない話が続く。

 

「なぁ、金木の個性って何?」

 

ふと思い出したかのように上鳴君から質問が投げ掛けられた。

 

「僕の個性?」

「そーいやあんま詳しく知らねえな。聞いてもいいか?」

「うん、もちろん。…僕の個性は体に普通の人にはない器官が出来て、それが色々特別な力を引き出してるんだ」

「へぇ…じゃああの筋力も触手みたいなのもその器官から?」

「大雑把に言えばそういうこと」

「ほー…色んな場面で使えてヒーロー向きの個性だな!」

「ありがとう、そう言われると照れるけど…」

「照れんなって!じゃあ次俺の個性な!俺の個性、『帯電』っつーんだけど……」

 

***

 

午後教室に戻ってすぐのことだった。

 

 

「わーたーしーがー!!」

 

 

「普通にドアから来た!!!」

 

 

勢いよく扉が開いてあのNo.1ヒーロー、オールマイトが現れた。

 

「オールマイトだ…!すげぇや本当に先生やってるんだな…!!」

銀時代(シルバーエイジ)のコスチュームだ………!」

「画風違いすぎて鳥肌が……」

 

教室がわっと沸く。

当然だ、目の前にいるのは生ける伝説…No.1のオールマイトなんだから。

 

***

 

「早速だが今日はコレ!!戦闘訓練!!!」

「戦闘……訓練…!」

「そしてそいつに伴って…こちら!!!」

 

オールマイトの掛け声と共に、壁がガコンと音を立て動き出す。

中から現れたのは入学前に提出した個性届と要望に沿って誂えられたもの。

つまり、戦闘服(コスチューム)だ。

 

「着替えたら順次グラウンド・β(ベータ)に集まるんだ!!」

 

『はーい!!!』

 

 

全員 更衣室へ移動する。

 

渡された箱を開けて、僕はしばらく手が止まった。

黒を基調にしたシンプルな一式。

 

腰の辺りには服を破らずに赫子を展開するための大きな切れ込みが、布を重ねることで外からは目立たないよう仕込まれている。

 

生地は思っていた以上に軽い。

指先で摘まんでみると、薄いのに妙な張りがあった。

なるほど……これが強化繊維の触り心地…

 

「すごいな……」

 

注文用紙には

『動きやすさ最優先』

『個性の使用を妨げない構造』

『耐久性重視』とだけ書いた。

 

正直、もう少し無骨な物が届くと思っていたんだけど。

でも思っていたよりずっと良いのが届いた。

余計な装飾が一切ないからこそ、完成度の高さが際立ってる。

 

最後にかつて見慣れていたマスクを手に取る。

口元と片目を覆う黒いマスク。

(金木)と違い、自分の正体を隠すためじゃない。

 

ただ、ヒーローとして戦うなら瓦礫や煙、粉塵の中に飛び込むこともあるだろう。

いくら肉体のスペックが人外のそれとはいえ、肉体の内側まで完璧に守れる訳じゃない。

粉塵にアスベストが含まれていれば人並みに害を被るし、毒が含まれていれば死の危険性すらある。

逆に言えば僕の肉体における唯一の弱点が()()だ。

それをカバーしないなんて有り得ない。

 

試しにマスクを装着してみる。

…うん、問題なさそうだ。

呼吸のしやすさも問題ない。

腰のスリットの方も、赫子を展開しても特に干渉する様子はない。

 

「……よし!」

 

鏡の前へ立つ。

黒いコスチュームに白い髪。

その上から口元を覆うマスク。

 

昨今のヒーローのような派手さはない。

だけど、僕にはこれで充分だった。

これが僕のヒーローコスチュームだ。

 

手首を回し、肩を動かす。

しゃがんでみたり、跳ねてみたり。

やっぱり動きやすい。

 

「うん…完璧だ!」

 

黒いコスチュームに白い髪。

派手ではないし、色合いで言うなら地味なことこの上ない。

だけど、今まで着てきたどんな服よりもしっくりきた。

 

───これが僕のヒーローコスチューム。

 

そう思っただけで胸の奥が少し熱くなった。

 

「おお!なんだよ金木、かっけぇじゃねぇか!!」

 

集合場所で切島君が開口一番そう言った。

堂々と肌を晒した彼らしい格好だ。

確かに、()()を活かすなら緩衝材になってしまう服はいらないよね。

 

「切島君のも似合ってるよ」

「だろ!?お前ならわかってくれると思ったぜ!」

 

「おー、金木似合ってんじゃん!」

 

切島君の後方から歩いてきた上鳴君も、軽く親指を立てる。

 

「威圧感っつーの?ビンビンだぜ!」

「ありが……喜んでいいの?それ」

 

周りを見渡すと他のみんな自分のコスチュームに夢中らしい。

八百万さんの衣装に夢中で歓声を上げている彼は別としてだ。

 

……まあ、あれはあれである意味健全でいいんじゃないかな。

健全に不健全みたいな。

 

***

 

全員が着替えグラウンドβに移動しきると、オールマイトが屋内戦闘訓練の説明を始めた。

 

「君らにはこれから(ヴィラン)組とヒーロー組に別れて2対2の屋内線を行ってもらう!!」

 

ルールは概ね予想通りだった。

 

2人が守りで2人が攻め。

単純明快、中学生でもわかる簡単なルールだ。

 

詳しく言うと、(ヴィラン)チーム、ヒーローチーム共に()()()()()が支給される。

(ヴィラン)側は建物内に隠した核兵器を守り抜くか、ヒーロー側を捕縛する。

ヒーロー側は制限時間内に核兵器を回収するか、(ヴィラン)側を捕縛する。

 

状況設定としては(ヴィラン)がアジトに『核兵器』を隠していて、ヒーローはそれを安全に処理しようとしている……ということらしい。

 

設定とはいえあまりの治安の悪さに思わず感心してしまう。

ここは現代日本だぞと言うツッコミはナシだ。

 

***

 

チーム分けはくじ引きで行われた。

どうせチームになるなら切島君かさっき個性の詳細聞いた上鳴君当たりがいいんだけど……

ま、そう上手くいかないよね。

 

 

Gチーム 金木研 耳郎響香

 

 

「えっと、金木だったっけ?ウチは耳郎響香。よろしく」

「よろしく、耳郎さん」

 

短い挨拶を交わす。

今考えてみれば隣の席なのにまともに話すのはこれが初めてだ。

折角隣の席なんだし仲良くなれるといいなぁ…

 

そんなことを考えていると、気付かぬ間に対戦相手が発表された。

最初の対戦はAコンビ対Dコンビ…何やら因縁のありそうな緑谷君と爆豪君の対決だ。

 

「彼…爆殺されたりしないよね?僕不安が止まらないんだけど」

「いやいや…!仮にもヒーロー志望がそんな…うぅん……」

 

どうやら彼女もうまいこと否定しきれなかったらしい。

雄英が彼を合格させた以上、そういった始末に負えないことはしないと読んでいるんだろう。

 

 

***

 

 

『ヒーローチーム、WIN(ウィ───ン)!!!』

 

 

「負けた方がほぼ無傷で……」

「勝った方が倒れてら…」

 

うん、これくらいなら始末におえ……お……負えるかなこれ…

これから今の訓練の講評が始まるわけだけど、既に見てられないほど爆豪君が落ち込んでいる。

まぁ、状況設定をフル無視していきなり奇襲、単独行動、おまけに最後は見下していた相手に油断して負けたんだ。

ここまで来たら哀れみすら覚える。

 

講評の内容はこうだ。

 

今戦のベストは飯田君。なぜなら4人の中で最も状況設定を理解し準じていたため。

なお、『核兵器』がある場所でバカスカと大規模な攻撃をしていた3人はその時点で減点だった。

 

それら全部八百万さんが答えていた。

彼女凄いな……もしかしたらこのクラスで1番賢いのは彼女かもしれない。

オールマイトも「まあ…正解だよ、くう…!」と、言いたかったこと全部言われて悔しそうな顔をしている。

 

第二戦は第一戦で使ったビルが使い物にならなくなってしまったので別のビルで行われた。

対戦カードはヒーローチームBコンビ対(ヴィラン)チームIコンビ。

障子君と轟君がB、尾白君と葉隠さんがIだ。

 

第一戦目が()()だったのを思い、果たしてどんな戦いになるのかと少し心待ちにしていたけど……

轟君の個性でビル全体を凍結させ、核を守っている尾白君達をその場に拘束。

地面に接した部分まで凍りついているせいで動けない彼らは、ものの数分で敗北してしまった。

しかしあれほどの出力でビルを凍結させた轟君が疲れた様子もなく尾白君達の周辺の氷を溶かしているのを見る限り、燃費が良い上に熱気も操れるらしいのが驚きだ。

 

「(とんでもない個性だな……戦わずに済んだのは幸運だったかもしれない。)」

 

氷に覆われたビルを眺め、そう思った。

 

 

***

 

 

そして第三戦、いよいよ僕らの出番だ。

ヴィランチームには僕と耳郎さんが選ばれた。

相手となるヒーローチームには……

 

()()()のチームか……良いのか悪いのか…」

「そういえばアンタたち知り合いっぽかったよね。お互いの個性知ってたりする?」

「うん、大体分かってるつもり。あっちも大体分かってるだろうけどね…実技の会場が一緒で、すぐ近くで戦ってたから」

 

切島君はともかく…瀬呂君がどんな戦い方をしてくるのか読めないな。

体を見る限り肘に何かあるのは間違いないんだけど……

 

「ウチの個性は知らないよね?」

「あぁ……そうだね、教えて欲しい」

「ウチの個性は『イヤホンジャック』、見たらわかるけど、この耳たぶのやつね?」

「なるほど…出来ることは?」

「相手に刺せば心音を増幅して爆音の攻撃が出来る、結構近くじゃなきゃだけど…で、壁とか床に刺せば結構遠くまで音を拾えるから索敵に使えるかな」

 

見た目はただのイヤホンプラグなのに、結構どこにでも刺せるんだな…

それに、動きを見る感じ僕の赫子と同じように自由自在に動かせてる。

 

「…うん、じゃあ僕が前衛で耳郎さんが後衛かな」

「うーん……ウチが核守って、金木が足止め?」

「そうだね…切島君が相手なら正面切って当たりに来るハズだ。その時に僕が2人とも相手にするから、耳郎さんはそれまで索敵と核の防衛をお願い出来る?」

「了解!」

 

うん…2人が別々で動いたり予想外の動きをされたら分からないけど、建物の構造上核が置かれた部屋に入れる扉は1つ……耳郎さんの索敵で来るタイミングさえ掴めれば、絶対に負けない。

 

「じゃあ…勝ちに行こうか」

 

 

***

 

 

「自己紹介まだだよな?俺、切島鋭児郎!個性は『硬化』。名前の通り硬くなるってだけの地味な個性だけど硬さには自信あんだ!よろしくな!!」

 

「初っ端からアツいなぁ!俺、瀬呂(せろ)範太(はんた)な。個性はこの両肘の『テープ』、こっから出てくるセロファンテープが頑丈なもんで飛び回ったり捕まえたり色々出来るってワケよ」

 

「…飛び回れる?それマジか!?」

「おう!?マジだけどどーした?」

「いや…男らしくねえこと言うと、勝てる気はしてなかったんだけどよ…お前の個性があれば勝てるかもしれねえ!」

 

 

***

 

 

ヒーローチームが建物へ侵入する。

僕らは核のある部屋の手前で息を整え、その時を待っていた。

耳郎さんがイヤホンジャックを壁にそっと差し込む。

 

「……来た」

 

数分後、かすかな足音が二つ近づいてきた。

 

***

 

「見っけたぜ!!」

 

角から切島君と瀬呂君が同時に姿を見せる。

軽く睨み合って距離を測る。

 

先に動いたのは切島君だった。

拳を硬化させて予想通り正面から突っ込んでくる。

赫子を二本出して受け止める。

 

ガギィン!

 

「っ!…やっぱ結構硬ぇな」

 

「いや……そうでもないみたいだ」

 

赫子と拳が競り合う。

金属同士を打ち合わせたような音が響くたび、赫子の表面が僅かに削れていく。

 

「(……硬い)」

 

「(純粋な防御性能なら、僕の赫子より上か)」

 

もう一度受け止める。

だが、衝撃は赫子を伝って体まで響いた。

 

真正面から受け続けるのは得策じゃない。

それに、切島君の拳は一直線だ。

力はある。硬さもある。

 

だけど、そのぶん軌道は素直で読みやすい。

受け止めるより、いなした方がいい。

赫子は補助に回そう。

 

僕は赫子を盾として使うのをやめ、徒手空拳へ切り替えることにした。

 

「そりゃ好都合!オラッ!!」

 

やがて赫子を弾かれ、切島君が懐へと拳を構えて潜り込んできた。

 

「見え見えだよ切島君っ!」

「それでもっ!!」

 

 

ゴッ!!

 

 

互いの拳がぶつかり合い、(およ)そ人体から放たれたとは思えない音が部屋中に響く。

 

「オラオラオラァッ!!」

「正面からの戦いは僕が有利だ…よッ!」

 

正面からの連打を全て受け流し、天井へと跳ね上がる。

そのまま赫子と両足をバネに、弾丸のようなスピードで切島君へと突っ込んだ。

 

「ッぐ!?」

「っ痛…やっぱりタフだね、切島君。今のでまだ立ってられるとは思わなかった」

 

床へ着地しながら、ふと視線だけを部屋の奥へ向ける。

 

「(…来ない?)」

 

瀬呂君の姿がない。

二対二なら、とっくに横から援護が入ってもおかしくないはずなのに……

 

「ったりめえよ…ここで倒れるようじゃ、()()()()()()()()!!」

 

そう啖呵を切り、再び連打を仕掛けてきた。

 

「(瀬呂君だけ別ルート…?いや、この部屋に入口は一つだけ───)」

 

「よそ見してんじゃねぇ!!」

 

切島君の拳が迫る。

 

「っ!」

「オラァァァッ!!」

 

「(今は目の前に集中しないと…!)」

 

しかしながら当然その動きは単調で、先程となんら変わりない。

 

「だから…!見え見えだよッ!」

 

その隙を突き、正面から胸を思いっきり蹴り出した。

後方へと吹き飛んだ切島君は部屋の窓枠に背中をぶつけ、肺の中の空気を吐き出した。

硬化した体があの勢いでぶつかったのもあって、壁は切島君を中心にクモの巣状にひび割れ、窓も割れていた。

 

「(やっぱりだ。正面の防御は硬いけど、姿勢を崩された後の立て直しはそこまで速くない。)」

 

「(にしても部屋がボロボロに…核がある想定なんだからもっと気を付けないと)」

 

「…そろそろ終わらせよう、切島君」

「ハッ…まだまだやれるぜ!俺はよ!!」

 

今度は正面からではなく、やや回り込むようにこちらへと走ってきたが、結局やることは同じ。

単調な拳の連打だ。

 

最早リズムすらも慣れたその攻撃の全てをカウンターする。

 

「くっそ…!」

 

ペースを落とした切島君の隙を突いて、捕縛テープを巻き付けた。

 

「(…よし、切島君は捕まえた……タフさで言うなら切島君はクラスイチなんじゃないか?)」

 

 

捕縛されたというのに、不敵な笑みを浮かべる切島君に僕は気が付かなかった。

 

 

***

 

 

──開始より少し前、入口にて

 

 

 

「んで…作戦ってどーすんのよ?ぶっちゃけ金木相手だと二対一でも勝てるか怪しいぜ?」

 

「まず、金木は核のある部屋で俺らを待ち構える筈だ。俺が正面切って来ると読んでな」

 

「いや、動き読まれてるんじゃ尚更不利だろ…?」

 

「それを逆手に取んだよ!お前は外から入り込めばいい!」

 

「…なるほど?俺が窓から入り込んで核を確保すればいいってワケか」

 

「そうだ!俺が金木と正面切って戦う!その最中で上手いことどこかの窓にヒビを入れるなり、ブチ割るなりするからお前は外からそこに入り込めばいい!」

 

「金木がもし気付いたら?」

 

「気付かれねえようにするのが俺の仕事だけど…もし気付かれたら諦めるしかねぇな!」

 

「…あぁ、それしか無さそうだし、それで行こう!ミスんなよ切島?」

 

「おうよ!任せとけ!!思いっきり暴れてやるよ!!」

 

 

***

 

 

金木VS切島。

 

その裏で耳郎響香は瀬呂の気配を探し続けていた。

 

「……待って、アイツはどこ…?」

 

イヤホンジャックを壁や床のあちこちに突き立てる。

しかし、金木と切島の戦闘音が建物中に反響していた。

 

拳と赫子がぶつかる音、壁が軋む音、床が抉れる音。

その全部が微かな振動を塗り潰していく。

 

「どこ……!?」

 

声に焦りが混ざり始めた。

 

 

***

 

 

金木と切島の激突で部屋の窓ガラスが何枚か割れていた。

その割れた窓から瀬呂が音もなく侵入する。

壁を伝い、天井近くを滑るように移動する。

 

耳郎はイヤホンジャックを床へ差し込み、神経を研ぎ澄ませていた。

 

「……!」

 

微かな振動。

一瞬だけ違和感を覚える。

 

「上──」

 

言葉を最後まで口にするより早く、白いテープが一直線に伸びた。

 

「っ!」

 

腕へ絡みつき、そのまま胴体まで拘束される。

爆音を放つ暇すらなかった。

 

「悪ぃな」

 

瀬呂が静かに着地した。

 

***

 

切島君を拘束し終えて僕は一瞬気を緩めた。

 

……勝った。

 

「(あとは瀬呂君を捕まえるだけ…)」

 

そう思った直後にようやく気が付いた。

 

「…瀬呂君はどこに」

 

視界の端で拘束される彼女に気付いて反射的に振り向く。

 

「ッ耳郎さ……」

 

その一瞬、意識が完全に後ろへと向いていた。

 

シュルッ

 

遠くから伸びたテープが迷いなく僕へ届く。

先端に仕込まれた捕縛用のテープが体に巻きついた。

背後からの気配に気付けなかった。

 

「油断大敵…ってな!」

 

やや離れた場所から瀬呂君の声が耳に届く。

 

 

***

 

 

『ヒーローチーム、WIN(ウィ───ン)!!!』

 

 

オールマイトの声が建物に響く。

 

「……あぁ、そういうことか…くそっ…!」

 

拘束されてしばらくは状況を飲み込めなかった。

切島君との一対一なら完全に押していたはずだ。

なのに気付けば僕も耳郎さんも縛られている。

 

「ごめん、金木…無線で伝えればよかったのに」

「……僕も油断してた。完全に作戦負けだね…ごめん、耳郎さん」

 

耳郎さんにも僕にも無線という手段があったのに、耳郎さんは瀬呂を見失った焦りで忘れていたらしい。

だから耳郎さんの違和感を伝える声は、切島君に掻き消されてしまった。

 

「瀬呂君、最初から…そういう作戦だったんだね」

「悪いな。正面切ってやり合ったら勝ち目薄いのは個性把握テストん時からわかってたからよ」

「おい、作戦立てたの俺だろ!何自分の手柄みたいにしてんだ!」

「あ、バレた?」

 

力の差ではなかった。

視野と、互いの信頼の差だ。

 

「金木は強いよ、すごく」

 

耳郎さんが拘束されたまま苦笑する。

 

「でも強い人ほど一対一に集中しすぎちゃうのかも」

「……耳の痛い話だね、ごめん」

 

拘束を解いてもらいながら瀬呂君達に頭を下げた。

 

「完敗だ…次は僕ももう少し周りも見るよ」

「おう!期待してるぜ?」

「何様だお前は」

 

早くも仲良くなっている瀬呂君達に思わず笑みが零れる。

 

力では負けていなかった。

一対一でも、恐らく二対一でも勝てただろう。

 

負けたのは連携と視野の広さ。

チーム戦ってのは個人の強さだけじゃ勝てないらしい。

救助の現場で即興で組むことなんていくらでもあるだろう。

早速痛い弱点が見つかったなぁ……

 

はぁ……次はもう少し賢く戦わなくちゃ。

 

 

 





原作の金木くんも1人で解決しようとしてたのでその辺使って未熟なヒーローの卵感出せてたらいいなぁ〜と思います。

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