久世政近の幼馴染   作:俺だよ俺?忘れちゃったの?俺だって

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朝と遅刻と小競り合い

 

 

 私立征嶺(せいれい)学園。

 

 過去、政財界で活躍する卒業生を多く輩出してきた、日本トップレベルの偏差値を誇る中高大一貫校だ。

 また、さらに昔は貴族だとか華族だとかの子女も多く通っていた、まごうことなき名門校である。

 

 だからこそ、そんな学園に通うものたちには、そこに相応しい品が求められる。普段の学校生活はもちろん、それ以外のありとあらゆる箇所で征嶺学園に通う資格があるか見定められていると言っていい。

 

 まあ、つまりはだ。遅刻、始業に間に合わないなんてことはもちろん有り得ない訳で。教師やら生徒会やらに厳しく言われることは目に見えている。

 

 すなわち─────

 

「うおおおぉぉぉぉオオオオォォォやっべぇぇぇぇえええ!?!?!?」

 

 ────今の俺は死ぬほどピンチってこと!☆

 

 普段ならば周りの目を気にして、ある程度行儀よく歩くこの街を全力で走る。

 もちろん人にぶつからず、かつ何か物を壊さない様にして、足を勢いよく前へと踏み出していく。

 

 何故こんなことになっているのか────それは寝坊をしたから。

 

 何故寝坊をしたのか─────遅くまで友人と話し込んでしまったから。

 

 何故友人と話し込んだのか─────あいつが寝るって言っても引き止めてきたから。

 

 思い返せば思い返す程、今こうなっている原因は一つ……いや、一人だ。

 

「アホ近がァ……!!!」

 

 俺の友人、久世政近。あいつが全ての原因、諸悪の根源と言っていい。

 つーか深夜二時に電話かけてくるって何? もしかけるとしても先にメッセージ送ってからだろ。なんで直電なんだよイカれてんのか。

 

 何? じゃあなんでその電話とったんだよって? ……仕方ないじゃん、好きなアニメ見終わった後の余韻を感じてたら無意識に出ちまったんだよ。

 じゃあ俺も悪いじゃねぇか! ごめんなまさちー!!! いややっぱお前が悪いぞ政近ァ!!! 

 

 と、よく分かんないテンションで危機を感じ続けること十分程度。ようやく正門が見えてきた。

 門周辺には俺と同じ制服を身にまとった少年少女達が何人か居り、なんとか遅刻はせずにすんだことを理解できた。

 

「ハァ……な、なんとかなるもんだな」

 

 いつもであれば家から学園までは三十分程かかるが、今日は十五分もかからずに到着した。人間やろうと思えば意外とできるものだ。

 一先ずスピードを緩め、普段と同じ程度にまで落としながら、息を落ち着かせる。

 

「……よし、行くか」

 

 気持ちを改め、学園の門をくぐる。

 中学から通っている場所ではあるが、ここに足を踏み入れるのはまだ慣れない。毎回緊張しながらこの門をくぐっている。

 まあ、気持ちが緩んでいるよりは良いだろう。そう言い聞かせ、昇降口まだ続く並木道を歩く。

 

「お、久堂(くどう)か。おはよう」

「おはざーす」

「久堂くんおはよ〜」

「はよ〜」

 

 かけられる声に適当に返事をしながら歩いていく。

 中高一貫っていうのは良い。なぜなら生徒の殆どが知り合いだから人間関係を新しく構築する必要が無いからだ。友人から聞かされる、周りに知り合いが居ない状態での関係の構築。聞く度に身体が震えるぜ……。

 

 そんなことを考えながら、いつも通り教室へ向かう。

 普段より遅い登校だからか、見かける人間も少し違う。物珍しさを含んだ視線と挨拶に返事をしながら、自分の教室の前に立ち、そしてドアを開ける。

 

「はよ〜っす」

 

 挨拶を返す生徒、言葉にはしないが、こちらに視線を向け手を振る生徒など、反応は様々だが大体の生徒がこちらに反応を返してくれる。

 クラス替えからここまで、色んな生徒に満遍なく話しかけた甲斐があったというもの。

 

 そして、その大体に当てはまらない生徒ももちろん居る。

 

「はよ、九条さん」

 

 アリサ・ミハイロヴナ・九条。

 色々呼び名はあるが、よく生徒から言われているのは『孤高のお姫様』

 

 なんとも仰々しい名前だが、その容姿や性格から考えると、的を得ている呼び名とも言える。

 

「おはよう、久堂くん」

 

 が、有難いことに彼女はその大体の内の一人だ。

 中三の時に転入してきた彼女にこの学園を案内したこともあり、彼女とはある程度普通に喋れる関係にはなれている。

 

 では、その大体に当てはまらない生徒とは誰なのか。

 

「こいつはまたずっと寝てる?」

「ええ、何度声をかけても起きないわ」

「そっか。じゃ、いつものやるかぁ。こいつ学習しろよな」

 

 隣の席で机に突っ伏し、爆睡をキメている友人の両耳にイヤホンをつけ、いつも聞いている音楽を流す。

 

 まあ、普通に流しただけで起きるわけもない。俺はそのまま、スマホの音量をドンドン上げていき、丁度サビに差し掛かったタイミングで音量を最大にする。

 

『〜♪』

 

「うるっせぇ!!」

 

 音漏れにより、こちらまで聞こえてくる音楽。それを直につけている本人からすれば相当うるさいだろう。

 が、しかし。これは罰でもあるのだ。

 

「クソ……耳いてぇ」

「よう、政近。Good morning」

「全然グッドじゃねぇよ星哉(せいや)! この起こし方やめろって言っただろ!」

「そんなこと言われたっけな〜? あー、寝不足だから思い出せないなぁ。誰かさんのせいで寝不足だからぁ!」

「うっ……。そ、それは悪かったけども。でもお前だって語りたかっただろ!?」

「今日学校来てからで良いだろうが!!!」

「鉄は熱いうちに打て! アニメの感想も熱いうちに話すのが一番だって!!」

「こっちの迷惑も考えろや!!!!」

 

「始まった始まった、久堂の久世のモーニングファイト」

「お前らどっちに賭ける?」

「俺久堂」

「僕も久堂」

「私久堂くん」

「じゃあ俺も久堂」

 

「お前ら聞こえてんぞ! てか全員星哉に賭けたら賭けが成立しないだろうが!!!」

「これが信用の差だぞ政近クン♡」

「クソが!!! じゃあ俺が俺に賭けるもんね!! 俺が買ったら一人勝ちじゃい!!」

「……今日も今日とて元気ね」

 

 俺らの小競り合いは先生が来るまで続いた。因みに勝者は俺。びくとりー。

 

 そんなこんなで、俺、久堂星哉の一日は始まる。

 

 

 

 あ、勝ったから政近からジュース奢ってもらいました。ラッキー。





ランキングで見かけたおかげでロシデレ熱がぶり返した。

───久堂星哉(くどう せいや)
・本作オリ主。
久世政近(周防政近)とは幼馴染。
初めて久世政近と会ったのは周防邸にサッカーボールをぶち込んでしまい取りに行こうと忍び込んだ時。つまんなそうに勉強してるのを見てサッカーに誘った。……が、断られる。それが気に入らなくて何回も誘い、ついに一緒に遊ぶことになるがそこで政近のボール嫌われを目の当たりにし、面白すぎて爆笑した。そこから毎回遊びに誘うように。
親がそれなりに厳しく、周防家までは行かないものの、中々な高等教育を受けてきた。が、本人の気質が悪ガキな為、親の言うことを聞かずに遊びまくってた。
しかしながら、本人の素養は優秀なため、スペックは高い。

(本人には言わないが)政近のことは親友だと思っている。

「嫉妬もする、尊敬もする、憤りもする。けど、それも全部ひっくるめて、俺とあいつは親友だ」


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総合評価:2035/評価:8.28/連載:8話/更新日時:2026年07月20日(月) 11:29 小説情報


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