これが曇らせなのだろうか?曇らせとヤンデレの違いってなんなんだろうか?
そんなことを思いながらこの小説を書いています。
「先生、俺の身体って今はどんな状態なんです?」
「うーん、雨宮さんの症状からして左半身麻痺、なんだろうけど……」
漣と別れてから30分ほど経って、診断室で俺は主治医から診断結果を聞いている。この医者は名医とか呼ばれてるレベルで凄い人らしい。
「ごめん、分かんないや」
「は?」
名医……だよな?
「だって、雨宮さん元気すぎるんだもん。多少ぎこちないだけで左手は動かせるし、足も補助があれば歩けるし、何かリハビリ頑張れば普通に完治しそうなレベルだもん。何となく脳の損傷による左半身麻痺かなとしか言えないね、詳しい病名とかは分からない。ごめん」
「……そ、そうですか」
訂正する。コイツは断じて名医なんて大層な名前で呼ばれていい存在ではない。だもんとか言ってる場合じゃないぞ。ヤブ医者だ、コイツは。
「正直、僕が一番驚いているよ雨宮さん。貴方の脳が傷ついているのは分かるのに、その影響がびっくりするくらい小さい。これまでの医療経験で初めてのケースなんだよ。……レアケース過ぎて、ちょっと解剖してみたいくらいだね」
「いや、解剖は普通に嫌なんですが」
「少しだけ、ホントに少しだから、先っちょだけ!この通り!」
「キショい言い方すんな。通報すんぞ、このヤロウ」
訂正する。コイツはヤブ医者ですらない。医者の風上にもおけない、狂ったマッドサイエンティストだ。逃げねばなるまい。
「とは言え、脳に異常があるのは本当だし、仮に悪化したら最悪死にかねないから、これから暫くの間は検査とリハビリね。少なくとも、一ヶ月か二ヶ月かそれくらいは入院だね」
「いきなり真面目にならないでくれます?てか、 俺は早く横須賀に戻りたいんだが」
こんな医者がいる場所になどいたくない。それに、早く艦娘たちと再会して色々と話したいからさっさと鎮守府に戻りたいんだ。ここ一ヶ月で溜まっているであろう仕事は、漣がいれば回るから、そこは心配していない。が、さっさと漣から仕事を巻き取らねばなるまい。だから、早くここから
「因みに、これは大本営の意向だよ。海軍の……日本の誇る英雄さんには健康体でいてもらいたいんだろうね」
「おぉう……」
だが、無情にも俺の願いは容易く切り捨てられてしまった。組織的に俺の上にいる大本営が言うなら、仕方ないかと運命を受け入れる。つか、英雄ってなんやねん。俺はそんな大それた存在ではないぞ。
「あ、後、雨宮さんは気付いてなかったかもだけど、肋骨折れてるから激しい運動とか大声は控えてね?」
「おめぇ、それさもっと早く言えよ!仕舞いには殴んぞ、このヤブ医者が!!…ッ…いって、マジで肋骨折れてるのか……」
「だから言ったじゃないですか」
ヤブ医者の余りの適当さに、ついに俺はキレて今日一番の大声を出したら、胸に激痛が来た。おいコラ、お前はマジで許さんぞ。何、『コイツ馬鹿だなぁ』みたいな呆れ顔をしてやがる。マジでコイツのこと一回でいいからぶん殴りたい。
「取り敢えず、錠剤の痛み止めも出すから、それを朝昼晩の食後に必ず飲んでね」
「…………わっ、かりました」
何と言うか、いきなり真面目になるのやめて貰っていいだろうか。キレそうなタイミングで正論をぶつけて反抗できないようにするのはレギュ違反だと思います。
と、そんな一幕があったものの、俺の検査は無事に終わった。看護師の手を借りて車椅子で病室に戻らされた。一人で歩けるのに……。
——————————
「んじゃ、色々と教えてくれるか?漣」
「漣ちゃんの時間キタコレ!任せてくださいよー、ご主人さま!」
病室に戻った俺は、『絶対に動くなよ』と圧を出して出ていった看護師のせいで白い天井を眺めるだけの退屈な時間を過ごしていた。一分で天井に飽きて苦痛を感じ始めた俺が、羊を数えようかと考えたその瞬間に漣が病室の中へ入ってきた。タイミングが完璧過ぎて、涙を流し掛けたぜ。
さて、そんな俺の退屈を明後日へぶん投げてくれた漣はベッドの横に丸椅子を持ってきて座っている。これから、俺が倒れた後の鎮守府について話してくれるのだ。
「そうですねぇ、ご主人さまは何から聞きたいです?」
「轟沈者は?」
俺は漣に起きてから一番気になっていたことを質問する。
「やっぱり、ご主人さまはそこが気になりますよね。安心してください!全員、無事に生還しましたよ。ご主人さまの命令通り今に至るまで横須賀第一鎮守府の艦娘は一隻とて沈んでいませんとも!」
むん、と慎ましやかな胸を張って答えた漣。大和や愛宕などがやれば大変素晴らしい光景が見えると言うのに、何とも悲しい光景だろうか。
「漣の胸に何か?」
「何でもねぇっす」
おっと、漣の前でこんな思考はご法度であるのをすっかり忘れていた。どういうわけか、漣には俺の思考が読まれている節がある。まぁ、それは逆も然りではあるのだが、今は置いておく。
「あんまり女の子をバカにしちゃいけませんよ?視線とか表情とか色々なものでバレちゃうんですから。漣だから良かったですが、仲の良い友達とかでも簡単に関係が壊れちゃうんですから気をつけてくださいね?」
「ういっす、すんませんした」
「よろしい、許してあげましょう!」
俺のデコをぺちっと軽くはたいて窘める漣に俺が謝れば、漣は軽く許しの言葉を口にしてくれる。この
「……んじゃ、話を戻しましてー、あの戦いでご主人さまが囮になった後は、それはもう皆さん必死に戦ってたそうですよ。漣は最前線に立って指揮を執ってたので周りを見る余裕はありませんでしたが、報告で聞いた話しですと、なんと瑞鶴さんや瑞鳳さんを中心に空母の方々が夜間の航空機発艦を成功させたとか!凄くないですか、コレ!!」
「本当か?それは凄いな」
艦載機の夜間発着艦は今まで空母棲姫を筆頭に深海棲艦の専売特許だった技術だ。その技を我が艦隊が誇る空母達は物にしたらしい。今まで空母は夜戦では何もできなかったが、これからは夜戦でも大きな活躍を見せてくれるのだろう。とても頼もしい。
「今回の戦いでの深海棲艦の規模は最低でも姫級が10、鬼級は30、フラッグシップ、エリートクラスに関しては数え切れないほどの数がいました」
「……なんだって?姫級が10隻って聞こえたんだが?」
耳が遠くなったのだろうか?漣の口から随分と恐ろしいことが聞こえてきたぞ。それに、姫級だけじゃなくて鬼級もいたらしい。それでよく轟沈者でなかったな。
「はい、潜水棲姫や駆逐棲姫なんかの比較的軽装甲の姫級もいたので、対潜装備などの対策を持っている艦娘を当てることで殆どが対処できましたよ」
「そうか、それは良かった」
なるほど、五十鈴を筆頭に対潜装備を持たせておいたり、秒単位で変わっていく戦況に幅広く対応できるよう準備していたのが功を奏したようだ。こうして、寝る間も惜しんで打った一手が機能しているのが分かった時ほど嬉しいことはない。しかも、それで全員が生き残ったのだから、感慨深さは一入だ。
「そうして、漣たちはご主人さまがまだ生きていると信じて、死なせたくない一心で深海棲艦と戦い抜き、勝利を収めたのでした!結果はご主人さまも目覚め、漣たちもみんな無事に生き残る完全勝利です」
そうして、笑顔と共に一旦話を締めくくった漣。その後、追加でちょいちょい聞いたが、俺たちが戦ってる間に横須賀近辺以外の鎮守府が一斉に攻勢にでたことで、戦線を大きく押し上げ、日本海側では中国、韓国、ロシアと海路を結ぶことに成功。太平洋側も沖縄、台湾だけでなく、フィリピンやマレーシアなどの東南アジア諸国を解放して、インドとの海路を結ぶことに成功したんだとか。
それに、一度は壊滅的な被害を受けた横須賀沿岸部の街も復興が進んでるし、一般人の被害も少ないとあってか、日本は完全に祝勝ムードで大騒ぎ。しかし、どうやら国民が喜んでいるのはそれだけではないようで。
「俺が大将か…随分と遠くまで来たな…」
そう、元々少将だった俺は今回の功績でどういうわけか、二階級昇進をして大将になってしまったのだ。極めて面倒臭いったらありゃしない。更には俺を救国の英雄だの呼びやがった。
ただでさえ、少将の肩書きが俺には途轍もないほど重く感じているんだ。そこから更に二つも階級か上の大将に救国の英雄だとか、俺を責任だけで押し潰すつもりなんじゃないか?大本営は。
「はい、大本営の意向でご主人さまに二階級の昇進の栄誉が与えられました」
「なんだ漣、栄誉とか言うわりには嫌そうだな、喜べよ久しぶりの昇進だぞ?」
不服そうな態度を隠そうともしない漣に、俺は若干ぶっきらぼうに言ってみる。実際、俺が海軍に入隊してからと言うもの、昇進する度に漣たちは俺のことを祝ってくれていた。今回もそういうのをするのかと聞いてみたが、漣は肩をすくめてから首を横に振る。
「そりゃあ漣だって、ご主人さまがこの昇進を喜んでいるのであれば、目一杯お祝いしていましたとも!」
「ま、漣ならそう言うか。因みに、昇進の拒否とかってできる?」
「天皇陛下も関わられているので無理ですね!」
「………………マジか」
言外に俺がこれ以上の昇進を望んでいないことを指摘してくる漣。俺は、普段からこれ以上出世したくない欲を態度に滲ませていたから、この指摘自体は別に驚くほどのことじゃない。天皇陛下が関わってるってのは耳を疑ったが。
詳しく漣から聞くと、後日に今回の戦いの功績を讃えて、天皇陛下から勲章を拝受する親授式が執り行われて、その場で俺の階級が正式に大将となるのだとか。まぁ、これは俺が嫌じゃ嫌じゃと駄々を捏ねても拒否できんわな。
他にも、漣から色々な話を聞けた。
まず、俺が援軍を要請した鎮守府だが、彼らの所にも横須賀ほどではないにせよ姫級が率いる大軍が攻めてきていたようだ。深海棲艦がこの戦いにどれだけ賭けていたかが良く分かる。鎮守府たちは姫級こそ沈められなかったが、損害を抑えて横須賀に攻めいった深海棲艦の艦隊が全滅するまで耐え抜き、これらを撃退することに成功しているのだとか。
贔屓目を抜きにしても、俺が着任している横須賀第一鎮守府は日本最大規模の鎮守府であり、文字通りの日本最強の精鋭艦隊である。そして、その守護が及んでいる周辺の鎮守府は、こう言っては何だが横須賀から離れた鎮守府よりも比較的規模が小さかったりする。これは、呉、佐世保、舞鶴なんかでも似たようなことが起きているのだが。
だからこそ、彼女らが姫級と数百の深海棲艦を抑えて、鎮守府とその周辺を防衛しきったのは偉業であり、日本国民に更なる勇気と希望を与えることになった。彼女らもまた、今の日本が活性化している原因になっている。
他には、海軍上層部で、海外へ遠征して諸外国の救援を行う案もでているのだとか。だが、日本の防衛が疎かになりかねないと止まっていた。
俺が起きて横須賀も復興が進んでいることから、もうじき話しが動き出すのではないかと俺は予想している。そして、恐らく前線に立つことになるのが俺たちであることも。大将が出張ることによって、諸外国と有利に外交を進めよう。と言う魂胆が見えていて、それを込みでの今回の昇進だと睨んでいる。
「漣はどう見る?」
「まぁ、間違いないでしょうね。正直、漣としては前線なんかに行きたくなんてないですが」
「だよなー、行きたくねぇ……」
漣も俺と同じ考えのようで安心した。内容は全然安心できないが。なんか学校で似たようなやりとりをした記憶があるが、二人同時に大きなタメ息を吐いた。……あー、行きたくねぇ、もう死にかけるのはゴメンなんだが。命を賭けるのは一回こっきりでいい。二回目は本当にどうすればいいか検討もつかないぞ。
「はぁ、これに関しては実際に辞令が来てから考えるか」
「そうしましょうか、漣ちゃんも憂鬱になるってもんですよ」
うへぇ、と声をあげて俺のベッドに突っ伏す漣。その顔色はやっぱり悪い。どうにも、俺が倒れてから大分無理をさせてしまったらしい。俺が一時的に指揮権を譲渡したせいで、艦娘たちを纏めたり、大本営とのやりとりをしたり、大量の仕事に忙殺されたことだろう。俺が起きたことで、これからは良くなるのかと言われれば、恐らく否。むしろ——
「……はぁ。…………ま、俺も起きたし、漣と一緒なら何とかなるべ。……なぁ、漣」
俺は、いま考えるべきではないと思考を切り上げて、漣の頭に右手を乗せる。漣はいきなり頭に乗っかった手に、不思議そうな顔で俺を見上げるように視線をあげた。
「なんです?ご主人さま」
やっぱり、いつも通りの
「あー、なんつうか、やらかした俺が言えたもんじゃないが…………色々と迷惑かけてごめんな漣。それと、俺が起きるまでみんなを助けてくれてありがとう」
できるなら、無理をするなよ。の一言くらい言いたかった。でも、今の俺が言っても、多分届かないと思うから、言えなかった。途中で言葉を変えてしまった。
「いえいえ、漣とご主人さまはパートナーですから!ピンチの時はお互いに支え合う、でしょう?」
「……あぁ、そうだな」
いつも通りの笑顔で俺に励ましの言葉をくれる漣。
「あ、もうこんな時間になっちゃいましたか。じゃあ、今日は帰りますねご主人さま!明日は漣じゃなくて時雨ちゃんに来て貰いますので、それでは!」
漣はちらっと時計を一瞥してから、忙しない様子で椅子から立ち上がってそのまま荷物を取り、俺の返事を待つことなく部屋を出ていった。
「…………今の俺に、お前のことを支えることができるのか?前みたいに本当の意味で俺の手を取ってくれるのか?」
漣が出ていき、独りでに閉まった扉を眺めながら俺は呟く。どうやら、俺が思っているよりもこの一ヶ月は、漣にとって重く深かったようだ。
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翌日、悶々とした心境のまま眠ることもできず、俺はそのまま夜を越した。漣の言う通りであれば、今日は時雨が来るらしいが、どうにも空模様が悪い。今にも雨が降りだしそうな曇天だった。これは午後には天気が崩れそうだ、なんて思っているとコンコンとノックが聞こえてくる。お、噂をすればとやらか。
「提督、時雨だよ。入ってもいいかな?」
「入っていいぞ」
扉越しに聞こえてきた時雨の声に返事を返す。時雨はすぐに病室に入って来ず、数十秒ほど経ってから扉が開いた。扉の向こうにはボーッと此方を見つめている時雨がいた。
「……てい、とく」
声ちっさ……。しかも、俺と目が合っているようで合っていない、まるで過去を回想するように時雨は少し遠くを見つめている。普段は犬耳みたいに外へハネてる髪も心なしかへんにゃりしているような気がする……。
「おう、久しぶりだな、時雨」
俺が声を掛けると現実に戻ってきた時雨と視線が交わる。
「……ほ、本当に目が覚めたんだね、提督」
時雨はよろよろとした足取りで此方へと歩みを進めてくる。そして、俺のベッドの側まで来るとぎゅっと俺へ覆いかぶさるようにして抱きついてきた。
「し、時雨?どうしたんだ?」
いきなりで予想だにしていない出来事に俺の思考は止まる。しかし、何とかしてこの行動の意図を時雨へ問いかけることに成功した。
「……よかった、よかったよ、本当に……提督が、無事で……良かった」
だが、俺の声が聞こえているんだか聞こえていないんだか、時雨は返事もせずにただただ俺の胸元に縋り付いて声を漏らしている。心なしか、彼女の声に涙が混じっているようにも聞こえる。
「すまなかったな、時雨。随分と長い間、迷惑を掛けた」
俺は、壊れそうなほどにか弱く感じる時雨の背中に手を回し、優しく擦る。
「……違うよ、提督。提督は何も悪くないんだ。謝るのは……謝らないといけないのは、僕たちの方だよ。ごめん、ごめんね提督。僕たちが弱かったから提督に無理させちゃった。ごめん、本当にごめん」
俺に縋りつき泣きながら謝罪の言葉を続ける時雨。嗚咽混じりのその声が俺の心をキツく締め付ける。
「いや、時雨たちは何も悪くない。あの戦場で指揮を執っていたのは俺で、俺自身が自分を囮にする判断をした。あれがその場の最善であると判断し、事実、我々は全員が生還したまま深海棲艦との戦いに勝利している」
俺は、横須賀第一鎮守府の提督として、あの判断を間違えたとは言うつもりはない。確かに、艦娘たちのその後のことを考えれば、今の時雨のように彼女が心に傷を負うことはなかったかもしれない。
少なくとも、俺はそう思っている。そう、これは飽くまで俺個人の感情だ。
「そう、だね……。そうかもしれない、提督の言ってることは正しいよ。…………でも、その判断をさせちゃったのは僕たちだから……。僕たちが弱いのがダメだったんだよ」
そんな時雨の言葉を聞いて思ったことは——そんなわけなくね?だ。よく考えて欲しい、10を越える姫級が襲ってきて、誰一人として轟沈者を出さなかった時雨たちが弱いわけがない。
だが、ただ事実だけを伝えても今の時雨が聞き届けてくれるかと言えば、それはないと言わざるを得ない。だから、俺はいっそのこと肯定することにした。
「そうかもな、力が足りなかったんだ。それは、時雨たちだけじゃなくて、俺も弱かった。だから、ここからまた強くなろう、時雨。俺たちはまだ生きてるんだから」
俺の言葉に時雨の身体がピクリと小さく動く。どうやら、俺の言葉が届いたようだ。そう思ったのだが、時雨がゆっくりと顔をあげたことで見えた瞳がその考えを否定した。
「そうだね、提督。僕たちは強くならないといけないんだ。前よりもずっと……もう、提督が傷付かなくていいように。でも、傷付くのは僕たちだけでいいんだよ、提督は僕たちの後ろで守られてて欲しいな。これからずっと。だから、無理して強くなろうとしないで、僕たちに全部任せてよ」
「……し、時雨さん?ど、どうしちゃったんだ?」
な、流れが変わったぞ……。俺は瞳孔が開ききってハイライトがさようならをした時雨から身体に穴が空きそうなほど見つめられながら、そんなことを思ったのだ。
「僕ね、この一ヶ月いっぱい考えたし、強くなろうと頑張ったんだ。もう提督があんなことをしなくていいように。勿論、僕だけじゃなくて、朝潮も由良も川内も夕立も白露姉さんも、みんなでね。でも、やっぱり僕たちには提督が必要なんだ。だから、だから——————」
その後も暫くの間、時雨は譫言のように俺の背筋が凍るような言葉を吐き続けた。ただただ時雨の重い想いが俺へとのし掛かってくる。
まぁ、表面に出してくれるだけ漣よりかはよっぽどマシだが。…………それに、時雨が俺の部下とは言っても、美少女にこれだけの好意を向けられているのは男として嬉しく思ってしまう。どうやら、俺はだいぶイカれてるらしい。
誰かヤンデレと曇らせの違いを教えて欲しい。