WILK ―忘れずの故郷―   作:ヒツジ(ラム肉

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――ポーランド軍・航空機納入状況整理
一九三八年十一月

WILK。

新造機納入数。

計画比。

低下。

国内生産効率。

低下。

熟練工。

国外配置増加。

軍需側評価。

改善要求。

なお。

航空部隊側。

Bizon。

必要可動数。

概ね確保。

Tur。

現用可能機。

必要数確保。

結論。

数字が、

合わない。


第153話 新造数を、航空戦力だと思うな

 

「納入が足りん」

 

ポーランド軍将校は、

 

朝から言われていた。

 

軍需側。

 

契約。

 

生産計画。

 

月別納入。

 

数字。

 

WILKの新造機納入数は、

 

落ちていた。

 

理由も、

 

分かっている。

 

熟練工を国外へ出した。

 

若手を上へ立たせた。

 

工程を分散した。

 

教育時間を増やした。

 

一人でできる仕事を、

 

三人で覚え直している。

 

当然、

 

遅くなる。

 

「分かっています」

 

「分かっているなら改善しろ」

 

「改善中です」

 

「数字が悪化しているぞ」

 

「……改善の方向が違うので」

 

「何だそれは」

 

説明に、

 

かなり時間がかかった。

 

---

 

午後。

 

ポーランド軍将校は、

 

航空部隊へ行った。

 

今度はこちらから、

 

別の文句を言われると思っていた。

 

Bizonが足りない。

 

Turが古い。

 

予備機がない。

 

新造を急げ。

 

そういう話。

 

ところが。

 

「Bizonは?」

 

「足りています」

 

「……何?」

 

「現状の配備要求については」

 

「Turは」

 

「足りています」

 

「……何?」

 

航空隊の担当者が、

 

逆に不思議そうな顔をした。

 

---

 

ポーランド軍将校は、

 

書類を見た。

 

Bizon。

 

可動。

 

予備。

 

修理中。

 

改修中。

 

Tur。

 

可動。

 

予備。

 

修理中。

 

改修中。

 

数字をもう一度見る。

 

「足りてるな」

 

「はい」

 

「新造納入は落ちているぞ」

 

「そうなんですか」

 

「知らんのか」

 

「こちらは可動機数を見ていますので」

 

軍将校は、

 

しばらく黙った。

 

「……WILKへ行く」

 

---

 

元ドイツ軍技術者は、

 

工場にいた。

 

ポーランド軍将校が入ってくるなり言った。

 

「説明しろ」

 

「何を」

 

「軍需からは納入不足で怒られた」

 

「そうだろうな」

 

「航空隊へ行った」

 

「そうか」

 

「Bizonは足りていると言われた」

 

「そうだろうな」

 

「Turも足りている」

 

「そうだろうな」

 

ポーランド軍将校が机を叩いた。

 

「どっちなんだ!」

 

技術者は顔を上げた。

 

「両方だ」

 

---

 

「新造は減っている」

 

「そうだ」

 

「機体数は減っていない」

 

「そうだ」

 

「おかしいだろ」

 

「おかしくない」

 

「俺がおかしいのか」

 

「今のところは」

 

「殴るぞ」

 

---

 

元ドイツ軍技術者は、

 

別の表を出した。

 

新造。

 

修理復帰。

 

改修復帰。

 

発動機換装。

 

装備更新。

 

再整備。

 

「軍需が見ているのは」

 

一番上。

 

新造。

 

「航空隊が見ているのは」

 

全部。

 

ポーランド軍将校が、

 

表を見る。

 

「……多いな」

 

「仕事が?」

 

「項目が」

 

「飛行機は新造だけでは増えない」

 

「増えてないだろ」

 

「飛べる機体は増える」

 

---

 

Bizon。

 

新造納入。

 

減少。

 

だが、

 

初期生産機。

 

工場へ戻す。

 

構造点検。

 

発動機。

 

更新。

 

配線。

 

更新。

 

通信。

 

更新。

 

計器。

 

更新。

 

脚。

 

必要箇所改修。

 

任務装備。

 

現行規格へ。

 

修理が必要なら、

 

同時にやる。

 

「これ」

 

軍将校が一機分の記録を見る。

 

「四年前の機体か」

 

「そうだ」

 

「発動機は?」

 

「新しい」

 

「通信機」

 

「新しい」

 

「計器」

 

「新しい」

 

「配線」

 

「かなり交換」

 

「脚」

 

「改修済み」

 

「武装」

 

「現行規格」

 

軍将校は機体を見る。

 

「それ、新造じゃないのか」

 

「違う」

 

「何が残っている」

 

「機体」

 

「雑だな」

 

---

 

格納庫には、

 

Bizonが並んでいた。

 

新品。

 

少ない。

 

その隣。

 

一年前の機体。

 

二年前。

 

三年前。

 

さらに古い機体。

 

だが、

 

整備記録には、

 

新しい項目が増えている。

 

発動機。

 

交換。

 

部品。

 

交換。

 

装備。

 

更新。

 

「見た目は同じだな」

 

ポーランド軍将校が言った。

 

元ドイツ軍技術者が答える。

 

「同じだからな」

 

「中身は」

 

「少しずつ違う」

 

「困らないか」

 

「規格を合わせる」

 

「全部?」

 

「必要なところは」

 

---

 

新造一機。

 

最初から作る。

 

材料。

 

加工。

 

組立。

 

配線。

 

装備。

 

試験。

 

時間。

 

人。

 

かなり要る。

 

既存Bizon。

 

戻す。

 

ばらす。

 

悪い部分を見る。

 

使えるものは残す。

 

古い規格を更新。

 

発動機交換。

 

試験。

 

戻す。

 

「速い」

 

技術者が言った。

 

「新造より?」

 

「当然」

 

「安い?」

 

「機体による」

 

「楽?」

 

「機体による」

 

「じゃあ何が良いんだ」

 

「飛行機が帰ってくる」

 

---

 

ポーランド軍将校は、

 

嫌な顔をした。

 

「お前、その言葉好きだな」

 

「会社の仕事だ」

 

---

 

次。

 

Tur。

 

軍将校は、

 

こちらの格納庫に入って、

 

さらに嫌な顔をした。

 

「まだこんなにいるのか」

 

元ドイツ軍技術者が答えた。

 

「いる」

 

「古いぞ」

 

「知っている」

 

「Bizonより遅い」

 

「知っている」

 

「上昇も」

 

「劣る」

 

「それで」

 

「飛ぶ」

 

「またそれか」

 

---

 

Turは、

 

さらに極端だった。

 

新造。

 

ほぼ主力ではない。

 

代わりに、

 

既存機を戻す。

 

徹底的に見る。

 

主翼。

 

胴体。

 

脚。

 

燃料系。

 

配線。

 

計器。

 

通信。

 

発動機。

 

必要なら交換。

 

昔の機体番号。

 

そのまま。

 

中身。

 

何度も変わる。

 

ポーランド軍将校が一機の記録を見た。

 

「主翼交換」

 

「はい」

 

「発動機三代目」

 

「はい」

 

「計器盤更新」

 

「はい」

 

「通信機二回交換」

 

「はい」

 

「脚も」

 

「交換」

 

「胴体」

 

「補修」

 

「これ、同じ機体か?」

 

元ドイツ軍技術者が答えた。

 

「登録上は」

 

「便利な言葉だな」

 

---

 

最新改修Tur。

 

Bizonほど速くない。

 

Bizonほど上がらない。

 

Bizonほど新しいわけでもない。

 

だが、

 

現用可能。

 

輸送。

 

偵察。

 

連絡。

 

医療。

 

訓練。

 

哨戒。

 

そして、

 

必要なら攻撃。

 

ポーランド軍将校が、

 

そこで止まった。

 

「攻撃?」

 

「使う」

 

「Turを?」

 

「必要なら」

 

「旧式だぞ」

 

「現用可能だ」

 

「Bizonがある」

 

「Bizonしか使えない仕事へ回す」

 

---

 

航空隊の担当者も呼ばれた。

 

ポーランド軍将校が聞いた。

 

「本当にTurを攻撃に使うのか」

 

「使う場合があります」

 

「速度は」

 

「遅いです」

 

「高度」

 

「爆装すれば下がります」

 

「航続距離」

 

「下がります」

 

「では何がいい」

 

担当者が答えた。

 

「積めます」

 

「何を」

 

「爆弾を」

 

---

 

Tur。

 

構造に余裕がある。

 

搭載量もある。

 

最大まで積めば、

 

重い。

 

速度。

 

落ちる。

 

上昇。

 

悪化。

 

航続。

 

短くなる。

 

高度。

 

下がる。

 

「欠点だらけだろ」

 

ポーランド軍将校が言った。

 

航空隊担当者は頷いた。

 

「はい」

 

「それで使う?」

 

「最大まで積まなければいい」

 

軍将校が止まる。

 

---

 

近距離。

 

重め。

 

少し遠い。

 

搭載量を減らす。

 

高度が必要。

 

さらに減らす。

 

長距離。

 

別の任務へ。

 

「最大搭載量は」

 

航空隊担当者が言った。

 

「最大まで積むための数字ではありません」

 

元ドイツ軍技術者が少しだけ頷いた。

 

「必要なら積める、という余裕だ」

 

---

 

ポーランド軍将校は、

 

Turを見た。

 

「つまり」

 

「はい」

 

航空隊担当者。

 

「Bizonより性能は低いです」

 

「主力ではない」

 

「はい」

 

「旧式」

 

少し考える。

 

「機体自体は」

 

「現用機?」

 

「はい」

 

「……面倒な分類だな」

 

元ドイツ軍技術者が言った。

 

「古い機体を、古いまま使っているわけではない」

 

---

 

その結果。

 

航空隊は、

 

Bizonを、

 

Bizonでなければ困る任務へ回せる。

 

速度。

 

防御。

 

高負荷。

 

前線。

 

危険な偵察。

 

攻撃。

 

その他。

 

Turで済む仕事。

 

Tur。

 

輸送。

 

連絡。

 

後方偵察。

 

訓練。

 

医療。

 

哨戒。

 

必要なら、

 

近距離攻撃。

 

結果。

 

Bizonの数そのものは増えていない。

 

だが、

 

Bizonを必要とする任務へ、

 

Bizonを多く残せる。

 

---

 

ポーランド軍将校が言った。

 

「TurがBizonを増やしているみたいだな」

 

元ドイツ軍技術者は首を振った。

 

「仕事を減らしている」

 

「同じじゃないか」

 

「違う」

 

「どう違う」

 

「Bizonは増えていない」

 

「分かってるよ!」

 

---

 

さらに。

 

修理復帰。

 

事故。

 

故障。

 

構造疲労。

 

発動機。

 

部品。

 

完全廃棄ではなく、

 

直せるものは戻す。

 

特にBizon。

 

部品共通。

 

任務装備交換。

 

予備発動機。

 

修理設備。

 

これまで、

 

何年も積んできた仕組み。

 

それが、

 

今効いていた。

 

---

 

軍需側。

 

新造納入数。

 

減った。

 

航空隊側。

 

可動機数。

 

足りている。

 

WILK側。

 

修理復帰率。

 

上げた。

 

改修。

 

増やした。

 

ポーランド軍将校が言った。

 

「三者とも別の数字を見ている」

 

元白軍将校が、

 

いつの間にか来ていた。

 

「何を見ている」

 

「軍需は新造」

 

「航空隊は可動」

 

「WILKは?」

 

元ドイツ軍技術者が答えた。

 

「何回戻せるか」

 

---

 

元白軍将校が、

 

少し笑った。

 

「いつもの話だな」

 

「そうだ」

 

---

 

しかし。

 

数字が全部良いわけではない。

 

元ドイツ軍技術者は、

 

別の表を出した。

 

予備発動機。

 

減少。

 

修理待ち。

 

増加。

 

改修待ち。

 

増加。

 

新造納期。

 

遅延。

 

国内熟練工。

 

減少。

 

ポーランド軍将校が言った。

 

「ほら、悪いじゃないか」

 

「悪い」

 

「航空戦力は」

 

「今は足りている」

 

「今後は」

 

「分からん」

 

「またそれか」

 

---

 

元ドイツ軍技術者が、

 

Bizonの一機を指した。

 

「今日飛ぶ」

 

次。

 

Tur。

 

「これも飛ぶ」

 

次。

 

修理中。

 

「これは来週」

 

改修中。

 

「これは再来週」

 

発動機待ち。

 

「これは未定」

 

「つまり」

 

「今ある戦力は足りる」

 

「でも」

 

「余裕は減っている」

 

---

 

航空隊担当者が言った。

 

「新品が欲しくないわけではありません」

 

ポーランド軍将校が見る。

 

「欲しいのか」

 

「欲しいです」

 

「足りない?」

 

「足りています」

 

「……お前までか」

 

「新品は欲しいです」

 

「でも」

 

「今日飛ばす機体はあります」

 

「Turも」

 

「あります」

 

「攻撃にも?」

 

「必要なら」

 

「爆装して高度が落ちても」

 

「その高度でいい任務へ」

 

「航続が落ちても」

 

「その距離の任務へ」

 

軍将校は頭を抱えた。

 

「お前ら、全部そういう答えだな」

 

---

 

夕方。

 

ポーランド軍将校は、

 

軍需側へ戻った。

 

報告。

 

新造納入数。

 

計画未達。

 

事実。

 

改善要求。

 

継続。

 

ただし。

 

Bizon。

 

可動機数。

 

現時点で要求内。

 

Tur。

 

最新改修・修理復帰により、

 

現用可能数確保。

 

航空部隊。

 

機体不足。

 

現時点で報告なし。

 

担当者が読んだ。

 

「納入不足なのに?」

 

「はい」

 

「航空隊は足りている?」

 

「はい」

 

「どういうことだ」

 

ポーランド軍将校は、

 

少し考えた。

 

「俺も朝はそう言いました」

 

---

 

「説明しろ」

 

「新造以外も飛びます」

 

「当たり前だ」

 

「軍需の帳簿では当たり前ではありません」

 

「何?」

 

「新しく何機納めたかを数えている」

 

「それが納入だ」

 

「航空隊は今日何機飛ぶかを数えている」

 

「それも当然だ」

 

「WILKは、壊れた機体を何機戻せるかを数えている」

 

軍需担当者が止まった。

 

「……面倒な会社だな」

 

ポーランド軍将校は答えた。

 

「今さらですか」

 

---

 

その日の航空部報告。

 

Bizon。

 

新造。

 

計画比減。

 

修理復帰。

 

増。

 

現行規格改修。

 

増。

 

運用可能機。

 

要求数確保。

 

Tur。

 

新造。

 

少数。

 

修理復帰。

 

増。

 

最新規格改修。

 

増。

 

運用可能機。

 

要求数確保。

 

予備発動機。

 

減。

 

修理待ち。

 

増。

 

総評。

 

現時点。

 

航空部隊運用可能機数。

 

不足なし。

 

---

 

ポーランド軍将校は、

 

その紙をWILKへ持って帰った。

 

元ドイツ軍技術者に見せる。

 

「これでいいか」

 

「どれ」

 

「不足なし」

 

技術者は少し考えた。

 

「今は」

 

「書くと思った」

 

「書け」

 

軍将校が鉛筆を取った。

 

現時点。

 

不足なし。

 

ただし。

 

予備余力。

 

低下。

 

---

 

「これで?」

 

「いい」

 

「つまり航空戦力は大丈夫なんだな」

 

元ドイツ軍技術者は、

 

格納庫を見る。

 

Bizon。

 

Tur。

 

新品。

 

改修。

 

修理上がり。

 

古い機体番号。

 

新しい発動機。

 

傷跡。

 

新しい部品。

 

全部、

 

飛ぶために戻ってきた機体だった。

 

「大丈夫とは言っていない」

 

「では」

 

「まだ飛べる」

 

ポーランド軍将校はため息をついた。

 

「最近、それで十分な気がしてきた」

 

---

 

一九三八年十一月。

 

WILKの新造機納入は、

 

減っていた。

 

だが、

 

航空隊の機体は、

 

まだ足りていた。

 

新しく作る代わりに。

 

直した。

 

換えた。

 

更新した。

 

戻した。

 

Turも。

 

Bizonも。

 

新造機だけで、

 

航空戦力を作っていたわけではなかった。

 

---

 

会議記録。

 

新造機納入。

 

低下。

 

修理・改修。

 

増加。

 

Bizon。

 

現用必要数。

 

確保。

 

Tur。

 

最新改修機。

 

現用可能。

 

攻撃任務。

 

必要に応じ使用。

 

ただし、

 

爆装時。

 

高度・航続・性能低下。

 

任務選択必須。

 

ポーランド軍将校が、

 

最後に書いた。

 

納入が減っているのに、

 

飛行機が足りている。

 

元ドイツ軍技術者が、

 

その下へ追記した。

 

新造数を、

 

航空戦力だと思うな。

 

さらに、

 

元白軍将校。

 

飛べる機体を数えろ。

 

その次に、

 

何回戻せるかを数えろ。

 

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