WILK ―忘れずの故郷―   作:ヒツジ(ラム肉

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――WILK国内資産優先区分表
一九三九年七月

区分。

第一。

人。

原則。

国外移転可能者は、

継続して移転。

ただし。

国内運用維持に必要な者を、

無計画に抜かない。

第二。

技術。

複写可能なもの。

複写。

小型かつ再建に重要なもの。

国外分散。

第三。

航空機。

現役機。

軍要求を優先。

第四。

部品。

国内戦備に必要。

かつ。

使用見込みのある量を保有。

第五。

設備。

移転可能。

かつ。

国内生産への影響が限定的なもの。

移転。

大型設備。

原則。

使用継続。

第六。

在庫。

増やしすぎない。

第七。

建物。

移動不能。

分類対象外。

追加。

工場長より質問。

「つまり何を残すのですか」

回答。

最後まで使うもの。

再質問。

「最後とはいつですか」

回答。

不明。


第166話 最後まで使うものを、先に決めろ

 

一九三九年七月。

 

夏。

 

工場は、

 

暑かった。

 

---

 

屋根。

 

熱。

 

鉄板。

 

熱。

 

旋盤。

 

熱。

 

発動機。

 

もっと熱い。

 

---

 

窓。

 

開く。

 

---

 

音。

 

外へ。

 

---

 

Bizon。

 

発動機試運転。

 

Tur。

 

機銃調整。

 

貨車。

 

材料。

 

運び込む。

 

---

 

見た目だけなら。

 

WILKは。

 

以前より。

 

忙しかった。

 

---

 

実際。

 

忙しかった。

 

---

 

だが。

 

作っている物の中身が。

 

少し。

 

変わっていた。

 

---

 

新造。

 

減。

 

---

 

修理。

 

増。

 

---

 

改修。

 

増。

 

---

 

予備。

 

整理。

 

---

 

国外移転。

 

継続。

 

---

 

そして。

 

国内在庫。

 

計算。

 

---

 

工場長が。

 

倉庫の前で。

 

腕を組んだ。

 

「少ない」

 

倉庫担当。

 

「去年よりはあります」

 

「戦争前としては少ない」

 

「上限です」

 

---

 

棚。

 

空き。

 

ある。

 

---

 

以前なら。

 

埋めた。

 

---

 

材料がある。

 

部品がある。

 

発動機がある。

 

タイヤがある。

 

弾薬がある。

 

---

 

安心。

 

---

 

そう思う。

 

---

 

今年は。

 

違う。

 

---

 

元ドイツ軍技術者が。

 

倉庫へ来た。

 

工場長が。

 

すぐに言う。

 

「もう少し積めます」

 

「積める」

 

「なら」

 

「使える?」

 

---

 

工場長。

 

止まる。

 

---

 

技術者が。

 

棚を見る。

 

---

 

「三か月で使う?」

 

「ものによります」

 

「半年?」

 

「戦争になれば」

 

「増える?」

 

「当然です」

 

「輸送が止まったら?」

 

「もっと必要です」

 

「撤退するなら?」

 

---

 

工場長。

 

黙る。

 

---

 

その言葉。

 

まだ。

 

慣れない。

 

---

 

撤退。

 

---

 

WILKの工場から。

 

撤退。

 

---

 

技術者は。

 

続けた。

 

「最後まで使える量なら置く」

 

「最後が分からない」

 

「だから上限を決める」

 

---

 

材料。

 

全部。

 

同じではない。

 

---

 

航空機用鋼管。

 

使用速度。

 

高。

 

国内。

 

厚め。

 

---

 

特殊合金。

 

使用速度。

 

低。

 

価値。

 

高。

 

国外へ一部。

 

---

 

電線。

 

国内需要。

 

高。

 

国内。

 

---

 

精密計器。

 

小型。

 

高価。

 

国外。

 

分散。

 

---

 

タイヤ。

 

嵩張る。

 

消耗。

 

早い。

 

国内。

 

---

 

特殊ゲージ。

 

小型。

 

代替困難。

 

国外へ複製。

 

---

 

大型治具。

 

移動。

 

困難。

 

国内。

 

---

 

十一粍弾薬。

 

軍用。

 

国内。

 

大部分。

 

---

 

ただし。

 

国外。

 

最低限。

 

---

 

工場長が聞いた。

 

「こんな細かく分ける必要ありますか」

 

技術者。

 

「全部同じ扱いにすると」

 

棚を指す。

 

「全部失う」

 

---

 

一つずつ。

 

違う。

 

---

 

持って逃げる価値。

 

---

 

残して使う価値。

 

---

 

作り直せるか。

 

---

 

代用品があるか。

 

---

 

重いか。

 

---

 

小さいか。

 

---

 

誰が使えるか。

 

---

 

それを。

 

全部。

 

見る。

 

---

 

午後。

 

五人。

 

会議。

 

---

 

黒板。

 

三列。

 

---

 

出す。

 

残す。

 

まだ決めない。

 

---

 

元白軍将校が。

 

見た。

 

「三つ目が多い」

 

元ドイツ軍技術者。

 

「分からないものを決めるな」

 

「去年の標語みたいだな」

 

「去年からそうだ」

 

---

 

出す。

 

---

 

図面複写。

 

ゲージ複製。

 

小型特殊工具。

 

国外口座資金。

 

一部技術者。

 

家族。

 

---

 

残す。

 

---

 

現用Tur。

 

現用Bizon。

 

航空燃料。

 

大部分の十一粍弾薬。

 

大量消耗品。

 

重整備設備。

 

大型工作機械。

 

---

 

まだ決めない。

 

---

 

予備発動機。

 

大型治具。

 

完成直前機体。

 

未完成機体。

 

材料在庫。

 

試作部品。

 

---

 

ポーランド軍将校が。

 

「予備発動機は残せ」

 

技術者。

 

「全部?」

 

「航空隊が使う」

 

「全部使い切れる?」

 

「戦争になれば使う!」

 

元白軍将校。

 

「戦争が短ければ?」

 

軍将校。

 

「縁起でもない」

 

「長ければ?」

 

「足りなくなる」

 

---

 

沈黙。

 

---

 

どちらも。

 

あり得る。

 

---

 

少なすぎれば。

 

戦えない。

 

---

 

多すぎれば。

 

残す。

 

---

 

ユダヤ人実業家が。

 

言った。

 

「分けましょう」

 

---

 

国内。

 

多数。

 

国外。

 

少数。

 

---

 

軍将校。

 

「何基」

 

技術者。

 

「国外で整備教育と初期再建に必要な数」

 

「戦闘用では」

 

「ない」

 

元白軍将校。

 

「必要なら使える」

 

軍将校。

 

「お前はそれを言わないと死ぬのか」

 

---

 

数。

 

決まる。

 

---

 

大部分。

 

国内。

 

---

 

少数。

 

国外。

 

---

 

完全には。

 

誰も満足しない。

 

---

 

だから。

 

ちょうどよかった。

 

---

 

次。

 

航空機。

 

---

 

元白軍将校。

 

「飛べるTurを国外へ出す?」

 

軍将校。

 

即答。

 

「出さない」

 

---

 

技術者。

 

見る。

 

---

 

軍将校。

 

「今いる機体は戦力だ」

 

「分かっている」

 

「飛べる機体を逃がして、地上部隊を誰が助ける」

 

---

 

強い。

 

言葉。

 

---

 

誰も。

 

反対しなかった。

 

---

 

Bizon。

 

同じ。

 

---

 

現用機。

 

国内。

 

---

 

少なくとも。

 

戦争が始まるまで。

 

---

 

元独立運動家が。

 

聞いた。

 

「民間機は」

 

---

 

沈黙。

 

---

 

WILK所有。

 

輸送。

 

連絡。

 

訓練。

 

民間型Tur。

 

小型機。

 

---

 

軍用ではない。

 

---

 

国外へ出せる。

 

---

 

だが。

 

戦争になれば。

 

使える。

 

---

 

負傷者。

 

運べる。

 

---

 

部品。

 

運べる。

 

---

 

人。

 

運べる。

 

---

 

元白軍将校。

 

「残せ」

 

実業家。

 

「全部?」

 

「一部」

 

---

 

また。

 

分ける。

 

---

 

国外へ。

 

一部。

 

---

 

国内。

 

一部。

 

---

 

工場長が。

 

後で聞いた。

 

「何でも半分にするんですか」

 

技術者。

 

「違う」

 

「そう見えます」

 

「半分なら考えなくていい」

 

---

 

WILKは。

 

考えた。

 

---

 

面倒でも。

 

一つずつ。

 

---

 

七月中旬。

 

航空隊。

 

Tur。

 

帰還。

 

---

 

右翼。

 

穴。

 

---

 

外板。

 

裂け。

 

---

 

訓練中。

 

不時着。

 

---

 

大破ではない。

 

---

 

整備班。

 

見る。

 

---

 

若い整備員。

 

言った。

 

「直します」

 

古参。

 

「当然」

 

---

 

部品。

 

棚。

 

---

 

ある。

 

---

 

主翼外板。

 

ある。

 

---

 

構造材。

 

ある。

 

---

 

脚部品。

 

ある。

 

---

 

無線。

 

予備。

 

ある。

 

---

 

二週間。

 

---

 

Tur。

 

戻る。

 

---

 

航空隊。

 

受領。

 

---

 

軍将校が。

 

その報告を。

 

会議へ持ってくる。

 

「だから在庫は必要だ」

 

技術者。

 

「誰も否定してない」

 

「少なくしすぎるな」

 

「してない」

 

「本当に?」

 

「今の機体が帰った」

 

---

 

軍将校。

 

少し。

 

黙る。

 

---

 

技術者。

 

続ける。

 

「戦うための在庫は残す」

 

「なら」

 

「敵に渡すための在庫は置かない」

 

---

 

はっきり。

 

言った。

 

---

 

初めて。

 

---

 

部屋。

 

静か。

 

---

 

元独立運動家が。

 

机を見た。

 

実業家。

 

帳簿を見る。

 

元白軍将校。

 

技術者を見る。

 

---

 

軍将校。

 

ゆっくり。

 

椅子に座った。

 

「言ったな」

 

「言った」

 

---

 

今まで。

 

ぼかしていた。

 

---

 

非常時処理。

 

---

 

上限。

 

---

 

撤退。

 

---

 

今日。

 

言葉になった。

 

---

 

敵に渡さない。

 

---

 

工場。

 

機械。

 

部品。

 

航空機。

 

燃料。

 

資料。

 

---

 

何を。

 

どこまで。

 

---

 

その先。

 

---

 

誰も。

 

すぐには。

 

言わなかった。

 

---

 

元白軍将校が。

 

口を開く。

 

「原則を決めろ」

 

軍将校。

 

「何の」

 

「残す物」

 

---

 

黒板。

 

---

 

技術者。

 

書く。

 

---

 

戦うために必要なものは残す。

 

---

 

次。

 

---

 

再建に必要で、戦闘に直接不要なものは分散する。

 

---

 

次。

 

手が。

 

止まる。

 

---

 

元白軍将校。

 

「書け」

 

---

 

技術者。

 

書く。

 

---

 

退避時に使用不能化できない余剰は、国内に増やさない。

 

---

 

誰も。

 

何も言わない。

 

---

 

軍将校が。

 

最後に。

 

付けた。

 

---

 

ただし、現在の戦力を削ってはならない。

 

---

 

四行。

 

---

 

それが。

 

一九三九年夏の。

 

WILKだった。

 

---

 

逃げるために。

 

戦力を削らない。

 

---

 

戦うために。

 

未来を全部。

 

国内へ縛らない。

 

---

 

矛盾。

 

---

 

その間。

 

---

 

歩く。

 

---

 

同じ頃。

 

現場。

 

---

 

工員へ。

 

新しい通知。

 

---

 

工具について。

 

私物化禁止。

 

---

 

重要工具。

 

位置。

 

毎日確認。

 

---

 

退勤時。

 

指定場所。

 

---

 

工員。

 

不満。

 

---

 

「盗難ですか」

 

班長。

 

「違う」

 

「では」

 

「無くさないため」

 

---

 

若い工員。

 

「今までだって」

 

「今まで以上に」

 

---

 

重要工具。

 

一つ。

 

なくなる。

 

---

 

作れない。

 

---

 

だから。

 

場所。

 

決める。

 

---

 

図面。

 

持ち出し。

 

制限。

 

---

 

複写済み。

 

確認。

 

---

 

不要な古図面。

 

整理。

 

---

 

最新。

 

国内。

 

国外。

 

双方。

 

---

 

人。

 

技能表。

 

更新。

 

---

 

家族。

 

所在地。

 

更新。

 

---

 

列車。

 

運行。

 

確認。

 

---

 

まだ。

 

全部。

 

普通の会社業務。

 

に。

 

見えた。

 

---

 

七月後半。

 

創業者。

 

退避計画。

 

三回目。

 

---

 

荷物。

 

変化。

 

---

 

元白軍将校。

 

二十キロ。

 

---

 

酒。

 

四本。

 

---

 

軍将校。

 

「まだ四本か」

 

「地図を減らした」

 

「何枚」

 

「二枚」

 

「酒を減らせ」

 

「地図は現地で買える」

 

「酒も買える!」

 

「同じ酒ではない」

 

---

 

元ドイツ軍技術者。

 

三十八キロ。

 

---

 

三十二キロ。

 

---

 

軍将校。

 

「減った」

 

「工具を六キロ置いた」

 

「全部置け」

 

「嫌だ」

 

---

 

実業家。

 

十二キロ。

 

変化なし。

 

---

 

元独立運動家。

 

十八キロ。

 

---

 

二十二キロ。

 

---

 

「増えた」

 

「社員名簿」

 

全員。

 

見る。

 

---

 

元独立運動家。

 

すぐ言う。

 

「通常名簿だ」

 

---

 

軍将校。

 

「危険情報は?」

 

「ない」

 

「家族情報は」

 

「必要最小限」

 

元白軍将校。

 

「複製は」

 

「国外」

 

---

 

軍将校。

 

「なら持つ必要は」

 

「最後に残った人を確認する」

 

---

 

また。

 

最後。

 

---

 

元白軍将校。

 

「お前は最後に残るな」

 

「分かっている」

 

「本当に?」

 

「前回書いた」

 

「紙は逃げないぞ」

 

---

 

元独立運動家。

 

少し。

 

笑う。

 

---

 

軍将校。

 

十五キロ。

 

---

 

変化。

 

---

 

二十三キロ。

 

---

 

元白軍将校。

 

「増えたな」

 

「軍書類」

 

「持ち出せる?」

 

「許可されたものだけ」

 

「何が増えた」

 

「着替え」

 

「八キロ?」

 

「長いかもしれん」

 

---

 

誰も。

 

何が。

 

とは。

 

聞かなかった。

 

---

 

会議終了。

 

---

 

外。

 

夕方。

 

---

 

工場。

 

まだ。

 

動いている。

 

---

 

Bizon。

 

試験飛行。

 

---

 

滑走。

 

---

 

離陸。

 

---

 

速い。

 

---

 

その後。

 

Tur。

 

一機。

 

---

 

ゆっくり。

 

走る。

 

---

 

浮く。

 

---

 

古い。

 

---

 

だが。

 

飛ぶ。

 

---

 

二機。

 

空。

 

---

 

ポーランド軍将校が。

 

見上げた。

 

---

 

「残す」

 

---

 

元白軍将校。

 

隣。

 

---

 

「何を」

 

---

 

「飛べるもの」

 

---

 

「そうだ」

 

---

 

「最後まで」

 

---

 

元白軍将校は。

 

少し。

 

考えた。

 

---

 

「最後まで使えるなら」

 

---

 

軍将校。

 

頷く。

 

---

 

それが。

 

難しい。

 

---

 

いつが。

 

最後か。

 

---

 

誰も。

 

知らない。

 

---

 

七月末。

 

月次総括。

 

---

 

国外移転。

 

継続。

 

---

 

国内航空戦力。

 

維持。

 

---

 

生産効率。

 

低下。

 

---

 

教育。

 

増加。

 

---

 

分散資料。

 

増加。

 

---

 

国内在庫。

 

制限。

 

---

 

国外在庫。

 

増加。

 

---

 

重要資産。

 

区分開始。

 

---

 

若い書記が。

 

最後の欄。

 

尋ねる。

 

「今月の教訓は」

 

---

 

五人。

 

誰も。

 

すぐには答えない。

 

---

 

元ドイツ軍技術者が。

 

倉庫表を見る。

 

---

 

元独立運動家が。

 

人事表を見る。

 

---

 

実業家が。

 

国外口座を見る。

 

---

 

元白軍将校が。

 

地図を見る。

 

---

 

軍将校が。

 

航空隊可動数を見る。

 

---

 

最後に。

 

軍将校が。

 

言った。

 

---

 

「最後まで使うものを、先に決めろ」

 

---

 

書記。

 

書く。

 

---

 

「捨てる物ではなく?」

 

---

 

軍将校。

 

答える。

 

---

 

「捨てる物を決め始めると」

 

少し。

 

止まる。

 

---

 

「何でも捨てられるようになる」

 

---

 

元独立運動家が。

 

頷いた。

 

---

 

「残す理由から決めよう」

 

---

 

一九三九年七月。

 

WILKは。

 

何を捨てるか。

 

まだ。

 

決めなかった。

 

---

 

先に。

 

何を最後まで使うか。

 

決めた。

 

---

 

人。

 

---

 

飛行機。

 

---

 

修理能力。

 

---

 

戦うための部品。

 

---

 

暮らすためのもの。

 

---

 

そして。

 

その先で。

 

会社を。

 

もう一度始めるための。

 

小さな種。

 

---

 

残すものを決めれば。

 

その外側に。

 

初めて。

 

失ってもよいものが見える。

 

---

 

第十章。

 

失うものを選べ。

 

---

 

その選択は。

 

捨てるものからではなく。

 

---

 

最後まで守るものから始まった。

 

 

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