WILK ―忘れずの故郷―   作:ヒツジ(ラム肉

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――WILK国外情勢整理会議・緊急記録
一九三九年八月二十四日

一九三九年八月。

平時は、まだ残っていた。

ただし。

もう、月では数えられなかった。

昨日まで可能だったことが、
明日も可能とは限らない。

列車。
船。
国境。
銀行。
電話。
航空路。

人を出す。
物を出す。
飛行機を戻す。
飛行場を分ける。

一九三九年の夏。

WILKに残された最大の資産は、
金でも、
工場でも、
航空機でもなかった。

まだ使える時間だった。

そして八月二十三日。

その時間が、
急に短くなった。

確認事項。

八月二十三日。

ドイツ。

ソヴィエト連邦。

不可侵条約。

締結。

署名。

モロトフ。

リッベントロップ。

条約。

相互不可侵。

一方が第三国と戦争状態に入った場合、

他方はその第三国を支持せず。

相互利益に関わる問題について協議。

有効期間。

十年。

確認。

公開条文上、

ポーランド分割についての記載。

なし。

確認。

WILK。

秘密外交文書。

保有せず。

確認。

よって。

知らないことを、

知っているものとして扱わない。

追加確認。

それでも。

昨日までの欧州とは、

違う。

結論。

西から来る危険だけを見て、

東を安全な余白として数えるな。



第十一章 残された日を使え
第167話 西だけを見て、東を忘れるな


 

八月二十四日。

 

朝。

 

電話。

 

鳴った。

 

---

 

誰かが出る。

 

切る。

 

また。

 

鳴る。

 

---

 

新聞。

 

届く。

 

---

 

ラジオ。

 

つく。

 

---

 

人が。

 

走る。

 

---

 

ポーランド軍将校が。

 

会議室へ。

 

入った。

 

---

 

手。

 

新聞。

 

---

 

顔。

 

悪い。

 

---

 

元白軍将校が。

 

一目。

 

見る。

 

---

 

「何が」

 

軍将校。

 

新聞を。

 

机へ。

 

置く。

 

---

 

一面。

 

---

 

ドイツ。

 

ソヴィエト。

 

不可侵。

 

---

 

誰も。

 

すぐには。

 

言わなかった。

 

---

 

元ドイツ軍技術者が。

 

最初に。

 

新聞を。

 

取る。

 

---

 

読む。

 

---

 

ユダヤ人実業家。

 

別紙。

 

通信社電。

 

読む。

 

---

 

元独立運動家。

 

窓。

 

見る。

 

---

 

元白軍将校。

 

地図。

 

見る。

 

---

 

ポーランド軍将校。

 

立ったまま。

 

---

 

「昨日まで」

 

言う。

 

---

 

止まる。

 

---

 

「昨日まで何だった?」

 

---

 

元白軍将校が。

 

答える。

 

---

 

「敵同士に近かった」

 

---

 

軍将校。

 

「今は」

 

---

 

元白軍将校。

 

---

 

「少なくとも」

 

---

 

新聞。

 

見る。

 

---

 

「互いに撃たないと言った」

 

---

 

一九三九年八月二十三日。

 

ドイツとソ連はモスクワで不可侵条約へ署名した。公開された条約は相互不可侵、第三国との戦争に際して相手国の敵を支持しないこと、相互協議などを定め、有効期間は十年とされた。翌二十四日には外交当局にもその概要が伝わっている。

 

---

 

ポーランド軍将校が。

 

地図へ。

 

歩く。

 

---

 

西。

 

ドイツ。

 

---

 

東。

 

ソヴィエト。

 

---

 

これまで。

 

両方とも。

 

危険だった。

 

---

 

だが。

 

危険の種類が。

 

違った。

 

---

 

西。

 

目の前。

 

---

 

東。

 

遠く。

 

---

 

不信。

 

ある。

 

---

 

だが。

 

ドイツとの関係とは。

 

別。

 

---

 

少なくとも。

 

そうやって。

 

考えていた。

 

---

 

今日。

 

その二つの間に。

 

一本。

 

線が。

 

引かれた。

 

---

 

元ドイツ軍技術者が。

 

言う。

 

「何を約束した」

 

軍将校。

 

「公開分なら」

 

---

 

紙。

 

読む。

 

---

 

「互いに攻撃しない」

 

「第三国が一方と戦争になった場合、他方がその第三国を支持しない」

 

「協議」

 

---

 

元白軍将校。

 

「第三国」

 

---

 

誰も。

 

言わない。

 

---

 

ポーランド。

 

---

 

言う必要がない。

 

---

 

軍将校が。

 

紙を。

 

机へ。

 

置く。

 

---

 

「だからといって」

 

---

 

少し。

 

強く。

 

---

 

「ソ連がポーランドへ来ると決まったわけではない」

 

---

 

元白軍将校。

 

「そうだ」

 

---

 

軍将校。

 

少し。

 

驚く。

 

---

 

「反対しないのか」

 

「決まっていない」

 

---

 

元白軍将校。

 

地図を見る。

 

---

 

「だから」

 

---

 

指。

 

東。

 

---

 

「安全とも決めるな」

 

---

 

それだけ。

 

---

 

WILKは。

 

未来を。

 

知らない。

 

---

 

九月十七日を。

 

知らない。

 

---

 

秘密議定書を。

 

知らない。

 

---

 

誰が。

 

どこまで。

 

何を。

 

約束したか。

 

知らない。

 

---

 

だから。

 

知らないものを。

 

議事録へ。

 

書かなかった。

 

---

 

ただ。

 

公開された条約だけでも。

 

十分だった。

 

---

 

ドイツが。

 

東で。

 

巨大な戦争を。

 

同時に恐れる必要。

 

---

 

少なくとも。

 

昨日より。

 

小さくなった。

 

---

 

それが。

 

何を意味するか。

 

---

 

軍人なら。

 

分かる。

 

---

 

ポーランド軍将校が。

 

椅子へ。

 

座る。

 

---

 

「悪い」

 

---

 

誰も。

 

何がとは。

 

聞かない。

 

---

 

「かなり?」

 

ユダヤ人実業家。

 

---

 

軍将校。

 

考える。

 

---

 

「かなり」

 

---

 

元ドイツ軍技術者。

 

「では」

 

---

 

また。

 

紙。

 

出す。

 

---

 

軍将校が。

 

顔をしかめる。

 

---

 

「お前らは本当に」

 

---

 

技術者。

 

「何を変える」

 

---

 

それだった。

 

---

 

出来事。

 

起こる。

 

---

 

驚く。

 

---

 

終わり。

 

ではない。

 

---

 

WILKなら。

 

次。

 

---

 

何を。

 

変える。

 

---

 

最初。

 

国外退避経路。

 

---

 

西。

 

---

 

英国。

 

フランス。

 

---

 

遠い。

 

---

 

南。

 

---

 

ルーマニア。

 

---

 

重要。

 

---

 

ポーランド軍将校が。

 

すぐ。

 

そこを見る。

 

---

 

元白軍将校。

 

同じ。

 

---

 

ルーマニア。

 

---

 

これまで。

 

国外拠点。

 

交易。

 

整備。

 

鉄道。

 

南への出口。

 

---

 

今日。

 

意味が。

 

さらに。

 

増えた。

 

---

 

元独立運動家。

 

「南を太くする」

 

---

 

実業家。

 

「どこまで」

 

---

 

「人」

 

---

 

「家族」

 

---

 

「連絡先」

 

---

 

「宿泊」

 

---

 

「列車」

 

---

 

元白軍将校。

 

「道路も」

 

---

 

軍将校。

 

「軍の話は俺がやる」

 

---

 

元白軍将校。

 

「会社の車も走る」

 

---

 

「……それはやれ」

 

---

 

次。

 

国外支部。

 

連絡。

 

---

 

ルーマニア。

 

最優先確認。

 

---

 

住宅。

 

空室。

 

---

 

倉庫。

 

---

 

燃料。

 

---

 

鉄道。

 

---

 

道路。

 

---

 

航空機。

 

受入。

 

---

 

港湾接続。

 

---

 

現地銀行。

 

---

 

元白軍将校。

 

「大使館」

 

軍将校。

 

「政府がやる」

 

---

 

「なら会社は会社をやる」

 

---

 

即。

 

電報。

 

---

 

次。

 

国内人員。

 

---

 

八月予定。

 

国外移転。

 

---

 

前倒し。

 

---

 

ただし。

 

もう。

 

時間。

 

少ない。

 

---

 

人事担当が。

 

言う。

 

---

 

「今日出せと言われても」

 

---

 

元独立運動家。

 

「今日出せる者だけ」

 

---

 

「明日は」

 

---

 

「明日出せる者」

 

---

 

「来週は」

 

---

 

沈黙。

 

---

 

元独立運動家。

 

---

 

「来週の列車が走れば」

 

---

 

それだけ。

 

---

 

今まで。

 

「まだ」

 

という言葉を。

 

使ってきた。

 

---

 

まだ。

 

列車。

 

ある。

 

---

 

まだ。

 

国境。

 

開く。

 

---

 

まだ。

 

送金。

 

できる。

 

---

 

まだ。

 

---

 

八月。

 

---

 

その「まだ」が。

 

急に。

 

薄くなった。

 

---

 

午後。

 

WILK国内工場。

 

---

 

通常操業。

 

---

 

命令。

 

変更。

 

---

 

完成目前のBizon。

 

優先。

 

---

 

修理中Tur。

 

優先。

 

---

 

飛行可能復帰が近い機体。

 

優先。

 

---

 

長期試作。

 

停止。

 

---

 

将来型改修。

 

一部。

 

停止。

 

---

 

実験。

 

延期。

 

---

 

工場長。

 

一覧を見る。

 

---

 

「新しいものを止める?」

 

元ドイツ軍技術者。

 

「今飛ぶものを増やす」

 

---

 

「研究は」

 

---

 

「資料を残せ」

 

---

 

「試作機は」

 

---

 

「飛べるなら評価」

 

---

 

「飛べないなら」

 

---

 

技術者。

 

少し。

 

止まる。

 

---

 

「後」

 

---

 

後。

 

---

 

その言葉も。

 

怖くなった。

 

---

 

工場長。

 

聞かない。

 

---

 

作業。

 

切替。

 

---

 

未来の性能。

 

より。

 

---

 

今日。

 

飛べる数。

 

---

 

Tur。

 

---

 

Bizon。

 

---

 

戻す。

 

---

 

一機。

 

---

 

また。

 

一機。

 

---

 

航空隊。

 

受領。

 

---

 

夕方。

 

軍側。

 

電話。

 

---

 

動員。

 

準備。

 

---

 

飛行場。

 

分散。

 

---

 

部隊。

 

警戒。

 

---

 

詳細。

 

WILK。

 

全て。

 

知らない。

 

---

 

知る必要がある部分だけ。

 

来る。

 

---

 

航空機。

 

一か所へ。

 

集めない。

 

---

 

燃料。

 

分散。

 

---

 

部品。

 

分散。

 

---

 

修理班。

 

小分け。

 

---

 

元ドイツ軍技術者。

 

すぐ。

 

答える。

 

---

 

「できます」

 

---

 

軍将校。

 

「どこまで」

 

---

 

「完全ではない」

 

---

 

「いつから」

 

---

 

「もうやってる」

 

---

 

電話。

 

向こう。

 

沈黙。

 

---

 

「……そうだったな」

 

---

 

WILK。

 

二十年。

 

---

 

一つの巨大基地で。

 

全部。

 

直す会社ではない。

 

---

 

現場。

 

倉庫。

 

鉄道。

 

小工場。

 

---

 

人。

 

---

 

分散。

 

---

 

それが。

 

この時。

 

効く。

 

---

 

航空隊。

 

Tur。

 

四機。

 

---

 

別飛行場。

 

---

 

Bizon。

 

三機。

 

---

 

別。

 

---

 

整備車。

 

---

 

部品。

 

---

 

工具。

 

---

 

移動。

 

---

 

工場長が。

 

言う。

 

「面倒です」

 

---

 

技術者。

 

「知ってる」

 

---

 

「効率が」

 

---

 

「落ちる」

 

---

 

「何回目ですか」

 

---

 

「今年だけで?」

 

---

 

「もういいです」

 

---

 

効率。

 

また。

 

払う。

 

---

 

生き残るために。

 

---

 

夜。

 

国外支部。

 

返信。

 

---

 

英国。

 

受入。

 

可。

 

---

 

フランス。

 

可。

 

---

 

ポルトガル。

 

可。

 

---

 

ルーマニア。

 

---

 

返信。

 

遅い。

 

---

 

全員。

 

待つ。

 

---

 

十分。

 

---

 

二十分。

 

---

 

四十分。

 

---

 

電話。

 

---

 

電報。

 

---

 

到着。

 

---

 

住宅。

 

確保。

 

---

 

倉庫。

 

確保。

 

---

 

鉄道。

 

通常。

 

---

 

航空機。

 

限定受入可。

 

---

 

燃料。

 

追加交渉可能。

 

---

 

元独立運動家が。

 

息を。

 

吐く。

 

---

 

軍将校。

 

言う。

 

「問題なし?」

 

---

 

実業家。

 

「今は」

 

---

 

机。

 

端。

 

---

 

酒類部門。

 

報告。

 

---

 

果実酒。

 

減。

 

---

 

梨酒。

 

増。

 

---

 

航路変更。

 

---

 

熟成果実酒。

 

増。

 

---

 

長時間待機。

 

---

 

薬草酒。

 

少数。

 

---

 

負傷者あり。

 

---

 

蒸留酒。

 

増加。

 

---

 

緊急脱出。

 

---

 

二度蒸留酒。

 

---

 

少数。

 

---

 

即時退避。

 

---

 

五人。

 

見る。

 

---

 

元白軍将校。

 

「どこ」

 

---

 

担当。

 

複数地域。

 

---

 

詳細。

 

分散。

 

---

 

本部。

 

ない。

 

---

 

だから。

 

全体像。

 

ない。

 

---

 

それでいい。

 

---

 

以前。

 

決めた。

 

---

 

その網に。

 

本部を。

 

作らない。

 

---

 

今日。

 

その意味が。

 

さらに。

 

重くなる。

 

---

 

もし。

 

誰かが。

 

一か所。

 

取っても。

 

---

 

全部。

 

取れない。

 

---

 

もし。

 

通信が。

 

一つ。

 

切れても。

 

---

 

別。

 

---

 

会社も。

 

同じ。

 

---

 

夕食。

 

遅い。

 

---

 

食堂。

 

---

 

パン。

 

---

 

スープ。

 

---

 

誰も。

 

あまり。

 

食べない。

 

---

 

軍将校が。

 

言う。

 

「ドイツとソ連」

 

---

 

元白軍将校。

 

「そうだ」

 

---

 

「信じられるか」

 

---

 

「国家は信じるものか?」

 

---

 

「そういう意味じゃない」

 

---

 

「なら」

 

---

 

元白軍将校。

 

パン。

 

ちぎる。

 

---

 

「昨日まで敵だった者同士でも」

 

---

 

「今日、署名する」

 

---

 

軍将校。

 

---

 

「明日は?」

 

---

 

元白軍将校。

 

---

 

「知らん」

 

---

 

それが。

 

一番。

 

正しい。

 

---

 

ユダヤ人実業家が。

 

言う。

 

「なら契約は」

 

---

 

軍将校。

 

見る。

 

---

 

「何だ」

 

---

 

「明日まで生きている前提で結ぶ」

 

---

 

「普通だな」

 

---

 

「ただし」

 

---

 

来た。

 

---

 

「明日切れても会社が死なないようにする」

 

---

 

軍将校。

 

少し。

 

笑う。

 

---

 

「やっぱりWILKだ」

 

---

 

その夜。

 

創業者退避計画。

 

四回目。

 

---

 

元白軍将校。

 

経路。

 

変更。

 

---

 

西。

 

一。

 

---

 

南。

 

一。

 

---

 

追加。

 

---

 

軍将校。

 

「どこ」

 

---

 

「決めない」

 

---

 

「計画にならん」

 

---

 

「出口だけ複数」

 

---

 

「行先は」

 

---

 

「その時」

 

---

 

元ドイツ軍技術者。

 

同じ。

 

---

 

英国。

 

優先。

 

---

 

ただし。

 

南経路。

 

追加。

 

---

 

実業家。

 

---

 

西。

 

南。

 

海。

 

---

 

複数。

 

---

 

元独立運動家。

 

---

 

社員退避後。

 

---

 

軍将校。

 

見る。

 

---

 

「またこれか」

 

---

 

独立運動家。

 

「書き換えた」

 

---

 

見る。

 

---

 

可能な限り社員退避を確認後。

 

---

 

軍将校。

 

「ほぼ同じだ!」

 

---

 

「改善した」

 

---

 

「どこが!」

 

---

 

少し。

 

笑い。

 

---

 

ほんの少し。

 

---

 

軍将校。

 

自分。

 

---

 

軍命令。

 

---

 

その下。

 

---

 

会社側連絡先。

 

三つ。

 

---

 

元白軍将校。

 

「増えた」

 

---

 

軍将校。

 

「軍がどこへ行くか分からん」

 

---

 

「そうだな」

 

---

 

笑い。

 

消える。

 

---

 

会議。

 

最後。

 

---

 

若い書記。

 

「総括」

 

---

 

誰も。

 

すぐには。

 

言わない。

 

---

 

地図。

 

---

 

西。

 

ドイツ。

 

---

 

東。

 

ソ連。

 

---

 

南。

 

ルーマニア。

 

---

 

西のさらに先。

 

英国。

 

フランス。

 

---

 

海の先。

 

ポルトガル。

 

---

 

もっと先。

 

米州。

 

---

 

これまで。

 

WILKは。

 

地図の外へ。

 

会社を。

 

伸ばしてきた。

 

---

 

今日。

 

初めて。

 

地図の。

 

両側を。

 

同時に。

 

見た。

 

---

 

元白軍将校が。

 

言った。

 

---

 

「西だけを見るな」

 

---

 

軍将校。

 

続ける。

 

---

 

「東も決めつけるな」

 

---

 

技術者。

 

---

 

「南を残せ」

 

---

 

実業家。

 

---

 

「海を残せ」

 

---

 

独立運動家。

 

---

 

「人を先に出せ」

 

---

 

書記。

 

全部。

 

書く。

 

---

 

そして。

 

一番下。

 

---

 

敵が一人だと決めて計画するな。

 

---

 

軍将校。

 

すぐ。

 

言う。

 

---

 

「それは強すぎる」

 

---

 

元白軍将校。

 

「では」

 

---

 

書記。

 

待つ。

 

---

 

軍将校。

 

考える。

 

---

 

「こうだ」

 

---

 

書く。

 

---

 

一方向だけが危険だと決めて計画するな。

 

---

 

全員。

 

頷く。

 

---

 

それなら。

 

事実。

 

---

 

未来を。

 

知らなくても。

 

書ける。

 

---

 

一九三九年八月二十四日。

 

WILKは。

 

独ソ不可侵条約の。

 

公開された文章しか。

 

知らなかった。

 

---

 

秘密の取り決めを。

 

知らない。

 

---

 

九月十七日を。

 

知らない。

 

---

 

ポーランドが。

 

どうなるか。

 

まだ。

 

知らない。

 

---

 

だから。

 

恐怖で。

 

未来を。

 

書かなかった。

 

---

 

ただ。

 

昨日まで。

 

別々だった二つの危険が。

 

---

 

今日。

 

互いに。

 

撃たないと。

 

約束した。

 

---

 

その事実だけで。

 

十分だった。

 

---

 

西だけを見て。

 

東を。

 

忘れるな。

 

---

 

東だけを恐れて。

 

西を。

 

見失うな。

 

---

 

そして。

 

どちらか一方から。

 

逃げれば済むと。

 

思うな。

 

---

 

だから。

 

道を。

 

増やした。

 

---

 

人を。

 

動かした。

 

---

 

飛べる機体を。

 

戻した。

 

---

 

工場を。

 

分けた。

 

---

 

出口を。

 

残した。

 

---

 

まだ。

 

使えるうちに。

 

 

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