車列はアドリア海沿岸からさらに西へ進み、複数の鉄道駅を中継点として利用した。
鉄道利用者。
幼児を伴う家族。
高齢者。
負傷者。
長距離陸路移動に不向きな者。
鉄道沿線に目的地を持つ者。
フランス方面へ向かう軍人。
小型車両の所有者およびその家族。
なお、鉄道利用によって同行人数は大幅に減少した。
その後、増加した。
駅が見えた時、元金持ちは本気で喜んだ。
「駅だ!」
若いWILK社員が驚く。
「そんなに嬉しいですか」
「嬉しいとも」
「鉄道好きでした?」
「人を減らせる!」
元白軍将校が助手席から振り返る。
「物騒な言い方だな」
「お前が言うな!」
車列は駅前広場へ入った。
トラック。
乗合車。
馬車。
自転車。
自家用車。
その後ろから、途中参加した車。
さらにその後ろ。
駅員が最初の数台を見た。
次を見る。
まだ続く。
さらに見る。
まだ来る。
駅員は帽子を直した。
「……何人です」
元金持ちは即答した。
「百二十六」
元白軍将校が見る。
「減ったな」
「昨日の夜に数えた!」
「そうか」
「覚えろ!」
駅員が帳面を開く。
「行き先は」
元金持ち:
「いろいろ」
駅員:
「いろいろ?」
若い社員が言う。
「フランス方面が多いです」
ポーランド兵:
「軍へ戻る者も」
別の家族:
「親族を頼る者も」
元白軍将校:
「西」
元金持ち:
「方角で申告するな!」
駅員はしばらく一行を見る。
それから妙に慣れた顔で言った。
「なるほど」
元金持ちが止まる。
「……なるほど?」
「最近多いので」
一同が黙った。
駅員は続ける。
「家族連れはこちら。軍人は別窓口。負傷者は先に申告してください。車両輸送希望は貨物担当へ」
元金持ちが若い社員を見る。
若い社員も見る。
「慣れてる」
「慣れてるな」
元白軍将校:
「助かる」
元金持ち:
「お前だけ納得するな」
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駅の中では、さらに手際がよかった。
案内板。
臨時窓口。
名簿。
荷物札。
車両輸送の申込書。
若い社員が感心する。
「前の港より早いですね」
元金持ち:
「処理量が違うんだろ」
駅員が聞く。
「WILKですか?」
若い社員:
「はい」
元金持ち:
「一部だけな」
元白軍将校:
「だいたいそうだ」
元金持ち:
「だいたいで会社を名乗るな!」
駅員は気にしなかった。
「支払いは前と同じですか」
元金持ちが眉を上げる。
「前?」
「昨日も別の一団が来ましたよ」
「誰だ」
「ポーランド人です」
「WILK?」
「そう名乗ってました」
若い社員が元白軍将校を見る。
元白軍将校:
「知らん」
元金持ち:
「おい」
駅員:
「支払証書はこれです」
紙を出した。
元金持ちが受け取る。
見る。
黙る。
もう一度見る。
「……様式が改善されてる」
若い社員:
「ほんとだ」
元白軍将校:
「使えるならいい」
元金持ち:
「うちより先に現場が改善するな!」
---
人を分けることになった。
第一群。
家族連れ。
第二群。
老人。
第三群。
負傷者。
第四群。
フランス方面へ向かうポーランド兵。
第五群。
途中の都市で降りる者。
元金持ちが名簿を確認する。
「これで四十八人減る」
若い社員:
「一気に?」
「列車は偉大だ」
元白軍将校:
「まだ空いてる」
元金持ち:
「その発言やめろ」
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次に車両だった。
小型乗用車。
積載量の少ない軽トラック。
長距離走行には不向きな古い車。
元金持ちが一台ずつ見る。
「これは列車」
持ち主:
「車ごと?」
「車ごと」
「なぜ」
「向こうでまた使える」
「私も?」
「持ち主も一緒だ」
持ち主は少し驚いた。
「そこまでしてくれるのか」
元金持ち:
「お前の車を使わせてもらった分だ」
元白軍将校:
「払うものは払う」
元金持ち:
「そこは珍しく話が早いな」
「珍しくは余計だ」
軽トラックの持ち主が言う。
「燃料代まで払ってもらってる」
元金持ち:
「走らせたのはこちらだからな」
「修理代も」
「壊したのはこちらだ」
元白軍将校:
「次」
元金持ち:
「お前は会話を切るな!」
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貨車に車が積まれていく。
一台。
二台。
三台。
乗用車。
小型トラック。
工具車。
持ち主たちは別の客車へ。
若い社員が見送る。
「なんだか、寂しいですね」
元金持ち:
「減るのは良いことだ」
「情緒ないですね」
「帳簿には情緒欄がない」
元白軍将校:
「作ればいい」
元金持ち:
「作らん!」
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ホーム。
出発時刻が近づく。
ポーランド兵たちが並ぶ。
その一人が元白軍将校へ敬礼した。
「ここからフランスへ行きます」
「ああ」
「向こうでまた戦います」
「ああ」
「あなたは?」
「英国」
兵士が苦笑する。
「まだ遠いですね」
元金持ちが横から言う。
「その話は何度もした」
兵士:
「全員英国まで?」
元白軍将校:
「知らん」
元金持ち:
「もうそれで通すのか」
若い社員:
「途中で降りる人も、増える人もいますから」
兵士が笑った。
「増える?」
元金持ち:
「聞くな」
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列車が入ってくる。
蒸気。
音。
人の声。
荷物。
駅員の笛。
老人たちが乗る。
家族が乗る。
子供が窓際へ。
負傷者。
兵士。
元白軍将校は一人ずつ見る。
名前は全部知らない。
でも顔はだいたい覚えている。
若い社員が聞く。
「何か言わないんです?」
「何をだ」
「別れの言葉とか」
元白軍将校は少し考えた。
「着いたら連絡しろ」
若い社員:
「それだけ?」
「十分だ」
元金持ち:
「まあ、あんたらしい」
列車が動き出す。
手が振られる。
窓から子供が叫ぶ。
「さようなら!」
若い社員も手を振る。
ポーランド兵が敬礼する。
元白軍将校も帽子へ手をやった。
短く。
それだけ。
列車は西へ向かった。
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元金持ちは帳簿を開いた。
「よし」
若い社員:
「何人になりました?」
「七十八」
「減りましたね!」
「減った!」
元金持ちは本当に嬉しそうだった。
元税務官も確認する。
「車両も減りました」
「何台」
「十八」
元金持ち:
「素晴らしい」
元白軍将校:
「空いたな」
元金持ちの笑顔が消えた。
「何が」
元白軍将校:
「車」
「やめろ」
若い社員:
「座席も空きました」
「お前も言うな」
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駅を出ようとした時だった。
駅前に人がいた。
十人。
二十人。
もっと。
荷物を持っている。
家族。
軍人。
職人。
一人は自転車。
二人は馬車。
小型トラックも一台。
元金持ちは動きを止めた。
「……何だ」
駅員が当然のように答えた。
「後続です」
「後続?」
「西へ向かう人たち」
「なぜここに」
「あなた方の車列が来ると聞いたので」
元金持ちが元白軍将校を見る。
「誰が広めた」
元白軍将校:
「知らん」
若い社員:
「多分前の町ですね」
駅員:
「このところ、WILKの車列の後を追えば西へ行けると言われてまして」
元金持ち:
「誰だそんなこと言い出したの!」
駅員は首をかしげた。
「さあ」
元白軍将校は人々を見る。
元金持ち:
「見るな」
元白軍将校:
「何ができる」
「聞くな!」
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最初の男。
「整備工です」
元白軍将校:
「来い」
元金持ち:
「一人目でこれか!」
次。
「看護婦です」
「来い」
「二人目!」
次。
「農家です。馬車があります」
元白軍将校:
「自前か」
「はい」
元金持ちが割って入る。
「飼料代はこちらで出す。同行日数も記録する」
若い社員が笑う。
「もう受け入れる前提ですね」
元金持ち:
「どうせ止めても来る!」
次。
「運送屋です。トラック一台」
元金持ちの顔が少し明るくなる。
「積載量は?」
若い社員:
「元白軍将校みたいになってますよ」
「うるさい!」
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駅員はその様子を見ていた。
「慣れてますね」
元金持ち:
「慣れたくて慣れたんじゃない」
駅員:
「次の駅にも連絡しておきます」
元金持ち:
「何を」
「後続がいると」
元金持ちは止まった。
「待て」
駅員:
「車両輸送も必要でしょう」
「待て」
「WILK払いで?」
「待て!」
元白軍将校:
「助かる」
元金持ち:
「お前は喜ぶな!」
駅員はもう書類を書き始めていた。
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一時間後。
元金持ちは人数を数え直した。
一回。
二回。
三回。
「百三」
若い社員:
「増えましたね」
「四十八人列車に乗せた」
「はい」
「なのに七十八から百三になった」
「二十五人増えました」
元白軍将校:
「計算できるじゃないか」
元金持ち:
「その台詞を俺に返すな!」
元税務官が付け加える。
「車両は二十一台です」
元金持ち:
「三台増えた?」
「馬車を含みます」
「今回は含めろ!」
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車列が駅前を出る。
ホームでは、駅員たちが次の一団の処理を始めていた。
家族連れはこちら。
軍人は別。
車両持ちは貨物担当。
負傷者は先。
支払証書はこの様式。
誰かが聞く。
「WILKの人たちは?」
駅員が答えた。
「もう行った」
「では我々は?」
駅員は少し考えた。
「同じようにやります」
それだけだった。
車列が一度通ったことで、駅には手順が残った。
その手順は、次の人間にも使われた。
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街道へ戻った車列の中で、若い社員が後ろを見る。
「減って、増えましたね」
元金持ち:
「言うな」
「列車で送れば楽になると思ったのに」
「私もだ」
元白軍将校:
「楽にはなった」
元金持ち:
「どこが」
「歩いてる奴が減った」
元金持ちは後ろを見る。
ほとんど全員、何かに乗っている。
トラック。
馬車。
自転車。
確かに。
「……そこだけは認める」
元白軍将校:
「では次の町へ」
「その次は?」
「たぶんまた駅がある」
元金持ち:
「また減らせるな」
若い社員:
「また増えますね」
元金持ち:
「言うな!」
列車は西へ人を運んだ。
車列も西へ人を運んだ。
そして駅には、次の人々がもう集まり始めていた。
狼回廊という名前は、まだなかった。
だが。
道だけではなく。
駅にも。
少しずつ、道の続きを知る者が増えていた。