WILK ―忘れずの故郷―   作:ヒツジ(ラム肉

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――ポーランド陸軍航空部・Bizon輸送試験報告
一九三一年

試験機は未整地飛行場へ以下を輸送した。

十一粍航空機銃 一挺。
七・九二粍航空機銃 一挺。
機銃運搬用二輪台車 二台。
十一粍弾薬 二百四十発。
七・九二粍弾薬 一千二百発。
医薬品。
無線機部品。
保存食。

現地において、機銃は運搬台車から降ろされなかった。

運搬台車に射撃用固定具を追加したためである。

帰投時には負傷者役四名、衛生兵一名、故障無線機二基、空になった弾薬袋および農産物見本を搭載した。

試験担当者は、

「往路で運んだ物が、そのまま帰路の積載器具になった」

と報告した。

会計課は、機銃運搬台車を兵器、航空用品、輸送器具、医療器具のいずれとして登録すべきか決定できなかった。


第86話 帰りを空荷にするな

Bizonの胴体内には、二台の二輪台車が並んでいた。

 

一台には十一粍航空機銃。

 

もう一台には、Turで使われている七・九二粍航空機銃。

 

銃身は進行方向へ向けられ、車輪は床面の溝に収まり、台車の前後が貨物用レールへ固定されている。

 

その周囲へ弾薬、医薬品、無線機部品、乾燥パン、缶詰が詰め込まれていた。

 

ポーランド軍将校は貨物表を持ち、台車を見下ろした。

 

「確認する。これは輸送試験だ」

 

「そうだ」

 

元白軍将校が答えた。

 

「射撃試験ではない」

 

「銃を運ぶ」

 

「撃たないな」

 

「敵がいなければな」

 

「試験場に敵はいない!」

 

元独立運動家が十一粍機銃の横に積まれた緑色の麻袋を持ち上げた。

 

袋の中には二十発の短い弾帯が入っている。

 

麻袋の口には革片が縫い付けられ、その地色で弾種を識別できるようになっていた。

 

「これも持っていく」

 

「それは何だ」

 

「弾薬袋だ」

 

「見れば分かる。なぜ穀物袋に弾薬が入っている」

 

「穀物が漏れない袋なら、弾薬も漏れない」

 

元ドイツ軍技術者が袋を取り上げた。

 

「麻の繊維が給弾部へ入る」

 

「だから内側に布を張った」

 

「湿気を吸う」

 

「革蓋を付けた」

 

「専用品を作れ」

 

ユダヤ人実業家が帳簿から目を上げた。

 

「専用品一個の費用で、これが八個作れます」

 

元ドイツ軍技術者は袋を台車の側面へ掛けた。

 

革輪が金具へ収まり、短い弾帯の先端だけが給弾口近くに置かれた。

 

「……使える」

 

元独立運動家が頷いた。

 

「ならよい」

 

「よくはない。使えるだけだ」

 

「兵器は使えればよい」

 

元白軍将校が言った。

 

元ドイツ軍技術者は袋から手を離した。

 

「その考えで何度、工場を増やしたと思っている」

 

ポーランド軍将校は七・九二粍機銃側の台車を見た。

 

「それより、この二台は同じ物なのか」

 

「台車は同じだ」

 

元独立運動家が答えた。

 

「上の受け具だけが違う」

 

七・九二粍機銃の下には細い受け架。

 

十一粍機銃の下には、より厚い揺架と反動受け。

 

どちらも二本の固定ピンで台車へ取り付けられていた。

 

台車そのものは低い二輪式で、長い牽引把手と小さな荷台、工具箱を備えている。

 

元は航空機銃を格納庫から機体まで運ぶための物だった。

 

ポーランド軍将校が、その後部に折り畳まれた二本の脚を指した。

 

「これは」

 

「整備兵が付けた」

 

「なぜ運搬台車に脚がある」

 

「射撃時に台車が下がったからだ」

 

「撃ったのか」

 

「一度だけだ」

 

「誰が許可した!」

 

元白軍将校が首を傾げた。

 

「撃てる銃が載っていた」

 

「運ぶために載せていた!」

 

「運んだ先に標的があった」

 

「標的ではなく廃材だ!」

 

「廃材は壊れた」

 

ポーランド軍将校は貨物表を丸めた。

 

「今回は撃たない!」

 

五人の背後で、兵装担当者がそっと顔を逸らした。

 

Bizonは正午前に離陸した。

 

機体は重かった。

 

十一粍機銃、七・九二粍機銃、台車二台、弾薬、医薬品、食料。

 

それでも離陸滑走は想定内に収まり、機体は地面から鈍く離れた。

 

上昇は速くない。

 

操縦士は何度も速度計を見た。

 

「飛びます」

 

副操縦士が答えた。

 

「それは前回分かった」

 

「今回は積んで飛んでいます」

 

「上昇しません」

 

「少しはしています」

 

後方に座る元ドイツ軍技術者が口を挟んだ。

 

「高度計を見ろ。確かに上がっている」

 

「地平線が近いままです」

 

「発動機が弱い」

 

元白軍将校が結論づけた。

 

「分かっている」

 

元ドイツ軍技術者は窓の外を見た。

 

「だから交換できるように作った」

 

Bizonは低い高度を保ち、ゆっくりと目的地へ向かった。

 

貨物室では、二輪台車が床レールへ固定されたまま小刻みに揺れている。

 

だが車輪と床の間へ噛ませた木片は動かず、牽引把手も天井近くへ吊られていた。

 

元独立運動家は固定具を確認した。

 

「台車のまま積めるのはよい」

 

ポーランド軍将校が言った。

 

「機体へ載せるために作ったのではないだろう」

 

「運搬台車だ。運搬されて当然だ」

 

「飛行機で運ぶとは聞いていない」

 

ユダヤ人実業家が答えた。

 

「飛行機まで運べる台車なら、飛行機の中へ入れても問題ありません」

 

「言葉の順番だけで正当化するな」

 

目的地は、草地を均しただけの臨時飛行場だった。

 

前日の雨で土が柔らかい。

 

着陸地点には白布が並べられ、飛行場の端に数人の兵士と一台の荷馬車が待っていた。

 

Bizonは速度を落とした。

 

大きな翼が機体を支え、低速でも急に片側を落とさない。

 

主脚が草へ触れた。

 

大きな低圧タイヤが湿った地面へ沈み、それでも機体は前へ進んだ。

 

尾部が下がる。

 

草と泥を跳ね上げながら、Bizonは飛行場の半ばで止まった。

 

ポーランド軍将校が窓の外を見た。

 

「止まった」

 

元白軍将校が立ち上がる。

 

「降ろすぞ」

 

「まず発動機を止めろ!」

 

後部扉が開かれた。

 

折り畳み式の短い斜路が降ろされ、二本の溝が機内床の貨物レールとつながる。

 

台車の固定ピンを抜く。

 

十一粍機銃を載せた台車を、二人の兵士が押した。

 

車輪がレールを進み、斜路へ乗る。

 

前輪はない。

 

二輪のため、後ろから牽引把手を支えなければ銃身側が落ちる。

 

「重い!」

 

兵士が叫んだ。

 

元白軍将校が反対側の把手を持った。

 

「銃だ。軽いわけがない」

 

「航空機銃ですよね!」

 

「地上へ降りれば地上の銃だ」

 

台車は斜路を下り、湿った草地へ着いた。

 

十一粍機銃本体、揺架、台車、小さな工具箱。

 

弾薬を除いても、一人で気軽に運ぶ重さではない。

 

平地なら二人。

 

泥では三人。

 

傾斜があれば四人欲しい。

 

続いて七・九二粍機銃の台車が降ろされた。

 

こちらは明らかに軽く、二人で容易に動かせた。

 

待っていた現地部隊の下士官が、二台を見比べた。

 

「同じ台車ですか」

 

「上だけ違う」

 

元独立運動家が答えた。

 

「七・九二粍を外して十一粍を載せることもできる」

 

「逆も?」

 

「できる」

 

下士官は十一粍機銃を見た。

 

「このまま撃てますか」

 

ポーランド軍将校が即座に答えた。

 

「撃たない」

 

元白軍将校は答えた。

 

「撃てる」

 

「輸送試験だ!」

 

下士官は折り畳まれた後脚を開いた。

 

台車後部から二本の脚が下がり、先端の小さな駐鋤が湿った土へ食い込む。

 

車輪には簡単な止め具が掛けられた。

 

牽引把手を左右へ開くと、それ自体が補助脚になった。

 

下士官は感心したように言った。

 

「機銃座になりますね」

 

「臨時だ」

 

ポーランド軍将校が強調した。

 

「運搬台車へ、臨時の射撃機能を加えただけだ」

 

「つまり機銃座です」

 

「臨時だ!」

 

兵装担当者が十一粍弾薬袋を台車へ掛けた。

 

緑色の麻袋。

 

口を留める革片は黒。

 

通常弾である。

 

袋の中から二十発の短帯を取り出し、先端を給弾口へ通す。

 

下士官が銃把を握った。

 

「五発だけ」

 

ポーランド軍将校が振り返った。

 

「なぜ撃つ話になっている!」

 

元白軍将校が遠くの木製標的を指した。

 

「運搬した銃が機能するか確認する」

 

「昨日まで撃っていただろう!」

 

「運搬後に撃てるかは別だ」

 

元ドイツ軍技術者が頷いた。

 

「それは正しい」

 

「お前まで!」

 

十一粍機銃が吠えた。

 

五発。

 

低く重い音が草地を揺らした。

 

台車はわずかに後ろへ沈み、駐鋤が土を掘った。

 

標的の板に大きな穴が開く。

 

下士官は銃を止めた。

 

「動きません」

 

元白軍将校が脚を見た。

 

「土が柔らかいからだ」

 

「固い地面では?」

 

「車輪止めを増やせ」

 

元ドイツ軍技術者が言った。

 

「脚の角度も変える。今は起こしすぎている」

 

兵装担当者が短帯を抜き取った。

 

残り十五発。

 

袋ごと銃架から外し、口を閉じる。

 

下士官が袋を持ち上げた。

 

「これは便利です」

 

「専用弾薬箱の方がよい」

 

元ドイツ軍技術者が言う。

 

「ありますか」

 

「ない」

 

「なら袋の方がよいです」

 

元ドイツ軍技術者は黙った。

 

貨物の搬出が始まった。

 

医薬品は赤い麻袋。

 

保存食と乾燥パンは黄色い麻袋。

 

弾薬は緑。

 

袋の網目へ通した一本の縄を長くすれば肩掛けになり、短く結べば手提げになる。

 

兵士たちは黄色い袋を肩へ掛け、赤い袋を手に持ち、緑の袋を台車の板へ積んだ。

 

ポーランド軍将校が、その板を見た。

 

十一粍機銃を降ろした後の台車へ、長方形の板が載せられている。

 

板の裏には機銃受けと同じ固定金具が付いていた。

 

二本のピンを差すだけで、台車は平らな荷車へ変わっていた。

 

「その板はどこから出た」

 

元独立運動家がBizonの機内を指した。

 

「壁に固定してあった」

 

「何に使う板だ」

 

「荷物を載せる」

 

「機銃運搬台車だぞ」

 

「機銃は降ろした」

 

「だからといって荷車にするな」

 

元白軍将校が赤い医薬品袋を板へ載せた。

 

「空いている」

 

「空いていれば何でも載せるのか!」

 

ユダヤ人実業家が答えた。

 

「空いた状態で帰す方が損です」

 

現地部隊の衛生兵が、さらに別の板を見つけた。

 

板の両側には穴があり、縄を通せる。

 

「これ、担架にもなりますね」

 

ポーランド軍将校は額を押さえた。

 

「ならない」

 

衛生兵が板へ毛布を敷いた。

 

「なりました」

 

帰路の試験が始まった。

 

負傷者役四名。

 

二名は担架。

 

一名は座席へ座らせ、脚を固定。

 

もう一名は歩けるが、介助が必要という想定だった。

 

二輪台車に板を載せ、その上へ担架の一つを固定する。

 

衛生兵一名が台車を引き、兵士一名が後ろから押した。

 

草地から機体まで、泥の中を進む。

 

専用の患者運搬車より高い。

 

揺れる。

 

だが、使える。

 

機体後部の斜路まで来ると、台車から担架だけを外した。

 

担架は貨物レールの横へ固定。

 

台車は板を付けたまま機内へ押し込み、その上へ故障した無線機二基と空の弾薬袋を積んだ。

 

黄色い袋には、現地農場から受け取った小麦と豆の見本が入った。

 

ポーランド軍将校がその袋を見た。

 

「なぜ農産物を積む」

 

ユダヤ人実業家が答えた。

 

「帰りが空いているからです」

 

「試験貨物にない」

 

「帰路の重心調整に使えます」

 

「石でもよいだろう」

 

「石は売れません」

 

元独立運動家が黄色い袋を奥へ押した。

 

「豆は食える」

 

元白軍将校も頷いた。

 

「石よりよい」

 

ポーランド軍将校は貨物表の余白へ書き込んだ。

 

農産物見本。

理由、不明。

 

全員が乗り込んだ。

 

銃を降ろしたため、往路より軽い。

 

だが帰路も空ではない。

 

負傷者役。

 

衛生兵。

 

故障無線機。

 

空袋。

 

農産物。

 

そして一台の台車。

 

元白軍将校が貨物室を見回した。

 

「もう一台載る」

 

「十一粍機銃を置いてきただろう!」

 

「だから一台空いた」

 

「そういう意味ではない!」

 

現地部隊の下士官が機外から叫んだ。

 

「次は七・九二粍用もください!」

 

ポーランド軍将校が扉から顔を出した。

 

「専用の地上銃架を申請しろ!」

 

「一基しか来ません!」

 

「では待て!」

 

「この台車なら六台作れます!」

 

ポーランド軍将校は言葉を失った。

 

元白軍将校が扉を閉めた。

 

「現場は分かっている」

 

Bizonは再び草地を走った。

 

往路より軽いため、早く浮いた。

 

それでも発動機は忙しく回り、機体をゆっくりと上昇させる。

 

貨物室では、衛生兵が担架の固定具を確認していた。

 

揺れはある。

 

しかし担架は動かない。

 

赤い医薬品袋は壁へ吊られ、縄を引けばすぐ手元へ届く。

 

黄色い糧食袋は床へ固定され、緑の空袋は畳まれて台車の板の下へ差し込まれていた。

 

元独立運動家がその様子を見た。

 

「袋は同じ形でよい」

 

元ドイツ軍技術者が答えた。

 

「色だけで判断するな。泥と暗所で分からなくなる」

 

「留め具を変える」

 

「形も変えろ」

 

「丸、三角、四角か」

 

「触って分かるようにしろ」

 

ユダヤ人実業家は帳簿へ書き込んだ。

 

「染色工場へ発注します」

 

元ドイツ軍技術者が振り向いた。

 

「袋の話だぞ」

 

「大量に要るのでしょう」

 

「まだ試作品だ」

 

「現場が欲しがりました」

 

「誰も数を言っていない」

 

元白軍将校が答えた。

 

「多い方がよい」

 

「その言葉で注文を決めるな!」

 

操縦席から声が届いた。

 

「右発動機の出力を落とします」

 

貨物室の空気が変わった。

 

ポーランド軍将校が前を向く。

 

「止めるのか」

 

「止めません。巡航中の出力低下を想定します」

 

元ドイツ軍技術者が立ち上がった。

 

「半分まで落とせ。速度を維持できなければ戻せ」

 

右発動機の音が低くなった。

 

機体がわずかに右へ向こうとする。

 

操縦士が左足を踏み、方向を戻した。

 

Bizonは高度を失い始めた。

 

ゆっくりと。

 

急ではない。

 

だが確実に。

 

副操縦士が後ろへ叫んだ。

 

「飛べます!」

 

操縦士が続けた。

 

「降りながらですが!」

 

元白軍将校が答えた。

 

「地面まで距離がある」

 

元ドイツ軍技術者が怒鳴った。

 

「そういう試験ではない!」

 

右発動機の出力が戻された。

 

機体は再び水平飛行へ移る。

 

誰もすぐには話さなかった。

 

やがてポーランド軍将校が貨物表の裏へ一行を書いた。

 

次回、一発動機飛行試験。

 

その文字を見た元ドイツ軍技術者が言った。

 

「次は荷物を減らす」

 

元独立運動家が答えた。

 

「減らさない」

 

「なぜだ」

 

「荷物がある時に発動機は止まる」

 

元白軍将校が頷いた。

 

「正しい」

 

ユダヤ人実業家は帳簿を閉じた。

 

「では帰路用の荷物も用意しましょう」

 

ポーランド軍将校が振り返った。

 

「次も帰りに何か積むのか」

 

四人は同時に彼を見た。

 

元白軍将校が言った。

 

「空で帰る理由がない」

 

Bizonは、二基の発動機音を響かせながら西へ飛んだ。

 

機内には負傷者役と、壊れた無線機と、農産物と、空になった麻袋が積まれていた。

 

往路で運んだ機銃は、飛行場の端で地上を守っている。

 

そして、その機銃を運んだ台車は、帰りの荷物を運んでいた。

 

飛行機が運んだものは、降ろした後も働いた。

 

飛行機へ戻ったものも、空ではなかった。

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