ブラックサレナを使って、合法ロリと結婚する為にガンプラバトルをする男   作:GT(EW版)

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一年経ちましたが、ひっそりと外伝最終回投下です。


愛と勇気と素晴らしきガンプラバトル(終)

 

「やった……!」

「セカイの奴、勝ちやがった!」

 

 成層圏で巻き起こった大きな爆発に、セカイの勝利を確信したギャラリー達が沸き立つ。

 多重の分身により注意を逸らし、背後から放たれたTRYバーニングガンダムの鳳凰天驚拳は、アワクネ・ユリのベルティゴ思兼神とて回避は困難であろう。

 必殺の一撃は、間違いなく彼女のガンプラを捉えた筈だと――ごく少数の者以外の目には、誰もがそう見ていた。

 

 しかし当のカミキ・セカイ自身は、とても勝者には見えない苦々しい表情が浮かんでいた。

 

「……届かなかったか……っ!」

 

 爆煙が晴れた時、その場所には既に敵の姿は影も形も無かったのである。

 しかしTRYバーニングの背後――先ほどまで居た場所とは正反対の場所に、彼女のガンプラは軽度に損傷した姿で佇んでいた。

 

 ボソンジャンプ――彼女、アワクネ・ユリの両親が編み出した画期的な転移システムである。

 

 

《今のは、けっこう惜しかったですよ》

 

 彼女が未だ健在であるという状況に対して、TRYバーニングはアクションを起こさない。

 しかし彼女は、無防備なTRYバーニングの背中をビームサーベルで貫こうとはしなかった。

 

 この戦いにはもはや、その必要がなかったからだ。

 

 ――既にTRYバーニングの粒子残量は、0に尽きていたのだから。

 

《みとめます。あなたはわたしのライバルです。ほんとうにおどろきました。こんな気持ちになったのは、はじめてです》

 

 ハイパーモードが解除され、力なく宙を漂うTRYバーニングの姿を見つめながら、アワクネ・ユリが回線越しにしみじみと語る。

 彼女はこの戦いで、ついにその全力を発揮した。

 その態度には何の悪意もなく、カミキ・セカイというガンプラファイターが自身の予想を大きく上回る実力者に成長したことを素直に祝福していた。

 

《それにしても、すごいです。そのばーすとしすてむ? が切れたと思ったら、ハイパーモードになるなんて……やることがいちいちめちゃくちゃですね、セカイさんは》

「いや、君の方だと思うんだけど……」

《それほどでもないですよ。私はただ、粒子のうごきをみてセカイさんのうごきをよんでるだけですから》

「なんだそれ……なんか、まるで別競技だなぁ」

《私から見たら、セカイさんだっていんちきですよ。いんちきけんぽうもいいかげんにしてほしいです》

「はは、そうかい……」

《……でも、私はきらいじゃないですよ。セカイさんの戦い方》

 

 次元覇王流拳法をガンプラバトルに突き詰めた新たな拳法へと昇華させ、神樹ガンプラ流として編み出したのが今のセカイの戦い方だ。

 そんな彼の実力は今や大抵のファイターよりも上にあり、この大会でも間違いなく上位に食い込んでいた。

 だがそれでも、上にはまだ上が居た。強さに終わりが見えないほどまでに、ガンプラバトルという世界は広くて壮大なものなのだ。

 

 だが、それは悔しくとも、悲しいことではない。

 

 寧ろセカイは、このガンプラバトルの果てない道に喜びを抱いていた。

 そして、今回のアワクネ・ユリとの戦いを通じて改めて思ったのだ。

 

「色んな戦い方があって、色んなガンプラがあって……やっぱり楽しいな、ガンプラバトルは」

 

 この大会でもセカイは色々なファイターと出会い、様々なガンプラと戦ってきた。

 オーソドックスに汎用性の高いガンプラもあれば、接近戦や砲撃戦、機動力と言った一点に特化したガンプラもあり、機体の特性は無限大だ。中にはコウサカ・ユウマやミナキ・ソウシのようなガン……プラ……?と反応に困る機体もあるが、それらを含めても共通しているのはファイターの誰もが自らのガンプラに対し、惜しみない愛情を注いでいるということだ。

 

 愛情を込めたガンプラで、勇気を持って戦う。

 

 チーム戦ではそこにチームメイトとの友情も合わさって、愛と勇気と友情の王道的な物語になる。

 そうして自分達で紡いでいくその物語が、セカイは好きだった。拳法一辺倒だった自分にたくさんのものを与えてくれた、ガンプラバトルが好きだったのだ。

 そんなセカイの改まった告白に、ユリの目が僅かに緩む。

 

《……本物のガンプラばかですね、セカイさんは。でも、わたしもそうみたいです。みんなばかで、ばかばっか》

 

 ここに居るのは子供も大人も含めて、ガンプラとガンプラバトルに魅入られた馬鹿者達ばかりだ。

 それは一見滑稽に見えるかもしれないが、彼らの生きる熱くも綺麗な世界に、ユリもまた満足げに笑っていた。

 

《今だから言いますけど、じつはわたし、あんまりガンプラバトル好きじゃなかったんです》

「……だろうな」

《いえ、ガンプラは好きなんですよ。きれいですし、かっこいいですし、おもしろいです。でも……》

 

 セカイの語ったガンプラバトルへの思いに感化されたのか、ユリが自らのガンプラバトルへの思いを語り出す。

 実はそれほどバトルが好きではなかったという彼女の胸中は、戦いの中でガンプラの拳を通じながら何となく察していた。

 セカイのガンプラがハイパーモードに覚醒して以降はそうでもなかったかもしれないが、それまでの彼女はどこか淡々としていて、子供らしく楽しんでバトルをしているようには見えなかったからだ。

 そんな彼女が、自らの思いを激白する。

 

《この大会みたいに、別のアニメのロボットばかり出てる大会は嫌いなんですよ。だいだい大嫌いです》

 

 はっきりと、彼女はそう言い切った。

 その瞬間、「おい! オチカが倒れたぞー!」と、観客席の一部で何やら騒がしい声が上がったが、セカイの意識はユリに向いている。

 しかし、そう言えば……と、今のユリの発言を聞いて、セカイは彼女を取り巻いている家庭のことを思い出す。

 

 ガンプラバトルの環境にスーパーロボットが顔を出すようになった切っ掛け――それを最初に作り出したと言われている、彼女の父のことだ。

 

 ブラックサレナNT-1のアワクネ・オチカ。闇の偽王子と呼ばれている、KTBK社きっての実力者であり、有名人である。

 

「……もしかして、お父さんのこと嫌い?」

《お父さんのことは好きですよ? でも、ブラックサレナはあんまり好きじゃないですね。とてもかっこいいきたいだと思いますけど、アキトには、くらくてこわいのはにあわないって思います》

「あっ、それは俺も思った! 劇場版の続きがあったら、怖い鎧も外せたかもしれないのになぁ」

 

 彼らの愛する「機動戦艦ナデシコ」というアニメに関しては、チームメイトのコウサカ・ユウマに散々布教された為にセカイもある程度把握している。

 ユウマによって劇場版まで見せられたセカイの感想としては「激しく続きが気になる」という率直な思いであり、ユウマほど熱狂的ではないものの最後まで楽しんで見ることが出来たアニメである。

 そんなナデシコの内容を思い出しながら、回線越しに映るユリの顔を見てセカイは思い出す。この子の姿、ホシノ・ルリに似ているなぁ―……と。だから何だと言う話ではあるが。

 

《わたしはまだきたいしてますよ、ナデシコの続編。それとおなじくらい、セカイさんにもきたいすることにします》

「うん……? それってどういう……なんかユリちゃん、例え方がわかりにくいなぁ……」

《そうですか? むむ……こみゅにけーしょんというのは、むずかしいですね》

 

 小生意気で、掴みどころのない性格の彼女に、セカイは苦笑を浮かべる。

 ただそんな彼女も、全力を出して戦ったこの試合には、ある程度満足しているようだった。 

 

「……たのしかったですよ。またやりましょう」

 

 彼女が微笑みながら言い放ったその言葉を最後に、場内アナウンスから勝負の決着が言い渡される。

 

 

 ――勝者、アワクネ・ユリ。その結果は、以後も続くセカイのガンプラバトルロードを語るには欠かせないものとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ファイターの数ほど、そこにはガンプラがある。

 ガンプラの数ほど、そこには見果てぬ夢がある。

 

 バラエティーに富んだ各々のガンプラは、ファイターにとって魂そのものだ。他の誰かに否定されようとも、自らの愛するガンプラから誇りを忘れることはない。

 

 ――今なら言える。たとえ方向性を違えようとも、僕らはガンプラを作り続けるだろう。

 

 新しいガンダムシリーズが始まる度、新しいアニメが始まる度、僕らは期待を抱き、物語の続きを求める。

 

 いつの日か物語が終わった時、その物語が「好きだった」と振り返る為に。

 

《ソウシ、準備はいいか?》

「問題は無い。いつでも行けます。カリマはどうだ?」

《こっちもOKだ。進化した俺達の力、あいつらに見せつけてやろうぜ!》

「……そうだな」

 

 因みにファフナーは続編アニメの製作が決定している。極めて楽しみな内容だ。

 そして――次はナデシコ、君の番だ。

 

「キュベレイMark-nichit(マークニヒト)、発進する!」

 

 あり得ないと言われても、それでも追い求めてしまうのが人の性だ。

 

 だから、愚かでいいのだろう。ここもまた、楽園の一つなのだから――。

 

 まだ見ぬ希望を胸に、僕らは新たな世界へと飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アワクネ・ユリが優勝を果たしたKTBK杯から三年が過ぎた。

 

 

 大会によって得た貴重なデータを基に、KTBKアイランドはさらなる発展を遂げ、今現在島にはKTBK社のキンジョウ・ナガレ会長の悲願であるガンプラバトルシティが建設されていた。

 シティの規模はまだ都市と呼べるほどのものではないが、ガンプラによるガンプラの為のガンプラバトルの町がそこにあった。

 

 そしてこの日、シティ完成を披露するデモンストレーションとして、全国各地から選抜されたチーム戦によるサバイバルバトル大会が催されていた。

 

 どこもかしこもガンプラ一色に染まっている町の中には、かつて共に戦場を駆け抜けたチーム「トライファイターズ」の姿もある。

 

「ガンプラバトルシティか……チーム戦でのサバイバルマッチには、これ以上ない舞台だろうな」

 

 町の全てがフィールドとなり、ガンプラと共に戦場を駆け抜ける新感覚のガンプラバトル。 

 年月の移り変わりにより進化していくガンプラと同じように、彼らを取り巻く戦いの舞台もまた大きく変化していた。

 これから先の将来、このガンプラバトル界隈がどこまで変化を続けていくのか――コウサカ・ユウマの心に溢れる少年心は、決して失われるものではなかった。

 

《セカイ君、ユウ君もいける?》

《ああ!》

「準備OKです」

 

 高等部の部活で度々顔を合わせてはいたが、こうして三人で出撃するのも随分と久しぶりな気がする。

 年間に何度か開催されるKTBK社主催のイベントなどではかつてのアイランド杯のように他校のファイターと組むこともあったが、何だかんだでこのチームが最も居心地が良いとユウマは感じていた。

 そしてそれは、他の二人もまた同じ考えのようだった。

 

「機体はそれでいいのか? セカイ」

《ああ、このチームでシアの手が入ったガンプラを使うのも、先輩に悪いからな》

「……気を遣っているのか遣っていないのかわからないな、お前は」

《そうか?》

 

 あれから三年が経った今、三人が扱っているガンプラもまた環境に合わせて変化を続けていた。

 特にセカイの扱う新型の「カミキバーニングガンダム・ブルー」は通常時の見た目こそ以前扱っていた「カミキバーニングガンダム」と変わらないが、その内部にはセカイが三年前のアワクネ・ユリとの戦いで掴んだ感覚を基に会得した「アシムレイトの力を持ったガンプラのハイパーモード」などという、反則的なパワーアップ能力が詰め込まれている。

 その力を発動した機体は通常のハイパーモードとは異なり、黄金ではなくプラフスキー粒子の浸透がより視覚化された「青」へと変色していく。蒼炎を纏ったガンダムの外見から、セカイはそのシステムを「ハイパーモード・ブルー」とシンプルに名付けたものだが……何が何やら、どこぞの超戦士のような変身に見えてユウマには頭が痛かった。

 しかしそんな超絶パワーアップを果たしたセカイの実力は確かな物であり、ビルダーとしてもファイターとしても男としても三年前とは比べ物にならないほど強くなっている。これまでの大会でも多くの実績を積み重ねてきている今、ユウマにとって彼は憎たらしくも頼もしいチームメイトであった。

 

 ちなみに彼を巡る三角関係の方だが、そちらは昨年度の冬にガンプラ学園の銀髪が完全勝利を収めたという情報がラルさんから聞き及んでいる。

 どうにもクリスマスイブに彼の方からドモン・カッシュばりの告白をかましたらしい。意外なことに、彼女とはあのアイランド杯で行動を共にしていた頃から恋心を抱いていたらしい。

 

 鈍感系主人公のように見えて、決める時は決めよるわ!と思わず感心してしまったユウマだが、野次馬気分で馬に蹴られたくもない。

 ユウマ個人としては彼に先を越されたことが悔しくないこともなかったが、そういった感情は幼馴染で部長な先輩から夜な夜な愚痴を聞かされる度に無くなっていた。自分より悲しい目にあっている人間を見ると、一気に冷静になるという奴だ。

 

 閑話休題。

 

 そんなこんなで失恋する羽目になったチームの部長だが、だからと言ってガンプラバトルで私情を持ち込むことはない。ホシノ・フミナは、ついでにギャン子もであるが、彼女らは強い少女であった。

 失恋がきっかけになったのかはわからないが、フミナもまたあれからメキメキと実力を伸ばし、今では二代目レディーカワグチ候補の一人として注目される掛け値無しに優秀なファイターへと成長している。

 カミキ・セカイにホシノ・フミナ……三年前から続くこのチームはたとえ一人が卒業しようと、その絆は不滅だった。

 

《やっぱりこの三人が一番ね……トライファイターズ、出撃!》

 

 フミナの機体とセカイのカミキバーニングブルーが先行してカタパルトから射出され、ユウマの番が来る。

 ユウマは操縦桿を握りながらすぅっと息を吐き、戦士の目でスラスターを噴かした。

 

「ユー・ゲット・トゥー・バーニング……いくか!」

 

 YOU GET TO BURNING ――「君は闘える」という意味の励ましの言葉は、ユウマにとって今も変わらず大好きな、とあるアニメのオープニングテーマにもなっているフレーズだ。それは彼の座右の銘でもあり、最近は出撃前にそれを唱えるのがルーティーンになっていた。

 その言葉で気を引き締め直した後、ユウマは愛機を駆って戦場へ繰り出した。

 

「コウサカ・ユウマ、エステバリス――行きます!」

 

 作り上げても壊して、また作る。その繰り返しで何度も修復や改造を重ねてきたフレームを纏いながら、彼の翼は力強く羽ばたいていく。

 

 

 ――とある偽王子の為に色々と混沌になってしまったガンプラバトルであるが、ビルドファイターズの情熱は今も昔も、どの世代であろうと変わりはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 皆さん、こんにちは。アワクネ・オチカです。

 

 いやあ、ナガレが言っていたガンプラバトルシティ、本当に始まってしまいましたねー。多くのファイターがガンプラを操り、町中に散らばっている拠点を制圧したりされたりするのが今回のルールだ。

 こういったガンプラバトルのイベントでは、マンネリ化を防ぐ為に色んな特殊ルールを設けてみたりするわけだけど、今回のはファイターも町中を移動する分通常よりスポーツ的な要素が強いかもしれない。健康的で良いことだ。

 

 ……でも、そんなことはどうでもいいんだ。重要なことじゃない。

 

 今の俺にとって重要なのは、何を隠そう俺自身やKTBK四天王の面々もまた、各々にチームを組んで大会に出場しているということだ。

 選抜したファイターは十代から二十代前半の若い子が多めになっているけど、お馴染みの世界ランカーの面々も何人かは選手として参加していたりする。ただ彼らのチームにはガンプラ教室で面倒を見た小さな子供なんかが入っていて、そこがある程度のハンディキャップにはなっている。

 大人も子供も入り乱れたファミリー要素の強いイベントにしようっていうのが、ナガレ会長の提案である。

 そして我がチームにもそう、一部の層からは未だにロリコンの危険人物と称されているこの俺のチームにも、一人、子供のファイターが入っているのだ。

 

 うちの娘がな!

 

《星のきらめきはひとの思い……ガンプラのかがやきは、人のゆめ……でしょうか?》

 

 子供枠のくせしてチート性能。

 俺の娘なのに超天才肌。

 かわいい(かわいい)。

 そんな我が娘ことアワクネ・ユリは、今回のイベントに招待されたファイターの一人であり、俺のチームの一員だ。だってね、ユリちゃんがどうしてもお父さんと組みたいって言うんだもん。俺も最近忙しくてユリ分が足りなかったんだもん。その忙しさと来たらもうね、録り溜めておいた「鉄血のオルフェンズ二期」を見る時間さえないぐらいだ。あれが放送終了したの、一年前だってのによう。

 

 あっ、そうだ。鉄血で思い出したがユリちゃん、結構あれにハマっているらしい。俺は一期までは見ることが出来たけど、確かに面白かった。だけど内容と言うか設定がちょっと小さい子向けじゃなかったから、ユリちゃんには俺やラズリちゃんが編集したのを見せたんだっけな。

 

 ユリちゃんはその「鉄血のオルフェンズ」の作中で、どうにも俺の見ていない二期に登場したガンダムに惚れ込んでいるらしく、今はそのガンプラを愛機にしてガンプラバトルを楽しんでいる。

 

「……娘の成長が怖くなる。これが、父親と言うものか……」

《オチカ、ユリはまだ十歳。今からそんなこと言ってたらダメだよ》

「そうだな……そうだよな……!」

 

 いやにしても、あの時は驚いたなぁ。初めて組み立てるガンプラを、いきなりパテやプラバンで整形するどころか、「バエル宮殿」だっけ?本体のガンダムを作る前に、まず第一にアニメの作中に登場していたらしいガンダムの収容施設から作り出したんだもん。その発想からして、やっぱりこの子ただもんじゃねぇぞ……って改めて確認したわ。

 

《チーム「散らない華」、はっしんです。あっ、お父さんから先にどうぞ》

「ああ」

 

 そんな天才娘と組んだ父親としては、情けないところは見せられないよな。

 こう見えても、俺だって散々実戦で鍛えてきたんだからね。ラズリちゃんのバックアップが無くたって、今では世界大会出場ぐらい楽勝のレベルになっている……と思いたい。

 

「アワクネ・オチカ、ブラックサレナ、レッツ・ゲキガイン!」

 

 操縦桿を握り、俺が惚れ込んだ――俺達夫婦で完成させた最強のガンプラで出撃する。

 俺のブラックサレナは誰が見たってガンプラだ。だからこれをガンプラバトルに使っていようと、娘に嫌われてなんかいないんだいっ!

 

《アワクネ・ラズリ、ベルティゴ思兼神、いきます》

 

 ガンプラバトル恐怖症も今では昔の話だ。カタパルトから俺のガンプラが射出されたと同時に、俺の嫁――年数の経過を感じさせない合法ロリこと麗しきラズリちゃんが、ユリちゃんから返還されたガンプラを操って空に飛び立つ。

 返還された、っていうのも変な言い方ではあるんだけどね。ベルティゴ思兼神を組み立てたのはラズリちゃんだけど、設計したのはユリちゃんで、実際に扱っていたのもユリちゃんだ。だから俺もラズリちゃんもあのベルティゴはユリちゃんの物だよって言っていたんだけど、ユリちゃんの方はあくまでもあの機体は「借りていた」って認識だったらしい。

 

 なんでも「自分の力だけで作ったガンプラでバトルをすること」が、ユリちゃんの譲れないポリシーなんだそうだ。

 

 俺としては俺とラズリちゃんやかつてのレイジ君やイオリ君みたいに、人と協力し合いながら完成させたガンプラで戦うのも良いことだと思うけど、その辺りの考え方はユリちゃんは違うらしい。まあ、その考え方は人それぞれなものだから、どっちが正しいとかそういう話ではないんだろうが。

 

 ただ、ユリちゃんは自分の力で作ったガンプラを、自分が動かして戦うことに憧れていたのだ。

 

 工具の使い方を俺やラズリちゃんから教わったユリちゃんに、ようやくSD以外のガンプラを作っていいと許可してあげたのは、あの子が九歳になってからのことだ。

 あの時にユリちゃんが見せてくれた眩しい笑顔と「お父さん大好き」の言葉は、今の俺から溢れ出る究極の原動力になっている。

 

 そんなこんなでユリちゃんは自分一人の力でガンプラの改修計画から仕上げまで着手し、「鉄血のオルフェンズ二期」に登場する白いガンダムとその収容施設を作り上げた。

 完成したそれは初めてとは思えない完成度で……正直に言うと、親の俺が可愛げないと思うぐらい見事なものだった。俺が最初にHGを作った時なんて、素組の時点でパーツを壊すわ無くすわと散々だったんだけどね。物づくりの才能に関しては、ラズリちゃんの才能を受け継いだんだと思う。

 

 ……あれ? 見た目も才能もラズリちゃん似じゃあ、俺要素無くね?

 

 ――と、我が娘から溢れる母要素の強さに戦慄した俺だが、もちろんそんなユリちゃんにも俺に似ているところはある。

 それはまあ、口下手な為に何かと勘違いされる性格ということも一つだが……

 

《アワクネ・ユリ、ガンダム・バエル……集います》

 

 ――自分が惚れ込んで作り上げたガンプラには、とことん一途だということだ。

 

 

 

 ガンダム・バエル――「鉄血のオルフェンズ」の二期をまだ見ていない俺には、その機体がどんな活躍をしたのかはわからない。

 ただ、良くも悪くもゴテゴテした特殊能力満載機が多い最近のガンダム作品にあって、最低限の武装で十分だと言わんばかりの機体コンセプトは正直、素晴らしいと思う。うん、ブラックサレナに通じるものがあって俺も好きだなバエルは。すげぇよユリちゃんは……お目が高い。

 二枚のウイングから織りなす高機動で戦場を駆け巡り、決して折れない剣はMAの装甲さえ容易く両断する。読ませてもらった説明書には確かそんなことが書いてあった気がするが、元々機動性に重点を置いて無駄な武装を嫌う傾向のあるユリちゃんには相性が良い機体に見えた。

 

 そして何より……デザインが良い。

 

 それはMSおいて誰にでもわかる、単純明快にして一番の長所だ。

 今までのガンダムとは差別化されていながら、ちゃんと王道を捉えていて、全体像をシンプルに纏めて白色の美しいカラーリングに彩られている。

 ユリちゃんの好きな白百合の花みたいで綺麗だと、完成したそれを一目見て俺も思った。

 

 ……で、そのガンダム・バエルを完成させたユリちゃんは、ベルティゴをラズリちゃんに返した後でこう言った。

 

「アワクネ・ユリの下に、こんどこそバエルはよみがえったー! わるいロリコンさんはダメです」と。

 

 意味ありげに放たれたその言葉に、何のことかとラズリちゃんに聞いてみたら、どうにも困った表情を返されたものだ。あれは、どういう意味だったんだろう? わるいロリコンさんって俺のことじゃないよな? オルフェンズのアニメを見ればわかるんだろうか。

 

 まあ、それはそれとして俺が言いたいのはうちの娘かわいいということだ。

 妬ましくはその魅力が他のファイターにも広まってしまい、以前ユリちゃんがバエルを使った初陣で大立ち回りをした時は、客席からワラワラとたくさんのビルダー達が集まってきたことが記憶に新しい。

 

『バエルだ! アグニカ・カイエルの魂だ!』『そうだよ! 俺達はこんなバエルが見たかったんだ……!』『スーパーロボット軍団を相手に、バエルが単機で無双する!』『これは従うしかねぇわ』『バエルを持つロリの言葉に背くとは……』『ガンプラバトルの正義は我々にありいいいい!』

 

 ……うん、アグニ会なる謎のビルダー連合が押し寄せてきた時は何事かと思った。あいつら何者だったんだろう?

 翌日、多くのホビーショップの店頭からバエルの在庫が無くなったというのは余談である。

 

 

 

 

 

 

 ――さて、そんな話はさておきそろそろ敵が見える。

 

 このガンプラバトルシティで初めて相まみえる相手チームは……なんてこったい。

 あそこに居るのはユリちゃんが初めてライバル認定したカミキ・セカイ君の居るチーム、トライファイターズじゃないか。今期は優勝おめでとうございます。

 

 

《いくぞユリちゃん! 勝負だ!》

《セカイさんですか、ちょうどいいですね。あなたにも見せましょう。純粋な力だけがせーりつさせるうんたらかんたらを》

《いきなりオチカさんのチームが相手か……胸を借りるとかは無しです。勝ちに行きますよ!》

「……それでこそだ」

 

 相手側はガンダムタイプが二機、エステバリスが一機。

 一方こちら側は白いのが二機と黒いのが一機。どちらのチームにも「ガンダム」と「ナデシコ」の機体がある。

 だが、そんなカオスな戦場でも「全力で遊ぶ」ことには変わりない。

 職業としてガンプラバトルをする俺達も、クラブを通して頂点を目指す子供達も、俺達の心を掴んで離さないガンプラの魅力は何も変わらなかった。

 

 

「ガンプラバトル!」

 

 

 この機体を使っている俺が言うのも説得力に欠けるかもしれないが――それでも俺は、ガンプラが好きだと言い続けたい。

 

 

「「レディー・ゴー!!」」

 

 

 自分らしく誇らしく、俺達のガンプラバトルは今日も明日も続いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 ――そんな、未来の物語。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【外伝 大惨事スーパーロボット大戦TRY】

 

      THE END(今までありがとうございました!)

 

 

 




 ここまでお読みいただきありがとうございました!
 本編より長くなってしまいましたが、これにて外伝は完結です! 

 この外伝では感想や評価コメントの方で要望のあった「他のスーパーロボット」も見たい、という言葉を受けて始めてみたものでしたが、書いてみると自分の中でしっくりこないところもあってか、私の技量では複数のロボを上手く扱いきれなかったのかなぁと思っています。
 言い訳になってしまいますが、外伝の方は最初から「本編はスッキリ完結させたし、外伝の方は自重を外して全速前進DA!」のつもりで気楽な気持ちで書き始めたものではありました。その為に自分の好きな要素を考え無しにぶち込んでみた次第であり、その浅慮さから本編と比べて「コレジャナイ感」を感じた方も居たかと思います。
 私自身、外伝の最後をどう着地させればいいか見えなくなってしまい、最終回まで一年掛かってしまいました。本当に申し訳ない。アイデアをくれたバエルおじさんと団長には感謝するしかありません。あと私はガンダム・バエル大好きです。言われるほど活躍していないわけでもないと思うの(´・ω・`)

 今後トライを題材にしたガンプラ系の作品を書くことがあったら、「バエル(原作仕様)」「バエル(MA遠隔操作能力持ち)」「バエル(初期構想のパンチングスタイル)」というそれぞれ三体のバエルを操るアグニカ高校を主役にした謎短編なんかを書くことがあるかもしれません。もちろん誰かが書いても構いません。もう誰かが書いているかもしれませんが。

 それでは、お疲れ様でした!





 
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かつて京都を震撼させた「人斬り抜刀斎」と並び称された、新選組一番隊組長・沖田総司。▼労咳の運命を越え、彼女が手にしたのは平穏な明治の世と、亡き夫が残した一人息子・弥彦だった。▼しかし、その剣はまだ、錆びついてはいない。▼「たまには人を斬っておかないと、腕が鈍るでしょう?」▼昼は息子の教育に頭を悩ませる士族の未亡人。夜は月夜に紛れ、暗殺者として死体の山を築く。…


総合評価:3070/評価:6.94/連載:80話/更新日時:2026年05月19日(火) 12:00 小説情報


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