【推しの子】もしも星野アイの隣人が天才外科医だったら〜命を救う、その先へ〜 作:ペンギンって可愛いですよね
「お邪魔します」
悠真は軽く頭を下げ、星野家へ足を踏み入れた。
玄関は綺麗に片付けられており、どこか温かみのある空間だった。
「先生、こっち!」
ルビーが手を引くように案内する。
「ダイニングはこっちです」
アクアも落ち着いた口調で続ける。
二人に案内され、悠真はダイニングへ向かった。
「先生はそこで待ってて!」
アイはエプロンを身に着けながら笑顔で言う。
「今から夕飯作るから!」
「何かお手伝いしましょうか?」
悠真が尋ねると、アイは首を横に振った。
「大丈夫!」
「先生は二人の相手してあげて!」
「分かりました」
悠真が頷くと、アイはキッチンへ向かい、夕飯の準備を始めた。
包丁の音がリズムよく響き始める。
その間、悠真はルビーとアクアと向かい合って座った。
「先生!」
ルビーが嬉しそうに口を開く。
「遊ぼ!」
「遊びですか」
悠真は微笑む。
「いいですよ」
するとアクアが静かに立ち上がった。
「ちょっと待ってください」
そう言って自分の部屋へ向かい、数冊の分厚い本を抱えて戻ってくる。
悠真はその表紙を見て目を瞬かせた。
「……考古学?」
アクアは一冊の文献を開き、あるページを指差した。
「先生、これ分かりますか?」
そこに書かれていたのは大学の専門課程で扱うような考古学の論文だった。
古代文明の遺跡構造や発掘資料について専門用語が並んでいる。
悠真はしばらく目を通したあと、小さく笑った。
「これは難しいですね」
「興味はありますが、詳しくは知りません」
「考古学は私の専門外です」
アクアは少し意外そうな顔をする。
「そうなんですか」
「ええ」
「医療や生命科学でしたらお力になれますが、この分野は逆に私が教えていただきたいくらいです」
その言葉にアクアは頷いた。
「じゃあ説明します」
そう言うと、古代文明の文化や遺跡の構造、論文で議論されている内容を分かりやすく説明し始めた。
悠真は真剣に耳を傾ける。
「なるほど……」
「そういう解釈があるのですか」
「勉強になります」
今度は完全に立場が逆転していた。
一方、その様子を見ていたルビーが頬を膨らませる。
「ずるい!」
「先生!」
「今度はこっち!」
ルビーは自分の部屋から参考書を持ってきた。
表紙には『高校数学Ⅲ』と書かれている。
「ここ分からないの!」
開かれたページには微分法の応用問題が載っていた。
悠真は問題を見るなり、少し驚く。
「これは……」
「高校数学ですか」
「しかも、なかなか難しい問題ですね」
ルビーはこくりと頷く。
「うん!」
「ここで詰まっちゃった!」
悠真は丁寧にノートへ式を書きながら説明を始める。
「まず、この関数を微分してみましょう」
「そうすると、この形になります」
「ここで増減を調べると……」
ルビーは真剣な表情で頷きながらメモを取っていく。
「なるほど!」
「そういうことだったんだ!」
嬉しそうな笑顔が広がる。
その光景を見ながら、悠真は心の中で苦笑した。
(……十歳ですよねこの二人…転生しているとはいえこれはすごいですね…)
片方は大学レベルの考古学を教え。
もう片方は高校数学の応用問題を解いている。
普通の小学四年生とは、あまりにもかけ離れている。
思わずキッチンで料理をしているアイへ視線を向けた。
(アイさん)
(少しは止めてください……)
もちろん、その心の声が届くはずもない。
キッチンからは鼻歌交じりに料理をするアイの声が聞こえてくるだけだった。
悠真は小さくため息をつきながらも、どこか楽しそうに笑みを浮かべていた。