【推しの子】もしも星野アイの隣人が天才外科医だったら〜命を救う、その先へ〜 作:ペンギンって可愛いですよね
それからしばらくの間、悠真は向かい合う二人の勉強を見守っていた。
アクアは大学レベルの考古学の文献を読み進め、時折悠真へ説明を加える。
ルビーは高校数学Ⅲの参考書とにらめっこしながら、微分の応用問題を解いている。
十歳の兄妹とは到底思えない光景だった。
そんな時間が流れていた時――。
「はーい!」
キッチンからアイの明るい声が響いた。
「みんな、ご飯できたよー!」
「机の本、片付けてきて!」
その一言で二人は我に返る。
「あっ!」
「やばい!」
ルビーが慌てて参考書やノートをまとめ始める。
アクアも机いっぱいに広げていた文献を手際よく閉じ、抱え上げた。
「先生、少し待っていてください」
「はい」
二人は急いで自分の部屋へ向かい、本を片付けに行く。
その後ろ姿を見送りながら、悠真は小さく笑った。
「勉強熱心なのは良いことですが、切り替えも大切ですね」
数分後、
「お待たせ!」
ルビーが元気よく戻ってくる。
その後ろからアクアも静かに席へ着いた。
既にテーブルの上には夕飯が並べられていた。
湯気の立つ肉じゃが。
炊きたての白いご飯。
そして、こんがりと揚がった唐揚げ。
どれも食欲をそそる香りを漂わせている。
「わぁ!」
「おいしそう!」
ルビーが目を輝かせる。
アクアも小さく微笑んだ。
「今日も美味しそうだな」
アイは満足そうに笑った。
「でしょ?」
「さあ、食べよう!」
四人は席に着き、手を合わせる。
「「「「いただきます」」」」
声が綺麗に重なった。
温かい夕食の時間が始まる。
悠真はまず肉じゃがを一口運ぶ。
ほくほくのじゃがいも。
しっかりと味の染みた牛肉。
優しい甘さのある煮汁。
思わず表情がほころぶ。
続いて唐揚げを口に入れる。
外はサクッと香ばしく、中は肉汁があふれるほどジューシーだった。
しばらく食事を楽しんでいると、アイが少し不安そうに尋ねた。
「先生」
「味はどう?」
「おいしい?」
悠真はすぐに笑顔で頷いた。
「もちろんです」
「すごくおいしいですよ」
「アイさん、料理がお上手なんですね」
その言葉に、アイは少し照れくさそうに笑った。
「えへへ」
「実はね」
「アクアとルビーがまだ小さい頃は、焦がしてばっかりだったの」
「最初は本当にひどくて、何回も失敗しちゃって」
当時を思い出したのか、苦笑しながら続ける。
「でも、小学校に入る頃には二人とも食べる量が増えてきたでしょ?」
「このままじゃいけないなって思って」
「ミヤコさんに教えてもらいながら、たくさん練習したの」
そう言って少し照れたように笑うアイ。
悠真はその料理をもう一口味わいながら、静かに頷いた。
「努力されたのですね」
「その成果が、この料理によく表れています」
「どれも本当においしいです」
その言葉を聞いたアイは嬉しそうに笑顔を浮かべた。
「よかった」
「先生に褒めてもらえるなんて、何だか自信ついちゃうな」
その笑顔を見て、アクアとルビーもどこか誇らしそうに微笑んでいた。
星野家の食卓には、温かな笑顔と穏やかな時間が流れていた。