【推しの子】もしも星野アイの隣人が天才外科医だったら〜命を救う、その先へ〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第五十二話「交換したもの」

 

気が付けば時計の針は午後十時を回っていた。

 

楽しい時間というものは、本当にあっという間だった。

 

悠真は時計を見上げ、小さく微笑む。

 

「もうこんな時間ですか」

 

「そろそろ私は失礼します」

 

そう言って立ち上がろうとした、その時だった。

 

「先生ぇ……」

 

ルビーが寂しそうな声を漏らし、そのまま悠真へ抱きついた。

 

「もう帰っちゃうの?」

 

「もっとお話ししたい……」

 

その様子に悠真は苦笑する。

 

「ありがとうございます。ですが、またどこかで会えますから」

 

するとアクアが立ち上がり、ルビーの肩へそっと手を置いた。

 

「ルビー」

 

「先生も忙しいんだから、引き留めたらだめだ」

 

「……うぅ」

 

「でも……」

 

ルビーは名残惜しそうに悠真を見上げる。

 

アクアは優しく続けた。

 

「先生は俺たちのために時間を作って来てくれたんだ」

 

「これ以上困らせちゃだめだ」

 

その言葉にルビーは小さく頷いた。

 

「……うん」

 

アイはその様子を見ながら苦笑する。

 

「ルビーがごめんね、先生」

 

「いえ」

 

悠真は優しく首を横に振った。

 

「そう思っていただけるだけで十分嬉しいですよ」

 

するとアイは何かを思い出したように手を叩いた。

 

「あっ、そうだ!」

 

「先生!」

 

「連絡先交換しようよ!」

 

「もう医者と患者の関係じゃないんだから、いいでしょ?」

 

その言葉に悠真は思わず目を丸くした。

 

「……だから」

 

「あなたは芸能人でしょう」

 

「気軽に連絡先を交換するべきではありません」

 

真面目な口調でそう返す。

 

しかしアイは全く気にしていない様子だった。

 

「いいじゃん!」

 

「もう友達みたいなものでしょ?」

 

「アクアとルビーも先生のこと大好きだし」

 

そう言ってスマートフォンを差し出してくる。

 

悠真は困ったように額へ手を当てた。

 

「本当に……危機感がありませんね」

 

少し考えたあと、小さくため息をつく。

 

「……まあ」

 

「LINEくらいでしたら」

 

「やった!」

 

アイは嬉しそうに笑う。

 

二人はスマートフォンを操作し、お互いのLINEを交換した。

 

交換が終わると、悠真は真剣な表情でアイを見る。

 

「いいですか、アイさん」

 

「他の方と気軽に連絡先を交換してはいけません」

 

「あなたは多くの方から注目される立場です」

 

「悪意を持って近付いてくる人もいます。ですから、十分注意してください」

 

アイは少し笑いながら答えた。

 

「先生だけだよ。交換したの」

 

その言葉に悠真は少し安心したように頷く。

 

「それなら良いのですが」

 

しかし、その空気を一瞬で吹き飛ばす爆弾発言が飛び出した。

 

「もう先生とお母さん、結婚すればいいのに!」

 

ルビーだった。

 

部屋の空気が一瞬止まる。

 

そして次の瞬間、

 

「何言ってるの、ルビー!」

 

「何を言っているんですか、ルビーちゃん!」

 

二人の声が見事に重なった。

 

ルビーは目を輝かせる。

 

「ほら!」

 

「息ぴったり!」

 

アイは一瞬で顔を真っ赤にした。

 

「る、ルビー!」

 

「もう!」

 

両手で顔を隠し、恥ずかしそうにもじもじしている。

 

一方、悠真は咳払いを一つすると、真面目な表情のまま話し始めた。

 

「ルビーちゃん」

 

「そのような冗談は、あまり言わない方がいいですよ」

 

「アイさんは私の元患者さんです」

 

「医師にとって、患者さんや元患者さんと恋愛関係になることは、ご法度です」

 

「自意識過剰かもしれませんが」

 

「アイさん、こういった冗談も、決して鵜呑みにしないようお願いします」

 

「医師として一線は守らなければなりません」

 

その真剣な言葉に、アイも赤い顔のまま小さく頷いた。

 

「……うん…分かった」

 

ルビーは頬を膨らませる。

 

「えーつまらないなー」

 

するとアクアが静かにルビーを見る。

 

「先生の言う通りだ。その辺にしておけ、ルビー」

 

「はーい……」

 

ルビーは少しだけ不満そうに返事をした。

 

そんな妹を見てアクアは苦笑し、悠真とアイも思わず顔を見合わせる。

 

先ほどまでの緊張した空気は、自然と穏やかな笑いへと変わっていった。

 

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