【推しの子】もしも星野アイの隣人が天才外科医だったら〜命を救う、その先へ〜 作:ペンギンって可愛いですよね
翌日――。
朝から校内はどこか慌ただしかった。
テレビ局のワゴン車が校門前へ到着し、大きなカメラや照明機材が次々と運び込まれていく。
「テレビだ!」
「本当に来た!」
児童たちは教室の窓から興味津々でその様子を眺めていた。
先生たちは子供たちを落ち着かせながら、取材班を特別教室へ案内する。
今回取材を受けるのは、四年生の双子――
星野アクアと星野ルビー。
全国学力調査で二人揃って満点。
しかも全国一位という前代未聞の快挙だった。
テレビ局としても放っておける話題ではない。
特別教室にはカメラが二台。
照明が設置され、簡単なインタビュー会場が出来上がっていた。
担任教師も後方で見守っている。
二人は並んで椅子へ座る。
緊張しているかと思われたが、その表情は驚くほど落ち着いていた。
「それでは、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
アクアは静かに頭を下げる。
「よろしくお願いしまーす!」
ルビーは元気いっぱいに笑顔を見せた。
ディレクターが合図を送り、カメラが回り始める。
「全国学力調査で、お二人とも満点、そして全国一位、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
二人は同時に答えた。
「まず最初にお聞きしたいのですが、お二人は勉強が好きなんですか?」
するとルビーが真っ先に手を挙げるように答えた。
「はい!」
「お勉強はゲームみたいに解けるのが面白くて、ついつい先に進んじゃいます!」
その無邪気な笑顔に、スタッフたちも思わず笑顔になる。
「なるほど」
「ゲーム感覚なんですね」
「はい!」
「問題が解けると、『やった!』ってなります!」
和やかな空気の中、今度はアクアへマイクが向けられた。
「アクア君はいかがですか?」
アクアは少しだけ考えてから答える。
「僕は、あくまで将来のための知識を身につけているだけです」
「勉強そのものが好きというより、必要だから学んでいます」
取材スタッフは感心したように頷く。
「しっかりしていますね」
「ちなみに、何か趣味で勉強しているものはありますか?」
「考古学です」
「……え?」
スタッフが一瞬聞き返した。
「歴史ではなく……考古学ですか?」
「はい」
アクアは当たり前のように頷く。
「大学の文献を取り寄せて、自分なりに考察するのが好きです」
「遺跡や文明について調べていると時間を忘れます」
「それと」
「将来は外科医になって、多くの人を救うことが夢です」
その場が静まり返った。
スタッフ同士が思わず顔を見合わせる。
(大学の……文献?)
(小学四年生だよな?)
誰もが同じことを考えていた。
インタビュアーは一瞬言葉を失う。
「だ……大学の文献を、理解して読まれているんですか?」
「全部ではありません」
「分からないところは調べながらですが、概ね理解できます」
あまりにも自然な答えだった。
しかし、その内容は小学生の域を遥かに超えている。
後ろで見守っていた担任教師も目を丸くしていた。
(大学の文献……?)
(アクア君がそこまで勉強しているなんて聞いたことがない……)
教室には驚きの空気が流れる。
インタビュアーは気持ちを切り替え、恐る恐るルビーへ視線を向けた。
「ルビーちゃんは、今はどんな勉強をしているのかな?」
ルビーは少し困ったように笑う。
「私は今、微分方程式のところで躓いちゃって」
「アクアに教えてもらってるところです」
「…………」
再び沈黙が訪れた。
カメラマンの手が止まる。
音声スタッフも思わず顔を上げた。
担任教師も言葉を失う。
(び……微分方程式?)
(高校数学じゃなくて、大学の内容じゃないの?)
教室の空気が凍り付く。
インタビュアーは乾いた笑みを浮かべながら確認する。
「えっと……」
「微分方程式って、あの微分方程式ですか?」
「はい!」
「難しくて、まだ全部は分からないんです」
「でもアクアが教えてくれるので頑張ってます!」
ルビーは本当に困っていることを話すような口調だった。
その様子が余計にスタッフたちを驚かせる。
小学四年生。
全国一位の双子。
そう聞いてやって来た取材班だったが、目の前にいたのは「勉強ができる小学生」という言葉では到底表せない存在だった。
インタビュアーは思わず小さく呟く。
「……これは、天才ですね」
その一言に、教室にいた誰も反論することはできなかった。