【推しの子】もしも星野アイの隣人が天才外科医だったら〜命を救う、その先へ〜   作:ペンギンって可愛いですよね

55 / 69
第五十五話「天才双子兄妹」

 

翌日――。

 

朝から校内はどこか慌ただしかった。

 

テレビ局のワゴン車が校門前へ到着し、大きなカメラや照明機材が次々と運び込まれていく。

 

「テレビだ!」

 

「本当に来た!」

 

児童たちは教室の窓から興味津々でその様子を眺めていた。

 

先生たちは子供たちを落ち着かせながら、取材班を特別教室へ案内する。

 

今回取材を受けるのは、四年生の双子――

 

星野アクアと星野ルビー。

 

全国学力調査で二人揃って満点。

 

しかも全国一位という前代未聞の快挙だった。

 

テレビ局としても放っておける話題ではない。

 

特別教室にはカメラが二台。

 

照明が設置され、簡単なインタビュー会場が出来上がっていた。

 

担任教師も後方で見守っている。

 

二人は並んで椅子へ座る。

 

緊張しているかと思われたが、その表情は驚くほど落ち着いていた。

 

「それでは、よろしくお願いします」

 

「よろしくお願いします」

 

アクアは静かに頭を下げる。

 

「よろしくお願いしまーす!」

 

ルビーは元気いっぱいに笑顔を見せた。

 

ディレクターが合図を送り、カメラが回り始める。

 

「全国学力調査で、お二人とも満点、そして全国一位、おめでとうございます」

 

「ありがとうございます」

 

二人は同時に答えた。

 

「まず最初にお聞きしたいのですが、お二人は勉強が好きなんですか?」

 

するとルビーが真っ先に手を挙げるように答えた。

 

「はい!」

 

「お勉強はゲームみたいに解けるのが面白くて、ついつい先に進んじゃいます!」

 

その無邪気な笑顔に、スタッフたちも思わず笑顔になる。

 

「なるほど」

 

「ゲーム感覚なんですね」

 

「はい!」

 

「問題が解けると、『やった!』ってなります!」

 

和やかな空気の中、今度はアクアへマイクが向けられた。

 

「アクア君はいかがですか?」

 

アクアは少しだけ考えてから答える。

 

「僕は、あくまで将来のための知識を身につけているだけです」

 

「勉強そのものが好きというより、必要だから学んでいます」

 

取材スタッフは感心したように頷く。

 

「しっかりしていますね」

 

「ちなみに、何か趣味で勉強しているものはありますか?」

 

「考古学です」

 

「……え?」

 

スタッフが一瞬聞き返した。

 

「歴史ではなく……考古学ですか?」

 

「はい」

 

アクアは当たり前のように頷く。

 

「大学の文献を取り寄せて、自分なりに考察するのが好きです」

 

「遺跡や文明について調べていると時間を忘れます」

 

「それと」

 

「将来は外科医になって、多くの人を救うことが夢です」

 

その場が静まり返った。

 

スタッフ同士が思わず顔を見合わせる。

 

(大学の……文献?)

 

(小学四年生だよな?)

 

誰もが同じことを考えていた。

 

インタビュアーは一瞬言葉を失う。

 

「だ……大学の文献を、理解して読まれているんですか?」

 

「全部ではありません」

 

「分からないところは調べながらですが、概ね理解できます」

 

あまりにも自然な答えだった。

 

しかし、その内容は小学生の域を遥かに超えている。

 

後ろで見守っていた担任教師も目を丸くしていた。

 

(大学の文献……?)

 

(アクア君がそこまで勉強しているなんて聞いたことがない……)

 

教室には驚きの空気が流れる。

 

インタビュアーは気持ちを切り替え、恐る恐るルビーへ視線を向けた。

 

「ルビーちゃんは、今はどんな勉強をしているのかな?」

 

ルビーは少し困ったように笑う。

 

「私は今、微分方程式のところで躓いちゃって」

 

「アクアに教えてもらってるところです」

 

「…………」

 

再び沈黙が訪れた。

 

カメラマンの手が止まる。

 

音声スタッフも思わず顔を上げた。

 

担任教師も言葉を失う。

 

(び……微分方程式?)

 

(高校数学じゃなくて、大学の内容じゃないの?)

 

教室の空気が凍り付く。

 

インタビュアーは乾いた笑みを浮かべながら確認する。

 

「えっと……」

 

「微分方程式って、あの微分方程式ですか?」

 

「はい!」

 

「難しくて、まだ全部は分からないんです」

 

「でもアクアが教えてくれるので頑張ってます!」

 

ルビーは本当に困っていることを話すような口調だった。

 

その様子が余計にスタッフたちを驚かせる。

 

小学四年生。

 

全国一位の双子。

 

そう聞いてやって来た取材班だったが、目の前にいたのは「勉強ができる小学生」という言葉では到底表せない存在だった。

 

インタビュアーは思わず小さく呟く。

 

「……これは、天才ですね」

 

その一言に、教室にいた誰も反論することはできなかった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。