【推しの子】もしも星野アイの隣人が天才外科医だったら〜命を救う、その先へ〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第六十一話「天才子役の爆誕」

 

そして迎えた撮影当日、都内にある映画スタジオ。

 

まだ朝早いにもかかわらず、撮影現場には多くのスタッフが集まっていた。

 

「おはようございます!」

 

アイに連れられ、アクアとルビーもスタジオへ入る。

 

すると、ヘアメイク担当が二人を出迎えた。

 

「よろしくね。今日は役に合わせて髪色を変えるから」

 

「はーい!」

 

ルビーは元気よく返事をする。

 

今回演じるのは、主人公の少年時代と、その幼馴染。

 

目立つアクアとルビーの髪の色では役のイメージに合わないため、撮影用のウィッグで二人とも黒髪になった。

 

「おお……」

 

鏡を見たルビーが驚く。

 

「なんか別人!」

 

アクアも鏡を見る。

 

「悪くないな」

 

黒髪になった二人は、まるで本当の普通の兄妹……いや、幼馴染のような雰囲気になっていた。

 

その姿を見たスタッフも思わず頷く。

 

「似合ってる」

 

「これなら役のイメージそのままだ」

 

そんな二人の登場に、出演者たちも自然と視線を向ける。

 

「おっ」

 

「あの子たちか」

 

「今話題の天才双子だよな」

 

「全国一位になった子たち」

 

「演技もできるって本当なのかな」

 

現場では期待半分、不安半分といった空気が流れていた。

 

その時、一人の男性が笑顔で近付いてくる。

 

今回の映画で主人公を演じる俳優だった。

 

「君がアクア君か!」

 

アクアの肩を軽く叩きながら笑う。

 

「俺の子供時代、かっこよく演じてくれよ!」

 

親指を立て、ぐっとサインを送る。

 

「はい」

 

アクアは落ち着いて頷いた。

 

続いて主人公の相手役の女優もルビーへ微笑む。

 

「緊張しなくて大丈夫だよ」

 

「私たちも最初はみんなそうだったから」

 

「困ったことがあったら何でも聞いてね」

 

ルビーは少し緊張した表情だったが、その言葉に笑顔になる。

 

「ありがとうございます!」

 

現場の空気はとても温かかった。

 

スタッフも演者も、初めて映画へ出演する二人を自然と受け入れてくれていた。

 

そして――

 

撮影開始。

 

今回の映画は、幼馴染だった少年と少女の物語。

 

幸せな日々を過ごしていた二人だったが、ある日突然、家庭の事情で離ればなれになってしまう。

 

当時は連絡手段もなく、二人は再会を約束することすらできなかった。

 

だからこそ、別れ際に一つだけ合言葉を決める。

 

「いつかまた会えたら、この言葉を言おう」

 

それだけを胸に、それぞれ別々の人生を歩み始める。

 

そして十五年後――。

 

大人になった主人公は、ふと思い出したように、その合言葉をインターネットで検索する。

 

すると、一件のブログへ辿り着く。

 

そこから、たった一つの言葉を手掛かりに幼馴染を探し始める――。

 

そんな感動作品だった。

 

つまり、この映画が観客の涙を誘えるかどうか。

 

その鍵を握るのは、幼少期を演じるアクアとルビーだった。

 

「よーい……」

 

「スタート!」

 

カチンコが鳴る。

 

アクアは一瞬で主人公へ変わった。

 

自然な表情。

 

細かな目線。

 

感情を抑えた台詞回し。

 

幼い主人公そのものだった。

 

「さすが……」

 

スタッフが思わず息を呑む。

 

一方のルビーは――

 

最初こそ少し緊張していた。

 

感情が上手く乗らず、一度だけNG。

 

「ご、ごめんなさい……」

 

申し訳なさそうに頭を下げる。

 

しかし、五反田監督は笑った。

 

「大丈夫。深呼吸して、いつも通りでいい」

 

周囲の演者たちも優しく声を掛ける。

 

「焦らなくていいよ」

 

「一回目なんて誰でも緊張するから」

 

「楽しんで演じよう」

 

その言葉にルビーは大きく息を吸った。

 

「……はい!」

 

二回目。

 

カチンコが鳴る。

 

その瞬間だった。

 

まるで別人のように、ルビーの表情が変わる。

 

笑顔。

 

泣き顔。

 

幼馴染を大切に思う優しい眼差し。

 

すべてが自然だった。

 

その後は一度も止まることなく、最後まで演じ切った。

 

しかも、二人とも、台詞を一語たりとも間違えない。

 

ルビーの最初のNGも、台詞を間違えたわけではない。

 

ただ、緊張で感情が少し硬くなっていただけだった。

 

それ以降は完璧だった。

 

撮影が進むにつれ、現場の空気が変わっていく。

 

スタッフは仕事の手を止める。

 

演者たちもモニターへ釘付けになる。

 

兄妹だからこそ生まれる自然な距離感。

 

息の合った掛け合い。

 

互いを本当に大切に思っていることが伝わる演技。

 

それは演技というより、本当にそこに生きている幼馴染そのものだった。

 

気付けば、モニターを見ていた女優が目元を押さえていた。

 

「……ダメ」

 

「もう泣きそう」

 

別の俳優も鼻をすすりながら笑う。

 

「まだ子供時代なのに、もう感動してるんだけど」

 

撮影が終わる頃には、涙を流している者まで現れていた。

 

五反田監督は腕を組み、満足そうに大きく頷く。

 

「素晴らしい」

 

「アクアはもちろんだが……ルビーも予想以上だ」

 

「兄妹だからというのもあるんだろう」

 

「だが、それを差し引いても、この二人は本物だ」

 

「こんな完璧な演技をする子役は見たことがない」

 

現場は静まり返る。

 

やがて一人の俳優が、小さく呟いた。

 

「……本物の天才が出てきたな」

 

その言葉に、周囲の演者たちも静かに頷く。

 

誰一人として異論はなかった。

 

この日……映画業界は、新たな二人の天才子役の誕生を目の当たりにしたのだった。

 

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