熱帯夜、大通りを歩く2人プラス一体。
こんな時間だからね。
普段なら交通量の多いこの通りも車の往来はまばらになる。
メリーさんと蒼依は手を繋いで随分と楽しそうにしている。
それを俺が少し後ろからついていく。
側から見れば妹とその友達、お目付け役の兄といった感じだろうか?
なんで俺たちがこんな道を歩いているのかといえば、だ。
メリーさんに視線を向ける。
俺の視線に気付いて、振り返り首を傾げるメリーさん。
はぁ……
まぁ、怪異に何を言ってもしかたないのかもしれないが。
無駄に期待感を煽るのは辞めてほしかった。
10分ほど前。
メリーさんに何かを吹き込まれた蒼依に手を取られ、視界が真っ白に。
視界が自宅にいたはずが気づけば全く別の場所にいた。
ワープだとか転移だとか。
一言で表すならそういった現象であろうか?
俺はしばらく呆然としていた。
あまりにリアリティーがなさすぎて。
あまりに非現実的すぎて。
メリーさんがいる時点で現実的も何もないと突っ込まれそうな気もするが、彼女はぱっと見ただの人と変わらないからね。
カメラに映らなかったりはしたけど。
こういう、明らかにわかる異常とは受け取り方が異なると言うか。
そんなわけで、メリーさんを凄い凄いと褒めながら撫でまわしていた蒼依を視界にいれつつ。
俺は結構な時間固まっていた。
蒼依にいつまで固まってるのなんて笑われたが。
むしろ、即座に現状を受け入れてそんな行動を取れる蒼依がおかしい。
一般人がこんな現象に遭遇すれば当然の反応である。
しかし、メリーさんを前にして言うことでもない気もするが現代日本はいつの間にこんなファンタジーになったのだろうか。
……
さて。
いきなりのことに気が動転していた俺だが、改めて周囲に目をやり。
はて? と首を傾げることになった。
砂地の地面。
古めかしいブランコが夜風にかすかに揺れて、触れればきしみそうなシーソーに錆びついたジャングルジムが街灯に鈍く照らされる。
こじんまりとした、見覚えのある公園。
そう、ちょうどついさっきもこの公園の横の道を通り帰宅した。
本当に見覚えしかない公園である。
え?
ここ、家の近くじゃん。
全然実家の方じゃないんだけど?
今となっては謎でしかないドヤ顔を浮かべていたメリーさんに詰め寄ると、蒼依を通して言い訳を並べ始めた。
曰く、メリーさんとは電話をかけるたび徐々に近付く存在である。
それは知ってる。
徐々に近付くのだが、「今あなたの後ろにいるの」をする前にターゲットにバレたらメリーさん失格もいいとこなんだとか。
まぁ、それはなんとなく分かる。
窓の外でこそこそしながら電話する姿とか見られたら、情けないにも程がある。
よって、ある程度近づいたら一気に仕留める。
そのための手段がこれらしい。
「実家まで行けないの?」
「メリーさんが“長距離は苦手”だって」
はぁ、さいですか。
俺の素朴な疑問にメリーさんに耳打ちされた蒼依が答える。
それ、県外に逃げられたらどうするのだろうかと疑問に思ったが。
この様子を見るに公共交通機関で追いかけるのだろう。
え、海外は?
こいつカメラには映らないが人の目には見えるのだ。
パスポートもなしに船にしても飛行機にしても、乗れる気がしないのだけど。
……って、メリーさんの心配をしても仕方ない。
そもそも追いつかれたターゲットは十中八九不幸になるのだから追いつかれない方がいいのだ。
しかし「私に任せて」とはなんだったのか。
これじゃ任せるも何もない。
ちなみに、一回の距離は短くても連続で使えるならどのみちかなりの移動速度を出せるのではと思われそうだが。
今日は2回も使ったから疲れたとのこと。
どうもこれ以上転移できないらしい。
よって、連続使用で距離を稼ぐ作戦は不可能である。
本当に使えない。
多分置いていかれたくなくて適当言ったのだろう。
捨てられたと勘違いしてこんなことしたぐらいだしね。
いまからでも置いて行きたいところだが。
メリーさんの正体が判明した今でも謎に蒼依がメリーさんに同情的なのだ。
2対1になるのは目に見えている。
メリーさんの思い通りになるのは癪だが、しゃーない。
それに、メリーさんがこんな異能を使えるってことはだ。
影響を受けたという俺の他のグッズもなんらかの能力を持っている可能性が高い。
異能バトルに無能力者2人で突っ込むわけにも行くまい。
と言うわけで、俺たちは今実家に向けて大通りを歩いているのだ。
これ、何時間かかるんだろ。
タクシーという文字が頭をよぎる。
が、金がなぁ……
俺には黒歴史を回収するという使命があるのだ。
途中で資金が尽きてバットエンドというのは勘弁願いたい。
さっきまでは選択肢に入ってたのだが。
どうも、想像より状況が悪そうなもので長期戦も視野である。
道中。
あまりに暇すぎて情報収集がてらT町をキーワードにネットサーフィンしていたのだが。
気になる書き込みを見つけた。
【朗報】嫁が画面から出てきた、とかいうふざけたスレたいのスレッド。
内容は、画面から出てきた嫁にコレクションを持ち逃げされたというぶっ飛んだもの。
数時間前までの俺が見れば100%創作だと思ったであろう。
このキャラは俺も知ってる。
結構好きだったアニメだ。
このスレ主と違って、ヒロインのことを嫁とかいうほどハマってはないが。
フィギュアも持ってた。
それぐらいにはハマっていた。
無論、等身大とかそういうのじゃない。
そんな金はないし場所もない。
たしか、クレーンゲームか何かで獲ったような気がする。
プライズ品。
クオリティーも別に悪くはなかったが特別良くもなかった。
とても勝手に動き出すような。
パワー? の宿ってるタイプには思えないが。
四肢どころか頭もなかったメリーさんがこうなったからね。
等身大のサイズになって1人でに動くフィギュア、……もはやなんの違和感もないまであるな。
10,000pv突破!
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