フィルヴィスさんが、静かに言った。
「お前は生きていてほしい。だから私と一緒に逃げないか?」
その言葉は、不思議なくらい穏やかだった。
生きていてほしい。
その一言が、胸の奥に沈んでいく。
同時に、別の言葉も思い出していた。
私は死ぬ。
そう告げられたことがあった。
それは、今でも心のどこかに棘のように残っている。
今でも怖いものは怖いし、足がすくむことだってある。
胸の奥にへばりつく臆病さが、完全に消えたことなんて一度もない。
それでも。
「私は逃げません、みんなと一緒に戦います」
フィルヴィスさんの瞳がわずかに揺れる。
その変化は小さかったけれど、傍で見てきた私にはわかった。
きっと、止めたかったんだと思う。
危険から遠ざけたかった、失わせたくなかった。
その優しさがわかるからこそ、胸が痛んだ。
けど、逃げたくなかった。
ここで背を向けたら、きっと何も残らない。
逃げたら、後悔する。
そんなことは、考えるまでもなくわかっていた。
だから逃げない。
あの
本当に腹立たしくて、本当に不愉快ではあるが、彼の冒険を見たあと逃げますなんて口が裂けても言えなかった。
あとは、彼に認めてもらうために。
胸の奥がわずかに熱を帯びた。
憧れなのか、目標なのか、それとももっと別の何かなのか、まだ自分でもうまく言葉にできない。
けれど、少なくとも私は、あの人に情けない背中を見せたくなかった。
レフィーヤはきゅっと唇を結び、フィルヴィスを真っ直ぐ見つめ返した。
足はまだ震えている。
それでも、その瞳だけは逸れなかった。
もう、ただ守られるだけではいたくない。
そう決意した。
€
「それで私たちに依頼ってこれのことね…」
白く細い指先で紙を支えながら、アストレア様がそう呟く。
そこに記されているのは、【ロキ・ファミリア】からの正式な協力要請。
フィンに半ば押しつけられる形で使者役を任され、こうして俺は【アストレア・ファミリア】の本拠まで足を運んでいた。
本音を言えば、最初は断るつもりだった。
面倒だったし、わざわざオレが出向かなくてもいいだろうと思っていた。
オレが断るのがわかっていたのか、フィンは涼しい顔でこう言った。
───アイズたちに追い回されるのは、そろそろ疲れただろう?
そう言われると断ることもできず、いい名目でアイズたちから離れられる。
そのくらい、フィンの提案はは魅力的だったのかもしれない。
「面倒なことはゴメンなんだが……お前には返しきれねぇ借りがあるしな」
椅子に深く腰掛けたライラが、いかにも気乗りしないといった声音で言う。
「そんなこと言って〜あのフィン・ディムナとお近づきになりたいだけでしょ〜」
アリーゼが楽しげに片目をつぶって笑う。
「魂胆が透けていますよ〜狡い
輝夜もまた、くすくすと上品に笑う。
そんな三人のやりとりを、アストレア様はただ穏やかに見守っていた。
オレは室内を一度見回し、ひとつだけ空いている席へ視線を向けた。
「そういえば、リューがいないが何か用事か?」
その問いに、アストレア様がわずかに苦笑を浮かべる。
「リューは……【
なるほど、と心の中で呟く。
作戦開始は近い。
【
むしろ、ヘルメス・ファミリア側の別働きだと見るべきか。
リューがそちらに回っているなら、あっちはあっちで任せればいい。
少なくとも、余計な懸念を増やす必要はなかった。
「なら、リューを除いた【アストレア・ファミリア】三人
「ええ、問題ないわ!」
「あぁ、気は乗らねぇがな」
「私も問題ない」
アリーゼ、ライラ、輝夜から三者三様の返答。
最後にアストレア様へ視線を向けると、彼女もまた静かに頷き、優しく微笑んだ。
「私たち三人だけなのは、やっぱり少し寂しいわね」
ふいに、アリーゼがそう漏らした。
その一言で、場の空気がほんの少しだけ沈む。
「言うんじゃねぇよ、アリーゼ。思い出しちまうだろうが」
ライラが顔をしかめる。
投げるような口調だったが、そこにあるのは苛立ちよりも古傷の痛みだった。
「……あれから、五年か」
輝夜の静かに呟いた。
アストレア様もまた、そっと目を伏せた。
五年前。
あの惨劇の中で、オレが助けられたのは四人だけだった。
それ以外は、届かなかった。
彼女らにも思うところはあるのだろう。
もう少し強ければ、もう少し早く判断していれば、救えた命もあったのではないかと。
だが、それは無意味な仮定だ。
「すまないな。オレがもっと早く来ていれば」
思わず口にした言葉へ、真っ先にアリーゼが首を振った。
「いえ! 清隆を責めたかったわけじゃないの! むしろ感謝しているのよ!」
「お前が来なければ、たぶん全滅だったしなぁ〜」
アリーゼが否定するように、ライラが肩をすくめながら続ける。
「ですから、あの青臭い小娘の代わりも含めて、改めて感謝を。……ありがとう、清隆」
輝夜がそう告げると、アストレア様も、アリーゼも、ライラも、静かに頭を下げた。
「やめてくれ」
そう言って、オレは小さく息を吐く。
「逆に、オレも感謝している。あの
あの
魔石を持たず、魔法を弾き、純粋な殺傷能力だけを極限まで研ぎ澄ませた怪物。
中でも力と敏捷は異様で、俺がそれまで見てきたどの怪物よりも速かった。
初見で相対すれば、それだけで死に直結する。
条件次第では、最悪最強の部類に入る存在だった。
あれを越えたからこそ、
そういう意味では、借りがあるのはこちらなのかもしれない。
「ていうか、お前は隠しすぎなんだよ。Lv.7って何だよ。
話を切り替えるように、ライラが呆れた目を向けてくる。
「まあな」
短く返すと、今度はアリーゼが身を乗り出した。
「なんで言ってなかったの? 私たちに言わないのはまだ分かるけど、仲間にもってなると気になるんだけど」
「それは
それ以上明かす気はない。
そう含めて返すと、アリーゼは不満げに唇を尖らせ、ライラは呆れたようにため息をついた。
「まあ、いいじゃないか。清隆の秘密を知れたと思えば、お得というものだ」
輝夜がそうまとめると、二人も渋々引き下がる。
納得したわけじゃないだろう。
ただ、これ以上聞いても無駄だと悟っただけだ。
「でも、リューはいないけれど、私たち【アストレア・ファミリア】も協力するわ」
「借りは返さねぇとな」
「ああ、今度は私たちが剣を取る番だ」
アリーゼ、ライラ、輝夜の声が重なる。
それを受けて、アストレア様が静かにこちらを見つめた。
「清隆、この子たちは、きっと力になってくれるわ」
こうして【アストレア・ファミリア】参戦決定した。
€
清隆は次なる協力を得るため、とある場所に向かっていた。
「アミッド」
名を呼ばれた瞬間、彼女の瞳がわずかに見開かれる。
「ハッ! 清隆さん! ……こほん、お久しぶりです」
思わず、といった調子で浮かんだ表情は、普段の彼女からは想像しにくいほど年相応だった。
だが、次の瞬間には咳払いひとつでそれを引っ込め、いつもの落ち着いた面持ちへと戻している。
銀糸のような髪は美しく巻かれ、腰まで流れていた。
整った顔立ちに、長いまつ毛。
種族はヒューマン。
エルフとも間違えそうな、美貌の持ち主。
【
回復魔法と治療技術、その両方において都市屈指の才を誇る少女であり、数多の冒険者にとっては文字通り命綱と呼べる存在だった。
「協力を依頼にしに来たが……その慌てようもう依頼されてたか」
清隆は周囲の慌ただしさと、アミッドの反応を見てそう言った。
「はい。先ほど、フィン団長から正式に依頼を受けました」
アミッドは頷いて答える。
その口調は普段通り落ち着いていたが、清隆の来訪そのものにまだどこか意識を引かれているようでもあった。
「……一足遅かったか」
清隆がそう漏らすと、アミッドはわずかに首を傾げた。
「? ……遅かった、ですか?」
不思議そうな反応も無理はない。
同じ陣営からすでに協力要請が済んでいるなら、話は早い。
わざわざ使者が重なるのは手間でしかなく、面倒ごとを好まない清隆ならなおさら、むしろ歓迎しそうなものだった。
アミッドは幼い頃から彼を知っている。
だからこそ、その一言が少し意外だった。
清隆はしばらく黙っていたが、やがて何でもないことのように口を開いた。
「久しぶりに、お前と世間話でもできるかと思っていた」
「───つっ!?」
次の瞬間、手にしていた書類の束が指から滑り落ち、ばさばさと乾いた音を立てて床に散らばった。
脇に積まれていた書物まで巻き込み、どさどさと続けざまに崩れ落ちる。
白い頬がみるみるうちに朱に染まっていく。
平静を装うのを常とする少女にしては、あまりにも露骨な動揺だった。
清隆がデレた!!
その事実がアミッドの心を打った!!!
「ど、どどどど、どういう意味ですか……!?」
かろうじて絞り出した声は、普段の落ち着きをどこかへ置き忘れていた。
長い睫毛が細かく震え、視線は定まらず、耳の先まで赤くなっている。
対する清隆は、足元に散らばった書類と、明らかに様子のおかしいアミッドを見比べ、怪訝そうに眉を寄せただけだった。
「……なんでそんな動揺してるんだ」
忙しなく動いていた周囲の団員たちでさえ、何事かと視線を向けていた。
清隆はアミッドが落とした書類を一緒に拾いながら、アミッドに手渡していく。
「……と、とりあえず、座ってください」
どうにかそれだけを言い切る。
声が裏返らなかっただけでも上出来だった。
清隆は小さく頷き、近くの椅子へ腰を下ろした。
アミッドは乱れかけた呼吸を整えながら、書類を机上に置く。
この人は、昔から変わらない。
どれほど強くなっても。
どれほど遠くへ進んでも。
ふとした拍子に、昔と同じ距離で言葉を投げてくる。
おそらく、自分はずっと前からこの人に惹かれていたのだろう。
無愛想で、けれど誰よりもよく周囲を見ていて、何も言わないまま手を貸してくれることがある。
そうして、気づけば、追っていた。
「それで……協力の件ですが」
アミッドは努めて普段通りの声を作った。
胸の内を押し隠し、
清隆も察しているように、アミッドが同行することは了承していた。
今【ロキ・ファミリア】の家計は火の車で、
団員たちは慌ただしく行き交っているはずなのに、この場だけは奇妙なほどに空気が張りつめていた。
遠くで誰かの足音が響くたび、戦いの気配が少しずつ近づいてくるようだったが、それでも今この瞬間、アミッドの意識は目の前の青年だけに向けられていた。
銀糸のような髪を揺らしながら、アミッドはそっと問いかける。
「……貴方も、行くんですよね?」
確認せずにはいられなかった。
分かりきっているはずのことなのに、自分の耳で聞かなければ落ち着かなかった。
「そうだな」
返ってきたのは、いつも通りの淡々とした声だった。
気負いも、気負わせる響きもない。
まるで少し外へ出るとでも言うような、あまりにも自然な返答。
だからこそ、アミッドの胸はかえって締めつけられた。
この人は、いつだってそうだ。
自分がどれほど無茶をしているのかも、周囲がどれだけ気を揉んでいるのかも、気づいていない。
七年前も、そうだった。
血の匂いと悲鳴が入り混じる戦場で、傷だらけになりながら、戦場に向かうその姿は、幼かった彼女の目にはひどく危うく映った。
一歩踏み外せばそのまま死んでしまうのではないか。
そんな不安を覚えながら、それでも目を離せなかった。
誰よりも前線で戦い、誰かを救うために剣を振るうその背中は、あまりにもまぶしかったのだ。
その記憶を胸の奥に押し込みながら、アミッドは唇を引き結ぶ。
白い頬に、じわりと赤みが差していく。
それでも彼女は逃げず、まっすぐに清隆を見つめた。
「なら……私が、貴方を癒します」
小さな声ではなかった。
震えを堪えながらも、それははっきりと告げられた言葉だった。
決意だった。
表明だった。
そして何より、彼女自身の譲れない願いでもあった。
清隆はその言葉を受けてもなお、特に表情を変えない。
ただ、わずかに視線を動かしてアミッドを見返す。
「アミッドが?」
「はい、貴方はいつも無茶をしますから……七年前からずっと」
その言葉に滲んだのは、責めるような響きではない。
心配と、痛みと、諦めにも似た理解。
何度止めようとしても、この人はきっと止まらないのだと知っている者の声音だった。
「最近は何もしていないと思うけどな」
清隆は本気でそう思っているのか、あるいはただ事実として返しただけなのか。
どちらともつかない声でそう言った。
アミッドは首を横に振る。
「それでも、貴方が無茶をするのなら……私が癒します」
それはアミッドの我儘だった。
七年前。
彼が傷ついた時、真っ先にその身を癒したのは彼女だった。
血に濡れた傷口へ震える手を伸ばし、必死で魔力を注ぎ込んだあの感触を、アミッドは今も忘れていない。
助けたいと思った。
失いたくないと思った。
幼い胸に芽生えたその感情が何だったのか、当時はうまく言葉にできなかった。
けれど今なら、少しだけ分かる。
それはただ、治療師として負傷者を救いたいというだけの想いではなかった。
彼だからこそ、癒したい。
彼が傷つくたび、誰より先にその痛みへ手を伸ばしたい。
そんな、聖女の祈りには似つかわしくないほど、ひとりの少女としての熱を帯びた願いだった。
もっとも、清隆にそんなつもりは毛頭ない。
誰かの希望になるために戦っているわけでも、誰かの胸を焦がすために命を懸けているわけでもない。
だが、そんな事情をアミッドが知る由はないし、知ったところでこの想いが消えるわけでもなかった。
清隆はしばらく彼女を見つめ、それから短く答えた。
「ああ。そうなった時は頼む」
その一言だけで、アミッドの胸に灯がともる。
ほんの小さな了承。
けれど彼女にとっては、それで十分だった。
「ええ、私は
そう言って、アミッドは微笑んだ。
それは普段の彼女が見せる静かな微笑みより、少しだけ柔らかかった。
戦場を知り、痛みを知り、それでも誰かを癒そうと手を伸ばし続ける少女の顔。
同時に、ひとりの相手へ秘めた恋心を抱えたまま、それを胸の奥で大切に包み込む乙女の顔でもあった。
彼女は知らない。
彼が、そんな綺麗な光として語れるような人間ではないことを。
誰かを救う背中の裏で、冷たく物事を切り捨てることのできる人間だということを。
彼女は知らない。
その無表情の奥で、彼が今何を考えているのかを。
彼女は知らない。
───彼がこれから先、この戦いで何を為そうとしているのかを。
治療院の窓から差し込む淡い光が、二人の間へ静かに落ちる。
優しい時間のように見えるそのひとときは、しかし迫り来る戦いの前ではあまりにも儚かった。
それでもアミッドは、ただひとつだけを信じるように胸へ手を当てる。
もし彼が傷つくのなら、その時は自分が癒すのだと。
そう誓う彼女の横顔は、恋する少女のものだった。
そして同時に、戦場へ赴く聖女のものでもあった。
€
部隊編成の確認が終わったあと、周囲には出撃前特有のざわめきが広がっていた。
武具の点検をする音。
仲間同士で短く言葉を交わす声。
緊張を誤魔化すような笑い声も、あちこちで小さく混じっている。
都市の喧騒とは違う。
戦いの直前にだけ生まれる、張り詰めた空気だった。
その中で、オレは見知った後ろ姿を見つけた。
「レフィーヤ」
名前を呼ぶと、彼女はすぐに振り返った。
そして、オレの姿を見て、ぱっと表情を明るくする。
「清隆さん!」
弾んだ声と一緒に、長い耳が機嫌をそのまま映したようにぴくりと動く。
だが、瞳の奥には、出撃前の冒険者らしい緊張がきちんと宿っていた。
「オレと同じ部隊みたいだな」
「はい!よろしくお願いします!」
レフィーヤは笑顔でそう答えた。
屈託のない、明るい返事だった。
だが、次の瞬間には表情が引き締まった。
頬に残っていた柔らかさが消え、目の奥にある光だけが静かに研がれていく。
それは、戦いに向かう戦士の顔だった。
本当にレフィーヤは変わった。
初めて出会った時とは大違いだ。
友と出会い、
彼女はいい方向で変わった。
「離れてしまいましたね……」
ふいに、レフィーヤがそう呟いた。
その声音には、寂しさと悔しさが少しずつ混じっていた。
言うまでもなく、オレのステイタスのことだろう。
あの一件のあと、【ロキ・ファミリア】の内部ではオレのステイタスが公になった。
まだ隠しておきたかったのは本音だが、フィンもリヴェリアももう許さなかった。
Lv.7という手札を遊ばせない、今後はしっかり働いてもらうというオレへの警告。
もっとも、遅かれ早かれ露見していた話でもあるが。
まあ、表に出る時期が少し早まっただけだ。
ギルドへの正式な報告はまだ保留されているが、それも時間の問題だろう。
「レフィーヤ、お前は変わったな」
オレがそう言うと、彼女は目を丸くした。
「えっ?」
素直に驚いている顔だった。
オレからそんな言葉が出るとは思っていなかったのかもしれない。
「オレと出会った頃、お前はただのエルフだった」
「ただのエルフ?」
「初めてお前と出会った時、お前はオレたち冒険者に憧れて、行き当たりばったりという印象だったからな」
「うっ……」
学区からオラリオへ来たばかりの頃のレフィーヤは、本当にそんな感じだった。
【ロキ・ファミリア】を見て目を輝かせ、冒険者というものに夢を見ていた。
昔のオレは、それを未熟さとしか見ていなかった。
だが、今なら言える、憧れから始まり、追いかけるのは悪くない、と
それはベル・クラネルとの出会い。
ベルは憧れから始まり、いろんな苦節を乗り越えてここまでやってきた。
なら憧れから始まるのは悪くないと言えるのではないだろうか。
だからオレは彼女に期待してしまっている。
憧れを抱いてここまできたベルを見たからこそ、オレは見てみたいと思ってしまった。
だからそれを見極めるために、彼女と約束をしたかった。
レフィーヤに話しかけたのは、それが理由だ。
「レフィーヤ、この戦いが終わった後、時間を貰えないか?」
「時間、ですか?」
「ああ、どこか二人で会おう」
言葉にした途端、レフィーヤの顔が目に見えて赤くなった。
耳の先まで熱を持ち、視線が落ち着きなく揺れる。
「も、もちろんです!!でもいいんですか!?ティオネさんとか、ベートさんとか、それと……アイズさんとか」
「なんでそこであいつらの名前を出すんだ……」
思い出したくもないあいつらの名前を出されて、少し億劫になった。
今回に関しては班が分かれたため、というかオレがわけるようにフィンに切実の願いを出した。
「おい、清隆。私の予定の方が先約だ、それが終わってからにしろ」
「予定?何かあるのか?」
「はい!光冠を見に行くんです!私の故郷には───」
レフィーヤがこの戦いが終わった後の、これからの話をする。
出撃前の喧騒が聞こえた。
武具が擦れる音。
仲間たちの声。
緊張と高揚の入り混じった空気。
そのすべてが、これから始まる戦いを告げていた。
だが、そんなものは今のオレにはどうでもよかった。
もう、オレは止まらない。
止まる気はない。
何を捨てて、何を残すか。
何を利用し、何を切り捨てるか。
その選別は、とっくに済ませてある。
英雄の育成。
そして、黒竜の討伐。
そんなものはすべて過程に過ぎない。
必要だから積み上げるだけの手順でしかない。
目的はもっと先にある。
それは、個人的で、醜く、誰にも理解されない場所に。
それが正しいかどうかには興味がない。
許されるかどうかも同じだ。
認められないのなら、それでいい。
オレはオレのために進む。
オレが望む理想のために、必要なものを拾い、不要なものを捨てる。
その過程で何が壊れようと、誰が失われようと、今さら立ち止まる理由にはならない。
たとえその先にあるのが救いではなく、誰にも肯定されない結末だとしても。
オレはそれを選ぶ。
他のすべてを踏み台にしてでも。
それがオレの進む道だ。
ここから自分が目指す、展開へと面舵を切ります。
基本ベースは原作を辿りますが、キャラの内情などが清隆のせいで捻じ曲がってしまったので、そこら辺は異なる予定です。
次回は外伝(というよりおふざけ回)を書こうと思いましたが、続きを書くかもしれませんのでご了承を。
次の話について
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続き書いて欲しい
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外伝(過去編とかアイズの後日談など)
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外伝(コメディ)