頭文字D 蒼穹の86   作:マサヒロ (旧名デイブレイク)

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取り敢えず好きにやります


ACT.1 ハチロクと86

 

 

 

群馬県 渋川市にある県立高校

太陽が照り付ける夏真っ盛りの中、高校の屋上では3人の男子生徒がたたずんでいた。

その中の一人『武内樹』が、中古車のカタログ雑誌を眺めている。

 

「91年式で130万かぁ……高っけぇなぁ……S13は……それに、新しい86は中古でも200万かよぉ……」

 

雑誌の中古車の価格を見ては嘆く樹。

 

「よし!やっぱハチロクだな!ハチロクなら現実にあるよ、取り合えず車はFRじゃなきゃな~……ん?おい拓海聞いてるのかよ?」

 

樹の問いに、ボーっとした顔でフェンスに寄り掛かっていた『藤原拓海』は気怠そうに返事をした。

 

「聞いてるよイツキ。そのハチロクってのはいくらするんだ?」

 

「今のところ、30万がある。……車検なしだけど」

 

「それは止めといた方がいいぞ樹」

 

拓海の横に並び、フェンスに寄り掛かっていた『大和翔太朗』は樹に注意をした。

 

「そうなのか?翔太朗」

 

「あぁ、整備に検査で10万以上は確実に飛ぶぞ」

 

その言葉に肩を落とす樹。

 

「あ~!手っ取り早くドカンって稼げるバイトねぇかな!!今やってるGSのバイトじゃ、いいとこ12万だよ……」

 

「諦めろ。俺達は高校生なんだ」

 

「そーだぞ。車は逃げないから頑張ればいいじゃん」

 

その時、不意に翔太朗の携帯電話が着信音を響かせた。

 

「あ、電話だ。わりぃ、ちょっと出るわ」

 

「おう」

 

そう言って二人から少し離れ、反対側のフェンスにもたれかかると、携帯を開けて電話に出た。

 

「はい、もしもし」

 

『翔くん。久しぶり』

 

「小春か!!ひっさしぶりだな!」

 

『来週の土曜ね、そっちに帰ることになったの』

 

「急だな!!……で、どのくらいいるんだ?」

 

『えっとね~、日曜まで』

 

その時、学校のスピーカーからチャイムが鳴り響いた。

 

「わり、授業があるから切るな」

 

『わかった』

 

「じゃ」

 

そういって携帯を畳むと、樹たちと合流し教室に向けて駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして放課後、拓海達がバイトに向かう中で樹がこんな事を言い出した。

 

「なー拓海、翔太朗、3人で共同でハチロク買わねーか?3人のバイト代を合わせればローン払えるじゃん」

 

「やだよー、んでそんなに無理してまで車が欲しいんだよ、お前ん家にも車ぐらいあるだろうが。それ借りれば良いじゃん」

 

拓海はそういって少し嫌そうな顔をする。

樹は不満げな顔で口を尖らせた。

 

「ダメだよ親父の車なんて。FFでオートマでオマケにディーゼルなんだぜ。サイテーだよ、あんなの車じゃねぇよ……この頑固に何とかいってくれよ翔太朗!」

 

いきなり話を振られた翔太朗はびっくりしながら、頬をポリポリと掻く。

 

「あはは……」

 

そうして、青信号になった横断歩道を渡ると、翔太朗は拓海達とは逆の方向に曲がった。

 

「あれ、バイト行かねーのか?」

 

「バイトには行くよ。父さんの呼び出しが終わったらな」

 

そういって三人は分かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま~」

 

「おう、おかえり」

 

翔太朗は家に帰ると、玄関前で待っていた『大和総一郎』に挨拶した。

家の横のガレージには、青に輝く2代目セリカXXと86が並んでいる。

 

「ほい」

 

「うぉっと?」

 

総一郎から何かを投げ渡された翔太朗。

手を開けると、その中にはキーが入っていた。

 

「あの86はお前のだ、足もそのままにしてある」

 

翔太朗は手の中のキーに目を落とし、ゆっくりとガレージの青い86へ視線を向けた。

夏の日差しを受けたギャラクシーブルーシリカのボディが、静かに輝いている。

 

「俺の?……ありがと父さん!!」

 

「おう。楽しめよ」

 

そういって総一郎は玄関を開けて、家の中に入った。

翔太朗はにんまりとした顔で、キーのボタンを押す。

86のドアロックが静かに解除される。まるで新しいオーナーを迎えるようだった。

翔太朗はドアを開け、静かに乗り込む。

バケットシートが体を包み、ホールドしてくれる。

そして、エンジンスタートボタンを押した。

 

キュルルル……ボゥン。

 

元気よくFA20が目覚め、ナビやETCが起動していく。

 

「これから、よろしくな」

 

翔太朗はそういうとサイドを下ろし、クラッチを踏んでギアを入れると、初めて自分だけの愛車を走らせた。

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