どけ!!!俺はブロリーのお兄ちゃんだぞ!!! 作:こねこねこ
現実は非情だった。
死力を尽くしても、まだ首も座らぬ赤ん坊の身では結局武器を持った大の男には到底太刀打ち出来ない。
抵抗を試みたことが逆に不興を買い、あれからさらに脹相は二度三度とその身に凶刃を受け遂には力尽きた。
そしてその目前で、伸ばしても届かぬ手の先で、何よりも守りたかった弟のその身にまでその刃が及ぶ。
―――――いったい、自分達兄弟が何をしたというのだ。
この世に生を受けてまだ一日程度の赤ん坊の身で、何か罪を犯したとは思えない。
それとも、生まれてきたこと自体が罪だとでもいうのか。
そこに存在するだけで、害意を向けられなければいけないのか。
―――それこそ、前世でいう呪霊のように。
ただ、弟と共に生きていきたい。それだけが願いだったのに。
今世では、そんなささやかな望みすらも最初から許されぬというのだろうか。
無力感と絶望の中で、脹相は動かなくなった弟と共に廃棄場のような小汚い場所へ乱雑に棄てられた。
なけなしの呪力は全て抵抗のため、赤血操術にありったけを費やしてしまった為にもはや反転術式で傷を塞ぐことすらもままならない。
今は辛うじて出血自体は抑えているものの、生命活動が止まっていないことが不思議なくらいにその身は衰弱しきっている。
致命傷となる傷を複数受けても、失血死してもおかしくないほどの血を失っても、しかしそれでもまだ脹相は生きていた。
なんという強靭な生命力であろうか。
しかし、とうに限界は超えている。
すぐ傍へ投げ出された弟のその手を握ろうとしたが、もう指先すらまともに動かせない。
意識が途切れ途切れになる中、ふと気づけば脹相の小さな身体は弟と共に一人の男に抱えられていた。
ゆるりと視線を上げて見れば、自分達兄弟と同じくその身は酷く汚れ傷と血に塗れている。
ただ、その大きな手だけはしっかりと弟と己の手を握り確かな"熱"が伝わってきていた。
「すまなかった・・・お前達を、護れず・・・・・」
ぽつりぽつりと、男の口からそんな言葉が零れ落ちる。
「・・・おのれ、ベジータ王・・・我々親子のこの怨み、忘れはせんぞ・・・・・」
それを耳にした脹相は僅かに目を見張った。
この男は、恐らくは自分達兄弟の父親なのだろう。
・・・脹相の中にある"父親"というものに対する印象は、前世の記憶から大概が碌でもないものばかりだ。
母を孕ませ苦しめ続けた呪霊。そして母を、兄弟達を弄んだあの悪辣な呪術師。
しかしどうやら今世での父親は、少なくともそれほど自分達にとって悪いものではないらしい。
何故親子共々葬られる羽目になったのかその理由まではわからないが、先程の言葉から察するに"王"とやらの意向なのだろう。
国なのか、世界なのか、はたまた種族なのかは知らないが。
周りを取り巻くこの環境から、自分達親子は纏めて爪弾きにされているようだ。
このまま朽ちていくのか、と霞む思考でぼんやりと考えていたその時。
激しい地鳴りと共に辺りが一斉に崩れ出した。
「な、なんだ・・・!?」
文字通り崩壊していく世界の中で、激しい光が辺りを照らす。
そして急に、それまでずっと弱々しくぐったりとその身を預けていた弟がまるで火が付いたかのように泣き叫んだ。
(―――・・・!!?)
得体の知れない力が満ち、抱える父親ごと不可思議な光の薄膜に包まれる。
脹相の操る呪力とは全く別のものだ。
むしろ反対の、それはまさしく輝かんばかりの"正"のエネルギー。
親子を包み込んだ光の球体は、やがて空へ向かってゆっくりと昇り始めた。
ずっとずっと上へ、そのまま止まることなく空を抜けて星の海へ。
そして、脹相達が宙へと押し出されたその直後。
つい先刻まで自分達がいた星が、激しい爆発と共に粉微塵に砕け散った。
その衝撃波に乗り、薄膜に包まれたままどこかへと流されていく。
「惑星ベジータが・・・!!」
父が驚愕の表情と共に呆然と呟いた。
そして腕の中の、脹相の隣の弟へ目を落とす。
「ブロリー・・・お前が、俺達を救ってくれたのか」
それを聞いた脹相は、内心でその名を反芻し噛み締めた。
―――"ブロリー"。
そうか、ブロリーというのか。今世のこの弟は。
兄である自分は力及ばず、護るべきだった筈の弟に逆に命を救われてしまった。
既に泣き叫ぶのを止め再び大人しくぐったりとした様子の弟の、ブロリーの小さな手を今度こそ握り締める。
・・・このまま流されてどこへ向かうのか、今の脹相には分からない。
しかし、どこへ辿り着こうと。この先に何が待っていようとも。
今度こそ、自分が弟を守ってみせる。
―――――俺は、"お兄ちゃん"なのだから。
とりあえず書きたいところまで書いたので満足。
脹相にもサイヤ人としての名前が付けられている筈ですが、面と向かって呼ばれていないためまだその名はわかりません。
また、前世とは違い半呪霊ではないので元々持っていたアドバンテージの大半を失っている状態ですが今後徐々に取り戻したり工夫で補ったりなどしていくと思います。
あとこのお兄ちゃん、多分弟の傍に居るだけでS細胞爆増していくし弟に何かあるとすぐにバチギレるので超サイヤ人に覚醒するのがべらぼうに速そう。
いつか気が向いたらつづきも書くかもしれませんが、ひとまずはここまでで一区切り。
↓以下この連載についての管巻き(活動報告)
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=343203&uid=271404