忍界戦線 度し難いクズの兄弟子のナルト転生記 作:起き手
ハロー、ライブラの皆。お元気ですか?
オレは元気です。
あの日エルダーとの戦いで討ち死にし、見知らぬこの世界でうずまきナルトとして新たな生を受けて、早十二年の月日が流れました。
この里は相変わらずジャパニーズ昭和テイストで何処か懐かしげな(日本人じゃないけど)でジャパニーズニンジャが忍法ドロンしたり手裏剣シュッシュッしてる不思議な町です。
この世界に生まれた時の事件が原因で一部の里人から差別と迫害は受けていますが、世界のほぼ全てから狙われていたライブラ時代や師匠の修行と師匠との修行とか師匠からの修行に比べたらまるで頬を優しく撫でるそよ風のようなものです。
そんな里を、器用であることを除けば弟弟子二人に遥かに劣る実力だったオレは体内に封じられた九尾の狐と共に生きています。
明日は忍者アカデミー卒業試験。
まだこれからどうするかも決めることの出来ない目標なき人生を過ごしていますが、どうか遠い世界から見守っていてください。
親愛なる仲間達へ 不出来な斗流継承者◯◯◯より。
『そんな過去を懐かしみ仲間達へ思い馳せながら、コレはやることではないだろう』
『え、そうか?』
「「「「助けて許してーーーっ!!」」」」
木の葉隠れの里のシンボルとも言える歴代火影達の顔岩の上で、前世の仲間達を想いメッセージを手紙調に送っていると、体内に封じられた九尾の狐に呆れつつもドン引かれながら話しかけられた。
同時に足元聞こえてくるガキ共(肉体年齢的には同世代だが)の泣き叫ぶ声。
まったく大げさな、ただ下半身を露出させた状態でロープで縛り上げ顔岩の鼻から吊り下げているだけだろうが。
『たかが嫌がらせの報復にしてはやり過ぎじゃねえか?』
『そーかね?向こうの常識でもオレの基準からしてもかなり優しいぐらいなんだが』
気絶させてからズボンとパンツを剥ぎ取り岸壁から吊るすだけ、別に攻撃してないから外傷も一切ない。
これがヘルサレムズ・ロットなら死なない程度にフルボッコにされてその肉体をあらゆる方法で活用されていただろう。
弟弟子のザップ・レンフロならフルボッコにして財布を巻き上げ尻の穴に爆竹を詰めて吊るすぐらいはするに決まっている。
嫌がらせ、いじめ。
忍者学校に籍をおいているオレは一部の同級生から日常的にそのような行為をされていた。
その原因はこいつらの親だ。
かつて里を襲い甚大な被害と犠牲者を作り出した厄災の元凶である九尾の狐がオレの身体には封じられている。
当人(狐)によれば自分の意思じゃねえわいボケ、とのことで色々と裏事情がある事件ではあるがそれはさておくとして。
九尾を封じられたオレを里人達は九尾と同一存在認識され、憎い存在、いつ暴れるかわからない化け物、と迫害を受け忌避の目を向けられているのだ。
子供とは素直なもの。
親がそんな扱いを一個人に向けていれば子供もそうするのは当然だ。
親が嫌う存在だからと嫌がらせといじめをしてきたわけだ。
事情知るオレはまぁ仕方ないと別に気にもならないからスルーしていたのだが、コイツらはやり過ぎて一線を越えたからこうして報復したわけだ。
「明日からお前らは火影の鼻水だ」
オレの私物を捨てようとしたコイツらを勇気を振り絞って止めようとした少女に悪口言い泣かせた馬鹿共に怒気を浴びせながらそう告げる。
自分だけなら気にならんが、他の娘にまで被害を出すのは許せねえよ。
「「「「ヒィッ!?」」」」
この程度の怒気でビビるか。
そんなんで忍者が務まるのかね?
「コラーーー!! ナルトーー!!」
あ、イルカ先生だ。
顔岩は里のシンボル。
そんな目立つ場所でこんなことをしていたら流石に人も集まるか。
忍者学校の屋上には里長である三代目火影を含め人集りが出来ていた。
「「「「助けて先生ーー!!」」」」
下半身露出した馬鹿共はこれ幸いと被害者面して助けを求める。
コイツらのパンツとズボンを焼いちまうか。
イラッときたオレは斗流血法をこんなことに使用したら師匠に殺されるなと思いながらも悩みだす。
「事情は聞いたが、やり過ぎだー!!
早く下ろして、お前も降りてこい!!」
やっぱり良い人だよなイルカ先生。
火影の爺さんを除いた他の大人達が敵意の眼差しを向ける中、きちんと対処しようとしてくれる。
まったく、
「なんであんなに優しいのに結婚できないのかね?」
「余計なお世話だバカものーー!!」
ヤベ、聞こえてた。
常人離れした忍者の聴覚。
離れた位置にいても小さな呟きを聞き逃さない。
「明日は忍者学校の卒業試験だぞ!!試験に落ちるヤツだっているのに、はじめて試験を受けるお前があんなことをしてる場合じゃないだろバカヤロー!!」
「それは人の私物を捨てようとしたアイツラに言うべきでは?」
忍者学校教室。
馬鹿ガキ共を下ろした後にそのまま授業開始となる。泣きべそかいてたアイツラは説教後に親に引き渡された、よりによって泣かせた少女が里内で有名な名家の娘さんだったからかなり大事とか。
実力的にはその少女の方が遥かに上なんだが、内気な性格なせいでそれを発揮できないみたいだ。
「・・・・・・ああそうだな。すまなかった」
いやガチで気に病まれても困るって。
本当に良い人だなこの先生。
気にすることはねえのに。
その後の授業は変化の術の復習テスト。
変装をライブラ時代に散々やったオレにはイメージ通りの姿に変化するのは容易い。
しかし、この忍術とやらは本当に便利だ。
チャクラというエネルギーもそうだが、これがあれば前世でどれだけのことができたか。
いやブラッドブリードやら他の魑魅魍魎連中も使うから手が付けられなくなるな。
ただでさえ人類が知らない技術なんて無尽蔵にあるのだから。
変化の術を完璧にこなし(オレが不快な連中は舌打ちしやがった)授業は終わった。
オレが孤児であることからか何かとこちらを気にかけてくるイルカ先生に夕飯に一楽のラーメンをご馳走された(他にもうちはサスケとかいうヤツもしてもらってるらしい)翌日。
卒業試験は分身の術だった。
触れたら消えてしまうが操作できる分身体を創り出せる便利な術。
催眠術の類であるかけられた者しか効果がない幻術とは違い、誰の目にも見える実体があるのはいくらでも使い道がある。
以前火影邸に侵入し秘伝書を盗み見て覚えた影分身の術より遥かに燃費が良いのも良い点である。
隣の教室にてイルカ先生とミズキ先生の前で試験。五体の分身を創り出したオレは無事合格した。
『ま、楽勝だな』
『当然だろう、お前のセンスは四代目火影のヤツにも劣らんからな』
『センスね。一応二属性の血法は体得できたが、弟弟子二人に劣る実力だったんだぜ?』
『比べる対象がおかしなだけだ』
オレの体内に封じられた九尾の狐九喇嘛。それこそ生まれた時からの付き合いであるコイツとは相棒と呼ぶほど仲が良くはないが隣人というか同居人みたいな間柄だ。
忍里の中でも五大国と呼ばれる木の葉隠れの里を半壊させ、多くの忍と里長である四代目火影が命を用いて封じた化け物。
人の手に余る強大な存在であるが、ヘルサレムズ・ロットではそんなものいくらでもいたのでオレが臆することはなかった。
そんな態度が新鮮で、前世持つオレに興味を持ったのか雑談を繰り返すうちにこんな距離感となったのだ。
『明日から忍か、どんな仕事なのやら』
生きるためには働かねばならない。
さらば孤児支援金やら火影様の援助や何やらで生きてきた悠々自適ライフ。
明日からオレは社会の犬だ。
「やぁナルト君」
夕飯どうすっかな。
そう考えながら帰路についていたオレに中忍にして忍者学校教師であるミズキ先生がとある説明をしに現れた。
まだ忍者学校卒業試験は終わっていないと。
『どういうことだってばよ』
『母親の口癖うつってるぞ。クシナはてばさ、だったがな』
ヘルサレムズ・ロットではある意味で人々や人以外の住人達が熱狂しだし危険度が跳ね上がる時間帯、夜。
オレはコソコソと火影邸に侵入中。
ライブラではこの手の仕事は不可視の人狼達が担当だったがオレだってできないわけではない。
かつて師匠の地獄修行から逃げ出そうと命がけで隠形術を身に着けたのだ(無駄に終わったが)。
『しかし忍者学校真の卒業試験がまさか個別に言い渡されるとはな』
『クシナのヤツの時は別のだったが、まあ分身の術程度が卒業試験なわけがないか』
ミズキ先生が伝えてきた試験内容は火影邸に侵入し【封印の書】を強奪してくるというもの。
忍者らしいちゃ忍者らしい試験で、殺しをさせないあたりは温情ある課題なんだろう。
この形式なら警備を緩めればガキでもクリアできるしな。
『これか』
子供の卒業試験にしてもあまりにも温すぎる警備。赤外線センサーのような科学的警報もなければ、呪術魔術及びそれらを複合した装置もない。
ま、
「夜中にわしの家で何をやっとるのじゃお前は」
里で最強の忍が住んでることこそが、最高の警備なんだろう。
『どうするよ九喇嘛。殺るのはマズイよな』
『殺れる気のお前がおかしいわ。コイツの弟子の一人がドスケベだから裸の女に変化すればなんとかなるんじゃねえか?』
『ああなるほど、昨日の変化の術はこの為か』
アレはこの試験を変化の術で切り抜けれろ、という隠したメッセージだったんだろう。
「変化の術!!」
裸の美女と言えば弟弟子の恋人のどれか。
あの野郎、自分で呼びつけておいて高確率で美女と同衾してやがった。しかもその都度別の美女だったなあ。なんであんな度し難いクズが口説けるのか。
「なっ!?(ブーーー)」
美女の多い木の葉隠れの里でもお目にかかれないようなアメリカンナイズのグラマラス美女の裸体を見て、三代目火影は鼻血を勢いよく吹き出して気絶した。
天井まで届くとかどんな興奮ぶりだよ。女慣れしてない初心なレオだってこんな反応しねえよ。
『あとはミズキ先生が伝えた場所に行けば終わりか』
『・・・・・・ふん、あんな悪意塗れのヤツの言葉は正直信じ難いがな』
『悪意をオレに向けない里の大人なんてごく一握りだろ?けどまあ対策はしとくか』
忍者なんて上に命令されたら従うモノ。
そんなイメージからやった行動だが、確かに妙な話といえばそうだ。九喇嘛の言葉から罠を疑うべきかもしれない。
だから一応は備えをして、オレは火影邸から移動した。
木の葉隠れ外れの森。
師匠との修行で過ごした魔境に比べたら天国な環境でミズキ先生の到着を待つ。
『遅え』
『やっぱ嵌められたんだろ』
時間つぶしの精神世界での九喇嘛とのリバーシも飽きた。
封印の書の内容は既に全部把握し記憶しているので暇つぶしで読む気にもならない。
九喇嘛を解放する手段を求め、里内の術は秘匿されてるモノを含めて粗方調べ上げて把握している(使えるわけではないが)。
だからこの封印の書も数年前に読んでいくつかの忍術は覚えてもいるのだ。
「見つけたぞナルト!!」
「アレ、イルカ先生?」
森の中に建てられた隠れ家のような家(電線は引かれている)の屋根の上で待っていたら、必死そうに息を荒げたイルカ先生が現れた。
「お前、火影邸から封印の書をイタズラで持ち出すなんて、なんでこんなことを」
・・・・・・こりゃ確定か。
馬鹿なことしでかした生徒を叱ろうと必死に里内を駆けずり回った様子のイルカ先生。
となればやっぱり。
「真の卒業試験は嘘ってわけか、ミズキ先生」
「は?」
背後から聞こえる風切音。手裏剣ではなく苦無の音を聞いてイルカ先生のジャケットの首元を掴んで回避する。
一拍遅れて大量の苦無がオレ達が居た場所に突き刺さる。
「なっ!? ナルト?」
「ういっス。見事に騙されました」
突然の事態に戸惑うイルカ先生だが、樹上にて投げた姿勢のミズキとオレの言葉からすぐ様状況を把握したようだ。
「ナルト、巻物を渡せ」
「ナルト!!巻物は死んでも渡すな!!
それは禁じ手の忍術を記して封印した危険なものだ!ミズキはそれを手にするため、お前を利用したんだ」
・・・・・・そんなシロモノにしては管理が雑だった気がしますが(汗)。
いやまあ読んだからといって使えるようになるもんではないし、世界崩壊幇助器具とは危険度の桁が違うか。
というか下手にしようしたら術者が死ぬような忍術もあったな(多重影分身の術)。
「ナルト、それはお前が持っていても意味はないぞ。ついでに本当のことを教えてやる」
「!? バカよせ!」
そこから語られたのは十二年前の事件について、その日から作られた新たな掟の話。
オレ自身がバケ狐である、という里人の認識。
『・・・・・・そーなの?』
『ちげーよ』
九尾のバケ狐は九喇嘛だっての。
本人(狐)も違うと言ってんじゃん。
封印されてるから、なんで九喇嘛と同一存在だと勘違いされてんだ?
さらにミズキは親身になってくれているイルカ先生が両親の仇であるオレ(九喇嘛)を本当は憎んでいると得意げに叫ぶ。
だが、
『だとしたらイルカ先生はスゲーわ』
オレを苦しめようとする言葉だが、その情報からよりイルカ先生を尊敬してしまう。
だってこの人は、オレに憎しみの感情なんて向けたことがないのだから。
大好きな両親の仇を前にして、本気で心配して親身になってくれた。
こんな善人、前世でもそうは居ない。
クラウスさん並の良い人だ。
「おら、さっさとくたばれよ。バケ狐!!」
背負った巨大手裏剣を抜き放ち投げつけてくるミズキ。
そんなもん余裕で躱せるのだが、庇おうとイルカ先生が割って入ろうとする。
「ごめんなぁナルト。子供なのに辛い思いをさせて」
「!?」
震える声で涙すら流しながらイルカ先生は言う。
「悲しいことを悲しいと思えないくらい、辛い目に合わせて悪かったなぁ。
今度はちゃんと俺が守ってやるから」
ったく。
人をそんな病んだ子供みたいに言うなっての。
こちとら前世で二十五まで生きた大人だぞ。自意識なんておぎゃあと生まれた瞬間からあったっつの(あの襲撃してきた変な仮面の男はなんだったのやら)。
一人だとか、孤独とか、体内には九喇嘛も居たから気にしたこともねえよ。
でもまあ。
「誰かに腹の底から心配されるのは、悪くない気分だよ」
投げつけられた手裏剣はオレを自らの身を盾にしてでも庇おうとしたイルカ先生に当たる前に、血で形作られた刃で斬り払った。
「「!?」」
「敵意や悪意なんざどうでもいい。
そんな感情向けてくる連中に認められようとは思わない。けどよ」
認めてもらうために火影を目指す。
そんな生き方も、あるいはあるかもしれない。
だがオレには関心がない。
オレは元はライブラの人間だ。
それ以前はブラッドブリードを討伐する牙狩りだ。
称賛なき戦いに、身を置いて散った男だ。
人々に認められずとも良い。
大衆に称えられなくて良い。
同じ志抱いて戦う仲間がいるならそれで十分。
それだけで戦いきれた。
「守ろうとしてくれる人の為ならいくらでも戦えんだよ」
さぁ、やるか。
「斗流血法カグツチ。刃身の壱、焔丸」
懐から取り出した苦無で裂いた掌から溢れた血液が一振りの刀と化す。
散々迷惑かけられて死ぬほど鬱陶しかった度し難いクズであるが、それでもやる時はやる頼れる弟弟子が一番愛用した形態。
「は?」
忍術でも血継限界であるかどうかの斗流を見て呆けて見入ってしまうミズキ。
下手に知識があるからこそ、それが何なのか知り得る知識を当てはめようとしてしまう。
所詮は忍び未満のガキと見下し余裕をぶっこいていたからこその致命的な隙。
見逃してやるほど斗流は甘くも優しくもない。
「大蛇薙」
ミズキへと駆けたオレの描く赤い炎の軌跡。その線は地面だけではなくミズキの全身へと走り描かれる。
「安心しな、峰打ちだ」
刃つけてやったらバラバラになっちまうからな。もっとも、それだけで許してやるほどオレは優しくないんだよ。
刃引きされた焔丸で滅多打ちにしたミズキはズタボロになり宙を舞う。
そこですかさずパチンッとフィンガースナップ。刃身ノ弐空斬糸が導火線となりジジジと火種を届け、大蛇薙と同時にミズキに絡めた血の糸に引火する。
「七獄」
『汚え花火だ』
ボムッと爆ぜたミズキ。
九喇嘛の言う通り悪党の散り樣にはお似合いだろう。
「・・・・・・まいったな、これじゃあ大人も形無しだ」
守ることすらさせてもらえないよ、とイルカ先生は頭を掻きながら笑いかけてくる。
まるで自らの無力を嘆いてるような表情で。
「んなことはないさ。
オレはアンタに見せて貰って学んだよ。
カッコいい、大人の姿をさ」
だからオレは笑みを返した。
この人や三代目火影様、テウチのおっさんがいたから、全てを無くしたオレはこの里でまっすぐに歩いていけたのだから。
「ナルト、お前はもう立派な木の葉の忍だよ」
オレの想いが届いたイルカ先生は破顔して、そう言って二人で笑いあった。
その光景を水晶玉で見守っていた三代目火影は満足そうに笑うのであった。
ちなみにだが、ミズキに企みありと疑ったオレは見た目だけ似せた何も書いてない巻物を用意し、火影邸にことのあらましを書き置きしていたのだ。
本当に卒業試験だったらこれでも問題ないだろう。
うずまきナルトへと転生した斗流継承者の物語はこうして始まるのであった。
うずまきナルト(斗流継承者混入)
容姿は生まれた瞬間から自我があるため、母親であるクシナと同じく頬に九尾の人柱力の特徴である髭がない。
なのでより縄樹っぽい感じ。
食生活を栄養バランスをきちんとしていたため身長も原作ナルトより高い。
原作との違い。
孤独を一切気にしていない。
忍者学校では卒業試験に落ちておらず、落ちこぼれではなく天才扱い。
九喇嘛とは前世の記憶を説明して和解済。相棒ではないが、敵対もしていない。
斗流血法以外にも一部血闘術を再現している。