斉天大聖のヒーロー西遊記   作:ヴィルヘルム星の大魔王

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第一話 初見で緊箍児って読めなくね?

 

 春、桜が舞い、多くの人が新生活を迎える季節。この俺、猿石悟空様も例外ではない。

 とある高校の制服に身を包み、学校鞄を肩に担ぐ。春の陽気で欠伸が漏れる。

 

 「ふわぁ、眠いなぁ」

 

 駅の出口を出て、高校まで真っ直ぐ向かう。しばらく歩くと、見知った姿が目に入る。

 俺は、駆け足で向かい、二人の肩をトンと叩いた。豚鼻が特徴的な小柄の猪谷八戒。そして、隣にいる黒髪ロン毛すまし顔の男が沙河悟浄だ。俺様の腐れ縁であるブタとカッパ。

 

 「よお、悟浄、八戒」

 

 「ブヒ!おはよう悟空~!」

 

 「む?おはよう悟く「隙ありだカッパァ!」ぐはっ!?なんでだ!?」

 

 「ブヒー!?悟浄ー!?」

 

 挨拶がてら悟浄の顔を殴った。勘違いするなよ、読者の諸君。これは俺のルーティンだ。

 

 いや~、朝から気に食わないやつの顔を殴るのはスカッとするぜ!今日も良い日になりそうだ!

 

 「悟空!毎回思うけど、いきなり殴るのはどうかと思うよ!」

 

 「なんだよ、八戒。一声かけてから殴ればいいのかよ」

 

 「そういう問題じゃないよ!ブヒー!」

 

 悟浄の傍に駆け寄るブタがなんか喚いているが、気にしない。悟浄の身体を足蹴にしようとした時、凛とした声が耳に届く。

 

 「『締まれ』」

 

 その瞬間、頭に嵌まっている金輪がギリギリと締まり始める。締め付けによる強烈な痛みが、頭蓋骨を苦しめていく。

 

 「いだだだだ!頭が、頭が痛い!?」

 

 「こ~ら、悟空ぅ!また悟浄に悪さして!」

 

 頭を押さえながら、地面に寝っ転がる俺の頭上から凛とした声が聞こえてくる。その声に反応した俺は、顔を見ようと視線を上に向けた。そこにいたのは、綺麗な茶髪に薄紫色の瞳が綺麗な知り合いである。やっべえ、背後から不動明王が見える。

 

 「げっ、お師匠さん!?あだだだだ!この輪っかを早く緩めてくれ!」

 

 「その前に、何か言う事があるでしょう?」

 

 「…お師匠さんの楽しみにしていたプリンを勝手に食べた事か?」

 「違う…って、あたしの大事なプリン食べたの!?」

 「しまった!藪蛇だったか!」

 

 口から零れた軽率な発言に対し、お師匠さんは“ふぅ、ふぅ、怒りを抑えるのよあたし。悟空へのお仕置きは後でもできる”と、ぶつぶつ小言を呟いている。やはり、お師匠さんのプリンを食べたことが、怒りのボルテージを引き上げた様だ。いやぁ、なんでお師匠さんが怒っているのか見当もつかない。そう思っていると、緊箍児の締め付けがより一層強くなった。

 

 「ぎゃあああ!?お、思い出しました!謝ります!謝りますから!」

 「悟空、誰に謝るか、分かるわよね?」

 「ご、悟浄、で、す」

 「…よろしい。『緩まれ』」

 

 お師匠さんが唱えた呪文で緊箍児の締め付けが緩くなり、頭の痛みが和らいでいく。

 未だに頭が痛むが、奴に謝罪をしないとまたお師匠さんからどやされてしまう。

 俺は、地面に倒れている悟浄に向かい、誠心誠意込めて謝った。

 

 「カッパ野郎、ごめんちゃい」

 「ちゃんと謝りなさい!おバカ!」

 「ソルベッ!?」

 

 手刀を喰らった。痛みでプスプスと頭から煙が出る。そういや、紹介が遅れたな。俺の頭を叩いたお師匠さんの名は、法月三蔵。実家が法月院という寺の娘だ。いつからか不明だが、俺は彼女をお師匠さんと呼んでいる。三蔵もといお師匠さんとは、幼少からの仲だ。この緊箍児という金輪を嵌めたやつは、お師匠さんの他にもう一人いる。

 

 そいつは、同じ中学出身で同じクラスの学級委員長だったな。見た目は可愛いが、お師匠さんと似たタイプで、俺のイタズラに対して実力行使に出やがる。

 

 「猿野郎、さっきはよくも私を痛めつけてくれたな」

 

 顔が般若のように変貌した悟浄は、俺の腹へ馬乗りになり、容赦のないフックをかましてきやがった。

 

 「サルコラ!オイコラ!テメコラ!」

 「ぶべっ!?ばぼっ!ばべる!?そげぶ!?ぎゃああああああ!?」

 

 

 

 ~※しばらくお待ちください~

 

 

 

 

 「悟空?ちゃんと反省した?」

 「はび、ばんぜいじまじた」

 

 お師匠さんから尋ねられたので、反省したと返事をする。顔が膨らむほどに顔面をボコボコにされ、唇が腫れた状態の為、うまく話すことができねえ。カッパの野郎は、俺様に報復してスッキリしたのか、歩き読書をしてやがるし、非常食のブタは、腹が減ったのかコッペパンを食べている。

 

 「まったく、悟空ったら本当に懲りない子ね。ほら、三人とも早く学校へ行くわよ。私に続きなさい!」

 

 「「「ちょいちょいちょい、そっち違う道!」」」

 

 忘れていた。お師匠は、極度の方向音痴だった。この時だけは、俺と悟浄と八戒の言葉がシンクロしている気がする。そのまま突き進もうとするお師匠さんを止めるべく、急ぎ足で駆け出した。

 

 俺達は、ようやく高校に到着した。高校の名は、国立雄英高校。オールマイト、エンデヴァー、エッジショット、ベストジーニストを輩出した全国のヒーロー志望が目指す最高峰の学校。

 

 お師匠さんは、ヒーロー科2年B組の二年生。悟浄と八戒は、普通科である為、別クラスだ。

 お師匠さんとは、階段で別れ、悟浄と八戒とは渡り廊下で解散する。

 

 「おはよう猿石!今日も頑張ろうじゃないか!って、顔が腫れているじゃないか!?」

 

 教室に入ると、金髪の胡散臭いイケメンが近寄ってくる。

 

 「おぉ、おはよう物見」

 「物見って誰だい!?僕は物間だ!」

 

 俺様がわざと名前を言い間違えると、物間がオーバーリアクションで名前を訂正してきた。こいつ、朝から顔がうるせぇ。

 

 「物間、朝からうるさい」

 「へぶっ!」

 

 物間のうなじに手刀をトンッと当てたのは、オレンジ髪のサイドポニーが特徴的な女子の拳藤一佳だ。

 サバサバとした性格で、学級委員長としてクラスを牽引している。こいつとは知り合いで、過去にお師匠と共に、俺様に緊箍児を嵌めさせた天敵でもある。

 

 「おはようさん、一佳」

 「おはよう、悟空。今日も沙河にちょっかい出したんだってな」

 「ちげぇって、俺とアイツのスキンシップだ。というか、誰から聞いた」

 「三蔵先輩からだよ」

 「お師匠、口軽すぎんだろ」

 

 ま、あんたがやんちゃなのは昔からだけどね。と、一佳は俺の方を見て、呆れながらため息をつく。

 

 「というわけで、アタシからもお仕置き」

 「は?おい、ちょ、ま」

 

 一佳は俺様の背中に回り、体を押し付けてきやがった。制服越しに伝わる柔らかな双丘に気が緩むが、両腕を俺の腹に抱えている様子に、第六感が危険だと告げてくる。

 

 「よっこらしょ」

 「ずがっ!?」

 

 案の定、一佳は背中を反らし、ブリッジの状態で俺の頭を教室の床に叩きつけた。近くで見ていたクラスメイト共が、ひそひそと此方を見てやがる。おいこら、見せもんじゃねえぞ。

 

 「今日も華麗に決まりましたな、拳藤氏のバックドロップ」

 「あぁ、物間も猿石もよく飽きないよな」

 

 近くの席にいる毛むくじゃらの宍田と頭にバンド巻いた泡瀬が話す。物間はともかく、俺様はまともだろうがよ。

 

 「おはよう、俺の可愛い教え子たちよ!猿石、床に寝転がってないで早く席に着くんだ」

 「は~い」

 「返事は、短くだ」

 

 頭を摩りながら、自分の席に座る。担任のブラドキング先生は咳払いをしてから、出席を取り始めた。

 

 出席を取り終えたブラドキング先生は、朝の連絡を伝えてきた。

 

 「皆、来週には雄英高校体育祭が迫っている!このイベントは、ヒーロー科としての最大の見せ場だ!各々、準備を怠るなよ!」

 『はい!ブラド先生!』

 

 そういや、もうすぐ雄英体育祭の季節か。すっかり、忘れていた。

 

 ホームルーム後の休み時間となり、雄英体育祭を話題とする声があちこちから聞こえてくる。

 あまり興味の無い俺様は、トイレに向かった。

 

 この日は、何の変哲もない授業ばかりだったので、割愛する。

 

 

 

 

 翌日の放課後、クラスでやって来たのは、体育館β。学級委員長の一佳と副委員長の骨抜が申請したお蔭で、個性訓練として利用できるようになった。

 

 準備運動を終えた後、自身の個性に合った自己トレーニングをする者、組手をする者、談笑しながら楽しく特訓する者に別れていた。

 

 俺様は、当然、自身の個性に合ったトレーニングを始めている。まずは、深呼吸をして、精神を整える。

 次に、右腕を前に突き出して、技を叫ぶ。

 

 「獣化の術・腕!」

 

 自身の腕を猿の毛深い腕に変化させ、十本程毟り取る。腕毛に仙気を込め、息を吹きかける。

 体毛が空中に舞い、ボフンという音と共に白煙が立つ。

 

 「身外身の術!ふっ!」

 

 

 白煙が消え失せ、俺様の腕毛が十体の俺様となって現れる。この技は、俺様が尊敬する西遊記の主人公の十八番をオマージュしたものだ!

 

 『俺達、登場!』

 

 俺様の眼前に、体操着姿の分身共が現れる。う~む、いつ見てもイケメンでハンサムなナイスガイだぜ。

 

 「よし、悟空一号、俺様の組手の相手になれ」

 

 「本物の俺よ、だが断る!」

 

 「…じゃあ、二号」

 

 「無理、コロコロ読むのに忙しい」

 

 「三号、いけるよな?」

 

 「PSvi〇aでサルゲ〇チュするから却下」

 

 「四号」

 

 「拙者、推しのアニメを閲覧中でござる」

 

 「五号」

 

 「見てわかんだろ、飯食ってる」

 

 「六号」

 

 「ユーチューブ見てる」

 

 「七号」

 

 「面倒臭い」

 

 「八号、九号、九号、十号」

 

 「「「「今、モンハンで集会所にいる」」」」

 

 ぶちっ、と俺の中の何かがキレる。俺は、耳から如意棒を取りだし、サボっている分身に向かって、飛び掛かった。

 

 「いくら俺様といえど、許さん!このサル共!」

 『やんのか、サル!』

 

 「猿石!遊んでないで訓練しようぜ!」

 

 『うるせえ!』

 

 「ぶごっ!?」

 

 『て、鉄哲ー!?』

 

 自分同士で争いを始めた俺の喧嘩を収束させようと、鉄哲が間に入る。だが、聞く耳を持たない俺達は、如意棒で鉄哲の顔面を突く。遠くから騒動を見ていたクラスメイトたちは、不憫な鉄哲を憐れんだ。

 

 「悟空、いい加減にしなさいよ」

 

 一佳は、赤黒い怒気のオーラを放出させながら、両手を巨大化させ、俺達に向かって駆け出す。

 

 「さっさと…真面目にやれー!」

 『ぶげほぉ!?』

 

 一佳のダブル回転ラリアットが、俺達に牙を剥く。大拳による衝撃と風圧で吹き飛ばされ、慈悲の無い本気の一撃により、分身が解除される。地面には、白眼を剥いて気絶した俺が一人。

 

 「勝者、拳藤ー!」

 「ウィー!」

 

 一佳の左手を上に掲げ、勝者を褒め称える取蔭。一佳は、小指と人差し指を突き立て、雄叫びをあげるのだった。

 

 「…何だコレは」

 

 同時刻、教え子たちの放課後特訓を見に来たブラドキング先生は、一連のやりとりを見て戸惑う。

 

 (だが、クラス全体が仲良いことは嬉しい限りだ。あと、見事なラリアットだったぞ)

 

 趣味がプロレス観戦のブラドキングは、一佳による完成度の高いラリアットを目撃し、感嘆の息を漏らした。

 

 

 復活後、物間が笑いながら煽ったことで、如意棒の餌食にした。それにより、一佳の三日月飛び膝落とし(ムーン・ニードロップ)を喰らった。

 

 




猿石 悟空

個性 仙猿

誕生日 三月六日

性別 男

好きな物 桃、昼寝、悟浄にイタズラ

嫌いな物 猿蟹合戦

卑怯上等が信条の本作主人公。幼少期、法月家の養子として引き取られる。親の名前も顔も自分が生まれた場所も知らない。





法月三蔵

性別 女

個性 法力

キャライメージ FGOの三蔵法師

仏法系美少女。悟空の幼馴染にして、姉代わり。ぎゃてぇが口癖。


法月 仁郎

個性 後光

イメージ 佐藤二郎

三蔵の父親。まだ本編には出さない。




猪谷 八戒

個性 豚

悟空の小学校時代からの同級生。食いしん坊。悟空から食料として狙われている。


沙河 悟浄

個性 河童

小学校時代の同級生その2

きりっとした目付きで黒髪ロングのイケメン。いつも、悟空に殴られる不憫な男。


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