オロチサイコス。
サイコスとオロチが融合した存在で、更に『カミ』の接触により力を増した存在。
その力は災害レベル『竜』の次元を大きく超え、ボロスやガロウといった『竜以上』の域に手を掛けるだろう。
少なくとも、破壊規模における描写は同等だといっても過言ではない。
S級のほぼ全員で挑んでようやく倒した相手であり、それが今、俺個人に全力で敵意を向けている。
というか、怪人協会編でも屈指の破壊力を持つ攻撃が今俺に放たれようとしている。
・・・やばい。
ジェノスの攻撃でもギリ無効化できるくらいが今の俺。
流石にオロチサイコスの収束波を食いきることは出来ないだろう。
避けることも考えたが、地下に向けて放たれる収束波が地球に直撃した場合の被害も予測できない。
ならば!
『バイトシフトモード』で防御力を上げつつ、俺の最大火力である『大咬砲』をぶつけて相殺するしかない。
俺の肉体強度と再生力なら耐えきれるはず!
「オオオォォォオオオオオオォッ!!大!咬!砲ォ!」
超能力による莫大なエネルギー波と、俺の攻撃による圧力が拮抗する。
衝突点では、今まで見たことがないようなエネルギーが渦巻いていた。
数十秒の拮抗の末、徐々にこちらが押し負け始めたが・・・これくらいなら耐えられる。
「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬ・・・!」
俺に威力の弱まったエネルギーがぶつかってくるが、全身の歯による鎧で何とか防ぐ。
弾けたエネルギーが周囲にまき散らされていくのを感じながら、俺は圧倒的な熱量と衝撃と耐え続けた。
「ふんッ!」
よし、凌ぎ切った!
身体はボロボロで『バイトシフトモード』も解けたが、攻撃を凌ぎ切った以上問題はないはずだ。
だが。
「ハハハハハッ!今のを凌ぐとは流石だなハグキ!だが二度目は凌げまい!」
二発目・・・!?それは聞いてねぇ!
カッと頭上が光り、またしても膨大なエネルギーが俺に降り注いでくる。
これは防げない・・・!?
いや。
俺も成長してるんじゃぁ!
クソが、絶対に防ぎ切って見せる。
バイトシフトを使う暇もない!
ならなるべく遠距離攻撃をして相殺した後食うしかない!
「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
衝撃歯!衝撃歯!衝撃歯!衝撃歯ァ!超咆哮!ゲロシャワー!
からの、吸い込み!
ギリギリまで威力を弱らせてから歯と胃壁で受けきる・・・!
いやこれ無理だやべぇぇぇ!!
俺がそう思った刹那、俺の隣から高出力の熱線が飛んできた。
それにより、サイコスの攻撃の威力が多少なりとも弱まる。
これはまさか・・・ポチ!!
「ヴォアアアアアッ!!」
S級達の相手をしても無事だったか!
そして俺の危機を察して手助けに来てくれた・・・本当にコイツってやつは・・・!
よし、これならギリギリだが光明が見えた。
百分の一にも満たないような僅かな可能性ではあるが、防ぎきれる可能性は上がった。
「ポチ下がれ!あとは俺が受けきる!」
「ヴォウ!!」
「オオオオオオオオォォオオオオォォォォォッ!!」
ポチといえどこの威力では無事ではいられないだろう。
俺がなんとか防がねば。
極光の中、感じたことのないような膨大な威力を一身に受けながら、それでも俺は耐え続け―――そして俺の意識は光に塗りつぶされていった。
・・・・・・・・・・・
サイコスには、自身の作り上げた怪人協会に絶対の自信があった。
化け物揃いのS級ヒーロー達と言えど、怪人協会の最高戦力、幹部達には敵わない。
更には自らが作り上げた怪人王オロチ。
負けるはずがなかった。
サイコスの戦力評価は、概ね間違っていなかったと言えるだろう。
自分とタツマキの実力差を計り間違えていたところはあるが、サイコスとて災害レベル『竜』に相応しい戦闘能力の持ち主。
これはタツマキが強すぎたというだけであり、黒い精子、ハグキなどの『竜』上位勢と組ませればまだ勝ち目はあった。
その程度の実力はサイコスにもあるのだ。
戦力差だけを当てにせず、人質などという回りくどい手順を踏んでまで必勝の状況を整えた。
S級ヒーローは分散され、幹部達に一方的な敗北を喫することになる。
無事なS級もいるにはいるが、彼らとて幹部上位勢複数を相手取って勝利できるような強さはない。
サイコスの思惑通りに事は運んでいたはずだった。
だが、ゴウケツとムカデ長老がまさかの敗死。
それだけならまだ納得できないことはなかったが、次いでオロチすら何かに負ける事態に陥る。
自身もタツマキに捕捉され、真っ向勝負を挑むも敗北。
何かが狂い始めている。
サイコスの心に焦りが生じ始めていたのも無理ないことだろう。
援軍に来たハグキは期待通りの働きを見せ、タツマキの注意を逸らして見せた。
更にはオロチの生存。
サイタマに身体を砕かれながらも心臓部は生き残り、怪人たちの血肉を吸収し復活したのだ。
ようやく状況が好転し始めた。
この機を逃さず、失敗を覆そうと功を焦るサイコスの心理は当然のものと言えるだろう。
オロチとの融合、そして主導権の握り合い。
オロチのサイタマを倒すための力への渇望と、サイコスのタツマキを倒すための力への渇望。
それらが混じり合った結果、『カミ』の力の器に足る超存在へと変貌したわけだが・・・だが、余裕の無くなっていたサイコスの心もまた、『カミ』によって侵食されることとなったのだ。
【ハグキという怪人を殺せ】
(ハグキを!?あんなに優秀な駒をなぜ・・・)
【ハグキという怪人を殺せ】
(タツマキもまだいるし、ここは共闘した方が・・・いや)
【ハグキという怪人を殺せ】
(そうだ・・・私一人でもタツマキ如き殺せる!!)
【ハグキという怪人を殺せ】
(何を躊躇していたのか!私は神に選ばれたのだ!いずれ地球すべての生命を吸いつくし、新たな神として君臨する存在だ!)
【ハグキという怪人を殺せ】
「そのためにハグキ・・・まずお前が最初の犠牲となれ!!」
『カミ』によって得た超絶パワーによってごり押しでハグキと、その援軍に来たポチを葬り去ったサイコス。
タツマキとの戦闘に移行し、人知を超えた超能力がぶつかり合う最終決戦に臨む。
(もはや幹部共すら必要ない!目障りなヒーロー全員、この手で葬り去ってやる!)
地下にいる怪人たちの血肉とエネルギーを根を張ることで吸収しながら、応戦するタツマキにビームや念力など様々な攻撃を放つサイコスだが。
(なんだ?地中に・・・エネルギーが吸われている?)
地下に張った根から、エネルギーが逆流しているのを感じ取ったのだ。
これまで沈黙していたオロチの自我が、再び目覚め、サイコスに告げる。
「ハグキだ。奴が根を通して我々のエネルギーを吸収している」
「何だと!?あれだけやってまだ生きていたというのか・・・!?」
「このまま貴様がこの体を動かし続けても、タツマキとハグキ両名からの攻勢に耐えられまい?身体の支配権を半分よこせ。ハグキの方は私が相手してやる」
「ぐっ・・・いや・・・それが最善か。わかった。行けオロチ!私に逆らう不届き者を殺せ!」
サイコスからオロチの自我が分離し、下へ下へと降りていく。
地下へと向かいながら、オロチはほくそ笑む。
(いい機会だ、このままサイコスごと取り込んで身体の主導権を奪ってやる。だがタツマキかハグキ、どちらかをやらねばこの身体も危うい・・・まずはハグキを殺し吸収する!)
ーーーーーーーーーー
「ゴポポポポポポポ・・・!?」
マグマの中で目が覚めた。
どうしたんだっけ俺・・・そうだ、サイコスの奴に攻撃されて、それで・・・なるほど、更に地下深くに叩き落とされたってわけだ。
全身が痛い。傷が背中まで貫通している・・・。
が、生き残れたようで何よりだ。
そういやポチは生きてるのか・・・?
マグマの湖を飲み干し、周囲を探すと・・・居た。
岩盤の上に横たわっている。
「ポチ!大丈夫か!?」
「ヴォ・・・」
だいぶ傷ついてるな。
もともとサイタマに殴られてダメージを受けていたのもあるだろうし、そうでなくてもあれほどの攻撃を食らったのだからポチといえど無事では済まなかったか。
毛並みも元から荒れてはいたが、今は更にひどい。
治療してやりたいが、俺にどうにかできるもんじゃないしな・・・。
ポチの自然治癒力に任せるしかない。
「ポチ、お前はどっか隠れとけ。俺は今からアイツらに仕返しをする。俺が良いって言うまで出てくるんじゃねーぞ」
ポチをこんなにしやがって・・・アイツら絶対に許さないからな。わざわざ援軍として出向いてやったのに裏切られたのもそうだが、何よりポチを傷つけたことが一番許せねぇ!
何も言わずとも俺を助けに来てくれる良い犬なのに。
俺はカミ関連のしがらみがあるが、ポチは怪人協会の番犬であり続けただけだってのに。
「ヴォウ!」
ポチは返事をすると暗い洞窟の奥へと走り去っていった。
ポチと俺は互いに気配を掴めるので、はぐれても合流できる。
これで問題ないはずだ。
ポチの安全も確保したことだし、俺もさっさと仕返しするとするか。
だが俺は傷を再生するのに体力を使いすぎたな・・・。
アイツらと戦うなら何か食わないといけない。
そこで俺の視界に移ったのは、オロチサイコスが地中に張っていると思われる肉の根。俺は思いついた。
これを食ってまずは体力回復だ。
ついでにアイツらの邪魔もできるし、一石二鳥だな。
飛び上がって肉の根に飛びつくと、ラーメンを食うかのようにズゾゾッと吸い込みまくる。
既に雑魚怪人の血肉を吸収しているようで、なかなか濃厚な味がする。
俺の身体はどんどん再生していき、数十秒もすれば元通りになった。
更に捕食を進めていけば、かつてないほどのエネルギーが身体に溜まっていく。
いいね。絶好調だ。
しばらくそうしていると、遥か上空から尋常でない殺気が降りかかってくる。
同時に、よく見知った気配の核が俺の方に降りてくるのを感じる。
俺はこいつをよく知っている。
なぜなら、最初に俺が見た最高峰の怪人であり、恐怖した相手でもあるのだから。
なんとも奇遇なものだ。最初に遭遇したのと似たような場所で、こうして矛を交えることになるとは。
なあ。
怪人王オロチ!
肉の根が意思を持ったように蠢きだし、先端のとがった触手のようになると未だ食事を続ける俺に音速を遥かに超えた速度で突っ込んできた。
「チッ」
仕方なく捕食をやめ、口の端を伸ばして迎え撃つ。
オロチの操る複数本の触手と、俺の蛇のようにうねる一本の伸縮する口先。
火花を散らしながら何度も激突し、最後にはオロチの触手を一纏めにして俺の口が噛みちぎってやった。
「この程度でやれると思ってんのか?ずいぶんと低く見積もられてるみたいだな」
ガロウですら凌げる程度の攻撃で、俺がやれるわけないだろ。
俺の頭上で、肉の塊が蠢く。
半径百メートルはあるであろうそれは、徐々に変形し人の形を成していき・・・そして、複数の竜を模した触手が圧縮されて出来上がったような、王と形容するのに相応しい威圧感を醸し出す存在になった。
これは・・・改変前のサイタマVSオロチで見せた、オロチの最終形態・・・か?
全身から炎を吹き出している。
さらに、サイコスと融合した影響か不可思議な光をも纏っていた。
「お前だったのだな・・・私の祭壇に侵入した愚か者は。あの時は杞憂かと見過ごしたが・・・多芸なお前なら私の目を誤魔化したのも納得がいく」
「あ、それもバレたのか。そうだよ、あの時居たのは俺だ」
「そして今、この私に歯向かうつもりか。あの時私から隠れたのは私に敵わないと思ったからではないのか?今なら敵うとでも思いあがっているのか?」
「そうだ。あの時から俺は強くなった。これが俺の思い上がりかどうかは、お前が戦って判断してみろ!だが宣言するぞ、お前を喰らい最後に残るのはこの俺だ!『バイトシフトォ』!!」
戦闘特化形態に変身した俺は、構えを取ってオロチの出方を伺う。
「ほう。貴様も武術を・・・いいだろう。我が新たな力の前に散れ!ハグキよ!!」
同じく巨大な身体で構えを取ったオロチは、猛々しく宣言するとともに拳を突き出してきた。
同時に複数の触手もそれに追随する。
俺もまた、オロチが拳を突き出すと同時に飛び上がり、正拳突きを放っていた。
二つの拳が激突し・・・熱気と衝撃波が地下全体を揺らした。
オロチはクソ強い。
先ほどまで戦っていたガロウと比べても、肉体強度は上。
なんと技まで同等以上に感じる。
その上、俺と同レベルか更に変幻自在な肉体・・・!
初めて戦う、明確な格上だ。
サイタマやガロウとの戦闘描写しかないから分からなかったが、怪人王を名乗るのに相応しい実力の持ち主で間違いない。
サイタマ相手なら誰でもそうなる。むしろ生き残ってるあたり凄すぎる。
ガロウ相手に関しては、完全に手加減だな。ギョロギョロから殺さないように言われてたし、まるで赤子を扱うかのように相手していたに違いない。
俺の歯を鎧のように纏った『バイトシフトモード』。硬度で言えばオロチの身体よりも丈夫なのか、俺の突きや蹴りで触手は傷つく。
最初に真正面から殴り合ったときも、俺の拳はオロチの巨大な拳に刺さっていた。
ダメージを与えること自体は出来るのだが・・・厄介なのは、オロチの手数だ。
例え一本の触手を引きちぎっても、他の触手が殺到して追撃をさせない。
触手全てが高度な流水岩砕拳を使うものだから、突破するのも一苦労だし・・・再生能力も高いせいか、他の相手をしている間に再生してしまう。
体力切れを狙うのも得策ではないだろう。
オロチの背には無数の肉の根が繋がっており、そこからエネルギーが常に供給されているようだ。
ならばそれを断ち切ればいいという話にはなるが、オロチを搔い潜って背を狙うのは至難の業だし、一回やってみたけどいつの間にか再生して別のところで繋がってた。
それに、今俺が戦っているオロチ本体の持つエネルギーも莫大だ。
俺もそうだから分かるが、再生にはエネルギーを使う。だが、レベル『竜』ともなるとそもそも保有しているエネルギー量が莫大だ。
無尽蔵ではないが、傷がすぐ治らない人間からしたら無尽蔵に再生しているように見えるだろう。
エネルギー切れは期待できない。
普段の俺なら相手の体を食いながら持久戦も視野に入れるが、相手も補給ありとなると千日手だ。
むしろ相手の方が効率的にエネルギーを摂取しているから、いずれジリ貧になって負けるだろう。
『バイトシフト』でも食事自体はできるが、口が小さい状態で固定されているから補給量は少なくなるのだ。
襲い掛かってくる無数の触手を引きちぎり、噛みちぎり、拳で粉砕しながらオロチ本体の巨腕の相手もする。
どれもこれも武術まみれ、ゴウケツの技術も使ってくるし、俺と戦うにつれて徐々に洗練されていくように感じる。
ま、それは俺もだが。
武術を洗練させて相手しないと死ぬという状況になってようやく、俺の武術も急激な上昇を見せたようだ。
そりゃ必要がないと会得できないよな。だって俺噛みつきで攻撃する怪人だし。
俺が流水岩砕拳用に編み出した皮膚の流動による受け流しの阻害だが、一度見せたらオロチも使ってくるようになった。
対応もガロウより完璧だ。
俺もめちゃくちゃ考えながら一挙手一投足を迫られる。
さらには、無数に放たれる熱線。
これも厄介だ。
受けてみて分かったが、どう考えてもポチのそれより威力が高い。
カミの力を得た故か、もとからこの威力を出せたのかは分からないが、まともに食らえばダメージ必須・・・のくせして無数に放たれる。
歯には傷一つつかないが、歯で覆いきれてない皮膚の部分は多少の火傷を負わされる。
だが『バイトシフト』の俺にだって遠距離攻撃は出来る。
「ゲロビーム!」
単純に、ゲロシャワーを砲口を絞って放つ技だ。ホースの口を窄めれば出てくる水の勢いが増すように、俺の消化液もエビル天然水の水鉄砲のようなスピードで発射される。
触手を複数本溶断し、さらにオロチの身体を真っ二つにせんと迫るが、オロチの右腕全てを使った巨大な熱線により蒸発させられる。
その熱線はそのまま俺に迫ってくる。
いやちょ・・・この威力はサイコスの放ったやつと遜色ないぞ・・・!?
「大咬砲!」
全力で突進し、熱線と俺の体が降れる直前にため込んだ破壊エネルギーを解放する。
熱線は見えない壁に阻まれたように弾かれて見当違いの方向に飛んでいく。
なんとか耐えたか。
『バイトシフトモード』が解けそうになるのをなんとか力むことで堪えながら、オロチを睨む。
まだまだ余裕そうだな。
それでこそ超えがいがあるってもんだ。
「まだまだァ!!」
「さっさと死ね!」
再び、超特大の熱線が放たれる。
『大咬砲』で防ぐ。
また同じ威力で熱線。
防ぐ。
何度だって防いで、そしてやり返してやる・・・!
俺の身体は酷使しすぎて今にも筋肉が弾けそうになってるし、超高温の攻撃を何度も防いだ所為で全身から煙が上がっているが・・・。
何故か、心の方はまだまだ戦えると湧き上がっているんだよな。
これが気合ってやつか・・・はたまた俺の成長の示唆か・・・。
何にせよ、好都合。このまま怪人王を倒して、俺が次の怪人王だ!
「そんなもんか!?だったらもうすぐ超えられそうだなァ!」
「ほざけ!」
・・・・・・・・・・
オロチは困惑していた。
ハグキは強い。
それはわかっていた。
自らが率いる組織の幹部として認めていたのだから当然だ。
だが、カミの力を得て更に莫大な出力とエネルギーを得たオロチが負ける道理はなかったはずだ。
それがどうだ。
戦うたびに成長するオロチと同等以上の速度で、ハグキの戦闘力は急激な高まりを見せていた。
サイコスが考えなしにハグキに放った一撃。
アレをさらに凝縮させて放ったオロチの熱線ですら、ハグキは先ほどより軽く防いで見せた。
何度撃っても同じ。
先ほどは一度防ぐだけで戦闘特化と思われる変身が解けていたにもかかわらず、今度は変身が解けることなく何度も超威力の必殺技―――『大咬砲』を放ってくるのだ。
(これは・・・以前の私よりも・・・!?)
オロチにとっては不愉快な話だが、サイコスとの融合によって力が増した今の状態でなければ、このハグキに負けていた可能性すら頭に浮かんだ。
だがオロチとて数々の猛者を下してきた強者。
戦闘経験も肉体の潜在能力も負けてはいない。
どんどん速度と膂力が上がるハグキに対し、更に触手を組み合わせ、硬さと膂力を増し、さらに軌道も複雑に、スピードの緩急も利用して対応する。
ハグキとオロチの戦いは、一つの白い光点と、それに追随する赤く光る炎の龍が暗い地下に軌跡を残しながら激突する壮絶なものとなった。
ハグキの移動速度が速すぎるあまり、空気との摩擦で高熱が発生しているのだ。
激突の音すら遅れて聞こえるような超速戦闘の中で、ハグキとオロチは的確に武術を使い攻守を入れ替えながら大立ち回りを演じていた。
ハグキが放ったゲロビームが、オロチによって逸らされる。
逸らされたそれは地下数千メートルから地上まで貫通し、さらに横なぎに大地を割き地面に深い渓谷を作った。
オロチが放った熱線も、ハグキに打ち消されなかったものは地中をどこまでも進んでいき、どこかで地上に出てその周囲を生命の住めぬようなマグマ地帯にしてしまう。
ハグキとオロチは互いに高め合い、その力は少し前地球に襲来した暗黒盗賊団の頭目を想起させるほどの領域にまで手を届かせようとしていた。
だが、ハグキの成長速度はオロチの上を行ったのだ。
先ほどよりも更に超スピードで接近してきたハグキに対し、オロチは冷静に分析する。
(おそらくハグキの『バイトシフト』とやらはハグキ自慢の『噛む力』を全身に移行させて圧倒的な膂力を生み出すのが本質・・・今の超スピードはおそらく足にその筋力を集めたことによるもの!ならば誘い込んで迎え撃つまで!)
オロチの腹に向かって一直線に飛ぶハグキに対し、オロチは腹を大きく開いて待ち構えた。
オロチの胴体は一つの巨大な口のようになり、そこからはこれまでとは比べ物にならない威力の熱線が放たれる。
オロチは地下深くまで肉の根を張り、地球のエネルギーすら汲み取っていたのだ。
「これで死ね。『ガイア砲』!!!!!」
「『極咬砲』!!!!!」
小惑星程度なら跡形もなく消し去りかねない、二つの攻撃がぶつかり合い―――
ガイア砲はまるでただの水かのようにはじけ飛んだ。
ガイア砲を突破したハグキの攻撃が、そのままオロチの胴体を消し飛ばす。
「―――私が負けるだと・・・?」
「ああ、俺の勝ちだ。でもお前強かったよ。俺らのボスやってただけはある」
「―――認めよう、ハグキ。今この瞬間は、貴様の方が強かった、と」
「お?そりゃどうも」
「これが・・・死か。あのハゲの男も、お前が殺せ・・・」
オロチの目からフッと光が消え、残された体が地下のマグマだまりに落ちていく。
ポンッと音を立てて元に戻ったハグキは、それらを吸い込みで食らいつくしてからゲップして言った。
「いやそれはちょっと無理かも」
たくさんの感想ありがとうございます!
めちゃくちゃ嬉しいしモチベになるんですが、何分忙しくて返す暇がなくてですね・・・。
しっかり考えて返信したいので、一つ一つ隙間時間とかを使ってじっくり返していきますので、これからもたくさんの感想をよろしくお願いします!