本作はパイロット版魔法先生ネギま! 黄龍魔闘剣風帖のアップデート版です。
時系列はある程度そのままですが、登場予定キャラの前倒し登場や内容を加筆修正や追加、本編開始時期を変えたりと、色々変更点がありますが、一粒で二度美味しいと思われるような作品にしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
目を覚ました俺は困惑した。
まずは俺の身に起こった事を整理しよう。
………
……
…
転生というありきたりなライトノベルの設定が俺の身に降り掛かっているということに驚きを隠せなかった。
元々の俺は夢見がちな中年だった。
夢を叶えようと努力した十余年は人生の路線変更で立ち消え、路線変更した先でも自身の力の無さで砕かれ、その末に最後は呆気無く、子孫も思想も残せない。
そんなくだらなく、浅はかで、どうしようもない普通の男だった。
だが、終わりは無だと思っていた俺におかしな幻聴が耳朶を通すこと無く、脳裏に響く。
《憐れなる道化よ。 世界を掻き回せ、我らの為に……》
脳裏にはある一枚の絵が浮かび上がる。
先の折れ曲がった杖、片刃の大剣、フリンロット拳銃にしては火縄の存在しない銃、刀、扇子、手帳、本、棍、外套に大手裏剣、様々な道具のなかにそれはあった。
緑髪のメイドのデフォルメされた体型……関節が球体のため、おそらく人形だろう。
見覚えがある。
否、知っている。
待て!
それはネギま!の……。
答えを出す前に俺の意識が暗黒の濁流に飲まれる。
薄れゆく意識の中、暗黒の向こうから燃える三眼がコチラを見て下卑た笑いをしているような錯覚を幻視した。
…
……
………
俺は最後に見たあの唾棄すべきようなあの視線に背骨に冷水を流し込まれたような寒気を覚えつつ、意識の覚醒した俺は起き上がり、辺りを見渡す。
辺りは二段ベッド、上には誰もいない。
?
俺は何で居ないことを確信した?
俺はその問いに感覚的な、五感とは違う感覚に違和感を覚え、その意識を先鋭化する。
まるでHUNTER×HUNTERみたいだが、凝も円、練もしていない、というかできない。
ただただ自然に、あるがままに感じることができる。
そして、この内側から立ち上る力の奔流は何だ?
それに地面にも同じような力がある方面へ集中しているようだ。
俺はベッドから腰を上げ、窓まで向かう。
まだ夜なのか、涼やかな夜風が窓から吹き、俺の頬を撫でる。
その力の向かう先は巨大な樹木。
魔法先生ネギま! で見たことがある。
確か……神木『蟠桃』。
魔法宿る、生きた神秘。
地下には魔法世界のポータルがあったはず。
ますます、魔法先生ネギま!の世界だ。
そんな感想を脳内で出力した瞬間、俺の中で疑問が現れる。
俺はどうなった?
セオリー通りなら、世界に俺のパーソナルデータが出力されたように生成されたのか?
それとも……憑依?
その考えに至った瞬間、俺の脳内に夥しい情報が流れ込む。
『氣』『宿星』『魔人』『柳生宗崇』『黄龍の器』『菩薩眼』『師匠』『麻帆良』。
そして、『緋勇 龍麻と美里 葵の息子』。
俺は膝を折り、その場で蹲る。
理解した、理解してしまった。
俺は……この身体の持ち主……『緋勇 竜馬』の肉体に憑依し、緋勇 竜馬本人を取り込み、全てを喰らい尽くしてしまった事を。
魂で見てしまった。
彼の、慈悲の心を持った瞳が、俺を許すと暗に伝える様を。
俺はトイレへ駆け込み、既に何もない胃の中の物が迫り上がるような感覚、気分の悪さ、罪悪感。
そんな負の感情が綯い交ぜになったものを吐き出した。
吐き気が収まらない、吐き気もする。
自分が浅ましい、自らの所業が呪わしい。
消えろ、こんな非生産的な存在はこの世から消滅しなければならない。
彼に身体を返させろ、俺は死んだ存在だ。
こんな自分が嫌だ。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ…………。
許してくれ、俺を……転生した俺を誰か殺してくれ……。
俺は、夢破れてからは惰性で生きてきた人種だ。
それは変わらない。
でも、俺は労働の対価で娯楽を、快楽をその範囲で享受してきた。
それはできる限り誰も傷つけないように、一人で完結できるものに終始してきた。
だけど、これは俺の許容を超えている。
俺は、俺より年下の人間を食い物にしてまで生きながらえたくない。
こんな無様で、浅はかで、この罪深き愚者を誰か罰してくれ……。
…
……
………
俺はトイレの中で無いものを吐き出そうとし、胃液さえも出し尽くし、トイレの前の扉に凭れ掛かり、一頻り泣いた。
泣いて、後悔して、自分を怨んで怨んで怨み抜いて、ようやっと気持ちに仕切りを付けることができた。
未だ自らを許せないが、折り合いはつけないといけない。
俺は彼を喰らい、彼と同化し、彼となった。
その記憶を垣間見た。
彼は麻帆良初等部を卒業したての麻帆良男子中等部一年。
幼馴染みは二人。
神楽坂 明日菜、雪広 あやか。
魔法先生ネギま!内でキーになるキャラクターだ。
そして、その記憶には彼が何故俺に抵抗せず受け入れたのか、その真実が刻まれていた。
彼は神楽坂 明日菜を愛していた。
親愛や友愛のそれではない。
思慕の情。
所謂、恋愛感情である。
アスナは黄昏の姫巫女の代理人格のようなものであり、本来の持ち主であるアスナ・ウェスペリーナ・テオタナシア・エンテオフュシアの記憶封印に際して自然的に発生した存在だ。
その主人格のトラウマのような記憶の影響を受けて、渋みを増した高畑・T・タカミチにガトーの面影を感じ、刷り込みのような恋心を持っていた。
彼はそれでもなお、明日菜への溢れる思いを伝えたが、思うようには伝わらずに友達として好きだと認識され、彼の恋は粉々に粉砕され、最初こそヘコんではいた。
しかし、心機一転で彼女の恋を応援する。
その矢先の初等部卒業の日。
卒業する彼女を祝う為に来た高畑の表情を見て、確信してしまった。
高畑・T・タカミチは神楽坂 明日菜に恋愛感情を抱かない。
寧ろ、それは保護者としての感情しか抱いていない。
それもそのはず、彼は近衛 近右衛門が彼女を養育し、養育以外の世話を全て受け持っていたはずだ。
彼にとって神楽坂 明日菜は自分が養護すべき対象でしかないのだ。
その事実に彼の繊細だった心はまるで毒に冒されたように崩壊した。
怒りとも悲しみとも、虚無感とも似つかない感情が心の裡でうねりを上げ、壊れきった心が更に締め付けられ、自殺寸前だった。
そこに、俺という存在が現れた事により、彼は自らの魂を喰殺させ……自殺に成功し、俺に肉体を明け渡した。
それほどまでに幼い彼が彼女を愛してしまい、狂ってしまった。
俺は
しかし彼は俺となり、俺は彼となってしまった。
彼が出せなかったもう一つの答え、神楽坂 明日菜を護る。
これは贖罪であり、生涯の至上命題として、彼女やネギ少年の最善の未来を補助しよう。
それで俺が道半ばで死のうとも、この世界は
それが彼を……緋勇 竜馬を殺し、彼と成り代わってしまった大罪を背負った己が思いついた彼への最大限の手向けであり、贖罪である。
だが、俺は知識こそあれ、実際に陽の古武術の動きを把握できていない。
ゲームでは当時のアニメーション技術の現界からか、動きは極めて単調であり、エフェクトで荒さを隠していた為、どのような技がどのような動きをしているかが分からないのである。
そんな状態で、あのインフレ環境で生き残れるのか?
否である。
己の体となったのだから性能の把握は急務だ。
そう考えた俺は早速、新しくなった身体の能力を知るために日が登り始めた街へ体操服に着替え、繰り出した。
次回予告
転生を余儀なくされた男は憑依した体である緋勇 竜馬の体の性能の確かめるために早朝の麻帆良を駆け抜け、ある少女と邂逅する。
次回、出会いはチャイナ服と共に。
あとがき
パイロット版の拙作から読んでいただいている方や他の作品からお読みになられた方々に先ずは感謝を。
そして、9月にはある程度パイロット版に追いつくよう頑張ってきましたが、遅筆と他の趣味で時間が潰れた為にこのように期間が空いてしまったこと、申し訳なく思います。
ですので、次回からも拙作を読んでいただけると幸いです。
以上、雑食紳士でした。