「俺の趣味だ。良いだろ?」
「この台本を読めば良いのか?」
「あっ、コラ。台本とかメタい話を入れるんじゃない」
「す、すまない。……前回はDクラスへの0ポイント宣告とオレの異常点暴露だったな」
「全く茶柱先生は何を考えているのやら」
「ああ、だが茶柱先生は生徒の秘密を握っているみたいだ。……オレは普通に過ごしたかっただけなんだが」
「諦めろ綾小路」
「諦めたくないんだが? 諦めたくないんだが?」
「2回も言うな……ってそろそろ始めるか。第4話、スタートだ」
5月初日から早くも1週間が経過した。綾小路は堀北の呪縛から逃れられず、散々な目に合っている。例を挙げるならコンパスで腕を突き刺してきやがった。あの時綾小路は眠そうにしていたが、まさか刺してくるとは。感覚を共有している俺も痛かった。あの後は痛みを和らげた。
更に堀北は綾小路を使って須藤、池、山内を勉強会に呼ぶようにと命令してきた。理由は綾小路がスペシャル定食を堀北の奢りで食べたことだが、あれ堀北から進んでやったことだ。飯を使って半ば強制に交渉の場に着かせたわけだ。可愛げが無いね。ただスペシャルと言うだけあって美味しかった。
赤点だった須藤、池、山内は友達である綾小路の言葉に耳を傾けなかった。そこで綾小路は櫛田桔梗に協力を申し込んだ。櫛田は協力してくれて、3人は勉強会に参加することになった。
ただ堀北と櫛田には因縁らしきものがある気がする。それに、櫛田はどこか無理をしている気がした。気ばっかり使っているが、そんな感覚があった。
今日の堀北は随分と不機嫌であった。こんなので上手くいくのか不安である。
『頑張れ綾小路。見守ってやる』
『代わって欲しいんだが……』
『ははっ、無理だな。俺は堀北のことを知っているが、堀北は俺のことを知らん。噛み合わないだろう』
『助けをいつでも呼べるようにしといてやる』
『期待しないで待っておくよ』
「連れて来たよ~!」
図書館の端、長机の一角を確保していた綾小路と堀北の元に櫛田達がやってきた。赤点組である須藤、池、山内。それに付いて来た沖谷という男。
堀北は櫛田の言い訳、いや口車に乗せられた。沖谷と同じく赤点ギリギリなんだと言って勉強会の参加を勝ち取った。
こうして始まった勉強会。しかし最初から暗雲が広がっていた。
『あちゃ~、連立方程式で躓くか』
沖谷を除く須藤達が連立方程式が使われる問題で躓いてしまった。櫛田はちゃっかり教える側に回っていたが、表情には分かりやすく危機感が浮かんでいた。堀北が連立方程式を用いて書くが分かっているのは櫛田と沖谷くらいである。
「こんなことやってられるか」
『諦めるの早っ!? もうちょい頑張ろうぜ』
勉強に無縁過ぎるだろ。堀北が須藤達のレベルに合わせられるか分からない。だがここで諦めてしまったら流石に堀北に失礼じゃないか。
「ま、待ってよみんな。もうちょっとだけ頑張ってみようよ」
「……櫛田ちゃんが教えてくれるなら、俺もうちょっと頑張れるかも」
それでやる気が出るとしても、櫛田に失礼だろ。俺なら困惑して言葉に詰まる。
櫛田は連立方程式を用いて答えを教えるが、基礎を理解していない赤点組には理解出来ないだろう。赤点組は完全にレベルが違う。
『堀北がこのレベルの違いに気付けるかだが……これはただ書くだけじゃ分からないぞ』
『気付いたとしても怒りが蓄積しているんだが……』
「貴方達を否定するつもりはないけれど、あまりに無知、無能過ぎるわ」
『『あっ』』
堀北はあまりに勉強出来ない赤点組を見て遂に爆発した。堀北の言葉の棘は最大級発揮された。それに噛み付いたのは須藤だった。
「勉強なんざ、将来なんの役にも立たねえだろ」
……いや、今は役立つだろ。
堀北はその発言について追及した。そしたら苦労したことがない、こんなことしているくらいならバスケの練習をしている方が良いと返した。そして——
「貴方はきっと自分に都合の良いルールでバスケットをしていたんじゃないかしら。本当に苦しい時は勉強と同じように背を向けて逃げている。練習にも真摯に取り組んでいるとは思えないし。何より、周囲の和を乱すような性格。私が顧問ならレギュラーにしないわ」
「っ!」
「須藤君!」
堀北の発言は度を越えていた。櫛田が須藤の腕を掴んでいるから殴られてないものの、堀北は胸倉を掴まれてる。
「バスケットでプロを目指すなんて幼稚な夢を中途半端で投げ出す貴方が叶えられるわけない。もっとも、仮にプロになれたとしても納得の年収が貰えるとは思えない。現実味の無い職業を志す時点で貴方は愚か者よ」
「今すぐ学校をやめて貰えないかしら? そしてバスケットのプロになるなんてくだらない夢を捨てて、バイトでもしながら惨めに暮らすことね」
……言い過ぎだ、堀北。勉強が出来ないだけでそこまで言わなくても良いだろ。
「はっ……部活を休んできたのにただ苦労しただけじゃねえか。やってられっか。あばよ!」
「俺もやめーよ。正直ムカつく。堀北さんは頭は良いかもしれないけど、上から来られたら付いていけないって」
須藤に加えて池まで堀北の言葉の餌食になってしまった。それによって須藤、池、山内、流されて沖谷が図書館から出ていった。
残されたのは綾小路、堀北、櫛田の3人だけになった。その櫛田も限界みたいだが。
堀北は今の内に足手纏いになる奴らを切り捨てる方針にした。櫛田はそれに納得がいってないみたいだった。
「ねえ、綾小路君からも何か言ってよ」
『……何を言えっていうんだ』
『分からないなら分からないって素直に答えるのも良いと思うぞ』
「……分からない。オレは堀北みたいに教えるようなことは出来ないし、切り捨てたいとは思っていない。だがこれの解決法が分からないんだ」
「そう……」
綾小路の答えを聞いた櫛田は鞄を持って立ち上がった。
『不味かったか?』
『いや、これにはそもそも正解も不正解もない。分かったとしても後になってからだろ。決断なんてそんなもんさ』
堀北と櫛田はほんの少しだけ会話をした後、櫛田は図書館から出ていった。
「これで勉強会は終了よ。貴方は他のくだらない者達と違うようね」
くだらない、かぁ……。
『すまん綾小路、体を貸してくれ。俺はこの少女に言いたいことがある。頼む』
『エボルト……。じゃあ見せてくれ、お前の答えを』
綾小路から体を借りることが出来た。
「……いや俺も、お前もまだまだ未熟者だ」
「何を……」
「確かに須藤達は中途半端に諦めた。この学校にいるのに勉強を軽視した。それに怒りを感じるのは分かる。……だが堀北はその怒りに身を任せすぎたんだよ」
「私はそんなことしてない、間違ったことは言ってないわ」
本気でそう思っていそうだが、俺は話をやめない。まだ俺の意見は言っていないからな。
「まぁ、お前がそんなことを本気で思うのは勝手だ。だけど、お前は須藤達に自分の当たり前を押し付け過ぎた。お前にとって勉強すること、赤点を取らないことは当たり前だが、須藤達にとっては苦痛なんだよ」
「そんなこと、私の知ったことじゃないわ」
「そうか。じゃあこの話は別に良い。本当に許せないのは……人の夢を否定してその挙句侮辱したことだ」
そうか、俺も堀北同様怒っているのかもしれない。ここまで言われても堀北は冷えた表情をしていた。
「お前は知らないはずだ。須藤がバスケのためにどれだけの時間を費やして、努力してきたか。ただの憶測で人と夢を侮辱したんだ。須藤があんなに怒るのは無理はない」
「事実を言ったまでよ」
「なら俺がこれから言うことも事実だ。夢や目標を嘲笑うような奴は、自分の夢や目標すら真剣に見つめることすら出来ない」
「なんですって」
堀北が初めて俺に向かって怒りを向けてきた。
『なるほど、堀北の中には夢や目標があるのか』
『そうみたいだが、容赦はしない。動揺した内に打ち込む』
俺は別に堀北の夢や目標を否定する気はない。どんなものでも笑って背中を押してやりたかった。だが……今は言いたい。
「よく覚えておけ堀北。みんな誰しも自分自身が主人公なんだ。それを否定する権利は誰にも無い……ってな」
「……帰ってちょうだい」
「……ああ、分かった」
俺は鞄を持って堀北に背を向ける。そのまま図書館を後にした。
「……すまない綾小路。俺もどこか怒ってたみたいだ。説教して、関係を断ち切るような真似して、居候失格だな」
『だがエボルトの答えはオレの中じゃ響いていたぞ。流石、地球を愛して本当に来た宇宙人だ。説得力がある。……なぁ、エボルト』
「ん?」
『オレにも、夢や目標が出来るだろうか』
「ああ、出来るさ。……一緒に探すくらいは手伝う」
『そうか。……ありがとう』
綾小路に体の主導権を返したところで、櫛田を探し始めた。小走りで探してたら櫛田らしき人物を追うことになって、屋上へ向かっていた。
屋上の扉前まで櫛田は移動した。綾小路は声を掛けるか迷っている。
「あ——ウザイ」
「マジでウザイ、ムカつく」
そこから呪詛のように堀北のことを罵倒し始めた。なるほど、これが櫛田の裏の顔ってわけか。
『人気者は辛いねぇ』
『ああ。それと堀北と櫛田は前から知り合いなのかもしれない。……それよりもここから離れる。こんな姿、櫛田は見せたくないはずだ』
『だな』
そうやって綾小路が離れようとした瞬間であった。ガンッと大きな音が響き渡る。櫛田が扉を蹴った。あまりに大きな音であり、櫛田は思わず振り返った。
「……ここで……何してるの」
気付かれてしまった。櫛田的には見られたくない姿を見られたわけだ。
『気を付けろ綾小路、何をしてくるか分からないぞ』
『ああ。エボルト……念のために体の主導権をいつでも握れるように』
『分かった』
綾小路と櫛田は会話する。しかし警戒状態の櫛田は綾小路の首元に腕を当てて、壁へ押し付けた。
「今のこと話したら、容赦しないから」
「もし話したら?」
「今ここであんたにレイプされたって言う。冤罪にもさせないから」
「何を言って」
櫛田は綾小路の腕を掴み、手を開かせて、胸に押し付ける……はずだ。そう仮定して、俺は体だけを硬直させて櫛田相手には動けないようにした。
そして、本当に腕を掴んできた。しかし綾小路の体は櫛田相手じゃ動けないようになっている。次第に焦りが浮かび上がってきた。
「……諦めろ。お前が考えていることなんて目に見えている」
「チッ。無駄にロボットみたいな硬さして……」
『泣いて良いか?』
『今は集中した方が良いと思うぞ』
綾小路案外余裕だろ。
「で、どうするの? 私を脅迫する? それとも私と付き合いでもする?」
「どっちもしない。……なぁ、そこまでストレスが溜まるなら、なんで勉強会に参加しようと思ったんだ。自ら堀北に関わる必要はなかっただろ」
「誰からも好かれる努力をして悪い? それがどれだけ難しくて、大変か、あんたに分かる?」
「……分からないな。オレは友達少ないから」
「私は表向き堀北と仲良くしていたいの。それが私の望む生き方。自分の存在意義を実感出来るから」
存在意義、か。難しいことを言ってくれるな。
『どう思う?』
『別にいつもの櫛田が自分の理想であることは分かった。存在意義とまで言っているしな。それに裏があることを否定するつもりはない。理想とする自分と裏の自分がいて葛藤するのはよくあることだと思うぞ。ただ——』
『ただ?』
『物に当たるのは良くない……』
『オレも同感だ……。エボルトの言葉で切り込んでみるか』
綾小路は口を開いた。
「存在意義か」
「なに、悪い?」
「別に。いつもの櫛田はオレ達と仲良くするための理想なのは分かった。それに今の裏の櫛田を否定するつもりもない。理想とする自分と裏の自分がいて葛藤するのはよくあることだと思うぞ。ただ、物当たるのは良くないくらいだ」
綾小路の言葉に櫛田は驚いた表情をしていた。綾小路、俺の言葉を殆ど同じことを言ったな。
「言いたいことは言い終わった。この場であったことは秘密にする。……じゃあな」
綾小路は櫛田に背を向けて屋上から去る。
『これで、良いんだよな』
『ああ、そうだな。よくやった、綾小路』
・アンケートの結果、私に一任することになりました。
・個人的には桐生戦兎と万丈龍我は登場させたいです。それも生徒として。
・他の登場人物は追々考えます。この作品自体見切り発車です。
・応援よろしくお願いします。
仮面ライダービルド本編の登場人物を出しても良いですか?(最短第一巻の途中)
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出すべき!
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出さない方が良い……
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作者に任せる!