季節は夏。
かつてはセミの声が聞こえると体感温度が+3度されるとか言われていた気もするが、今はむしろセミの声が聞こえるほうが涼しいとかいう始末。
この世の温度上昇が著しい、このペースで温度が上がるなら12月は50度とか迎えるぞ。
んで、そんなくそあっちぃ中で外出する理由も勇気も用事もないわけで、家でダラダラ過ごしたい。
だが、あいにくと俺の部屋にはエアコンがない。
そして今日に限って家のエアコンが全部ぶっ壊れた。
...馬鹿なん?
いや死ぬが?シンプルに熱中症で息の根が止まるが?
なーにが「アンタの部屋は日当たんないし風通るから大丈夫よー」だよあのクソボケ。
扇風機の後ろに氷水を置いて冷風を送るライフハックを試しているがまったく意味がない。
こうなればエアコンの効いてる野外に行くしかな
「よーっすクロ!遊びいこー!」
「帰れアホ1号」
金インナーの黒髪幼馴染、
ちなみにクロというのは俺のあだ名だ、
「え、暑いからどっか行こーって言おうと思ったのに」
「...いや、暑さでおかしくなってるんだ、悪いな。すぐ準備できるから待ってろ」
「うん!」
蕾叶、動かず。
「いや出てって欲しいんだけど」
「外あついからヤダ!」
「別に外行けって言ってねえだろうよ。リビングいろよ」
「うわわ、押さないでよクロ~」
半ば強引に蕾叶をリビングへ押し込んでから、30秒で支度を終える。某40秒支度おばさんも満足だろう。
「待たせた。とりあえず腕出せ」
「え、うん」
疑問に思わないのが少し怖いが、その素直さが彼女の良い所。
突き出された腕に遠慮なく日焼け止めクリームをぶっかける。
「冷たっ!?なにすんのさ!?」
「ただの日焼け止めだよ。蕾叶は焼けても似合うだろうけど、今の日差しは普通に死ぬだろうからな」
「えへへ、ありがとクロ」
「風呂入って全身が焼けるような痛さを味わいたくないなら毎日やれ」
ヒュッと喉の奥を鳴らした蕾叶を横目に外に出る。
やはり暑い。しかし風がある分幾分かはマシか。
「蕾叶はどこ行きたいとかある?」
「なーい...」
「...お前が外行こうって言ったんだよな?」
さっきまでのお元気はどこへやら、灼熱の太陽に焼かれた彼女はさながらはぐれスライムだ。
唐突に、部屋のカレンダーに丸印が書いてあることを思いだした。
「そういえばお前今日誕生日だっけ?」
「え?今日何日?」
「7月28日」
いうと、蕾叶ははっとした顔をして、そうだった!と声を上げる。
「忘れてたのかよ」
「うーん...忘れてた!」
「そうかよ」
えへへ、と頭を掻きながら笑う彼女の顔が、一転して悪いことを考えているような顔になった。
「それにしてもよく覚えてたね、もしかして祝いたかった?」
「え?あぁ、まぁ去年祝ってもらったしな」
「それだけ~?」
「...なんだよ」
蕾叶は覗き込むように俺の顔を見る。
「遠くに行っちゃったからさみしいとか思ったりしなかったのかなぁって」
「...思ったよ。別に蕾叶が楽しいなら尊重しようと思ったんだ」
「...そっか。ありがとクロ」
手を繋ぎ続けるのも、離すのにも、どっちつかずな思いがあった、それだけだ。
「...最近、この辺にカフェ出来たの知ってるか?」
「うん!だけど値段がさ~...」
「...今日だけ出してやる、行くぞ」
「え、ほんと?やったぁ!!」
心地よい距離に甘えていたい、ただ、それだけ。