ハンバーガーの戦い 〜この異世界のスキルはハンバーガ〜 作:石林留
王国特殊部隊・更田零士
意味がわからない。
俺は夏に友人と駄弁っていたところ、こんなおかしな世界に飛ばされたのだ。
…どんな世界かって?ハンバーガーみたいな化け物が跋扈しハンバーガーみたいな技を放つ人がいて、サイドメニューみたいな武器を使う人たちがいる。
…………。振り返ると本当にめちゃくちゃだな。
それに、俺はハンバーガーをあまり好んでいない。後輩がハンバーガー異常信者であり、ハンバーガーニストを自称するやべー奴だからだ。色々長くなるからあいつのことは割愛。
この世界に飛ばされて数日、俺は王国に拾われて
やれポテトを鎌のように使うやつだの、右手が手羽先のやつだの、奇々怪々なサイドの使い手たちと色々ありながらも、そいつらをまとめ上げ、親しくなれた。
そんな中、「半バーガー」なるバーガーの力を扱える人たちの組織の偵察に頼まれることとなった。
色々任務は面倒だが、案外この世界も悪くないな。そう思っていたのがつい先程まで。
……
…はぁ、
現実逃避したいが今の現実を直視せねばならない。
…ハンバーガーの世界。
芳賀千鶴。ハンバーガーニスト、元の世界の知人に会えたことよりも、絶望が勝る。
「は、芳賀、なんでいるんだよ。」
俺は絶望が溢れながらもそう言った。
◆◆◆◆
「………芳賀、知り合いか?」
「この人は俺の尊敬する人、更田零士先輩だよ!」
「…なるほど、転移者か。」
輝夜は相変わらず無愛想に答えた。
俺と先輩のせっかくの再会に全く興味なさそうだ。
「………ああ、最悪だ。」
「芳賀、この更田とかいう人、お前を見て絶望しているぞ。」
「………。いやぁ、確かにハンバーガー食べ歩きを4日間付き添わせた時はあったけど、それくらいしか迷惑かけてないはず…?」
「………、お前の変人ぶりからしてもっと余罪はありそうだが」
輝夜の無愛想な顔が呆れた顔へと明らかに変わる。
「………。」
ガドさんはハンバーガーは何か分かってはいないだろうが、少し引いている。
「それは置いておいて!更田先輩!なんで組織の玄関前にいるんですか?!」
「…お前に何か言うとすぐに首を突っ込むから嫌なんだが、…偵察に来たんだよ」
「偵察って…」
俺の声を遮り、玄関が開いた。
「おいー輝夜、こいつら国の回し者か?」
中年の筋骨隆々な男が現れた。気だるそうにしている。
「回し者とは、確かにそうとも取れる。俺は、バーガーキングダム精鋭部隊のリーダー更田零士だ」
更田先輩は俺の知っている更田先輩とは違って丁寧に、驚くべきことを口にした。
「…芳賀、こいつ王国の精鋭部隊に選ばれている。再会したとて組織の一員の俺たちとは相容れないぞ」
「え!?、そんなに王国と組織は仲が悪いのか?せっかく再会できたのに、あんまりじゃないか」
「おい、そこのお前、なに殺気を向けてやがんだ」
筋骨隆々な男は俺を指差す。殺気なんて向けてないぞ。
「お、俺は、組織入団志望の芳賀ち
「あーあー、お前じゃねえ。シャリが言ってんのは
ガドさんが筋骨隆々な男の言葉を訂正した。
後ろ?誰もいなかったはずじゃ…俺が振り返ると、そこには中学生くらいの男が焦点が定まらない目で虚空を見ていた。
「けはぁ、バレちまいましたよ、更田隊長。どうします、殺ります?」
「霧崎、その必要はない。組織とは争うなってあれほど言ったろ。あと、お前
そう更田先輩が言うと、周りから大きなカロリーが同時に感じられた。
「何人もいるぞ、こいつらも精鋭部隊の奴らか?」
輝夜は驚きを隠せていない。
「輝夜〜さっきまで気づいてなかったのか?これだから新人は嫌なんだよ」
この男は気づいていたのか、ぶっきらぼうにそう言った。
そうして霧崎と呼ばれていた男と気配を隠していた男女数名が更田先輩のもとに駆け寄った。
「どうして気づかれたのよ!隊長がこっちチラチラ見てたんじゃないの?!」
「けはっ、俺たちの気配が消せてなかっただけだろ。」
「アノオトコハ『シャリ・シルバイネ』
ソシキノサイコウセンリョク『3ジューシー』
ノヒトリ。バレルノハヒツゼンカト。」
「はぁ、僕たちのせいで隊長に迷惑かけてしまったじゃないか、自分が恨めしい。」
鎌を背負った少女、ナイフをペロペロしている変人、めっちゃメカメカしい明らかにロボット、こちらをすごい形相で睨んでいる同い年くらいの男。
この俺ハンバーガーニストの芳賀千鶴が霞みそうだ…
更田先輩を隊長と言っていることは、先輩はこんな色濃い奴らを従えているのか?!
「おいおい、すごく大勢で出迎えてるじゃないか。さっさと目的を言えよ。俺はこのあと輝夜の連れてる入団志望のガキを試さなくちゃならねえんだ」
……俺、このあとこんなヤクザみたいな奴に審査されるの?!嫌なんだけど!
「そうはいかないさ、俺は嫌々だが王国の新法として、『転移者は王国に保護』しなきゃならない」
「はぁ、どうせ転移者で何か実験するって口だろ。王国の悪巧みはうんざりなんだよ!」
ヤクザ風男は声を荒げる。
「お前さんたちよ、暴論ではいはいと引き渡すほど俺達ゃ落ちぶれてねえんだよ」
ガドさんもそれに同調する。
「シャリさんの言うことは賛成だ。そもそも、組織は王国の領土内にあるからここで保護しても王国内に含まれるだろ。いくら嫌われているとはいえ、独立国家になった覚えはない。」
輝夜はそう口を挟んだ。
王国側の奴らも各々どうすればよいか困っている。
「王国も王国ね、私達に無茶を押し付けて。
あの眼帯君の言う通り、向こうに分があるわ」
「はぁ…それもそうだ。それに、芳賀を引き取るのは勘弁だぞ」
「けはぁ、………どうしましょう」
「王国も恨めしいなぁ」
「トリアエズカエルノガサイテキカイ」
「………はぁ、じゃあ帰らせてもらいます。
…じゃあな、もう会わないと思うけどな、芳賀」
「待ってください、先輩!俺、聞きたいことがいろいろあって…」
「さあな、俺にとってここが心地よいんだ。元の世界に戻りたくもないね。…お前もそうだろ?」
「そんな…」
そうして更田先輩とその部下たちはそっぽ向いて帰っていった。
なんで、おかしい。この世界に来る前はもっと更田先輩と仲が良かったはずなのに。あしらい方が今までとは比にならないくらい冷たかった。…なにか原因があるはずだ。
「はぁぁ、とりあえずよくわからん奴らは去ったから、お前の入団試験を開始するぞ!」
「…えぇ?!もう早速ですか?」
俺は急にムキムキ中年男にそう言われてハッとした。
「……芳賀、頑張れ。」
輝夜のいつもと違う優しい言葉に、俺は嫌な予感がひしひしと感じられた。