僕のヒーローアカデミア -DBLEGENDS- 作:熱いおゆ
試験終了直後、茫然と立ち尽くしていたアキトの元に、運営スタッフが駆け寄ってきた。
「星宮アキト君だね。学長がお待ちだ。こちらへ来てほしい」
案内されたのは、重厚な扉の奥にある応接室だった。
そこにいたのは、小さく白い毛並みを持った男――雄英高校校長・根津だった。傍らには、看護師姿の小柄な老人、リカバリーガールの姿もある。
「やあ、星宮君。急に呼んでしまってすまないね。……単刀直入に伺おう。あの場で見せた、二つの『人型』と凄まじい力……あれは君の個性かな? それとも外部からの不法侵入者かね?」
根津のつぶらな瞳が、じっとアキトを見つめる。
「人型」という異質な表現に、この個性の異常性が校長にも伝わっているのだと悟る。嘘や誤魔化しが通用する相手ではない。アキトは深呼吸をし、考え抜いた理由を口にした。
「……僕の個性です。意志と力を備えた『人型』を呼び出す力です。普段使わなかったのは……自分の個性が常識外れすぎる自覚があったことと、不完全な召喚で周囲に被害を出さないよう、自重していたからです」
「なるほど。自分の力の異常性を理解し、制御に慎重だったわけだね。……だが君は、人命救助のためにその秘めたる力を躊躇なく解放した。素晴らしい判断だ。特に、あの傷ついた受験生へ施した『処置』……リカバリーガール、どう見ますか?」
「運ばれてきた緑谷少年のデータを見て驚いたよ。両脚と腕が折れ、本来なら激痛でショック死していてもおかしくない状態だった。だが、脳内の痛覚伝達やバイタルが不自然なほど穏やかにコントロールされていたんだ。骨折そのものを治したわけじゃないが、見事な応急処置さね」
リカバリーガールの医学的な分析に、アキトは密かに胸を撫で下ろした。
「詳しい個性の登録変更は入学後に行うとしよう。今日はゆっくり休んでくれたまえ」
面談室を出ると、廊下の陰で待っていた麗日お茶子が駆け寄ってきた。
「星宮くん……! さっきは本当に、本当にありがとう……!」
「麗日さん。足はもう大丈夫?」
「うん、うちの足はすっかり平気! それに……出久くんも、星宮くんが呼んでくれた緑の人のおかげで激痛が和らいで、無事救急車で運ばれたって……! ふたりを助けてくれて、ほんまにありがとう……!」
涙を浮かべて頭を下げるお茶子に、アキトは「無事でよかった」と優しく微笑み返した。
試験からの数日間は、嵐のあとのような静けさだった。
前世の知識で「レスキューポイント」の存在は知っていた。だが、あの場での自分は点数のためではなく、ただ必死に手を伸ばしただけだ。あの規格外の召喚を見せて、本当に合格できるのか――そんな不安を打ち消すように、アキトは毎日の朝練とミッション消化に没頭した。
「おいアキト、顔が死んでるぞ。試験は終わったんだ、ド直球で果報を待て」
「そう言われてもソワソワするんだよ。もしあの召喚で減点されてたら……」
「お前が覚悟決めて助けたんだろ。システム側も、あの学校の奴らも、そんな判断を切り捨てるほどバカじゃねえよ」
シャロットの呆れたような、だが確かな励ましに、アキトは救われていた。
そして試験から二週間後。待ちに待った封筒が自宅のポストに届いた。
「アキト、届いたわよ……!」
リビングのテーブルを囲むように、家族全員が集まっていた。母親が慎重に置いた厚手の封筒を前に、父親も、アキト自身もゴクリと唾を呑む。
十四年間ずっと無個性だと思って心配し続けてくれた両親だ。自分の手元に届いたこの一冊の封筒に、両親の祈るような視線が注がれていた。
「……開けるね」
アキトがハサミを入れると、中から手のひらサイズの金属製ディスク――投影機が転がり出た。
スイッチが入った瞬間、テーブルの中央から眩い光が放たれ、あの「オールマイト」の立体映像がリビングに浮かび上がる!
『デタァァァァ! 私だ、雄英高校のヒーローだ!』
「「うわあああっ!?」」
突然の大音量と等身大のオールマイトに、両親が思わず抱き合いながら飛び上がった。アキトも息を呑んで映像を見つめる。
『星宮アキト少年! 君の実技試験、敵型撃破ポイントは――32点! 個性に頼らぬ見事な体術と判断力だった!』
『だが! 我々が求めたのはそれだけではない! 名付けて――〈レスキューポイント〉!』
画面が切り替わり、迫る残骸から二人を守るため、アキトがベジータとピッコロを呼び出したあの一瞬が映し出された。
青いオーラを纏った鋭い眼光の男が威圧的な熱量で瓦礫を粉砕し、額に触角を生やした緑色の巨大な男が出久に手をかざしている。
『迫る危機に対し、己の秘めたる『人型』の個性を躊躇なく解放! 圧倒的パワーで障害を打ち払い、未知の力で傷ついた友を救ったその大胆不敵な救援! これぞヒーローの原点!』
『レスキューポイント――60点! 合計92点! 圧巻のトップ合格だ!』
「「ト、トップ……!?」」
両親の叫び声が重なる。
『来なさい星宮少年! ここが君の、ヒーローアカデミアだ!』
映像が消え、静まり返ったリビング。
「アキト……っ! 合格……! それもヒーロー科のトップだなんて……っ!」
「やったじゃないかアキト……! すごいぞ、本当にすごい!!」
母親が涙をボロボロと溢ませてアキトに抱きつき、父親も目元を拭いながら力強く肩を叩いてくれた。
「……うん。合格したよ……!」
十四年間、諦めずに自分を信じて支え続けてくれた両親の顔を見て、アキトの胸の奥からも熱いものが込み上げてくる。安心させることができて、本当に良かった。
「……ところでアキト、あの映像に映ってた……すごく圧のあるおじさんと、緑色の大きい人は……一体……?」
涙を拭った母親が、ふと我に返ったように首をかしげた。父親も「あ、ああ……『一時的に実体を呼び出す』って言ってたけど、あんな厳つい人たちなのか……?」と引きつった笑顔で尋ねてくる。
「あ、あはは……まあ、色々とワケありな人たちでさ……」
汗をかきながら苦笑いで誤魔化すアキトの背後、部屋の隅の影から、シャロットが「フン」と可笑しそうに鼻を鳴らしていた。
(見たかシャロット、トップ合格だ)
(当たり前だろ。俺たちの力を借りて落ちてたらブチ殺してるところだ)
心の中で相棒と軽口を叩き合いながら、アキトは力強く拳を握りしめた。
「さあ、三週間後はいよいよ入学式だな」
「……ああ」
緑谷出久、爆豪勝己、轟焦凍、麗日お茶子――前世で画面越しに憧れていたあのキャラクターたちと、これから同じ「ヒーロー科1年A組」で切磋琢磨していくのだ。
「待ってろよ……最高のヒーローになってやる!」
二つの世界の力を胸に、アキトの雄英高校での新たな物語が、いよいよ幕を開ける。
投稿頻度がちでわからん、ストックあるけどこのスピードで投稿してていいのかな?