<Side ロン・ウィーズリー>
俺はロン・ウィーズリー。いや⋯正確に言えば、ロンに憑依した転生者だ。
過労でぶっ倒れて死んだと思ったら、子供になって赤毛に囲まれていた。最初はみんな急に大人みたいな喋り方をする俺に戸惑っていたが、大家族の慌ただしい日々で、そんな些細なことはすぐに忘れられた。
転生したからには、前世で憧れたホグワーツ生活を楽しみ、登場人物たちと交流したいものだ。できたら原作で死んでしまったキャラを救いたいけど、俺一人じゃ限界がある。死なない程度に頑張るとしよう。
とりあえず子供のうちはやることもないので、魔法界の本を読んだり、勉強を教えてもらったりした。これが結構楽しい。勉強なんて何年ぶりだろうか。仕事に追われて本を読んだりする時間もなかったから、新しいことを知るのが楽しくてしょうがない。これはホグワーツでの勉強もやりがいがありそうだ。
それと、兄からもらったお古の杖で魔法の練習もすることができた。これはかなりありがたい。入学する前に使える呪文を増やしておいて損はないだろう。数年かけて低学年に必要な呪文はほとんど習得した。家族は驚き、きっと我が家で三人目の首席になるぞと盛り上がっていた。(すでに監督生に選ばれているパーシーは首席になる前提だ)
そうしてホグワーツ入学日、俺はついにハリー・ポッターに出会う。キングス・クロス駅では原作通り母さんがハリーに声をかけた。ウィーズリー家以来の原作キャラ(しかも主人公)に俺は柄にもなく緊張してしまい、挨拶くらいしかできなかった。
家族に別れの挨拶をした俺は、汽笛が鳴ると急いで車両に乗り込んだ。さあ、ハリー・ポッターのコンパートメントに行かなくては。ノックをしてドアを開けると───
おいおいおい
なぜハーマイオニーがここにいる?バタフライエフェクトか、もしや原作通りにいかないタイプの世界なのか?つい驚きが顔に出てしまったが、バレてないことを願おう。
どうしたものか、初っ端からプラン崩壊だ。ハリーとの2人旅を楽しみにしていたのだけれど仕方ない。
とりあえず自己紹介をし、ハーマイオニーにも名前を聞く。
「えっと、私ハーマイオニー・グレンジャー。マグル生まれなの、よろしくね!」
⋯あれ、終わり?原作のマシンガンハーマイオニーを待ち構えてたから、ちょっと黙ってしまった。話し方にも鼻につく感じがなくて、明るく素直な印象だ。あと髪がボサボサじゃないし歯が目立ってない。
今まで会った原作キャラは、みんな元と同じ様子だった。ここまで人格が原作と違うなんて、あり得るのか?色々質問して探ってみるか。
「そういえば、二人はもう教科書読んだか?」
「僕は魔法史の教科書読んだんだけど、結構面白かったよ!梟の名前もそこから取ったんだ。」
「ハリー偉いわね、私なんか開いてすらないのに。あでも、呪文集はちょっと気になったかなー」
な、なんとあのハーマイオニーが、教科書を読んでいない⋯だと!?教科書は全部暗記したんじゃないのか。
「ホグワーツってどんな授業するんだろう。ロンはお兄さん達から聞いてる?」
「あー、呪文学とか魔法は使うけどわりと座学も多いらしいな。変身術はめちゃくちゃノート取らされて大変らしい。」
「えー座学とか嫌になっちゃう、テストも授業も魔法だけ使わせてほしいわ。」いやいやいや、座学が嫌いなハーマイオニーとか、考えられないだろ!
とまあ終始こんな具合で、まるで賢さとガリ勉感を感じない。ハーマイオニーのアイデンティティを喪失している。
それから、ドラコ・マルフォイがコンパートメントにやってきた時も一切口を開かなかった。
ドラコはわりと好きな人キャラだったので俺もテンションが上がってしまったり、ドラコがなかなか失礼なことを言ってきたりとわちゃわちゃしていたのに、何も言わなかった。ハーマイオニーなら横から口を挟んだり言い返したりしそうだが。
本当に怪しい、違和感マシマシだ。
確実に言えるのは、こいつは原作のハーマイオニーではないということだ。クラウチJrのような成り代わりか、はたまた俺と同類か。どちらにせよ放って置いたらハリーに危害を加えるかもしれない。
前世で学んだ教訓は、思い立ったが吉日。これはもうやるしかない。
───時は少し飛んで夜のホグワーツ城。
列の後ろのほうでウトウトしているハーマイオニー。背後からローブを強く引っ張り、シレンシオと石化呪文をかける。その辺の空き教室に放り込んで杖を突きつけた。
「お前は⋯誰だ?」
***
ロンさん⋯!?マジでどういう状況〜???誰だって言われても、さっきハーマイオニーですって自己紹介したやん!ホグワーツ特急では仲良くお喋りしたのにいいいもう嫌だああああ
これ逃げていいかな?最初はびっくりして何も出来なかったけど、今は杖向けられてるだけだからどうとでもなる気がする。今私は杖を手に持っていないから、警戒が緩んでいるはずだし。
「質問に答えろと言っているのが聞こえないのか?」
え、こわ。なんで11歳のロンなのに、そんなに冷たい目つきとドスの聞いた声が出せるの?可愛いロニー坊や返してー
「あの、誰って聞かれても私はハーマイオニー・グレンジャーなんだけど⋯」
「ハッ偽物のくせに、シラをきるつもりか。」
ギクッッッもしや中身が私なのバレてる⋯?いやそんな訳ないよね。
「偽物?私はポリジュース薬も変身術も使ってないわ。本物のハーマイオニーだもの、何をどうやっても剥がれる化けの皮はないけど?」
「そうかそうか、魔法薬学の教科書も読んでいないのに、高度なポリジュース薬は知ってるんだな。」
げ、ミスった。さっき言ったの忘れてた!あわわわ、どうごまかそう?働け灰色の脳細胞〜
ロンが私に詰め寄り胸ぐらを掴む。
「本物のハーマイオニー・グレンジャーならもっと賢く言い逃れできる。お前は何者だ?」
「⋯いや、それ、こっちの台詞なんですけど!!」
ついに尋問に我慢できなくなった私、こっそり作っていた魔力弾をロンのお腹に思いっ切りぶつけた。
「ぐはっっっ」バンッッッ
勢いよく吹っ飛ばされたロンは、壁に激突して崩れ落ちる。さあ形勢逆転だ!
「私のこと偽物偽物って、あんたはどうなのよ、絶対ロンじゃないでしょ!やけに大人びているし魔法も使える。ドラコとだって喧嘩するはずなのにニコニコしてるだけ。偽物はあなたのほうよ!」一息で一気にまくし立てた。
ギリギリ気絶しなかったロンはそれを聞いて、背中をさすりながらよろよろと立ち上がった。
「はは、なるほどやっぱりそうか。今の言葉で確信した。」
え、何が?
「お前、転生者だろ?」
ず、図星ッッッ!!ついにバレた⋯いやなんでわかるの?このハリポタ世界にそんな概念ないでしょ。
ん?待てよ、原作のハーマイオニーを知っていて、転生者という発想がある。
ということは⋯
「あなたも、転生者⋯ってコト!?」
「大事なシーンでハチ◯レ構文を使うな。まあつまりそういうことだ。俺もお前も転生者、同類だ。手荒な
真似をして悪かったな。」
「うっそ、自分以外にも転生者がいるなんて、私言われるまで思いつかなかった!」
「君はもっと他人を警戒するべきだな。俺が死喰い人だったら大変だぞ。」
「んーその時はその時!」
彼はすごーく大きなため息をついた。
「よりによって才女ハーマイオニーがこれか。キャラ崩壊しすぎて俺ちょっとショックだったんだぜ?」
「はあ?そんなの私もよ!なに『俺』って??なんかやけに大人っぽくて落ち着いてるし、もう誰かと思った!」
「ロンのモノマネするのも大変だろ?原作知ってる人がいないなら、キャラ守らなくても良いかと思ったんだけどな。」
「まあね、私も原作なぞる気はないもの。」
「やっぱり転生者らしく原作改変でもするのか?」
「当ったり前じゃん!せっかく原作知識あるんだから、よりよい未来にしたいでしょ。」
「まあ、そうなるよな。考えることは同じか。ぶっちゃけ1人じゃ限界があるとは思ってたんだが⋯勇者パーティの⅔が未来を知っているこの状況なら、できるかもな。」
「できるかも、じゃなくてやるの!私はやる気満々よ。そうだ、早速作戦会議しましょ!」
「アーそうしたいのは山々だが⋯」
「えーなんで?」
「今、俺らは本来寮にいる。抜け出していることがバレるかもしれないし、一旦寮に戻るべきじゃないか?」
「た、たしかに!」
「詳しい話はまた明日しよう。」
そうして私たちは抜き足差し足廊下を歩き、暗い寮にそっと侵入して各々ベッドに入ることができた。初日からヒヤヒヤした〜
さて、無事に長い長い一日が終わった。(無事とは⋯?)
転生したのが私だけじゃなかったなんて予想外。でも仲間がいるって心強いかも!
明日からも頑張るぞー!
ロンも転生者にするのは3話を書いたあとに思いつきました。このままだとバカ三人衆になってしまうので、ハーマイオニーのかわりにロンをストッパーにしようという魂胆です。
今後も転生者が出てくるかはわかりません、この先何も考えてないので。誰か計画性をください⋯