自らの故郷を守る。
そして、自らの国を守る。

そう心の底から誓って総理大臣となった男。「佐倉明文」(さくらあきふみ)。
しかし、彼を待ち受けていたのは、とんでもない国家機密だった!

…これは
巨大な秘密、強大な敵意を前にしても
それでも責務を果たそうとする男の物語。

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果たせるか、その責務。
貫けるか、そのプライド


ウルトラマンサキガケ

その一:決意の始まり。

 

 

「…以上で、私、佐倉明文(さくらあきふみ)の所信表明演説とさせていただきます。」

たった今演説を終えたこの男。 

実は、新しく総理大臣に任命されたばかりの男である。

 

無論、まだ右も左もわからず国会議事堂においても、

幾度か迷子になってしまうこともあったほどだ。

 

だが、この男には、他の政治家に絶対に負けを取らないものを

持っていた。

 

…「強き志」である。

 

 彼は小さい頃から自らの母国に深い愛情、親しみを抱いていた。 

いつしかそれは決意となり、彼の使命となり、彼をここまで上り詰めさせたのだ。

 

 

そんな彼を全力でサポートしてくれる者が居た

未だに名を名乗ろうとしないが、少し幼さの残る顔つきの男だ。

彼は、佐倉に政治についてのすべてを教え、裏で何が行われているのか、

佐倉が総理大臣になった際に何を再優先で行うべきか。何もかもを彼がサポートしてくれた。

 

「素晴らしい所信表明演説でした… 佐倉総理大臣。 次の予定は16:00に地下神殿です。」

佐倉は耳を疑った。

 

「地下神殿?」

 

 

閑話休題:登場人物紹介。

佐倉明文(さくらあきふみ)・・本作の主人公。

物語開始直前に総理大臣に任命。自らに秘めた熱き志に向かってひたすらひたむきに進む

実直な男。

 

???・・佐倉を支える有能な秘書。何故か個人情報が一切不明で、あまり多くを語らない謎の人物。顔つきには未だ幼さが残るが、年齢についても不明のままである。

 

 

その二:出会い。

 

「どういうことだ? 地下神殿なんて、近場にあったか?」 「場所については、私が案内しますからご心配なく。」

佐倉は、ますます心配になった。 彼のことはさておき、

自分がいまからどこへ行くのか。だ。

それが気になって気になって仕方がなかった。

 

 

「こちらです。総理」

 

佐倉が連れて来られたのは、紛うことなき

国会議事堂の直下であった。

 

「まさか、都心にこんな遺跡が隠されていたなんて…」

佐倉はただただ圧倒されるばかりだった。

 

そこは、何百mもあろうかという巨大な空間の中に五重塔のような仏閣が立っており、その中心には40mほどの巨人。のようなものが佇んでいた。 その姿はシンプルだが、威厳ある仁王立ちだった。

 

「総理、今からあの巨人として、この国の平和のために戦っていただきます。」

 

佐倉は、自分の周りの時間が止まったような錯覚に陥った。

自分が? あの巨人に? しかも、何と戦えと?

 

あまりに唐突すぎて、思考回路が今にも千切れそうだった。

 

「っ…」

 

思わず断ろうとしたが、不思議とその言葉は喉から出て行かない。

志に反していることに対する呵責と、もう一つなにか大きなものが自分のあきらめを押し返そうとしていた。

 

この温かく、安心できる存在は何だ? まるで父親のような…

 

まさか。

 

「ウルトラマン…?」

 

ふと、そんな言葉が口から出たことに佐倉は暫くの間気付かなかった。 

しかも、ふと出たその言葉の意味がいまいちわからない。

 

しかし、秘書は驚いた様子で続けた

 

「ウルトラマンサキガケ。 彼の、そして貴方の名前です。

私が伝える前にその名前を口にするとは…

貴方はこれまで務めてきた総理大臣の誰よりも志が強い。というのは本当のようですね… 彼の思ったとおりだ。」

 

佐倉は、今にも錯乱しそうだった。

 

「ま、待ってくれ! 頭がこんがらがってきた!

君は何の話をしているんだ? 「彼」というのは誰だ!

そして、私は何と戦えばいいんだ!!」

 

吠えるように、疑問のすべてをぶつけた。

秘書は一呼吸置き、答える。

 

 

「取り乱すのも無理はありません。 

では、ゆっくりご説明させていただきます。 どうです?

お茶でもお持ちしましょうか?」

 

「あ、あぁ… 頼む…」

くたくたな佐倉は、秘書に案内された茶室にぐったりと座り込んだ。

 

「さて、どれからお話いたしましょうか?」

何を話すべきか、迷っている。

それを制止するように佐倉がつぶやく

 

「この後の予定を全部一時間ずつずらしてくれないか…

予定通りにこの話が終わるとは到底思えない。」

 

やつれて表情でそういった佐倉を見て、秘書がクスリと笑い一言

 

「ご安心を、佐倉総理。 既に話はつけてあります。」

 

ほんとうによく出来る秘書だと、佐倉は感心した。

正確に言うと、「訳の分からない話をしてくるところ以外感心した」である。

 

 

 

 

「さて… まずはウルトラマンそのものについてお話しましょう。

総理もご存知のはずです。幼少期の頃、よくご覧になったことでしょう。」

秘書が、お茶をすすりながらしゃべり始める。 

 

「あぁ… 確かに見たことはあるが…

私が好きだったやつは、あれとは違うデザインだったぞ?」

佐倉は茶菓子を食べながら反論する。 

 

確かに、神殿に佇んでいる巨人は今までに放送されたどのウルトラマンとも趣が異なっている。 白地に赤。と言った感じで、まるで胸の中心から全身に血管が張り巡らされたようなデザインになっている。

 

有識者が見れば、あのウルトラマンと類似している。なんてこともわかるかもしれないが、そのような人間がこの場にはいないため、一旦おあずけということにしよう。

 

「ええ、当然です。主役は主役、裏方は裏方ですから。」

 

まるでこのウルトラマンが黒子のような物言いをする秘書に、佐倉は思わず怪訝な表情になる。

 

「裏方って…黒子かよ」

 

「私は、本当のことを言っただけですよ? わt…このウルトラマンは他のウルトラマンとは違い、今まで一度も公式記録上にその名を残したことがありません。」

 

微動だにしない、至極真面目な表情で上記を告げる秘書を前に、佐倉は開いた口が塞がらない。

 

「…お前は何を言っている?」

 

「彼は、世界で唯一の、「国家直属のウルトラマン」です。」

 

 

…佐倉はついに、お茶を吹いてしまった。

「ば、馬鹿言っちゃいけないよ! こっかちょちゅじょくって!! 大体、特撮ヒーローに直属もなにもないだろう?!!」

 

佐倉の、引き締まっていた何かが一気に吹き飛び、狂ったような笑い声が止めどなく溢れてくる。

 

「…総理。 …総理!!」

 

初めて声を荒らげた秘書を見て、佐倉はやっと落ち着くことができた。

 

「し、失礼した。 しかし… 本当なのかそれは?

あの巨人が国家直属って……」

 

だらしなくこぼれまくったお茶を、せっせと拭きながら質問を続ける。 それを半ば見下しながら、秘書は答えた。

 

「すべて本当の話です。 彼は、これまでのウルトラマンとは違ったアプローチで人間を守ることを決めました。

堂々と人々をすくい、悪を倒すわけではなく、自らの存在を秘匿し影から敵を討つ…。

これによりウルトラマンそのものを狙う侵略者が減り、結果的にこの星への侵略行為の絶対数が減る。先人はそう考えました。…しかしそのためにはそれ相応の場所と地位が必要…そう。

貴方がこの国を表で動かし、彼が裏で迫り来る侵略者を倒す。まさに陰と陽、表裏一体の関係になってもらわねばなりません。」

 

「…確かに、理想的ではある。 どこかで読んだ小説みたいだ。」

秘書の力説に、思わず納得してしまう佐倉。 先ほどの混乱が嘘のように、冷静な顔つきになった。

 

「…ですが、一つだけ問題があります。

ウルトラマン好きの佐倉総理ならわかりますよね?」

 

「…昔のことを蒸し返すな。 ……やはり制限時間か?

ちょっとした恥ずかしさに頭をかきながら質問に答える。

幼少期の記憶から導き出した答えだが、彼には確信があった。

 

「ご名答。 御存知の通り、エネルギーの消耗が激しいため、ウルトラマンが戦える時間は限られています。

およそ三分が平均的なタイムリミットですが、彼があのまま一人で戦えば更に時間は縮まる…」

 

そう答える秘書の顔は、妙にもどかしそうであった。

 

「だから私に協力してほしいということか。

二人で戦えば、少しはマシな戦いができる。 そうだろう?」

 

「その通りです。 できれば総理には政に専念していただきたいのですが… 

頼めるツテも他にいないのです。申し訳ございません。」

 

秘書が、自分のことのように総理に詫びを入れた。 彼の幼顔も相まって、本当に泣きそうな表情に見えてくる。

 

佐倉は、そんな秘書を見て決意を固めた。

 

「わかった。 この責務、私、いや、俺が引き受ける。」

 

それを聞いて、晴れやかな顔になった秘書を見て佐倉は心を踊らせた。 

総理になって初の、直接的な人助けだったからである。

 

「ありがとうございます。では、これをお受取りください…」

秘書が懐から、短剣のようなものを取り出す。

 

「これは… まて、思い出す…… そう、変身アイテム!」

無論見たことのない形状だが、大きさからしてそうだろう。という予測を彼なりにしてみたのだ。

 

「ご名答。 それは『サキモリノツルギ』という名の国宝です。 さぁ、それを使って彼と一つに…」

 

佐倉は、言われたとおりにサキモリノツルギをふるう。

すると…

 

巨人の像がどんどん光の粒子に変化していき、それら一粒一粒が佐倉の身体に染み渡っていく… 純粋に、ただ温かい。

 

「…不思議な感覚だ…… 心地よくて、眠ってしまいそうだよ。」

 

心地よさに酔いしれ、まどろんでいると、さながらフラッシュバックのように映像が流れ込んでくる。

 

『これは… 彼の記憶か……?』

 

誰かに呼ばれる彼自身の名前、異形の怪物に、一人の女性。緑あふれる大地に、滅びかかっている大地。 

あまりにも断片的すぎて、真相を想像するにはあまりにも少ない情報量だったが、確かに佐倉はそれを感じ取った。

 

「…貴方も結構、苦労してんだな。」

佐倉がそうつぶやく頃には、すべての粒子が佐倉の身体に同化していた。

 

 

「…これからよろしく頼む。 『ウルトラマン』。」

 

 

その後、なぜか秘書が会釈し「こちらこそ」とつぶやいたのを、彼はあえて見過ごしてあげた。

 

 

その三:仲間。

 

 

二日後。 彼は再び地下神殿に来ていた。

今回は「ウルトラマン」が居たところよりも奥深くへと足を進める。

 

 

「ここが我々の基地です。」

秘書がとあるスイッチを押すと、基地の照明が一斉に付き

何台も備え付けられたコンソールが時間差で次々と起動していく。

 

あっという間に、SFものに出てくる基地のイメージそのままの空間が出来上がった。

 

「…ヨモツイクサ。 縁起の悪い名前ですが、陰の戦闘部隊としてはこれ以上ないくらいぴったりな名前でしょう。」

 

得意気に秘書が語るが、佐倉にはそもそもヨモツイクサが元々何を指す単語なのかてんでわかりやしなかった。

 

「…お、おう。」

 

現行の総理大臣にしては、えらくあっけない返事である。

ともあれ、彼が「サキガケ」として戦う際は、ここに何人かの専属職員が駐在し、彼を全力でサポートしてくれるという。

 

なんとも心強い味方がいたものだ。

佐倉はようやく、自分が本当に最前線に立って戦うのだという実感が湧いてきた。

 

 

「私が夢見た、それ以上のことが始まろうとしているのか…」

 

 

恐ろしいような、誇らしいような、不思議な感情が佐倉の脳内を駆け巡った。

 

 

 

その四:初陣。

 

 

…彼と同化してからどのくらいの時間がたっただろうか。

 

突然、基地のコンソールの一つが赤く発光し、警告音をならしまくる。

 

「…どうやら、初陣の時間が来たようですよ。」

慌てて秘書がコンソールを操作し、佐倉に場所を伝える。

 

「…新宿か。 分かった」

 

サキモリノツルギを握りしめ、秘書の運転する車で現場に急いだ。

 

 

 

 

「!!!!!!!!」

 

けたたましい咆哮が、新宿一帯に響き渡る。

その方向の主は、この世のものとは思えない恐ろしい姿をした、巨大なバケモノである。

 

「アレが… 怪獣。」

 

「ええ、国の平和のためにも、国民たちのためにも、我々がなんとしてでも倒さなければならない相手です。」

きっと怪獣を睨みつけ、佐倉が一言。

 

「ならばその責務、俺が果たす…!!」

 

決意を固めて力いっぱい、サキモリノツルギを天に掲げる。

すると、そこから溢れでた膨大な光が佐倉を包み込んでいき…

 

彼の姿をみるみるうちに「あの像」と瓜二つのものに変えていった。

姿の変わった佐倉は、そのまま怪獣と同サイズまで巨大化していき…

 

すさまじい轟音とともに、怪獣の眼前に立ちはだかった。

 

 

『シェアッ!!』

 

 

白く汚れない拳を握りしめ、正しき闘志の灯った目で怪獣を睨みつける。

 

…彼こそが、自らの手で母国を守ると誓った男。

彼こそが、自らの意思を全うしようと死力を尽くす男。

 

 

その名も、

『ウルトラマンサキガケ』である…!

 

 

 

                        おわり




いかがだったでしょうか。
世界観に関する質問は随時受け付けますが、
かなりわかりにくい作品になってしまっているかもしれません…(汗

ーーー

実は
佐倉総理大臣は、僕が思い描くリーダー像の一つを具現化したものです。

自分のやりたいことはちゃんとやる。 かせられた責務はちゃんとはたす。

一見当たり前のようで意外と難しいことを、どんなに辛くてもやってのける。
そんなリーダーを見たいがために、小説という形で具現化させました。

…現実世界でも
佐倉総理大臣のような、責任感の強いひとがリーダーになってくれたらな。と切に思います。

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