虎杖悠仁のヒーローアカデミア 作:雨天
「はえー虎杖君も雄英通う為に一人暮らし始めたんだ。私もそうなんだ。奇遇やねぇ」
「クラスにどんな奴がいるか楽しみだな。皆あのテストを乗り越えたエリートだし」
「虎杖君は入試成績どうだったん?」
「筆記はギリだけど、実技は1位だったよ」
「1位!?凄いなぁ…私ももっと上手くやれば2位にはなれたかなぁ…」
麗日と話しながら登校し、雄英の校舎を歩いて1年A組を目指す。
入り口に辿り着くと麗日が扉の先に見えるモサモサの頭に反応した。
「あ!そのモサモサ頭は!!」
扉の前で教室内にいる生徒を見る。
入り口にはモサモサ頭の少年と眼鏡を掛けた入試の説明会の時にプレゼントマイクに質問してた生徒がいた。
その先には机に足を掛ける態度の悪い爆発頭とか、見るからに異形系個性の少年とか、透明な女子がいた。
「今日って式とかガイダンスとかだけかな?先生ってどんな人だろうね。緊張するよね」
麗日がモサモサ頭の少年にマシンガントークを繰り広げている。
その辺りで背後から近付く呪力の気配を感じ取った。
背後に振り向けば、そこにはミノムシがいた。いや、正確には寝袋に入った不審人物だ。
「お友達ごっこがしたいなら他所へ行け。此処は…ヒーロー科だぞ」
不審人物が徐にウィダーを一気飲みする。効率厨なのかもしれん。
「ハイ、静かになるまで8秒掛かりました。時間は有限、君達は合理性に欠くね。担任の相澤消太だ。よろしくね」
「まさかの担任…」
俺は教室に入って自分の席に座った。
相澤先生が寝袋からゴソゴソと何かを取り出した。
「早速だが、
俺達は体操服を受け取って更衣室に向かう。
その道中でのこと。
「虎杖お前、結構歴戦の戦士って感じするな。傷とか特に」
「そうか?」
俺は峰田と名乗った小柄の生徒からそう言われて顔を触る。
俺には生まれつき口元や右眉の所に傷が付いている。
多分魂の形に引っ張られてのことだと思う。
前世で長生きした分魂に傷が刻まれているのだ。
「雰囲気がもうヤバいよな。大人びてる感じがする」
「まあ、他の奴よりは経験が多いな」
転生のことまで明かす必要はないだろう。
そもそも信じられない可能性が高いが。
とか考えていると峰田が目を血走らせた。
「顔でモテるからって調子乗んなよ」
「その経験じゃねえよ」
峰田は女関係でコンプレックスがあるらしい。
まあ、問題があるってことなら俺もそうなんだが。
寿命の関係で彼女とか作れないんだよな。小沢とは付き合ってたけど、俺が数百年生きるって分かってから別れたし。
更衣室に入って着替える最中、全員の視線が俺に集中した。
「ん?……あぁ、腹の傷とかか。昔色々あってな」
「色々で済ませて良いレベルか…?」
そんなやり取りを終えてグラウンドに出た俺達は相澤先生からこれからやることを告げられた。
「個性把握…テストォ!?」
「入学式は!?ガイダンスは!?」
「ヒーローになるならそんな悠長な行事出る時間ないよ。雄英は自由な校風が売り文句。そしてそれは先生側もまた然り」
「………?」
「ソフトボール投げ、立ち幅跳び、50メートル走、持久走、握力、反復横跳び、上体起こし、長座体前屈。中学の頃からやってるだろ?個性禁止の体力テスト。国は未だ画一的な記録を取って平均を作り続けてる。合理的じゃない。まぁ、文部化学省の怠慢だよ」
かなり思想強めの担任だった。
確かに平均なんて個性社会じゃ意味ないが、怠慢は言い過ぎではなかろうか。
「虎杖、中学の時ソフトボール投げ何メートルだった?」
「157メートル」
「個性なしで…?バケモンか…?」
「じゃあ、個性を使ってやってみろ。円から出なきゃ何しても良い。早よ。思いっ切りな」
「そんじゃ、まぁ…こんなもんだろ」
俺は赤鱗躍動・載と呪力による強化を肉体に施し、ボールを投げる直前に呪力を爆発させてボールに推進力を与え、更に百斂で圧縮した血液を穿血で放出、ボールを血液で後押しして更に奥まで飛ばす。
幸い、加減した穿血はボールを貫くことはなく、最大限奥まで届けてくれた。
「……先ず、自分の最大限を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段」
「何だこれ!!すげー面白そう!」
「1847メートルってマジかよ!?」
「個性思いっ切り使えるんだ!!流石ヒーロー科!!」
「……面白そう…か」
相澤先生から不吉な気配がする。
他の生徒はそれに気付いていないようだ。
「ヒーローになる為の三年間。そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?良し、トータル成績最下位の者は見込みなしと判断し、除籍処分としよう」
「はああああ!?」
「生徒の如何は俺達の自由。ようこそ、これが雄英高校ヒーロー科だ」
とんでもねぇ先生と学校だ。
初日から困難が迫って来た。元より手を抜く気はないが、本気でやらないとヤバい。
「最下位除籍って…!入学初日ですよ!?いや、初日じゃなくても…理不尽すぎる!!」
「自然災害…大事故…身勝手なヴィラン達…いつ、何処から来るか分からない厄災。日本は理不尽に塗れてる。そういう
流石は日本一のヒーロー科。選び抜かれた才能の原石に絶え間なく苦難を与えることで磨き上げようという訳だ。
覚悟していたことだ。何も問題はない。
「さて、デモンストレーションは終わり。こっからが本番だ」
それから第一種目の50メートル走から始まり、第五種目のボール投げまで来た。
麗日が無限という誰にも超えられない結果を出して皆に驚愕されている。
次はモサモサ頭の男子、緑谷の番だ。
眼鏡の堅苦しい男子、飯田が口を開く。
「緑谷君はこのままだと不味いぞ…?」
「ったりめーだ、無個性の雑魚だぞ!」
「無個性!?彼が入試時に何を成したか知らんのか!?」
「は?」
飯田の話を聞くに何かしらの個性は持ってるようだ。
何故使わないかが疑問だが、何らかの問題があるのだろうか。
実際緑谷が投げてみると46メートルという普通な結果になった。
緑谷はそれに困惑している様子だ。
相澤先生が緑谷の方へ歩いていく。
そして何やら説教をして、もう一度投げさせる流れになった。
緑谷はボールを投げる直前に個性を発動してボールに爆発的な推進力を与えた。
指先が青紫に変色しており、個性を制御出来ていないのが丸分かりだ。
「………!!!」
爆発頭の口の悪い男子、爆豪が驚愕の表情で緑谷を見る。
そして危うい雰囲気を出して突貫し始めたので爆豪の頰に穿血を掠めて行動不能にする。
爆豪は膝をついて苦しそうに呻く。
俺の血は人外の血なので親以外には毒なのだ。ヤバめの風邪程度だが、動けなくはなる。
「んだこれ…!体が動かねぇ…!」
「落ち着けよ爆豪。治してやるからジッとしてろ。頭も冷えたろ」
俺は蹲る爆豪の背に手を当てて反転術式で生み出した正のエネルギーを流し込む。
毒は解毒されて爆豪の体に自由が戻る。それでも爆豪は暴れ出すことはなかった。
そうしてパプニングを乗り越え、無事に全種目を終えた俺達は結果発表に移った。
「んじゃ、パパッと結果発表。トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ。口頭で説明すんのは時間の無駄なので一括開示する」
相澤先生が空中ディスプレイのリモコンを操作する。
空中にテストの結果が表示された。
「ちなみに除籍は嘘な。君らの最大限を引き出す、合理的虚偽」
「はー!!?」
「あんなの嘘に決まってるじゃない…ちょっと考えれば分かりますわ」
「騙された。あの雰囲気はマジだったろ…」
相澤先生はプロの俳優にも劣らない演技をしていたのか。
プロって凄えわ。
テストを終えた俺達は下校時間を迎えて帰り支度を始めた。
1人で帰ろうとしていた所で廊下で背後から声が掛かった。
「虎杖、やっぱアンタも受かってたんだね」
「拳藤!お前も受かってたのか。B組?」
「そう。クラス違うけど仲良くしよ。ってか、何でA組は入学式来なかったの?」
「あったの!!?俺達は相澤先生にそんな行事参加する時間ないって個性把握テストやらされてたけど」
「ぶっ飛んだ先生だね…ウチは物間って男子がいきなり新入生代表の挨拶させられてたよ」
「なんかすまん。それは本来爆豪がやるべきだったのに」
「まあ、先生が悪いよ」
「そうだよな!俺達悪くなーい!」
俺は拳藤と談笑しながら帰路に就くのだった。
・虎杖悠仁
今生でも引き続き人外なので血には毒がある。
個性把握テストトータル成績1位。