第8小隊と共にダンジョンを出る為に階層を上がっていると、校則を違反した生徒達が17階層で負傷しているのを発見することになったが、どうやら生徒達は死にかけていたところをロキ・ファミリアに助けられていたらしい。
「負傷者は多数でござるな」
「魔法を使う必要がありそーですね」
「おばあちゃんが言っていた。兵は迅速を尊ぶ、と」
「確かに早めに治療してやらんと、死人が出そうやな」
そんな会話をしていた第8小隊にも手伝ってもらって、集めた負傷者達。
校則を違反した小隊は複数だが、特に負傷の度合いが激しい第7小隊はアリサさんに大小の外傷があり、怪物の攻撃で問題児のバーダインくんの片腕が切断されているが、より深刻なのは出血が多かったと見えるナッセンくんだろう。
唯一負傷していなかったのはレフィーヤさんだけだが、とても疲れた顔をしていたのでレフィーヤさんにはポーションを渡して休ませておいた。
生徒達を助けてくれたロキ・ファミリアのアイズさんとティオナさんにティオネさんには深く感謝をしておき、私の治療魔法とサンジョウノさんの広域回復浄化魔法で、負傷している生徒達の傷を塞いでおいたが、バーダインくんの怪物に切断された腕は、サンジョウノさんの魔法で浄化してから私の魔法で繋げておく。
切断されてから1時間も経過していなかったので、腐敗しているということもなかったバーダインくんの腕には確りと血が通い、隻腕となることもなかったバーダインくん。
とりあえずダンジョン探索を続けるというロキ・ファミリアの3人に「後日、ロキ・ファミリアに直接感謝を伝えに行かせていただきますね」とだけ伝え、生徒達を連れてダンジョンを出た私は、元気な第8小隊に再び手伝ってもらって、ダンジョンで死にかけた校則違反者達を医療系ファミリアの治療院まで運んだ。
自分の足で歩ける生徒達は治療院まで歩いてもらっていたが、その内の1人であるバーダインくんは、今回の校則違反を主導した者として責任を感じているようで「皆を巻き込んで死なせちまうところだった」と深く落ち込んでいた。
しばらくは治療院で入院生活を送ることになる校則違反者な生徒達。
ダンジョンを甘く見て、自分達なら大丈夫だと思ってしまったことが今回の件に繋がったと、入院中も反省していたバーダインくんは、治療院まで見舞いに訪れた私に、自身が考えていたことを明かす。
「今回、レフィーヤとアリサは俺とナッセンを止めようとしていました。それに従わなかった俺が全部悪いんです。処罰を受けるのは俺だけにしてもらえませんかサミダレ先生」
慣れない敬語まで使いながら頭を下げてくるバーダインくんは真剣に、自分が全ての罰を受けるべきだと考えているみたいだ。
「退学でも何でも、どんな罰でも俺が全て受けます」
続けてそう言ってくるバーダインくんは、今回校則を違反した生徒達が死にかけたのは、全て自分に責任があると判断したのかもしれない。
「私の一存で全てが決められる訳ではありません。他の先生と神様達の意見も聞かなくてはいけませんが、少なくともバーダインくんが退学となることはないでしょう。処罰は間違いなくありますが、死者が出なかったのは幸いでした」
学区の教師としてバーダインくんにそう伝えた私は、追加でバーダインくんがしなければいけないことも教えておく。
「それに処罰を受ける前に、バーダインくんにはやらなければいけないことがありますよ。それはきみを止めようとしていたレフィーヤさんやアリサさんへの謝罪です。謝って許してもらえるかどうかはレフィーヤさんやアリサさん次第ですが、それでも貴方からの謝罪は必要になりますね」
私の言葉に、その通りだと頷いたバーダインくんは、同じく入院しているアリサさんと、見舞いに来ていたレフィーヤさんに深々と頭を下げて謝り続けていたが、優しい2人はバーダインくんのことを許し、その優しさにバーダインくんが涙を流したりもして、仲を深めていた第7小隊の面々。
第7小隊では血を流し過ぎていたナッセンくんだけが治療院に長く入院することになっていたが、造血薬を飲まされまくっていたナッセンくんは「こんな薬ではなく、こってりしたメレンらぁーめんのスープが飲みたい」と言う元気は出てきていたみたいだ。
その後、ロキ・ファミリアのホームに向かう前に、生徒達を助けてもらった感謝の礼を形として伝える為、しばらく潜ったダンジョンとオラリオで手土産となりそうなものを幾つか用意して、ロキ・ファミリアのホームの黄昏の館を訪問。
門番から少々待つように言われて、門前で待機していると、ロキ・ファミリアの団長であるフィン・ディムナさんが直々に出迎えてくれた。
「ホームの中で話そうか時雨」
「持参した手土産はそちらでお渡ししますね」
「時雨が何を用意してくれたか、楽しみだね」
フィンさんに案内されながら進んだ先で、到着した部屋にはロキ様とガレスさんにリヴェリアさんが居て、ロキ・ファミリアの三首領と主神が勢揃いとなる一室。
まあ、手土産を渡そうと考えていた面々が揃っているのは、今の私にはちょうどいい。
「それではまずはユニコーンの角をフィンさんにお渡ししておきます」
ダンジョン内で遭遇したユニコーンが残したドロップアイテムである角は、あらゆる毒を解毒する効果を持ち、高額で取引される価値あるものだ。
「確かにユニコーンの角だね」
私から受け取ったユニコーンの角を検分し、本物だと確認したフィンさんは、満足気に頷く。
「次はガレスさんに、高額なドワーフの火酒を3本程お渡ししますね」
用意していた火酒をガレスさんに手渡すと「おおっ、すまんのう」と笑顔で火酒の銘柄を確認し「こいつは確かに高い酒じゃな」と嬉しそうにしていた。
「次はリヴェリアさんに、水晶飴の瓶詰めとアルヴの清水をご用意してあります」
「わたしにも用意してあったのか、すまないな」
レアフルーツの瓶詰めとエルフが好んで飲む水をリヴェリアさんに渡しておき、此方を見ながら期待に満ちた顔をしていたロキ様に、渡す手土産を袋から取り出す。
「それはっ!ソーマやなっ!」
「ロキ様にはソーマを3本用意しました。どうぞお受け取りください」
「うちの好みの酒用意してくれとるのは、ほんまに嬉しいわ!」
私が手土産として用意していたソーマ3本に大喜びしていたロキ様。
「それで、その袋には何が入っているんだい?」
私が背負う袋に何が入っているのかが気になったのか、そう問いかけてきたフィンさん。
「これは個人にそれぞれお渡しするものではなくロキ・ファミリアというファミリアにお渡ししておくものですね。これも手土産ではありますよ」
袋の中から取り出して、フィンさんに手渡したのはカドモスのドロップアイテムである「カドモスの皮膜」というものだが、これも高額で取引される貴重な品だ。
「医療系ファミリアに売却しても、鍛冶系ファミリアで防具にしても構いません。どうぞご自由にお使いください」
「まいったね、貰いすぎなような気がしてきたよ」
「死にかけていた学区の生徒達は、あなた方のファミリアに助けてもらわなければ、死んでいました。生徒達の命を救ってもらったお礼として受け取ってもらえると助かります」
そんな会話をした後に、なんとか全ての手土産を受け取ってもらうことができた私は、学区の船まで戻ることにした。
お礼の品として用意した手土産が拒否されることがなくて良かったのは確かだな。