ルーデウスに無為転変みたいなのを使える妹が増えたら   作:りんごりら

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第22話 家族

トマ視点

 

 

 

 転移事件から1年半が経った。

 未だ家族の情報は見つからず、とおさまは団員を引き連れて難民救助に赴いている。

 あ、前に狩った青竜は高く売れた。

 そのお陰か難民の捜索範囲が広がったり、食事の内容がグレードアップしたりした。

 わたしの強さは団員達にさらに広まって、手伝いに呼び出されることも多くなった。

 その分ノルンと過ごす時間が減っていることが気掛かりだが、彼女は手伝いに向かうわたしに向かっていつもいってらっしゃいと言ってくれる。

 友達ができたことで精神的に成長したのだろう。

 ノルンはなんと言うか、その健気な態度が手を貸してやりたい、背中押してあげたいと思わせるカリスマ性があり、団員からも好かれている。

 王様が天職かもしれないね。

 ノルノル王国初代ノルン・グレイラット王。

 わたしは騎士かな?

 裏で戦力を作ってもいいけど。

 

 わたしは今捜索隊本部の会議室にいる。

 今回の難民救助は災害によって奴隷に落ちた人を無理やり拐って助けるらしい。

 わたしの仕事はその子に治癒魔術をかけたり、貴族の刺客が追ってきたときに戦ったりすることだ。

 わたしが戦うのは最終手段だから、今まで一度も出撃したことはない。

 

 とおさまは今日ノルンと過ごす約束をしているので、この作戦に参加しない。

 なんかあったら連絡をするように言われているが、わたしの手に負えない事態になることなどまず無い。

 

「作戦は以上です。トマちゃんは倉庫で待機してもらっていい?」

 

 ヴェラ中央の机から歩いてきた。

 作戦は会議が終わったようだ

 

「倉庫って、わたし達が泊まってる門の夜明け亭の横?」

「あーうん。そうだよ」

「じゃあ夜明け亭で待っててもいい?」

「いいよ。ならお手伝いしてほしい事になったら呼ぶね?」

「わかったー」

 

 座ってた木箱の上から飛び降りて、会議室から出て階段を降りていく。

 捜索団本部から走ると宿まですぐだ。

 部屋に入ると誰もいなかった。

 ノルンととおさまは買い物にでも行っているのだろうか?

 まぁこれはこれで好都合かな。

 

 改造竜の側にあるバッグを開けて、御神体を取り出す。

 ベッドの上にぺたんと座って、それを広げる。

 手を合わせ、祈る。

 今日も1日わたしをお導きください、神様。

 

 思う存分祈ったら、それを綺麗に折り畳んで布袋に入れ、バッグにしまう。

 この後はどうしよっかな?

 手慰みに改造魔物でも弄るか。 

 ポケットから赤色の干し肉のような改造魔物を1個取り出す。

 青竜を倒したあとに何回かギルドの討伐依頼を受けてストックを貯めた。全部で20個。

 魂を弄って魔物をぐにょぐにょ変形させる。

 倉庫で待つよりいいけど、とおさまもノルンもいないと暇だなー。

 

 そうだ!にいさまがやってた人形作りでもやってみようか!

 土魔術を無詠唱で発動。

 人の形に変形させようと……………………できない。 

 え?難し!

 緻密な制御と想像力、それらが揃っていてかつ何度も練習する必要がある。

 無為転変でやった方がクオリティは高くなるだろう。

 でもそれじゃ人形がビクビク動いちゃう。

 うーむ、やはり魔術の練習あるのみか。

 最近サボってたから魔術制御が下手になってる。

 よし、もう一回だ!

 

「トマちゃん!いる!?」

「わっ!ヴェラさん?仕事?」

 

 ヴェラさんがノックもなしに部屋に飛び込んできた!

 祈ってる最中じゃなくてよかった。本当に。

 

「奴隷の子は救出出来たんだけどっ!その子を追って来た魔術師が襲ってきたの!もう何人かに増援を頼んだけど倒せないかもしれない!お願い来て!」

「敵は何人?」

「1人!」

 

 大剣を持って部屋から出る。

 ヴェラさんの背を追って倉庫へ走る。

 魔術師1人に負けはしないだろう。

 魔術も久々に練習できた。

 カチューシャを付け直して、わたしは倉庫へ入った。

 

 

---

 

 

 ルーデウス視点

 

 

「みんな大丈夫ー?」

 

 増援は現れた。

 しかし彼らが行っていた団長とやらでは無さそうだ。

 

 その子は後ろにビキニアーマーのねーちゃんを下がらせて、悠々と倉庫の入り口に立っていた。

 

 逆光でよく見えないが、白色のワンピースの上から青色のシアーボレロを着ている金髪のカチューシャ娘のようだ。

 右手には体躯に見合わぬ大剣を持っている。

 年齢は9?10歳くらいか。

 まさかあれが援軍か?

 そんなわけ無いよな?

 

「うおおおお!!!お嬢が来た!!!」

「もう死ぬことはねぇぞ!!!おめぇら!!!」

「やっちまえお嬢!!!」

 

 マジかよあいつら。

 オタサーの姫か?

 

「ん?んんんー?」

 

 姫は俺の顔を見てうんうん唸っている。

 なんだ?

 顔に何かついてるってのか?

 あ、パンツか。

 と思っていると、彼女が心底驚いた顔でポツリと声を出した。

 

「え……?……にい…………さま……?」

 

 俺をその名前で呼ぶ少女は、一人しかいない。

 彼女は足元がおぼつかないまま俺に近づき、そのオッドアイと顔を見せた。

 

「お前……トマか?」

「うん……あなた…にいさまだよね……?」

「あぁ……俺は、ルーデウス・グレイラットだ。」

「っ!!にいさまぁ!!!ぐすっ、にいさま!!」

 

 カチューシャ娘……否、トマは俺に抱きついてきた。

 そして滂沱の如く涙を流し、俺との再会を喜んだ。

 俺は震える手でトマを抱き締め返し、1年半ぶりの家族のの体温を、心から感じることが出来た。

 そう思ったとき、思わず涙が零れ、被ったパンツを濡らした。

 

 

---

 

 

 トマが泣き止んだ頃、ビキニアーマーのねーちゃんが近づいてきて事情聴取が始まった。

 俺は人攫いがいたのでそれを助けようとしていたと説明し、彼女はそれに怪訝な表情を浮かべながらも納得してくれた。

 トマは俺の背中にくっついたまま離れなくなっている。

 

「あのー、何故トマがここにいるのですか?」

 

 俺は当然の疑問を投げ掛ける。

 しかし俺の頭の中では大体の想像がついていた。

 恐らくトマは転移事件に巻き込まれた。

 そしてこのミリシオンに飛ばされたのだろう。

 清潔な身なりとこいつらからの慕われ具合的に、安全な環境に身を置いていると思う。

 

「えーと、うーん。私から話してもいいんだけど、やっぱり…………」

 

 ねーちゃんは何を迷っているのか、俺に詳細を教えてくれない。

 フラフラと揺れる彼女の胸に、俺の視線は釘付けだ。

 バインとでかい胸と、キュっとくびれた腰、むっちりとした尻!

 うへへへへへ。

 

「そうだ!ちょっと酒場で待っていてくれませんか?ある人を連れてくるので。」

「ある人?……まぁいいですけど。」

 

 ねーちゃん……ヴェラというらしい。

 彼女は倉庫から出て酒場まで案内してくれた。

 その間もトマは背中にくっついたままだ。

 魔大陸での冒険が無かったらまともに歩けなかったかもしれない。

 酒場の中に入ると流石にトマも背中から離れてくれた。

 

 店内には木製の丸テーブルが10席ほど並び、俺が座っているのはその一つ。

 トマは椅子を動かして正面ではなく俺のピッタリ横に座り、腕を絡めて頭をすり付けてくる。

 その周りにはヴェラの仲間?らしき人達が座り、俺の方を睨み付けてくる。

 

 居心地が悪い……

 せめて何か頼もう。

 

「トマ、何注文する?」

「んん?んー……じゃあブドウジュース」

「わかった。すみませーん!」

 

 俺は店員に注文しブドウジュース2つを頼んだ。

 しかしトマはコップを見るだけで飲もうとしない。

 疑問に思っているとトマが上目遣いで言ってきた。

 

「飲ませてー」

 

 飲ませて?

 妹の頼みと言えど、どう飲ませればいいものか。

 コップを持って口に運ぶ?

 それとも、口移しか!?

 なんてな

 

「ほら、飲めるか?」

「うん!……んく、ごく、ごく」

 

 未だ腕に絡み付いてくるトマにブドウジュースを差し出して飲ませる。

 しかし立派に育ったな。

 背中まで伸びる金髪は丁寧に手入れされているのかキラキラと輝いているような錯覚さえ覚える。

 身長も順調に育っているようで、俺が前に見たときより1まわり大きくなっている。

 お胸の方はなにも感じないが、まだまだこれからだろう。

 ゼニスも胸が大きかった。

 将来彼女の果実は大きく実るだろう。

 

 突然酒場の外からドタドタと大きな足音が聞こえた。

 ヴェラの言っていたあの人だろうか?

 

 扉の方へ視線を向ける。

 バンッ!と扉が開かれて、息も絶え絶えな状態で、少女を抱っこしている茶髪の男が立っている。

 少し窶れて無精髭を生やしているが、あの男は

 

「ルディ!!!」

「父様!!!」

 

 パウロだ!

 パウロはこっちに走ってきて、少女を降ろして俺に抱きついた。

 

「お前……生きてて良かった……会いたかった……ずっと会いたかったんだよ……ルディ」

「父様……僕も、会いたかった……」

 

 見上げると、パウロは顔をくしゃくしゃに歪めて泣いていた。

 俺も本日二度目の涙が溢れた。

 家族との再会は、何度やっても涙腺を直撃するらしい。

 ふと少女の方を見た。

 ノルンだ。

 ノルンは俺の方を戸惑いの目で見ている。

 しかもちょっとジト目になっている。

 ご機嫌斜めか?

 

 そうだ!

 父様もトマもノルンもいるなら、ゼニスやリーリャ、アイシャもいるだろう。

 俺は涙を拭って聞いてみた。

 

「父様、母様やリーリャはどこにいるんですか?」

 

 パウロはなにやら驚いた顔をした後、悲痛な表情で呟いた。

 

「そうか……お前でも見つけられなかったのか」

 

 見つけられなかった?

 お前は何を言ってるんだ。

 

「見つけられなかったって……どういう事ですか?」

「あ?伝言を見ただろう?」

「伝言……ですか?」

 

 パウロは怪訝そうな顔をした。

 俺も同じ顔をしていることだろう。

 

「なあルディ、お前、今までどうしてきた?」

「どうといわれても、大変でしたよ。あの光に巻き込まれて、いきなり魔大陸に転移したんです」

「にいさまは魔大陸に飛ばされたんだ」

「トマは……ミリシオンに飛ばされたんだろう?」

「いや、紛争地帯」

 

 紛争地帯!?

 嘘だろトマ一人で転移させられたのか?

 ヒトガミの言っていたことは嘘だったのか?

 

「お前……どうやってここまで」

「わたしの話はいいや、にいさまが話して」

 

 まるで漫画の続きが気になるみたいな感じで俺の身の上話を急かしてくる。

 どう考えてもトマの方が重要だろう。

 だが、トマ自身がそう言ってるのなら俺から話すしかないか。 

 まぁ思い返すと、中々楽しい旅だったな。

 最初の出だしこそ悪かったものの、

 半年経過したぐらいから冒険者としての生活にも慣れた。

 それから俺は今までの旅路を3人へ語っていった。

 トマが大袈裟なリアクションをするので、俺も興が乗ってエピソードを語る口調に熱が入った。

 ノルンもちびちびジュース飲みながら聞いてくれてる。

 

「そして、ウェンポートへとたどり着いた僕らが目にしたのは……」

「したのはしたのは!」 

 

 トマの興奮も絶好調だ。

 ふとパウロの方を見てみると顔をゆがませ、困惑とイラつきが混ざった表情で腕を組んでいた。

 それに俺は言葉を止めてしまって、トマは不思議そうな顔をした。

 

「ルディ、一つ聞きたいんだが」

「なんでしょう」

「お前、どうして魔大陸で、他に転移した奴らの情報を集めなかったんだ?」

 

 どうって、そりゃあ、その……自分の事に手一杯で、忘れていたからだ。

 それしか言えない。

 まさか自分たち以外の人物が魔大陸にいるとは思っていなかった。

 

「とおさま、そんなのにいさまがとっても大変だったからに決まってるでしょ?」

 

 そうだ。

 今トマが言った事が全てだ。

 パウロは不機嫌そうな表情を隠すこともなく、トマへ言った

 

「ルディが大変だっただぁ?今の語りを聞いてどこが大変そうなんだよ」

「んー……わたしは、ロキシー先生と一緒に行動するようになってからも、すっごく大変だったよ。他に転移した人を探せないくらい。」

 

 俺もトマと同じだ。

 楽しく語ったが、大変な事もあったのだ。

 それに、魔大陸という非日常は常に俺の精神を削っていた。

 

「にいさま、今のお話って旅の全部を話してるの?」

「え……」

「楽しいことだけだったの?わたしはそうじゃなかったけど」

 

 灰色と青色のオッドアイが俺を見つめ、その瞳の中には、余裕のない顔をした俺がいた。

 パウロは、この語りを、この楽しいところだけを抜き出した語りを、全て信じてしまっているのか。

 俺が心配かけたくなくて言ったことは、逆にパウロをイラつかせていたのか。

 ならば、俺はどうすればいい。

 辛かったと話せばいいのか?

 それでも転移した人を探さなかったことは変わらない。

 俺は家族のことを思い出さず、呑気に旅をしていたんだ。

 結局、俺が能天気で、自分のことだけを考えて、何もしなかったんだ。

 これじゃ前世と同じだ。

 パウロの言ったことが正しい。

 

「とおさまは、わたしにはそんな事言わなかったよね」

「何でって……そりゃあ……」

「わたしの力の事を知った後も、言わなかったよね」

「……………………そうだな」

 

 俺が責められるのも無理は無い。

 謝ろう。

 それしかないんだ。

 もう、これ以上前世のようになりたくない。

 ずっと俯いていた顔を上げて、パウロを見る。

 パウロは汗をかいて、青ざめて、不安そうで、泣きそうな、ひどい顔をしていた。

 いや、なんでそんな顔をするんだ。

 パウロが言ったことは完全に正論じゃないか。

 

「ルディ…………」

「父様……その、すみませんでした。僕は、遊び気分で」

「違う!」

 

 パウロが震える声で叫んだ。

 

「ルディ、俺が悪かった。お前が大変だったことを棚に上げて、好き放題言っちまった」

「いや、父様は間違ってませんよ。僕がもっとしっかりしてれば」

「違う……俺は、お前に、八つ当たりしたんだ。父親の俺が、家族を見つけなくちゃならないのに……」

 

 パウロはまた涙を流している。

 

「父様……」

「ルディ……」

 

 いつの間にか、俺もまた泣いていた。

 涙脆くなっている。

 今度は、俺の方からパウロに抱きついた。

 離さないように、ガッチリと腕を巻き付けて

 

「ルディ…ルディ、情けない父親で、ごめんな、ルディ……」

「そんなこと言わないでくださいよ、父様は、僕のカッコいい父親です」

 

 体を震わせながら嗚咽を漏らすパウロと、また泣いていた俺は、そのまま気が済むまで抱き締めあった。

 

 

---

 

 

 パウロ達と再会して泣いた後、俺は再び酒場に来ていた。

 トマ達は宿に戻ったようだ。

 酒場で俺達はフィットア領の現状や他愛ない話をした。

 朝から晩まで延々と。

 それでも不思議と話題は尽きなかった。

 

「そうだ、お前ロキシーのパンツ盗んだらしいな」

「ぶほぉ!!!」

 

 飲んでいたジュースを思わず吹き出す

 こっこいつ!

 何故それを知っている!

 どこから漏れたんだ。

 

「ロキシーがトマを連れてきた時にな、宿でトマが色々暴露してくれたよ」

「いっ、色々ですか……ちなみにどんなことを……?」

「まずお前がロキシーのパンツを盗んだこと、服を嗅いでいたこと、覗きをしていたこと、あとトマに耳舐めを教えていたことだ」

「ぐぅぅ…………ん?いや!耳舐めって何ですか!そんなの教えてませんよ!」

 

 冤罪だ!

 アイツ俺に罪を擦り付けてやがる。

 ドルディア村でも冤罪を受けたのにここでも受けるのか。

 

「ほーん、冤罪ねぇ」

「冤罪ですよ!僕が妹にそんなこと教える人間に見えますか!?」

「見えるな」

 

 息子を変態扱いだなんて、なんて父親だ。

 

「信じてください!僕は耳舐めなんて性癖持ってません!」

「ならどんな性癖なんだ?」

「……胸?」

 

 綺麗な女の子なら大体okの驚異の守備範囲を持つ(胸囲だけに)ルーデウスです。

 パウロは鼻の下を伸ばしながら話す。

 

「胸か、大きいおっぱいはいいぞ。なにせ吸ってもよし挟んでもよしの二刀流だからな」

「挟む!ちなみにどんな感覚ですか?」

「女の全部を使われてる感じだな。刺激はともかく景色は素晴らしいぞ」

 

 俺はエリスで妄想する。

 照れながらも大きくなったおっぱいで俺の息子を挟み、上下に擦り始めるエリス。

 その先端にはさくら色の蕾が力を付けて立っている。

 テラテラと輝く所以はエリスの汗と俺の息子の雫か。

 フィニッシュにはそのお口で息子を塞ぎ……

 あっ俺の息子が土槍(アースランサー)になってきた。

 

「おっどうした前屈みになって」

 

 パウロがニヤニヤしている。

 一刻も早くこれを納めなくては……

 

 その後も俺達の性癖議論は続き、夜は更けていった。

 

 

---

 

 

「ルーデウス!昨日はどこに行ってたのよ!」

 

 朝帰りした俺を迎えるは腕を組んだエリス。

 その隣にはルイジェルト。

 

「ここに俺の家族がいました。それで話が盛り上がっちゃって……すみません」

 

 今思うとあのジュース、どこか酒臭かったような気がする。

 爆睡してしまったのはあれのせいだろう。

 

「久しぶりに会ったのだろう?無理もないさ」

「一言くらい伝えなさいよね!」

 

 彼女らは笑顔で家族との再会を喜んでくれたが、朝帰りはそれはそれ

 しっかり怒られてしまった。

 ルディヲイジメヌンデ……

 

 その後、第2回の作戦会議をしたり、パウロ達と食事を取ったり、フィットア領の現状を話したり、そんな平和な毎日が6日続いた。 

 そして、俺達は明日ミリシオンを旅立つことになる。

 

 俺はパウロに誘われて宿に入った。

 パウロ達が泊まっている宿だ。

 ベッドにはもう寝ているノルンと、その側で座っているパウロ。

 そして椅子に座るトマと犬?らしき生物がいた。

 ペットだろうか。

 

「よく来てくれたな」

 

 そう話すパウロは真剣そのもの。

 俺も背を正して椅子に座った。

 

「それで、何の話でしょうか」

「トマが、お前らに着いていきたいそうだ」

「トマが?」

 

 彼女は斜め前にちょこんと座っている。

 いや、確かに剣術は俺より強いが、旅で守りきれるかわからないし、俺だけで決められる問題じゃない。

 一旦話を聞いて、返事は持ち帰らせてからにして貰おう。

 

「……俺としては断ってくれてもいいが、その前に、言わなくちゃならん事がある」

「なんですか?」

 

 パウロは息を吐き、心を落ち着けてから言った。

 

「トマは神子だ」

「……神子?ってなんですか?」

「神子というのは、特別な力を持った人のことだ。バレたら強制的に国の為に働かされる」

 

 なるほどな

 そりゃ大切な話だ

 

「トマは神子の力を合わせるとお前より強いかもしれん」

「え?」

 

 トマが?

 いやいや冗談でしょうお父様

 冗談か確かめるように目を見つめると、横に頭を振られた。

 本当に俺より強いのか?

 

「にいさま、これ見て」

 

 見せられたそれは、異形の魔物だった。

 顔は普通なのに体がしわしわで干し肉のようになっていて、トマの手に収まってる。

 俺はこれに見覚えがあった。

 昔、庭で見つけた鼠だ。

 

「簡単にいうと、魂が見れてその形を変えることができるの。こんな風に。」

 

 彼女は自慢げに話す。

 

「ね!いいでしょ?フィットア領までの道程ならわたしわかるよ!ロキシー先生とフィットア領からここまで来たし」

 

 彼女の無邪気な笑顔も、俺には少し恐ろしかった。

 トマが悪いやつじゃないってことは良くわかってる。

 けれど、あの鼠の記憶があまりにもおぞましく、トラウマになっている。

 

「なぁ、お前、庭で鼠を変形させてなかったか?」

「あ……バレてた?もうあんな風にはしないよ」

 

 トマは気まずそうに言った。

 そうか、あれは失敗してしまったやつなのか。

 命を弄んだわけじゃなくて、倫理がわかっていなかったから起こったことだ。

 なら大丈夫……だよな。

 

「連れていくかどうかは、一旦仲間に相談させてください。」

「わかった。トマもそれでいいな」

「いいけど、一つにいさまに聞きたい事があるの」

 

 なんだ?

 ロキシー師匠がなんか言ってたのだろうか。

 

「フィットア領まで行ったらどうするの?」

「中央大陸北部で家族の情報を探したいと思ってる。冒険者でもやりながら」

「それ、わたしもやっていい?」

「それは……父様、どうします?」

「いいんじゃないか?ルディがついてくれるなら大丈夫だろう。トマも強さ的に申し分ないしな」

 

 そんなに強いのかトマ

 それとも俺への評価が低いのか。

 兄より優れた妹は存在する。逆ジ○ギだな。

 

「わかりました、さっきも言った通り、一旦話し合って明日言います」

「おう、こんな夜に付き合わせてすまん。おやすみ」

「にいさまおやすみー!」

「あぁ、おやすみ。父様もおやすみなさい」

 

 そうして俺はエリスとルイジェルトがいる宿へ戻った。




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