「東方二次創作」レミフラのお姉ちゃんは幻想郷に帰って来たんだって 作:ゆっくり那由多豊苑
博麗神社。
境内を覆っていた黒い霧が、ゆっくりと渦を巻いていく。
その中心に立つ男──ゼルヴァ。
彼は周囲を見渡し、楽しそうに笑っていた。
「これほどの者が一堂に集まるとはな」
霊夢が御札を構える。
「余裕そうね」
「当たり前だ」
ゼルヴァは右手を軽く掲げる。
すると、その手の周囲の空間が歪み始めた。
「私は空間そのものを喰らう」
「お前達の攻撃も、能力も──すべて無意味だ」
魔理沙が笑う。
「だったら試してみようぜ!」
「恋符──」
「マスタースパーク!!」
巨大な光が一直線に放たれる。
しかし。
ゼルヴァは避けなかった。
右手を前へ出す。
ズズズ……。
巨大な光が、まるで何かに吸い込まれるように消えていく。
「なっ……!」
魔理沙が目を見開く。
「本当に喰いやがった!」
ゼルヴァは口元を歪める。
「この程度か?」
「ならば──」
次の瞬間。
消えたはずの光が、ゼルヴァの背後から現れる。
「返す」
「危ない!」
ルミノアが叫ぶ。
空間を切り裂く。
光線は別の空間へ飛ばされ、幻想郷の空へ消えていった。
魔理沙が振り返る。
「助かったぜ、ルミノア!」
「……礼は後」
ルミノアはゼルヴァを睨む。
「今は」
「こいつを止める」
ゼルヴァが笑う。
「やはり、その力は素晴らしい」
「空間を繋ぎ、切り裂き、捻じ曲げる」
「私のものにすれば──」
「……嫌」
ルミノアは即答した。
「何度言われても」
「断る」
ゼルヴァの表情から笑みが消える。
「ならば」
「力ずくで奪う」
その瞬間。
大地が揺れた。
「きゃっ!」
フランがよろめく。
レミリアがすぐに支える。
「フラン、大丈夫!?」
「うん!」
ルミノアは二人を見る。
そして、ほんの少しだけ目を細める。
「……下がって」
レミリアが首を横に振る。
「嫌」
「私達も戦う」
「……危険」
「それでもよ」
レミリアはルミノアの隣へ立つ。
「お姉ちゃんだけに任せない」
フランも反対側へ並ぶ。
「私も!」
ルミノアは二人を見つめた。
そして小さく頷く。
「……分かった」
「一緒に」
その言葉を聞いたレミリアが笑った。
「うん!」
三姉妹が並ぶ。
その光景を見たゼルヴァは、どこか遠い記憶を思い出したように目を細めた。
「姉妹……か」
ルミノアが聞く。
「……何」
「いや」
「昔のことを思い出しただけだ」
「だが──」
ゼルヴァの右腕が巨大な黒い渦へ変わる。
「家族など」
「力の前では無意味だ」
「……違う」
ルミノアの声が響く。
「家族だから」
「守れる」
その瞬間。
ルミノアの周囲に無数の裂け目が出現した。
一つ。
十。
百。
空間そのものが、彼女の意思に従うように震え始める。
「空間を司る程度の能力」
ルミノアが右手を掲げる。
「全て」
「私の領域」
ゼルヴァも右腕を構えた。
「ならば」
「領域ごと喰らう!」
二人の力が正面から衝突する。
──ドォォォォン!!
衝撃波が幻想郷を駆け抜ける。
霊夢たちは吹き飛ばされそうになる。
紫がスキマを開き、仲間たちを守る。
「まずいわ!」
「このままでは空間そのものが崩壊する!」
隠岐奈も険しい表情になる。
「二人とも力を出しすぎている!」
しかしルミノアは退かなかった。
ゼルヴァも退かない。
二人の間で空間が歪み、世界そのものに亀裂が走る。
「ルミノア!」
レミリアが叫ぶ。
「お姉ちゃん!」
フランも叫ぶ。
その声が届いた瞬間。
ルミノアの力がさらに強くなる。
「……妹達には」
「触れさせない」
「この幻想郷にも」
「手を出させない」
ルミノアは両手を広げた。
そして──。
空間を切り裂く。
一閃。
ゼルヴァの黒い渦が真っ二つに裂けた。
「なに……!?」
初めてゼルヴァが驚愕する。
ルミノアは静かに言った。
「私の故郷を」
「壊させない」
巨大な空間の裂け目がゼルヴァを包み込む。
しかし。
ゼルヴァは笑った。
「……なるほど」
「ようやく理解した」
「お前は五百年前より強くなっている」
「だが──」
ゼルヴァの身体が黒い霧へ変わり始める。
「今のお前では」
「まだ私には届かない」
ルミノアが目を細める。
「……逃げるの」
「違う」
「今日は挨拶だ」
ゼルヴァの姿が消えていく。
「次に会う時」
「私は本気でお前を奪いに行く」
最後の声だけが境内に残った。
「覚えておけ」
「ルミノア・スカーレット」
「お前の力は──」
「世界を繋ぐ鍵だ」
黒い霧が消える。
静寂。
誰も言葉を発しなかった。
やがてルミノアが膝をつく。
「……っ」
レミリアが駆け寄る。
「お姉ちゃん!」
フランも抱きつく。
「大丈夫!?」
ルミノアは二人の頭を撫でる。
「……大丈夫」
しかし、その声は少し震えていた。
紫が近づく。
「今の戦いで分かったわ」
「ゼルヴァは、あなたの力を利用して何かをしようとしている」
ルミノアは空を見上げる。
青空には、まだ小さな亀裂が残っていた。
「……世界を繋ぐ鍵」
「どういう意味」
隠岐奈が答える。
「それを知るためには──」
「お前が五百年前に何をしていたのか」
「その過去を知る必要がある」
ルミノアは黙り込む。
レミリアが不安そうに尋ねる。
「お姉ちゃん……」
「五百年前」
「何があったの?」
ルミノアはしばらく答えなかった。
やがて静かに口を開く。
「……話す」
「全部」
「私が」
「幻想郷を出た理由も」
三姉妹の間に、静かな風が吹いた。
ルミノアは目を閉じる。
そして──。
五百年前の記憶を、ゆっくりと思い出し始めた。
──第九話へ続く。