「東方二次創作」レミフラのお姉ちゃんは幻想郷に帰って来たんだって   作:ゆっくり那由多豊苑

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8話「空間を喰らう者」

 

 博麗神社。

 

 境内を覆っていた黒い霧が、ゆっくりと渦を巻いていく。

 

 その中心に立つ男──ゼルヴァ。

 

 彼は周囲を見渡し、楽しそうに笑っていた。

 

「これほどの者が一堂に集まるとはな」

 

 霊夢が御札を構える。

 

「余裕そうね」

 

「当たり前だ」

 

 ゼルヴァは右手を軽く掲げる。

 

 すると、その手の周囲の空間が歪み始めた。

 

「私は空間そのものを喰らう」

 

「お前達の攻撃も、能力も──すべて無意味だ」

 

 魔理沙が笑う。

 

「だったら試してみようぜ!」

 

「恋符──」

 

「マスタースパーク!!」

 

 巨大な光が一直線に放たれる。

 

 しかし。

 

 ゼルヴァは避けなかった。

 

 右手を前へ出す。

 

 ズズズ……。

 

 巨大な光が、まるで何かに吸い込まれるように消えていく。

 

「なっ……!」

 

 魔理沙が目を見開く。

 

「本当に喰いやがった!」

 

 ゼルヴァは口元を歪める。

 

「この程度か?」

 

「ならば──」

 

 次の瞬間。

 

 消えたはずの光が、ゼルヴァの背後から現れる。

 

「返す」

 

「危ない!」

 

 ルミノアが叫ぶ。

 

 空間を切り裂く。

 

 光線は別の空間へ飛ばされ、幻想郷の空へ消えていった。

 

 魔理沙が振り返る。

 

「助かったぜ、ルミノア!」

 

「……礼は後」

 

 ルミノアはゼルヴァを睨む。

 

「今は」

 

「こいつを止める」

 

 ゼルヴァが笑う。

 

「やはり、その力は素晴らしい」

 

「空間を繋ぎ、切り裂き、捻じ曲げる」

 

「私のものにすれば──」

 

「……嫌」

 

 ルミノアは即答した。

 

「何度言われても」

 

「断る」

 

 ゼルヴァの表情から笑みが消える。

 

「ならば」

 

「力ずくで奪う」

 

 その瞬間。

 

 大地が揺れた。

 

「きゃっ!」

 

 フランがよろめく。

 

 レミリアがすぐに支える。

 

「フラン、大丈夫!?」

 

「うん!」

 

 ルミノアは二人を見る。

 

 そして、ほんの少しだけ目を細める。

 

「……下がって」

 

 レミリアが首を横に振る。

 

「嫌」

 

「私達も戦う」

 

「……危険」

 

「それでもよ」

 

 レミリアはルミノアの隣へ立つ。

 

「お姉ちゃんだけに任せない」

 

 フランも反対側へ並ぶ。

 

「私も!」

 

 ルミノアは二人を見つめた。

 

 そして小さく頷く。

 

「……分かった」

 

「一緒に」

 

 その言葉を聞いたレミリアが笑った。

 

「うん!」

 

 三姉妹が並ぶ。

 

 その光景を見たゼルヴァは、どこか遠い記憶を思い出したように目を細めた。

 

「姉妹……か」

 

 ルミノアが聞く。

 

「……何」

 

「いや」

 

「昔のことを思い出しただけだ」

 

「だが──」

 

 ゼルヴァの右腕が巨大な黒い渦へ変わる。

 

「家族など」

 

「力の前では無意味だ」

 

「……違う」

 

 ルミノアの声が響く。

 

「家族だから」

 

「守れる」

 

 その瞬間。

 

 ルミノアの周囲に無数の裂け目が出現した。

 

 一つ。

 

 十。

 

 百。

 

 空間そのものが、彼女の意思に従うように震え始める。

 

「空間を司る程度の能力」

 

 ルミノアが右手を掲げる。

 

「全て」

 

「私の領域」

 

 ゼルヴァも右腕を構えた。

 

「ならば」

 

「領域ごと喰らう!」

 

 二人の力が正面から衝突する。

 

 ──ドォォォォン!! 

 

 衝撃波が幻想郷を駆け抜ける。

 

 霊夢たちは吹き飛ばされそうになる。

 

 紫がスキマを開き、仲間たちを守る。

 

「まずいわ!」

 

「このままでは空間そのものが崩壊する!」

 

 隠岐奈も険しい表情になる。

 

「二人とも力を出しすぎている!」

 

 しかしルミノアは退かなかった。

 

 ゼルヴァも退かない。

 

 二人の間で空間が歪み、世界そのものに亀裂が走る。

 

「ルミノア!」

 

 レミリアが叫ぶ。

 

「お姉ちゃん!」

 

 フランも叫ぶ。

 

 その声が届いた瞬間。

 

 ルミノアの力がさらに強くなる。

 

「……妹達には」

 

「触れさせない」

 

「この幻想郷にも」

 

「手を出させない」

 

 ルミノアは両手を広げた。

 

 そして──。

 

 空間を切り裂く。

 

 一閃。

 

 ゼルヴァの黒い渦が真っ二つに裂けた。

 

「なに……!?」

 

 初めてゼルヴァが驚愕する。

 

 ルミノアは静かに言った。

 

「私の故郷を」

 

「壊させない」

 

 巨大な空間の裂け目がゼルヴァを包み込む。

 

 しかし。

 

 ゼルヴァは笑った。

 

「……なるほど」

 

「ようやく理解した」

 

「お前は五百年前より強くなっている」

 

「だが──」

 

 ゼルヴァの身体が黒い霧へ変わり始める。

 

「今のお前では」

 

「まだ私には届かない」

 

 ルミノアが目を細める。

 

「……逃げるの」

 

「違う」

 

「今日は挨拶だ」

 

 ゼルヴァの姿が消えていく。

 

「次に会う時」

 

「私は本気でお前を奪いに行く」

 

 最後の声だけが境内に残った。

 

「覚えておけ」

 

「ルミノア・スカーレット」

 

「お前の力は──」

 

「世界を繋ぐ鍵だ」

 

 黒い霧が消える。

 

 静寂。

 

 誰も言葉を発しなかった。

 

 やがてルミノアが膝をつく。

 

「……っ」

 

 レミリアが駆け寄る。

 

「お姉ちゃん!」

 

 フランも抱きつく。

 

「大丈夫!?」

 

 ルミノアは二人の頭を撫でる。

 

「……大丈夫」

 

 しかし、その声は少し震えていた。

 

 紫が近づく。

 

「今の戦いで分かったわ」

 

「ゼルヴァは、あなたの力を利用して何かをしようとしている」

 

 ルミノアは空を見上げる。

 

 青空には、まだ小さな亀裂が残っていた。

 

「……世界を繋ぐ鍵」

 

「どういう意味」

 

 隠岐奈が答える。

 

「それを知るためには──」

 

「お前が五百年前に何をしていたのか」

 

「その過去を知る必要がある」

 

 ルミノアは黙り込む。

 

 レミリアが不安そうに尋ねる。

 

「お姉ちゃん……」

 

「五百年前」

 

「何があったの?」

 

 ルミノアはしばらく答えなかった。

 

 やがて静かに口を開く。

 

「……話す」

 

「全部」

 

「私が」

 

「幻想郷を出た理由も」

 

 三姉妹の間に、静かな風が吹いた。

 

 ルミノアは目を閉じる。

 

 そして──。

 

 五百年前の記憶を、ゆっくりと思い出し始めた。

 

 





──第九話へ続く。
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