25歳、身長150cm黒髪ポニテスレンダー体型。
兵盆(へいぼん)大学卒。
若手でも自分でプロジェクトをつくりたいと思い、社員数の多い西京(さいきょう)社ではなく彩若(さいじゃく)社に入社した。
ここまでブラックだとは思っていなかったため早めに転職を決意。
タカシ
29歳、身長176cm黒髪短髪くま有りややイケメン。
そこそこ良い国立の青葉大学卒。
コーヒーを奢ったり、上司からの盾になったりして、スズカなど部下に慕われている。
しかし本人は、恋愛というより友情という感じで彼女ができないことを憂いている。
最近はパックのしじみ汁が数少ない癒し。
【転職】
西京(さいきょう)社と彩若(さいじゃく)社。
駅を挟んでそびえ立つ二つのビルは、まさに最強と最弱のように、この街の格差の象徴だった。
私の名前が書かれた名札をつけ、彩若社の社員として振る舞うのも、もう2年となる。
かすれたスズカの字は、まるで今の自分を写しているようだった。
「あそこの西京社さんは良いよな〜」
彩若社のデスクで、先輩のタカシさんが目の下にくまをつくりながらため息をついていた。
画面には、西京社が発表した新しい福利厚生のニュースが映っている。
「家賃補助が7割、さらに社食は無料だってさ。それなのに手取りも多いらしい。あっちに転職しときゃよかったな」
手元の薄い給料明細を見る。
引き落とされる保険料と、雀の涙ほどの基本給。
頑張って働いたお給料が、食費と家賃だけで綺麗にとんでいく。
自分の口座は、毎月生きるための通過点に過ぎなかった。
「なぁ、スズカさんが前に出した業務改善の提案、どうなった?」
タカシさんに聞かれ、私はさらに肩を落とした。
彩若社の非効率なシステムを変えようと、徹夜で企画書を作って上司に直談判したのだ。
結果は惨敗だった。
「上司には『こうしましょうよ』って言っても、無理だの一点張りで。とにかく腰が重いんですよね。前例がない、予算がない、時期尚早。新しいことを拒むための言葉だけは、湯水のように出てきて……」
大企業の西京社じゃ、若手はただの歯車。彩若社なら、自分でプロジェクトを動かせるはず――
2年前、兵盆大学の卒業式で抱いていた希望は、完全に打ち砕かれた。
「典型的なブラックだな」とタカシさんが苦笑する。
その時、オフィスの窓から外を見た。
夕暮れ時、西京社のビルからは、定時退社した社員たちが笑顔で連れ立って出てくるのが見える。
一方、こちらの床には、これから始まる深夜残業のための、タカシさんが好きな乾燥しじみ汁のパックや、どん助さんの天ぷらうどんのカップが転がっていた。
カップうどんのキャラ、どん助さんの視線が、どうも憐れんでいるように感じてしまう。
「……よし、決めた」
私は引き出しから、白い封筒を取り出した。
腰の重い上司が変わるのを待つより、まだぴちぴちの、自分の足を動かす方がよっぽど早い。
その封筒には、すでに「退職届」と書かれていた。
「まじで転職すんの?」
「はい、やっぱりここではやりたいことができないって、そう思って」
タカシさんにはお世話になったけれど、もう心は固まっていた。
「へぇー……まぁ他の会社でも頑張ってよ。応援する、俺は」
夕方の日に照らされたどん助さんが、新たな門出を祝ってくれているように感じた。
【タカシの独白】
へぇ、また将来有望な若手が辞めるのか。
もう慣れてきたと思ってたけど、やっぱりまだ慣れないな。
でも、ここから出ていった奴らは、みんな清々しい顔をしているから、悪くない。
今夜は、ちょっと良い殻付きのしじみ汁にしようかな。
まだあったかな、あれ。
見てくれてありがとうございました。