〔語り部SIDE〕
長い金髪に翡翠色の瞳の美少女といえる女の子はシスター風の衣装を身にまとい走っている。
「誰か…ッ」
どこの誰かもわからない何者かに助けを求めながら駒王町のはずれにある閑散とした道を走り続ける。
何故、このような状況になっているのか。
まずこの少女はシスター風の格好をしているが正規のシスターではなくイッセーが助けた男子生徒を襲った堕天使に拾われた神器所持者を襲った堕天使の部下。
そして―――
「“アーシア”ちゃーん。そんな風にかわいく逃げられると、俺っち誘われていると思っちゃうじゃないですかぁ~♪ まあ、悪魔と関わったクソ人間を庇った時点でぶっ殺し確定ですけどねェ!!」
逃げる少女―――アーシアを追う誰もがゲスと思える雰囲気と表情を浮かべる銀髪の神父服を着た少年。
右手には悪魔祓いや教会の戦士に支給される[光力]のエネルギーサーベルを発生させる光の剣。
左手には教会の印と聖なる術式が刻印された自動拳銃。
この少年も少女と同じ堕天使の部下。
しかし、なぜ同じ所属の少年がアーシアに狂気じみた殺意を送りながら追跡しているのか。
それは数十分前出来事。
アーシアは何も知らされないまま少年と町はずれにある人間が住む一軒家を訪れた。
そして少年と共に家に入るや否や、少年が家主である男性を襲おうとした。
間一髪で少年の異様な雰囲気を感じたアーシアが少年に飛びつき男性に逃げるように言う。
そしてアーシアが少年に質問した―――
―――「“フリード”神父。なぜいきなり人を殺そうとしたのですか…ッ?」
―――「なにって、悪魔と関係を持った人間は全員ぶっ殺す。アーシアちゃんも教会でそう習ったでしょ?」
―――「それは教会の勢力圏内や信徒や悪魔に影響されて周囲に悪影響をもたらす人だけのはずです!」
―――「さっすが、悪魔を治療して追放された異端者ですね~。なら俺様のぶっ殺しタイムを邪魔したんでアーシアちゃんの事を死なせない様に斬り刻んであげましょうかねェ~!!」
このような経緯でアーシアは銀髪の神父服を着た少年―――フリードに追われていた。
自分が異端でありながらも乳飲み子の時に教会に拾われそして追放されるまで所属していた際に教えられた教え。
―――汝、隣人を愛せ。
アーシアはその教えを最も深く信じ、それを実行してきた。
故に自分のように自ら異端者になったような人ではなく、ただ悪魔と普通の交流関係にある人間が身内によって理不尽によって殺されることを拒んだ。
だが、戦闘経験がない彼女がフリードに勝てるはすがない。
自分にあるのは聖書の神にもたらされた神器によるあらゆる種族を癒せる能力だけ。
故にアーシアは自身の理不尽を何とかする為に助けを求めるべく走った。
異端者であるがゆえに聖書の神に助けを求めるのは、他の真面目な信徒に対しての侮辱であるのを自覚して。
そんな祈りもつかの間、アーシアは裸足で走り元々体力が無かったのが影響してその場で転んでしまった。
「おんや~可愛くコケちゃってぇ~。でもこれで素敵なクソアマ悲鳴ショーがゆっくり楽しめますな~」
目の前に迫る狂気な笑みを浮かべたフリードにアーシアは体力の限界が重なり動けなくなった。
もはやこれまでか。
(主よ…異端者である私への罰なのですか…?)
アーシアは自身の異端行動への罰がこの現状だと聖書の神に心の中で遺言のように語り掛けた。
そして、フリードが光の剣でアーシアを死なない程度に斬ろうとした瞬間―――
―――バァンッ!!
一発の銃声が鳴り響いた。
「え…?」
「銃声? まさか銃が暴発…そんな感触は……グッギャァァァァァァァ!?」
銃声に呆けるアーシアと、同じように呆けたが突然右腕を抱え込んで絶叫を上げるフリード。
アーシアがフリードの方を見れば、近くには粉々になった光の剣とフリードの右手らしき肉片。
フリード本人は右手首から上が無くなりそこから大量出血させた苦悶に満ちた表情を浮かべていた。
そんな状況に第三者の声が響き始めた。
「ったく…。毎回妙な予感がして来てみれば、100%厄介事が起きてるもんだな」
「!?」
その声が自分の真横から聞こえて、振り向けばそこには茶髪の20代後半の日本人男性が現れたとアーシアは驚いた。
声が聞こえるまで自分の横には居なかったはずなのに、聞こえた瞬間現れた男。
「さて―――そこのシスターは…後にしてそこの[はぐれ神父]*1。なんで悪魔が異形界関係を管理しているこの町に居るんだ?」
茶髪の日本人男性―――兵藤一誠は右手に持った大口径大型リボルバーの引き金を指にかけながら銃口をフリードに向けた。
〔語り部SIDE OUT〕
◎
〔イッセーSIDE〕
家でゆっくり新作のエロ本を読もうと思ったら、妙な予感がして町はずれに来てみれば案の定事件が起きていた。
服がボロいシスター風の格好をした金髪美少女を狂気的な笑みで光の剣と[光の剣銃]*2を装備したいかにもなはぐれ神父がサイコホラー映画の1シーンを現実でやっていた。
明らかに向こうは殺戮とかを楽しむ…というか数年前に神器所持者だったころに襲ってきた“ダヴィード・サッロ”*3の弟子のクソガキだったか。
確かダヴィードは既に死亡し、クソガキは神父の仕事を過剰にやりすぎた事で追放処分されたって聞いたがこの町に来ているとはな。
ま、ガキだったころから殺戮に対して快楽を得ている時点で教会から追放されるのは時間の問題―――ってそんな犯罪者なんで追放処分で済ませたんだ?
教会の裁きってヤバい奴に対して甘すぎないか?
ま、そういう事だから金髪美少女を武装して追いかけていたこいつの右手を
「あぐ…ッ…。テメェか…ッ。俺様の右手を吹き飛ばした糞野郎は…ッ」
右手を抑えながら俺を睨むダヴィードの弟子。
「ああ。ていうか悪魔が異形界関係を管理している町で堂々とシスター殺しとかバカなのか? ま、ともかくさっきの質問に応えろ」
「誰が…テメェみたいな…ッ黒野郎に…ッ!」
「さっさと白状しな。俺は深くはお前に対して対応しない…ていうか俺に洗いざらい話した方が身のためだぞ―――なあ? リアス・グレモリー」
俺が背後にそう問いかけると、そのばにリアス・グレモリーと眷属達が空から舞い降りた。
「兵藤さん!? どうしてここに!?」
俺がいる事に驚くリアス・グレモリー。
「妙な胸騒ぎがするかと思って勘を頼りに来たら、この銀髪はぐれ神父がそこの金髪美少女シスターを光の剣と光の銃を持って追い掛け回していた。そんで、このはぐれ神父の方が危険だと感じてこいつの右手をこのマグナムで吹き飛ばした」
「日本神話の上から聞いていましたが、何かしらのトラブルがあればいつも貴方がいると…。堕天使の一件といいここまでとは…」
多分オヤジが色々経由してリアス・グレモリーに
そう伝えたんだろう。
まあ、事実だから仕方がない。
「そこまで報告に上がっているなんてな。んで、リアス・グレモリーとその御一行様はどうしてここに?」
「実は私達の悪魔稼業のお得意さんの1人から緊急連絡を貰ったの。神父服を着た狂人に殺されそうになって、その神父に同行していたシスターの格好をした少女に助けられたって。だからお得意さんの家から光の武器の残滓をおってここに来たの」
シスターに助けられた?
俺は真横にいるシスターに視線を移す。
シスターはリアス・グレモリーと眷属達の登場に驚いていてそれどころじゃない様子だ。
この場でどうにかできる状況じゃないな。
「とりあえず当事者として管理者に連行されるしかないな。そこのシスターも良いな?」
「え!? わ、私ですか!?」
「当たり前だろ。彼女―――リアス・グレモリーはこの町に異形界管理の責任者の一人。そこで事を起こした当事者は素直に連行されるもんだ。あ、そこのはぐれ神父、そろそろ治療しないと失血死するぞ」
俺はリアス・グレモリー達の視線をダヴィードの弟子に誘導するように言う。
既に奴は痛みと出血で衰弱するように気絶している。
「そうね。兵藤一誠さん、そこのシスターさんと瀕死のはぐれ神父の3名。日本神話から異形界関係の管理を委任されたリアス・グレモリーと眷属達で連行します。拒否権はないのであしからず」
そんなこんなで俺と隣にいるシスター、そして俺が右手を武器事吹き飛ばしたダヴィードの弟子の3人はリアス・グレモリー達に連行されることになった。