〔イッセーSIDE〕
現在俺はリアス・グレモリーに連行という名の同行で彼女の拠点である駒王学園高等部旧校舎地下にある聴取専用の部屋で今までの出来事を説明した。
まあ、普通に警察の事情聴取なんだけど―――
「なんでかつ丼が出されているんだ?」
「日本の事情聴取にかつ丼は必須よ?」
「いつの時代っていうか、それは刑事ドラマの世界の話で現実ではないぞ…」
「えぇ!?」
驚くリアス・グレモリー。
どっちかって言うと倫理観ガン無視の暴力とか精神攻撃ばかりの事情聴取が昔はあったな。
表向きの警察はそういうのは無くなったけど公安とか、俺らみたいな裏で動く治安維持部隊はそういうのは遠慮なくやるけどな。
人の心が無い?
俺らが相手にする大半の連中は元から人の心どころか、芯から悪辣非道な奴らばかりだから問題ない。
過去にそういう人物や犯罪者に走る原因である同情できる過去もある奴がいるが関係ない。
結局子供の癇癪で犯した罪に対して向き合わず、不幸自慢を理由に害悪をひけらかすのはそこらのクズと何ら変わりない。
個人を尊重こそすれ周りにある程度合わせられなけらば集団的であり文化的な生活は出来ない。
厳しいがこれが現実だ。
故にクレアは恋人を失ったんだからな。
「とりあえず貴方―――兵藤さんは問題の要因ではなく問題を解決してくれた人という事で問題ないですね」
「そうか。割と簡単な事情聴取で終わったが大丈夫なのか?」
「はい。貴方は日本神話でも上の立場―――私達の長である四大魔王様と対等に話し合える方です。なにより天照様から全幅の信頼をしても問題ないと言われています」
天照がそんなことを言っていたのか。
ていうか、信頼ってどちらかといえばあの神がコミケに行く際に人間界に顕現した際のお世話をしてもらったからだろうな。
あの神様仕事以外はマジでニート化するからなぁ。
「そう信頼されていたのは意外だな」
「え? 天照様とはあまり関わっていないのですか?」
「そうだな。どちらかといえば現場仕事ばかりで日本神話の上と話すのは上司で、俺は現場で起きた事や、それにどう対処したか、なぜそのような事が起こったのか、みたいなことを上司報告しやすい様に内容を判り易く報告書にまとめるってだけだ」
「結構普通な感じなんですね。私も眷属もソーナやその眷属達も同じような仕事をしていますし」
「大体はそんなもんだよ。んで、俺以外に連行したシスター風の金髪美少女と外道はぐれ神父はどうなっているんだ?」
俺は話を別の話題に変える。
どっちかっていうと、あの2人がなんで彼女たちや日本神話の警戒網に引っかからなかったのかが知りたい。
「はぐれ神父の方は正直対話不可能です。現状は脱出できない様にほぼ封印状態で拘束、この町に堕天使がいる事や今回の事が解決したら恐らく堕天使に身柄を引き渡す事になりますね」
「俺としては奴は生かしておく方が危険な気がするが」
「私も同意見ですが被害は私達のお得意さん―――ですが未遂なので難しいですね」
ま、そうなるよな。
あのクソガキは数年前から悪運だけは良いらしい。
「そうか。それでシスターの方は?」
「そうですね。兵藤さんも介入した以上は知っておいた方が今後の事件解決になるので共有しておきましょう」
それから俺はリアス・グレモリーから金髪美少女シスターについて報告を聞いた。
◎
―――アーシア・アルジェント。
それがリアス・グレモリーの顧客を助け、俺が間接的に助けた金髪美少女シスターの名前だ。
シスターといってもあくまで格好だけであり、現在は教会から追放されたはぐれシスターみたいだ。
教会から追放されたはぐれ神父やはぐれシスターが堕天使の勢力下に加わるのは珍しいことじゃない。
あのクソガキはぐれ神父は大方その本人が持ていた残虐性から追放されたのは簡単にわかる。
まあ、奴が堕天使の勢力下にはいってももともと持っている残虐性は通常の組織に居ても只の爆弾になってしまう。
そういうのをうまく回避するために普段は常人を装うのが大半だ―――俺の家族と親友二人を殺した堕天使みたいにな。
そんでもってアーシア・アルジェントが教会から追放された理由に関して―――結論から言えば教会で聖女という称号を持っていたのにもかかわらず悪魔を自身が宿していた神器で治療、それを教会関係者に見られ追放されたらしい。
俺としてはびっくり―――とも言い切れなかった。
教会は人類の守護者を名乗ってはいるが、その実やっている事は聖書の神を信仰しない存在は無視であり、聖書の神が敵とする魔に該当する存在は何が何でも殺すと言った行為をやっている。
信仰しない者たちを護らないのは100歩譲って判らなくも無いが、聖書の神が定めた魔に該当する存在を殺す行為に関しては他宗教の異形やその地を護る獣なども入っている為、その被害で土地が死んだり守ろうとしたその土地の人間を信仰を言い訳に惨殺などやっている。
聖書にあるイエスキリストの言葉に「汝の隣人を愛せよ」って言葉があり、「自分を愛するように、目の前の人を大切にしなさい」という平和的な意味を持ち入信する者たちがいる。
しかし、その言葉の意味は教会ではいつの時代からか異形サイドでは形骸化。
今では信者以外はこれと言って大切にすることも無く、他宗教関係に何をしても神の元に許される行為だと言わんばかり。
果てには魔の存在に対して復讐するか殺す事を生きがいとする戦士ばかりが増えて、いつしか教会と天界はただ魔の存在(主に悪魔や堕天使)などを狩る組織になっている。
そもそも悪魔と堕天使に因縁付けて戦争起したのは聖書の神を中心とした教会と天界で三大勢力同士の大戦を引き起こした火種ともいえる組織。*1
そういう一面を知って教会が自分が思い描いた理想の宗教とは違うのを知って懐疑的になる。
そしてこれと言って普通に危害も食わていない存在を害するのを目撃、そして自分が信じた「汝の隣人を愛せよ」に従い本来敵対する勢力の存在を助けて追放。
この異形界では珍しいことじゃない。
アーシア・アルジェントもその例の1つでもあり、ある意味教会という組織に合わない程の慈愛とその慈愛を体現する神器を宿した1人の少女なのだろう。
俺としては半分自業自得でありつつも、ある意味組織に騙された被害者でもある。
悪魔は敵と教えられていたのにその敵を治療した背信行為、しかしその行為は信じてきた「汝の隣人を愛せよ」を体現したものともいえる。
アーシア・アルジェントが癒した悪魔は討伐されるべき邪悪だったのか、はたまた教会が一方的に悪と定めて害された被害者だったのか。
前者と後者で彼女の行為が一方的な背信行為をした裏切りの魔女なのか、それとも「汝の隣人を愛せよ」というイエスの言葉を守り切った優しき魔女なのか。
ま、その結論は俺やリアス・グレモリーがだすことじゃあないな。
「それで、この事件に対する当面の方針は?」
「とりあえずこの町に侵入した堕天使達の拠点は割れています。既に堕天使達にこの町で無断で活動どころかそちらの部下が私達のお得意さんに対して危害を加えた事などをした罪状で警告文―――いわゆる自首を促す文書は送ってあります」
「堕天使達? ってことは他にも堕天使やあのはぐれ神父やアーシア・アルジェントみたいなはぐれがいるのか?」
「はい。侵入経路は駒王町から数キロ離れた先の堕天使達が置き土産に設置した転移装置。既にその転移装置は日本神話の専門部隊が処理済み。周囲に墓勢力の転移装置や爆弾みたいな危険物が無いか調査中とのことです」
「そうか。堕天使達の正体は?」
「[神の頃見張る者]の下っ端構成員です」
「他勢力の―――それも敵対勢力の情報を簡単に手に入れられるなんてな」
「ええ。兵藤さんは私達の事を調べているのなら、その手段は―――」
「そちらの[女王]さんだろ?」
俺はリアス・グレモリーの後ろの控えている姫島朱乃を見ながらそう言った。
「やはり私の事は知っているようですわね」
「まあな。だけど無茶はするなよ?
「ええ。肝に銘じていますわ」
ま、大丈夫そうだな。
サタナエルの件といい、あの総督は割と下の管理ないがしろにしがちで特に下っ端と幹部が問題起しまくっているからな。
姫島朱乃の父親も日本神話において問題を起こした側ではあるが、被害こそサタナエルと比べれば可愛いもんだ。
まったく、三大勢力は日本で問題を起こすのが本当に大好きなようだ。
面倒な世の中だ。
「因みに確保したアーシア・アルジェントの身柄について[神の子を見張る者]は?」
「貴重な上位治療系神器所持者なので身柄の返還を求めていますが―――私は彼女を眷属に迎えようと思っていますわ」
「眷属か…上は?」
「既に許可は得ています。まあ、無理に眷属にするつもりはありません。彼女が[神の子を見張る者]に行きたいと言えば返しますし、自由に生きたいと願えばそれなりの制約は付きますが駒王町で住まわせることも視野に入れています」
学生とは思えない対応の良さだな。
まあ、あのクソガキはぐれ神父の件で[神の子を見張る者]に戻る可能性はあの報告通りの彼女ならな無いな。
ていうか、戻っても性格的に戦闘に向いてないから神器ぬかれて殺されるのがオチだしな。
そうなるとリアス・グレモリーの眷属になるか、制約付き―――つまり日本神話の監視が付くがある程度の自由な暮らしをこの町で保証されるか。
前者3の後者7って所だな。
「そんじゃ俺の出番は無いって事か?」
「はい。相手が堕天使で寧ろ運が良かったと思っています。教会や天界だと―――」
リアス・グレモリーがそう言いかけた時。
―――彼女の拠点が攻撃を受けた。
〔イッセーSIDE OUT〕
◎
〔語り部SIDE〕
悪魔の本拠地である冥界。
その冥界でも元七十二柱に連なる一家の本拠点で若い悪魔がため息をつきながらリアス・グレモリーの拠点である旧校舎が堕天使4人とはぐれ神父達によって攻撃される映像を見ていた。
「まったく。家の立場を利用してせっかく駒王町で色々出来るようにおぜん立てしてやったというのに彼女をやすやすと奪われるとは。まあ、所詮組織の下っ端か」
そう言いながら男性悪魔はワインを飲み干し、瞳に光が消えた女性の眷属悪魔が空になったワイングラスに再びワインを注いだ。
「まあ、下っ端とはいえ中級堕天使1人と下級堕天使3人。所詮上級程度の実力と情愛しか取り柄のない無能姫とその眷属相手であれば殺し切れるか」
そう言いながら男性悪魔は手元に魔方陣を展開。
リアス・グレモリーが日本神話と外交担当の悪魔に送ったフリードとアーシアに関する報告書を開く。
そしてフリードには目もくれず、アーシアの顔写真が掲示された報告書を男性悪魔は下卑た瞳と笑みで見た。
「さあ、早く僕の所に来てたっぷりと調教したあげるよ―――アーシア」
男性悪魔はそうねっとりとした気味の悪い口調で映像を見ながらワインを飲んだ。
〔語り部SIDE OUT〕