姫騎士学園の下剋上性活 ~最弱スキルで異世界のプライド高め美少女たちを堕としたら、毎晩ご奉仕に来る日々が始まった~ 作:東雲(しののめ)
「――あーあ。こんなことならメイク道具、携帯しとくべきだった」
蛇口をひねり、水で顔を洗ったウルズがぼやく。
一発ハメると言われて始まった情事。
しかし顔に思いっきりかけてしまい、これでは続行できないと今回は中止に。
僕としても、媚薬がない中、連続四回は厳しいので……。
「今日はこれで勘弁したげるわ」
ウルズはハンカチで水滴を拭うと、口元を覆いながら告げる。
なぜか頑なに顔を隠してるように見えるが――
「ほんっと女心の分からないヤツね。隠すのはメイクが崩れたからで……」
「崩れたら何か不都合でも?」
「……だ、だって、可愛くない、じゃない」
つまり、スッピンを見られたくないと。
その女性心理まではくみ取れていなかった。僕の配慮不足である。
「でも正直、メイクあってもなくても、可愛さはそう変わらないような……」
元の素材が良いのだから、大差はなく見える。
「……可愛いって、あんた、なんか、女慣れしてきてるわね」
ウルズは嬉しそうな、でもちょっと複雑な表情で告げる。
別に事実を言っただけで、女慣れしたわけではないんだが。
「そうだ。あんた黒髪好き? その……天照卿みたいな」
「黒髪? 染めるかどうかって話か?」
「ええ。正直に言ってみなさい。ウルズ様が清楚系にイメチェンしたらどうかしら!?」
「清楚って……それは似合わなすぎるだろ」
「うんうん。そりゃ似合うわよねって、はぁ!? そこは嘘でも頷きないさいよ!」
自分が正直に言えって……。
「……ウルズは、そのままでいいと思うけど」
「ぐっ、ま、まぁ、あんたがそれで良いなら良いけどさ」
これで事にも区切りが付き、ようやく教室にも戻れる感じだが――
「――ここで、一体なにをしているのです?」
ガチャリ。いきなり入口が開けられて巨躯の姫騎士が現れる。
その正体は、学園の風紀を取り締まる七聖――
「ヴェ、ヴェヴェ、ヴェルグ・モルドレイド!?」
「む。貴君はいつぞや私が殴った生徒。その節は大変失礼しましたが……それはさておき私を呼び捨てにするのはよろしくない。せめて先輩をつけなさい」
僕がいるからか、穏やかめの口調で注意する。
「それでカゲルヤ……ここで、彼女と一体なにを?」
対して僕には、ゾッとする声音で問いかけをする。
「なにってその……ま、まず先輩は、どうしてここに?」
「貴君の様子を見に行ったら教室に不在でした。慌てて私から目をそらした不良二人を締め上げ……失礼、丁寧に尋ねたところ、この周辺にいるとすぐ教えてくれました」
サンディ、クルド、口を割ったな……!
「今一度問います。ここで何を? 我が主君カゲルヤ・ノア様――?」
ヴェルグ先輩の背後に、メラメラと炎が舞い出す。
ウルズと僕のしていたことを、たぶん女の勘とやらで察しているのだろうが――
「えっと、ウルズから……そ、相談を、受けてたんですよ!」
苦し紛れの答えに、先輩は目を細めて応じる。
「ほぉう。相談ですか」
浮気がバレて追い詰められる男って、こんな感じなんだろうか。
なんにせよ、便所なんかでバッドエンドは御免である。
「わざわざ手洗い場で密談をする。どれほど重大な相談内容だったので?」
「そ、それは……」
どうにかして誤魔化さなくていけない。
思考を高速回転させて、ようやく絞り出した言い訳は――
「じ、実はウルズから、風紀部会に入りたいと相談されまして……!」
さすがに予想外すぎたのか、ヴェルグ先輩も目を丸くする。
「そこの者が、私の部会に、入りたいと……?」
「え、ええ。ただウルズは前に先輩と一悶着ありましたから。まずは僕に相談してくれて……どうしてもバレたくないっていうのでここで……」
冷静に考えれば、なぜトイレなんだ問題は解決していない。
しかし予想外の答えに、先輩は驚きそのことばかり考える。
よし。上手く気を逸らせて――
「(ちょっと! なに勝手に決めてんのよ!)」
その間隙に、ギョッとした顔でウルズが耳打ちしてくる。
「(風紀部会に入る!? もっとマシな言い訳考えなさいよ!)」
「(これしか思いつかなかった。でもこの場で先輩に殺されるよりはマシだろ?)」
「(ぐぐぐ……それはそう、だけど……!)」
踏み切れないウルズだが、なんとか納得してもらわないと。
「ヴェルグ先輩。ついでにサンディとクルドも入りたいと言ってました」
「……ほう。他にも風紀部会に来たい生徒がいると」
一人入会ではしんどくても、仲間が一緒にいればやっていける。
ウルズを支援するつもりで、そう発言したのだが――
「(あんた鬼畜ね!?)」
「(鬼畜って、部会に入れば卒業後の進路をより良くできる。あと大講堂からの逃亡を助けられた貸しを返そうと思って。全ては三人の将来安泰を願ってで……)」
「(よく言うわ! そういうの恩を仇で返すって言うのよ!)」
ごちゃごちゃ言う僕に、ウルズは諦めたように溜息をつく。
「――よろしい。ひとまずこの場はこれで収めましょう」
耳打ちする僕たちに、ヴェルグ先輩が勢いよく面を上げる。
「ウルズ、といいましたね?」
「……え、えぇ」
「風紀部会は貴君らを歓迎します。そして我が主君たるカゲルヤの口添えで入会するのです。私も本気で鍛えてさしあげましょう――!」
不良三人娘がこれからどんな目に遭うのか。
それを想像した僕とウルズは、引きつった笑みで頷くしかなかった。