姫騎士学園の下剋上性活 ~最弱スキルで異世界のプライド高め美少女たちを堕としたら、毎晩ご奉仕に来る日々が始まった~   作:東雲(しののめ)

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第37話:図書部会

 一日の授業を全て終えると、僕は図書館に訪れた。

 

「……いつ見ても、とてつもない規模の施設だな」

 

 入口から見上げると、改めてその巨大さがよく分かる。

 

「で、天照卿に呼び出されて来たはいいものの――」

 

 周囲を警戒するが、特に待ち伏せなどはないようだ。

 

「おそらく、入会するかどうかの話をされるんだろうけど……」

 

 ウルズにも言ったが、僕は入ると決めている。

 ――問題は、入会した後に、どんな罠や企みが待っているか。

 寝る間もない激務? 嫌がらせをされる毎日?

 天照卿の狙いがハッキリしないこともあり不安はある。

 

 ――でも、やるしかない。

 ――天照卿の懐に潜り、彼女の隙や弱点を見つけるんだ。

 

 覚悟を決めて図書館に足を踏み入れる。

 まず受付の女生徒に話しかけると、僕は最上階の一室へと案内された。

 どうやらここが図書統括長の執務室のようで――

 

「――ようこそ、図書部会へ」

 

 黒髪清楚な美少女が、立ち上がって僕と目を合わせる。

 

「まずは改めてご挨拶を。図書統括長カグヤ・スメラギと申します」

 

 どうぞよろしくと雅に一礼。

 下級生まして劣等種の男に対して、丁寧すぎる態度である。

 

「……カゲルヤ・ノア、です」

 

 小さく会釈しながら挨拶を返す。

 相手の腹の内が見えない以上、こちらも最初は丁寧めに応じる。

 

「この場所まで来るの、色々と大変でしたよね?」

 

 僕が彼女の信者たちから、狙われていることを言っているのだろう。

 

「他の七聖に横取りされたくなくて。総会でつい宣言してしまいました」

「……嫉妬に狂った人たちから、朝から襲われっぱなしですよ」

「その節はご迷惑をおかけして申し訳ありません」

 

 若干恨み節を漏らすと、彼女は苦笑しながら両手を合わせる。

 

「ですが、ここに来ていただけたということは――」

 

 天照卿が上品な足取りで、僕のすぐ目の前まで近づく。

 美貌はいわずもがなで、身長は僅かに自分より低いくらいか。

 艶やかな黒髪が揺れると、春に咲く花のような香りが漂ってくる。

 

「――図書部会、入っていただけるのですか?」

 

 至近距離で見つめられドキリとするが、なんとか平静を装って答える。

 

「…………はい」

「ほんとに!? 嬉しいです!」

 

 彼女は途端に顔をほころばせ、いきなり手を握ってきた。

 

「フルネームで呼ぶんはよそよそしいですし、カゲルヤくんでいいですか?」

 

 いまだ警戒気味の僕に対して、相手はすんなりと懐に入ってくる。

 男によっては勘違いしてしまいそうな距離の詰め方だ。

 

「呼ばれ方は、何でも構わないですけど……」

「ならわたしのこともカグヤと呼んでください」

「…………じゃあ、カグヤ先輩で」

「うふふ。呼び捨てでいいのに」

 

 彼女は楽しそうに笑って、そんな冗談まで言う。

 ……いくら優等生とはいえ、もう少し敵対的に来ると思ってた。

 正直、ちょっと毒気を抜かれた気分だ。

 油断しないよう気を引き締めつつ、入会の書類も記入して――

 

「――それでは施設の紹介しがてら、図書部会の説明もしましょう」

 

 先輩が先導してくれて、図書館を案内されることに。

 

「今いる本館の構造は、地上四階、地下六階建てでして――」

 

 ちなみに本館以外にも、東館やら西館などもあるそう。

 まさに超名門学園にふさわしい巨大図書館である。

 

「――獄炎卿の時は、申し訳ないことをしたと思っています」

 

 一通り施設のことを説明すると、唐突にそう切り出してくる。

 

「獄炎卿の時……?」

「あなたを図書館に立入禁止にしたでしょう?」

「……ああ。ヴェルグ先輩と決闘前のやつですか」

 

 獄炎卿攻略のため、学園規則や戦闘記録の本を探していた。

 しかし肝心の図書館は、なぜか立入禁止。

 僕は図書搬入の依頼(クエスト)にかこつけ、本をいくつか無断拝借したのだった。

 既に返却はしたが……この感じだとバレてなさそうだな。

 

「カゲルヤくんのことに、わたしの周りの子を巻き込みたくなくて」

 

 絶対女王に、誰より目を付けられている僕だ。

 そんな自分が図書館で問題を起こせば、図書部会も責任を問われる。

 彼女は己の部会員らを守るため、立入禁止令を出したという。

 

「つまりは保身です。カゲルヤくんが嫌いというわけではありませんよ?」

「……背景は分かりましたけど、そんな僕を部会に入れてよかったんですか?」

「少し事態が変わって――あなたも察しているでしょう?」

「女王からカゲルヤ・ノアを倒すことを命じられた、と」

「ご名答です」

 

 結局は、僕が彼女を攻略するために近づきたかったように。

 ――彼女もまた、僕を調べるために傍に置きたかった、ってわけか?

 だとすれば指名してきたのも、親切にしてくれるのも頷けるが……。

 

「――――ここが大会議室。他の部会員もたくさんいますよ」

 扉を開けると、確かにそこには多くの女生徒がいた。

 慌ただしく働いているが、図書統括長の姿を見るや――

 

「「「「「カグヤ様!」」」」」

 

 生徒たちが手を止めて、一斉に振り返って挨拶をする。

 

「ごきげんよう。仕事中にお邪魔してごめんなさい」

 

 彼女が手を振ると、全員が瞬く間に色めき立つ。

 

「今回は新しいメンバーを紹介しよう思います」

 

 挨拶してと振られるので、簡潔に名前を名乗るが。

 

「カゲルヤ・ノア、です」

 

 無言の殺気を向けられて、乾いた愛想笑いをするしかなかった。

 部会員たちは業務に戻るが、何をそんなに忙しそうにしているのか。

 

「総会でも説明ありましたが、今は志願者の選考期間なんです」

「まさか、机に山積みになってるこの書類って……」

「図書部会に入りたい生徒の志願書。今日提出された分のものですね」

 

 女王が一週間猶予を与えたのも納得。これは一朝一夕で終わる仕事ではな――

 

「……おっと!」

 

 その時、僕はすれ違った部会員に肩をぶつけられる。

 たぶんわざとだが、抗議するほど厄介な嫌がらせでもないか。

 

「――待ちなさい」

 

 僕が黙ってやりすごそうとすると、カグヤ先輩がすぐに声を発した。

 しかもちょっとビックリするくらい威厳ある声でだ。

 会議室にいた他の生徒たちも、手を止めてこちらを注目する。

 

「肩、カゲルヤくんにぶつかりましたよ」

「あ、いや、カグヤ様、わたしは……」

「偶然だったら一言謝る。しかし意図した嫌がらせなら――」

「ち、ちち、違います! そんなことはしません!」

 

 その女生徒はすぐに僕に頭を下げてきた。

 カグヤ先輩はそれを見て、安心したように頷く。

 

「偶然なら良かった。ただ念のために言いますが……」

 

 そしてカグヤ先輩は、その女生徒、というより周りに対して言う。

 

「図書部会のモットーは円満和楽。同じ部会の仲間になった以上、きちんと礼節はあるべきです――ギスギスした空気で活動するの、皆さんも嫌でしょう?」

 

 統括長らしく、凜とした口調で告げる。

 

「その上で、どうしても納得いかないことがあれば、その時は勝負で決めればいい」

 

 重く消沈する人々に、先輩は一転して優しく諭す。

 

「ここにいる子はわたしが選んだ子。堂々と学園生活送ってほしいです」

 

 僕にぶつかった生徒が、選ばれたと言われ唇を噛む。

 

「さ、お小言は終わり。やることたくさんです。皆で気張っていきましょう!」

「「「「「……はいっ!」」」」」

 

 カグヤ先輩が満開笑顔になると、やはり場の空気が変わる。

 生徒たちの落ち込みが消え、むしろやる気になって仕事に戻っていくのだった。

 

 

 

「――ごめんなさい。初日から嫌な思いさせてしまって」

 

 会議室から統括長室に戻ると、カグヤ先輩がすぐに謝罪してくる。

 

「あの子のことは責めないでください。私の監督不行き届きです」

 

 しかも全部自分が悪いと泥まで被る。

 器が大きいというか、寛大すぎるというか……。

 さすが超人気者とされるだけある。

 

「気にしてないです。男に厳しく当たるのは学園では通常運転かと」

「それはそうですが、せっかくなら皆と仲良くなりたいでしょう?」

「……いや特には……」

 

 僕はこの人と違って根暗だ。

 誰とでも親しくなれるような器用な人間ではない。

 

「あ、そうです! ここは皆で親睦会でも――」

「……えぇっと、結構です」

 

 天照卿攻略のために部会には入った。

 情報収集はしたいが、他の部会員を必要以上に煽りたくない。

 僕が客賓のパーティーなんて最悪の空気だろう。

 今そんなことしても、情報を得るどころか、余計敵視されるのがオチだ。

 

「……お、大人数は苦手、ということでしょうか? これは失礼しました」

 

 カグヤ先輩は一瞬目元をひくつかせる。

 しかしすぐに元の笑顔に切り替え、明るく口を開く。

 

「でしたらまず、わたしと一対一でお茶でも――」

「あー……それも大丈夫です」

「――――――は?」

 

 まさか断られると思っていなかったのか。

 饒舌だった語りが止まって、しばし沈黙が流れる。

 

「わたしが、誘っているのです……けれ、ど?」

「すいません。とりあえず今は遠慮しときます」

「…………………………」 

 

 カグヤ先輩が絶句。笑顔が完全に固まった。

 ま、他の生徒なら飛びつくように参加するかもな。

 

 ――でも僕は、迷宮(ダンジヨン)で散々経験した。

 ――モンスターが『誘い』をしてくる時は、裏に必ず企みがある。

 

 今回のスカウトの件もそう。裏に女王の意向があった。

 

 ――忙しい七聖が、わざわざ男とお茶会だって?

 ――どうして僕と関係を深めたい? 本当は別の目的があるのでは?

 

 図書部会という懐には、無事に潜り込めたんだ。

 日に何度も誘いに乗るのは軽率だし、一旦は様子見をしたい。

 

「……こなたが男に振られるなんてなぁ……」

「こなた?」

「あ、いえ、わたし、わたしの誘いが性急すぎたのが悪いのです! 断られてもまったく傷ついてませんからご安心を! 時間をかけて仲良くなっていきましょう!」

 

 ここぞとばかりに、今日一番のキラキラ笑顔でウインク。

 ハートマークが飛んだように見えたが幻覚だろう。

 普通の男なら、コロッと堕ちそうな場面だが……。

 

「……まぁ、ほどほどに、よろしくお願いします」

 

 やんわりと受け流す感じで返答。

 どんなに友好的にされようと、攻略者として一定距離感はキープする。

 

「……こなた渾身のウインクもスルーて……なんて手強い……せやけどいずれは……」

「ん? カグヤ先輩? なにか言いました」

「なんでもありません。カゲルヤくんは面白い方だなぁと……フフフ……」

 

 何か誤魔化された感じがしたが、先輩は自然に話を続ける。

 

「では――明日から本格的にお仕事してもらいますが、分からないことがあったら遠慮なく周りに訊いてくださいね。どうしても嫌なことがあればわたしに相談を」

「相談したらどうにかなるんですか?」

「全部なんとかします」

 

 彼女は、僕に何かあれば本気で助けると即答する。

 

「大見得切ってスカウトした以上、責任は果たします」

「カグヤ先輩……」

「ふふ。これでも七聖ですから。どーんと頼ってくださいね」

 

 絵に描いたような完璧な優等生、カグヤ・スメラギ。

 その隙や弱点を見つけ、攻略するために僕は図書部会に入った。

 でも、その屈託ない笑顔を見て、僕はつい思ってしまったのだ。

 

 彼女に――欠点は存在しないのかもしれない、と。

 

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