カービィたちがポコペンへと旅行にやってくるお話。
※単発ネタ
なんかふと書きたくなっちゃいました。
───底なしの漆黒と静寂の中で、幾千万もの恒星の光が瞬く天の川銀河。その空間を悠々と泳ぐ、空の色をした宇宙船があった。
「……にしても、珍しいこともあるもんだなあ、マホロア。まさかおまえがオレさまたちを旅行に誘ってくれるとは」
「ま、タマにはネ。テーマパークの経営モ落ち着いてキタシ、せっかくローアもあるっテノニ、思エバキミたちをマトモな場所に連れてってアゲタことも今までなかったしネェ」
その宇宙船に乗り込んでいる、六人の内一人の、恰幅の良いペンギンのような姿をした生物───プププランドの自称偉大なる大王、デデデ大王は、尊大な一人称とは裏腹にどこか意外そうに、そして未知の惑星に対する興味を滲ませながら言った。
同じく魔法使いのような風貌をした、耳の生えた生物───魔術師マホロアは、自身の持ち船であるこの『天駆ける船ローア』のメインモニターに映る太陽系の星々を眺めながら、大王に向けて口を開いた。
「ねーねーマホロア!確か今向かってる星って『
ピンクの球体にそのまま手足が生えたような生物───若き旅人、星のカービィは、瞳を輝かせながらマホロアに尋ねた。
マホロアは、カービィの方をちらっと見遣ると、軽く説明を始めた。
「さすがのキミでも、この星の名前を知ってはいても来たことはなかったみたいダネ。この星…
───ナント、今までどこの侵略者にも侵略されていなかったみたいなんダ」
「……ありえるのか?そのようなことが。私は今更お前を疑うつもりなど毛頭ないが、今の話は流石に眉唾物だ。豊かな自然環境を持っていてかつ碌な武装もできぬ惑星など、それこそ
マホロアの説明に懐疑的な声をあげたのは、仮面を被った剣士、メタナイトであった。
メタナイトはその次の瞬間、何かに気付いたように、どこか期待するような声色で小さく声をあげた。
「………いや、もしかするとあの惑星には、文明などに頼ることなく侵略者を撃退できるほどの手練れがいるのかもしれんな。気を引き締めなくては…!」
「引き締めなくていいですって、メタナイト様。ボクら別に侵略者じゃないし、第一そういうの止める側だし」
「あはは…。メタナイトも相変わらずだね」
青いバンダナを巻いた、サルを思わせる風貌の生物───バンダナワドルディが、至極冷静にメタナイトを窘めた。
青いネズミのような生物───侵略種の博愛の心、エフィリンも、苦笑いを浮かべながらワドルディの言葉に相槌を打った。
マホロアはメタナイトの言葉に、少し考える素振りを見せながら言った。
「……あの星が侵略サレていない理由の大部分は他のトコロにあるんダケド、メタナイトの
マホロアがそう言いかけたその時。ローアから攻撃察知のアラートが鳴り響いた。
「───マズイ!ダレかがポコペンの周りに自動識別型兵器を仕掛けていたミタイだ!損傷が激しくなるマエにバリアを張りつつ、緊急ワープモードに切り替えるヨォ!ポコペンのドコかに、ランダムで不時着するンダ!」
「な、なにぃ!?」
「わ!わ!たいへんたいへん!どうしよお!」
「またか!?……おのれ、どうしてこう私の乗る船はいつもいつも…!」
「!ねえ、エフィリン。キミのチカラでさ…」
「…なるほど、カービィ!まかせてっ!」
マホロアが素早くローアの制御盤を操作し、それに合わせるようにエフィリンの手先が光り出すと、ローアは追いすがる兵器の攻撃を軽くいなすように───一瞬にして、兵器の攻撃範囲から消失するのであった。
☆ ☆ ☆
「キンヤ~~~、な、なんでありますか、アリは……」
奥東京市の裏山にて。いつものように侵略会議で
───と、その時。ケロロの軍帽から、強い焦りの滲んだ声がけたたましく鳴り響いた。
『オイ、隊長!聞こえるか!その船は危ねェ、絶対に触れずとっとと基地に
「ク、クルルでありますか!随分焦っている様子でありますが……あの船、そんなにヤバイやつなの?」
優秀過ぎるほどに優秀な部下であり気の置けない悪友である小隊員のクルル曹長の、滅多なことでは聞くことがない本気の忠告を聞いて、ケロロはたじろいだ。
クルルは声を強張らせながら、続けて言った。
『
「そ、そんなものがポコペンにのさばっていたら、もはや侵略どころではないではないか。…それに、冬樹殿や夏美殿の身も危ない。乗組員の方に交渉して、即刻お帰り願うであります」
『オイッ!!馬鹿な真似はよせッ隊長!!』
クルルが、無謀にもローアの扉の方へと近づいていき乗組員に地球からの退去を要請しようとする隊長を止めているその時───
『ヤアヤア、船内から失礼するヨォ。ボクの名前はマホロア。この船───ローアの主人で、トモダチダヨ』
ケロロの軍帽に内蔵されている通信機とクルルズラボのモニターが一瞬にしてジャックされ、軽快さとどこか底の知れなさを感じさせる少年のような声が響いた。
マホロア、と名乗ったその知的生命体の言葉は続く。
『キミたち、ズイブンとこの船を警戒してルみたいだけど、このコはそんなに怖いコじゃないヨ。昔ボクがハルカンドラでランディアってドラゴンの棲む山からトウクツしたんだケド、今ではボクのこと、ホントウの持ち主として認めてくれてるンダ!』
マホロアは続けて、申し訳なさそうにしながら口を開いた。
『…チョットした旅行のタメにポコペンに向かってたトコロ、何者かの造った兵器の攻撃を受けテ、不時着しちゃったンダ。ボクの連れのエフィリンってコが、チカラを使ってどうにか不時着先をヒトのいない山奥にしてくれたんダケド……。ポコペンのヒトたちのメーワクになるナラ、ボクたちはもう帰るヨ』
マホロアはふと、少し不思議そうに呟いた。
『……そーいやキミたち、多分ケロン人ダヨネェ。
…侵略しに来たクセにポコペンを守っているすっごい強いケロン軍人がいるって話は知ってイタケド、ローアの前でツッタッテるケロロって緑のヤツは、もうズイブン昔になーんかどっかでウワサを聞いたことがあるような気がスルんダヨナァ…』
マホロアのその呟きに構うことなく───いや、何やら耳にすら入っていないような様子で、酷く焦燥の滲んだ表情を浮かべながら、ケロロはクルルに向けて囁きかけた。
「ちょ、ちょっとーーーッ!!この方々が被害に遭ったっつー兵器、我輩すっげぇ身に覚えがあるんスけどーーッ!?」
『ああ、前に俺らのセキュリティ強化の為に造った兵器群だな…。マズイことになったぜ、隊長。オレらがここで対応を誤っちまえば───最悪ここいら一帯の星々はおろか、俺らの母星であるケロン星もボンだ』
クルルもいつになく心底からの恐怖と焦燥を滲ませながら、そう呟いた───その時だった。
『───あの、キミたちサァ。会話はボクに……
「『…!?』」
マホロアの、一厘の怒りと、九割九分九厘の呆れが滲んだ声が響いたのは。
マホロアは続けて、他の船の乗組員……彼の連れに声をかけると、ケロロの軍帽に内蔵されている通信機と、クルルズラボのモニターにかけていたジャックを解除した。
『……ハァ。ミンナ、外に出テ。ケロン星のヒトたちにご挨拶ダヨ』
「やっと外~?ぼくもうずっとポコペンの景色がみたくてうずうずしてたんだよお」
「しょうがないよカービィ。まずは外の様子を知ってからにしなくちゃ」
「特にここポコペンにおいては、条例や異星からの来訪者に課せられるルールが特段厳しいと聞く。慎重にいかねばなるまい」
「ま、言うて
「ケロロさん、フユキに、ナツミ…って人たちのこと心配して、その人たちの為にもボクたちに帰ってもらうって言ってたな。…たぶんこの2人って、ポコペン人だよね。さっきマホロアも『侵略者なのにポコペンを守っているケロン軍人がいる』って言っていたし。…このケロン軍人っていうのは、絶対にケロロさんたちのことだよ。
……もしかすると、この星には
通信機の向こうのマホロアがそう言うと、ケロロの耳には、分厚い船体の向こうから五人ほどの声が届いた。
───刹那。
(……え?ちょい待ち。今あの人たちの内の一人、『カービィ』って言わなかった?)
(…オイオイ、もしもあの船の中に、ホンモノの『星のカービィ』が居るってンなら───
ケロロとクルルはその四文字を聞いた途端、下手すると先ほど以上の───いや、かれこれ数千から一万年以上にもなろう長い長い人生の中でも、一番とさえ言えるような量の冷や汗を垂れ流すのだった。
「───へぇ~、ここがポコペンかあ。……あっ!ケロロさん!はじめまして、ぼくカービィ!」
酷く狼狽するケロロとクルルの内心とは裏腹に、ローアの扉は、いっそ残酷なまでにあっさりと開かれた。
☆ ☆ ☆
「おじさま、皆さま、本日も大変お疲れさまでしたっ。
…ふぅーっ。てゆーか、清掃完了?」
所変わって、ここは日向家地下。つい先ほどいつものごとく侵略作戦会議後の会議室をケロロ小隊への労いの気持ちを込めながら清掃を開始し、今しがた清掃を完了した、地球人のコギャルの姿に擬態しているケロロ小隊お抱えのアンゴル族の少女───アンゴル・モアは、汗を拭い掃除用具を片付けようとしたその直後、突如として脳内に直接声が響くのを感じた。
『モアよ。お前に知らせだ。───ケロロ軍曹殿が、
どうやらカービィ殿の連れとケロロ殿との間でほんの些細なもめ事があったようだから、一応知らせておこうと思ってな』
「……っ!?お父様っ!それは本当ですか!?場所は!?」
モアに
ゴアは続けて、逸るモアを窘めるように口を開いた。
『…奥東京市の裏山。すぐそこだ。なに、そう身構えずともあの御仁は決してケロロ軍曹殿に手荒な真似はしないであろう』
「……そう、ですか」
モアはゴアのその言葉に安心したように呟くと……それでもやはり心配だったようで、ルシファースピアに乗って、すぐさま基地を飛び出してしまった。
『モアのヤツ、結局たまらず飛び出しよったか…。我はまた、娘にいらぬお節介を…』
『───まあ、これはひとり言だが…。お節介ついでにもう少しだけ解説してやろう』
『星のカービィ───カービィ殿は、星の断罪者たる我らアンゴル族が、唯一裁くことのできぬ"星"…』
『有り体に言えば、我らアンゴル族よりも色濃く、大いなる宇宙意志をその身に背負った存在…』
『そしてあの御仁の本質は、須らくを喰い尽くし、この宇宙全土を総べ、そして文字通り"全て"になり得る可能性を秘めた"
『───おっと、これ以上は失言になってしまうわい』
『何せ、我らアンゴル族でさえも決して敵わぬ存在であるからな。さぞや不思議であろう』
『……しかし、最も不思議なことと言えば、なぜあのような御仁が、"旅人"という体裁まで使ってたった一つの惑星にいつまでも居続けているのか、というコトだが…』
『───いや、この言葉はやはり撤回させていただこう』
『結局のところ、あの御仁───カービィ殿も、
☆ ☆ ☆
「ここっこっこっこの度はわわわたっ
再び、奥東京市の裏山。ガチガチに痙攣する顎をどうにか動かしながら、地面に顔面をぴったりとくっつけてカービィたちに頭を下げているケロロが、そこにはいた。カービィたちの軽い自己紹介を聞いて事の顛末を知って以降、ずっとこのような調子である。
ケロロのそのいっそ清々しいまでの謝意が感じられた謝罪は、ハナから怒ってすらいなかったカービィと大王とエフィリンはもちろんのこと、相手の出方を伺う姿勢を見せたメタナイトとワドルディ、そしてマホロアの毒気さえも、ものの見事に抜き去ってしまった。
「ぼくたちは全然だいじょーぶだよ、ケロロさん!」
「そうそう、そんなに気に病むなって。こんなこと、オレさまたちからすれば日常茶飯事もいいところだぜ。今更こんなんで怒ってたってキリねえよ。なあ?」
「全くです。ですのでケロロさん、どうかそのお頭をお上げになさってください」
「あれらは貴殿らが自らの身を守る為に設置した兵器だったのだろう?危機感があって大変良いではないか。それに、必要以上の悪意や害意のない防衛行為を、どうして裁くことができよう」
「ケロロさん、真面目なヒトなんだねっ!尊敬しちゃうなあ~っ」
「……しょーがナイネ。今回のコトは水に流しておいてアゲルヨ。…ボクだって、キミらのハラを探る為とはいえ、キミらの大切な機材を勝手に乗っ取っちゃったしネ」
「……か、カービィ殿……!皆様方……!!!」
(……まったく。相変わらずどんなに
ケロロとカービィたちとの間に和やかな空気が流れだし、クルルがモニターの先で心底からの安堵の息を漏らした、その時だった。
「───おじさまーーーーーッ!!!!!」
───擬態を解いた状態でルシファースピアに乗ったモアが、全速力でこちらに飛来してきた。
ケロロは少し面食らったように、モアに向けて声をかけた。
「……も、モア殿…?どうしてここに…」
「お父様から、おじさまがかの星のカービィ様のお連れの方ともめ事になっていると聞き、たまらず飛び出してきましたっ…!ご無事で何よりですっ。おじさま…!」
「そ、そうだったんでありますか…。ゴア殿の親バカめ、愛娘にいらぬ心配かけさせてどうするんでありますか、まったく…」
ケロロはぶつくさと呟いた後、改めてモアに向き直り、柔らかな笑顔を浮かべながら言った。
「…でも、たまらず飛び出してしまうほどに心配してくれたことは、我輩とても嬉しいでありますよ。ありがとネ、モア殿」
「……はいっ!おじさまっ!」
モアの背中を優しく叩いて宥めていたケロロは、後ろでポカンとした表情を浮かべている六人に気付くと、モアに挨拶を促した。
「た、大変失礼いたしました。私はアンゴル・モアと申します。星の断罪者『アンゴル族』の娘で、おじさまには小さい頃から大変良くしていただいていましたっ…!」
モアが自己紹介を終えると、メタナイトとマホロアの二人は小さく囁き合った。
「あのご令嬢はアンゴル族の娘と仰っていたが……そのような特殊な種族まで、このポコペンには点在しているのか」
「ウン、そうみたいだネ。
……あのケロロってヤツ、アンゴル族の娘相手に良いオジサンみたいな振る舞い方してるケド、ケロン人の分際であの惑星をカンタンにハカイしちゃうアンゴル族の娘の世話役をするナンて、振る舞いによらずソウトウ肝がスワッテルネェ」
「彼も立派な軍人、ということなのだろう。ケロン星の軍は、特に倫理観や労働環境といった側面が非常に過酷なものであると聞くからな」
「……カービィやデデデ大王から話を聞くカギリ、昔のキミの倫理観もタイガイだと思うケドネ」
「…フッ。全宇宙を支配しようとしていたお前がそれを言うのか?」
二人は内緒話を終えると、既にモアに向けた自己紹介を終えていた四人に続いた。
☆ ☆ ☆
あの後ケロロは、小隊全員を引き連れ、改めてカービィたちにお礼と謝罪の挨拶に向かった。恐怖とは別途、せっかくの彼らのポコペン旅行に水を差してしまったことに対する純粋な罪悪感を感じているケロロは必死に隊員たちに頭を下げさせようとし、顛末を知ったクルル以外の小隊員は自分たちの判断でかの『星のカービィ』とその連れの友人に迷惑をかけてしまった、という事実に恐怖と罪悪感のあまりケロロと同じような姿勢で必死に謝罪を始めた。既に自分たちが許されていることを知っているクルルも、ここで彼らの機嫌を損ねてしまうことのリスクを鑑みると、すぐに頭を下げ始めた。カービィたちは相も変わらず腰を低くするケロロとその小隊員たちを宥めたが、デデデ大王がふと、ギロロの持つ武器の手入れの丁寧さを褒めたことを皮切りに、彼らを取り巻く空気が一変した。
それからというもの、彼らの交流は毎日続いた。
メタナイトがドロロの持つ実力を見抜いて、彼に対して強い興味を抱きつつちょっとした手合わせをお願いしたり。
クルルが自分のシステムを一瞬にして乗っ取ったマホロアに対して、恐怖とライバル心と睦実やケロロに向けるものと同じくらいの強い興味を抱いたり。
バンダナワドルディの可愛さを自覚していながらもそれに白を切りつつスカした冷静キャラを演じる生き方に腹を立てたタママが、彼に喧嘩を吹っ掛けた挙句普通に完敗し彼の持つ大王への忠誠心やカービィへの友情、そして彼のしてきた今までの血の滲むような努力を知り涙したり。
ケロロが自分のおやつのスターフルーツを、偶々お腹を空かせていたカービィに分け与えたり。
エフィリンがケロロ小隊に、かつて自分が侵略種として生きておりとある女の子との共存の世界が最期まで敵わなかったことへの後悔を打ち明け、全員に強く励まされたり。
───そうしていくうちにカービィたちとケロロ小隊は、すっかり仲を深めていった。まるで、彼らが初めて運命の地球人と出逢った時のように。
「───で、それが一体どうして、ウチが更に宇宙人の溜まり場にならなきゃいけない理由になったワケ?」
「いひゃいれありまふはふみろの、ほほおひっはふのはやへへほひいへはひはふ」
数日ほど時間は飛んで、ここは日向家。
カービィたちの地球観光が終わるまでの間、彼らに宿を貸してほしいと日向家に懇願したケロロは、案の定日向家の長女───日向夏美に却下され、頬を伸ばされていた。
夏美を見かねた日向家の母親にしてただ一人の大黒柱───日向秋が、口を開いた。
「まあまあ、いいじゃない夏美。マホロアさんの船も、ケロちゃんたちの基地に停めておくって話だし」
「そういう問題じゃないでしょ、ママ!私が言ってる主な問題は食費よ、食費!!初めてこの人たちがウチに来た日のことはママだって覚えてるでしょ!?カービィさんとデデデさんはあれでもかなり抑えてる方って話だし、他の四人だってみんなそこそこ食べるしっ!!
家族以外でうちの食卓を囲むのはもうボケガエルとギロロくらいで十分なのよおっ!!」
夏美のその言葉を聞いたギロロと───カービィたちに宿を貸すよう夏美に懇願していた筈の当のケロロも、一瞬だけ本気でカービィたちを追い出そうかと思案したが、すぐに正気に戻った。
ふと何かを思い至った冬樹が、ケロロに向けて口を開いた。
「…でも軍曹。カービィさんって、いろんな星の侵略を止めたヒーローなんでしょ?他のみんなも、そのカービィさんの冒険によく付いて行ってるって話だし…。
軍曹たちの侵略だって、止められちゃうんじゃないの?」
「ゲロゲロゲロ。冬樹殿、そのご心配は無用であります!彼らとてこの宇宙、延いてはこのポコペンにおける侵略者のルールは把握している…。
つまり、公平な目線から、侵略のセーフラインとアウトラインを判定してくれつつ、本当に危ない存在がポコペンにやってきた際は共に守ってくれる、この上なく頼もしい存在ってぇワケなのであります!」
ケロロがそう言うと、夏美は少しだけ気を惹かれたように、それでもどこか納得がいかなさそうに逡巡を巡らせた。
「…そう言われるとまあ、悪くない気も……っていやいや!ボケガエルたちの侵略を必ず止めてくれる訳じゃないなら、どっちにしろ私らへのメリットは薄いじゃないのよっ!
───それに危ない存在から守ってくれるって言ったって、そんなのは別にギロロやボケガエルたちだけで十分だし…」
ギロロが先程武器の改造のコツを教えてもらうことと引き換えに分け与えたほくほくの焼き芋を縁側で暢気に頬張るデデデ大王に向けて「…悪く思うなよ」と呟きながらグレネードランチャーを向ける最中、ふとマホロアが、夏美に向けて口を開いた。
「…ポコペンのルールに疎いボクらからしても、ケロロ小隊やキミたちの助けはゼヒ借りたいトコロナンダヨネ。
……あ、ソウソウ。話はカワルケド、ボク実はテーマパークの経営をしていてネ。こんなコトもあろうカト、パークでモウカッタ分のおカネのほんの一部を、ポコペン通貨に換金してローアの金庫に積んでおいたンダ」
マホロアはそう言うと、ドーナツ状の円形に六つの三角形の付いた魔法陣のような淡いピンク色の光を掌に浮かび上がらせ、そこから───
「……な、なによこの大金は!?!?」
───実に1000万円分の日本円が敷き詰められている、歯車の意匠が施されたアタッシュケースを取り出した。近くで話を聞いていた冬樹と秋も、驚きのあまりすっかり目を見開いている。
マホロアはアタッシュケースの中にあるお金を夏美たちに見せながら、何でもないことのように言った。
「イチオウ地球上のドコに飛ばされテモ問題がないヨウニ、そしてゼンブの国を同じ分だけ楽しめるヨウニ、この星にあるスベテの通貨を等価分用意していたんだケド…カンゼンな無用の長物になっちゃったネ。アレだったら後のおカネもゼンブ日本円に変換して、キミたちにアゲルヨォ」
日向夏美───および日向家は、マホロアのその言葉に絶句を禁じ得なかった。宇宙人にも金持ちにも天才的な頭脳の持ち主にも慣れているつもりだったが、流石にやっていることがあまりにもムチャクチャだ。地球上には一体どれだけの通貨が存在しているのだろうか。そしてその分×日本円にして1000万円分のお金を収入のほんの一部から捻出できるとは、コイツのテーマパークはどんだけ儲かってんのだろうか。
マホロアは続けて、8枚ほどのチケットを取り出しながら言った。
「…そして、ハイ。おまけと言っちゃあナンダケド、ボクのテーマパークのチケットダヨ。キミたち家族三人の分と、ケロロ小隊五人の分ネ。他にも招きたいトモダチがいるならいつでも言ってくれればイイシ…。
…イラナカッタラ、適当に捨ててもらって構わな「許可します」……エ?」
「聞こえなかったの?『許可する』って言ったのよ、アンタらの滞在を。…てなワケでハイ。アンタのそのチケットちょうだい」
「ア、ウ、ウン…」
夏美は何でもないことのようにそう言うと、マホロアの手から八枚のチケットを半ば奪い取るようにしながら受け取り───未だにポカンとしている母親に、知的好奇心と天秤にかけたプライドを犠牲にマホロアから教わったハルカンドラ式のプログラム言語をいつになく必死の形相で試行錯誤しながらもどうにか解読しようとしているクルルに、バンダナワドルディと白兵戦方式で手合わせをしてすっかり負かされているタママに、メタナイトに鬼式と
☆ ☆ ☆
その日の夜遅く。星空がよく見える、日向家の縁側にて。カービィとケロロと冬樹の三人は、足をぶらぶらさせながら、ぼーっと星空を眺め───
「───ところで、カービィ殿。貴殿は数多の宇宙で伝説を築き上げた、伝説のヒーローそのもののような存在。しかもかのアンゴル族でさえも手の届かないほどの超高等存在ときたものでありますが、なにゆえポップスターに定住することを決めたのでありますか?」
ふと、ケロロがその口をカービィに向けて開いた。
カービィは少しだけキョトンとすると、少し間を開けてから大きな笑い声と共に、ケロロに向けて返事を返した。
「……あははっ!ははっ!はははははっ!まさかよりにもよってキミにそんなこと聞かれるだなんて思いもしなかったよっ!
…ねえ、伝説のケロン軍人『ケロロ軍曹』さん?」
カービィがいたずらっぽくそう言うと、冬樹は不思議そうな表情に、そして当のケロロは、ギョッとしたような表情になった。
「ゲロ……なぜアンタがそれを…」
「マホロアから聞いたんだよ。宇宙のあらゆる賢人や偉人の記録がリアルタイムで保存されるっていうローアの宇宙歴史的人物記録保管データベースに、キミの名前が載ってたみたい。
……あと、マホロアが全宇宙の支配者になる野望に燃えていた頃、ちょうどキミが凄腕の侵略者として、宇宙のあっちこっちで話題になっていたんだってさ。データベースを見たときにそれを思い出した、って言ってたよ」
「なな、なんですとォ!?」
(…未遂とはいえ実際に宇宙を支配しかけた人の耳にもそのウワサが入っていたり、古代の超文明で造られた歴史記録庫にさえ記録されていたりするってことは、軍曹の伝説ってやっぱり全部本物なんだなあ。───やっぱすごいや、軍曹は)
カービィのその言葉を聞いたケロロは驚愕し、冬樹は、改めてケロロが到底自分などの手は本来届くはずもないような存在であることを思い知らされ、ケロロに対して大きな尊敬の念を覚えるとともに、少しだけ落ち込んだ。
ケロロはそんな冬樹の手をそっと握りしめると、カービィに向かって口を開いた。
「…って、違う違う。今はアンタの話だよ、カービィ殿」
ケロロにそう言われたカービィは、夜空の藍よりも蒼いその瞳を煌めかせながら、ゆっくり、そしてはっきりと呟いた。
「───おんなじさ。キミが
「……おんなじ?まさか、アンタともあろうお方が、あの特殊な条約で守られているポップスターを狙って───」
「違う違う違う、違うってば。……ごめんね。この言い方じゃややこしかったか。
……ぼくはね、ケロロ。なんとなく輝きに惹かれたのと、困っている人がいた気がして初めてポップスターのプププランドに足を踏み入れたあの日から、ずっとずっと───ポップスターのことが、
「……ッ!」
カービィがそう言うと、ケロロははっとその息を呑んだ。
カービィは続けて、ケロロと冬樹の二人を見遣りながら、その口を開いた。
「…ぼくにとってのポップスターは、いわばキミにとっての地球。
そして、ぼくにとってのプププランドは、キミにとっての日本であり、日向家だよ」
カービィのその言葉を受けたケロロは、納得のいったようにゲロゲロ笑いながら、その口を開いた。
「───なるほどケロほど!ようやっと腑に落ちたであります!
我輩もこのポコペンにやってきて、冬樹殿が与えてくれた優しさを受けて、夏美殿が作ってくれた料理を食べて、ガンプラを作って、時には隊員たちと共に苦悩しながらも侵略作戦を計画して、でも案の定夏美殿にぶっ壊されて、冬樹殿と気晴らしに冒険に出かけて、時にはみんなで危機に立ち向かって…。
全部全部、今の我輩がこの星をいつまでも守り続けていたい理由に繋がっているであります。
……カービィ殿と違って我輩はそこまでの隣人愛を持たない故、真に守りたい存在はいつだって家族や親友などの身内ばかりでありますがな!あっはっは!」
ケロロのその言葉を聞いたカービィは、満足げに笑いながら、ケロロに向けて口を開いた。ケロロも、そのカービィの発した言葉に、満面の笑みで同調する。
「似た者同士かもね、ぼくたち」
「で、ありますな」
そして、カービィはふと、ケロロのお腹に貼られている、星型のシールのようなナニカをじっと見遣ると───
(───ねえ、ケロロ。キミの背負おうとしているものは、重く、冷たく、昏いものばっかりだ。キミは自分の本当に大切なものを、文字通り
───大切なものを守りながら生きる上で、その大切なものに寄りかかっちゃいけないって決まりも、大切なものの為に
冬樹の顔をちらりと見遣ってから、どこまでも悲しげに、それでいて何かを強く訴えかけるような表情で。
(だから───『キミ』が本当の意味で
気の置けない幼馴染だっていうギロロやドロロにでも。
キミを慕うタママやモアちゃんにでも。
なんとなくウマが合うクルルにでも。
なんだかんだ言って気にかけてくれる夏美ちゃんにでも。
なんだったらぼくにでも。
そして───キミに握られた手を今こうして強く握り返している、冬樹くんにでも。
誰でもいいから、頼って。
ぼくは、きみが壊れるところだけは、絶対に見たくないから)
星のカービィはヒーローである。トモダチと平和とゴハンとおひるねを何よりも愛し、何回も世界を救い、その過程で───壊れてしまった人々を、何度も見てきた。なんだったら、そういった存在を、自らの手で止めてきた。
星のカービィはおひとよしである。見ず知らずの相手を救い、大抵の悪事は一発殴って赦し、かつて自分を騙してきた相手とさえトモダチになり、そしてトモダチを───何においても第一に、大切にしてきた。
そして、そんな彼がケロロ軍曹とトモダチになり、彼の背負っている『業』を
───
余談:ウロタクサン式エフィリンは、エフィリスとしての業もしっかりと背負いながら生きている