暇だから……と言って、生きたメキシコを検索しようとしないでください。
生きたメキシコといえば、見たことある人も少ないはずです。
そう、私はそれを見てアイデアが頭の中にふわっと現れたんだよな。
曇らせに適した映像だからね。思いつきは即行動!ということで描きました。
深夜テンションで書いたのでキャラクターが喋らなさそうな事を喋っている場面もありますが、許してヒヤシンス!

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セナ「……という怪文書(おはなし)なのですが。いかがでしょうか、先生」

先生「うーん……色んな意味で怖いね、セナ。なんだか、色々見透かされてるような気分だよ……」

セナ「??? 理解に苦しみますが……まぁ、及第点をいただけたということにしておきます。では、さっそくこれを神様に売り付けに行きましょうか」

先生「えぇ……。僕の後を追ってセナがさっきこっち(あの世)に来たばかりなのに、挙句の果てに神様にSSを売り付けるとか、流石にヤバいでしょ……」

先生「はは……ユウカも、いつかこっちに来ちゃうのかな。僕がこうして雲の上からずっと見張ってる(見守ってる)こと、あの子はまだ気づいてないんだろうな〜」

先生「……まぁ、できることなら、ちゃんと天寿を全うするまではこっちに来ないでほしいんだけどね」


第1話

ユウカ「……ん、んぅ……。……はっ!? もうお昼の12時すぎ!? 昨日、朝の5時まで残業してたから完全に寝坊……。ってお風呂上がりのままだから私、全裸じゃない! 急いで服を――」

 

インターホンがなる。

 

ユウカ「ひゃんっ!? 宅急便? 待って、適当な服を……パジャマでいっか、えいっ! 今開けます! ……あ、先生からの荷物? ありがとうございます」

 

扉がバタン…と勢いよく閉まった。

 

ユウカ「先生からダンボール?もしかしてプレゼント? 開けると……暗号の紙切れと、ラベルのないビデオテープ。何かしら。お父さんの古いテレビデッキで再生してみましょ。ぽちっと」

 

古臭い機械のような、エンジニア部が自信満々に持ってきたくせに、

情けない音を出して壊れたかのような音が出る。

 

ユウカ:「音声は入ってないみたい。背景は廃倉庫……? 先生、何でこんなところで――え? 覆面の男たち……? やめて、先生を拘束して……何を持ってるの、それ……」

 

ユウカ:「いや……っ! ぃ、や……、いや、ああ……っ! だめ、だめぇッッ!! はなして、先生をはなしてええ!! いやあああッッ!!!!」

 

ユウカ:「あ……ぁ……」

 

ユウカは何かを諦めたような顔になって、絶望の余韻の底に浸るしか無かった。

 

ユウカ:「う、うそ……。……ぁ、あ……」

 

ユウカ:「……やめ、て……先生……あ、ぁ……っ……」

 

叫びたい程の絶望に塗れた声を出したいが、掠れた声しか出ない。

どんな寒い所でも敵わないぐらいの手を震えを持ちながら、ビデオの停止ボタンを押す。

 

ユウカ:「……っ……、……はっ……う、あ……」

 

ドアの軋む音の方が人間的であると思わせるぐらいの掠れた声で呻き

トイレに走って行く。

 

ユウカ:「おええええええええええええっ……!! げほっ、はぁ……っ!!」

 

ユウカ:「ひっぐ……、……ぅ、あ……」

 

泣きながら何かを説明する時、どうしてか言葉が出ないこともある。

たとえ呪いの言葉だとしても、他者へ、自身へ、対象は関係無く叫びたかった。でも叫べれない。

喉が言葉にできない感情で埋め尽くされていた。

 

ユウカ:「……っ、げほっ……。……もう、……だめ、だった……」

 

ユウカ:「……わたし、わたしが、だめだったから……。おひるまで、なにもしらないで、ねてた……」

 

ユウカ:「……せんせい、ごめんなさい。ごめんなさい……わたしのせいで……あんな……。もう、おわりだ……。ごめんなさい、せんせい……」

 

ユウカは最後に……と思い、自責の念を誰かに言って気持ちよくなりたいだけの言葉を放つ為に。

そのことを理解した上で、最後と言う言い訳を盾にしてノアに電話する。

 

ノア『はい、ユウカちゃん。お休みのところどうしましたか?』

 

ユウカ「……ノア……、ノア……っ」

 

ノア『ユウカちゃん!? どうしたのですか、その声! 一体何が」

 

ユウカ「……ごめんね、……ノア、……ごめんね……」

 

ノア『ユウカちゃん……? 落ち着いてください、今どこに』

 

ユウカ「……ごめんね……ノア……ごめんね……私が、私があのとき寝てたから……っ。本当に、ごめんね……。全部、私のせい、だから……っ」

 

ノア『ユウカちゃん!! もしかしてセミナーで何かが起きたのですか!? 今、私はミレニアムの少し離れた区画にいますが、すぐにそちらへ向かいます!』

 

ユウカ「……ごめんね、……ノア………コユキも来て…」

 

ノア『え……? コユキちゃん……? ユウカちゃん、何を言っているのですか、待ってください! 私は絶対に諦めません。今からコユキちゃんを探して、必ずそっちに行きますからね。急いで向かいますから、それまで待っててくださいね、約束ですよ……!』

 

ノア『ユウカちゃん!? ユウカちゃん!!』

 

通信が切られた。自分が誰かに必要にされている事が最後に分かってよかった。

首に手をかける。苦しみも、自然と枯れていた。命の音と共に、枯れていた。

 

 

 

ユウカの家に行く為に、何かあっても困らないように、C&Cに助けを求めに行く。

 

アスナ『はーい! こちらミレニアムの秘密組織、C&Cのメイド部だよ〜☆ って、あれ? この番号、セミナーのノアちゃんじゃん! お休みの日にどうしたの〜?』

 

ネル『おいアスナ! 誰がメイドじゃいっ!掃除婦って言え、掃除婦って!恥ずかしいだろっ』

 

アスナ『あはは! ネル先輩が後ろでまた怒っちゃった。でねでね、ノアちゃん、今日はどうしたの?』

 

ノア「ふふ、相変わらず賑やかで楽しそうですね、アスナさん。ネル先輩も、お元気そうで何よりです。……実は一件、緊急でC&Cの皆さんの手を借りたい私用がありまして、お電話いたしました」

 

アスナ『えー? ノアちゃんの私用? すっごく珍しいね! いつでも任務オッケーだよ〜☆』

 

ノア「ありがとうございます。……それで、現在のそちらの稼働人員をお伺いしてもよろしいですか?」

 

アスナ『うんとね、今はカリンとアカネが、なんか廃墟の方に行ったミレニアムの生徒の保護任務? とかで出払っちゃっててさ。だから今は、私とネル先輩の二人だけが残ってて、すっごく暇してたんだよねぇ』

 

ノア「そうですか、二人が出払って……。いえ、現在暇をされているのが、ネル先輩とアスナさん……そのお二人であれば、今回の件には充分すぎますね。むしろ、最適です」

 

アスナ『え、ホント!? ネル先輩、ノアちゃんが私たちが必要だって!』

 

ネル『書記の私用かよ。なんだかおもしろそうじゃねえかぁ!アスナ、もっと詳しく!』

 

アスナ『はーい! ねぇねぇノアちゃん、具体的には何をする任務なの?』

 

ノア「ええ、理由を説明しますね。実は、とある対象の自宅に不法占拠、あるいは立てこもっている不審者がいる可能性がありまして。そちらの家に突撃して、一気に室内を制圧するために、C&Cの圧倒的な武力をお借りしたいのです」

 

アスナ『わお! 家に突撃して制圧! すっごく格好いい任務じゃん!』

 

ノア「ふふ、頼もしい限りです。それでは、これから私が車を出して、そちらのメイド部の建物の前まで迎えに行きます。すでに移動を開始していますので、アスナさんとネル先輩は、武器を持って表で待機していてください」

 

アスナ『了解、了解〜☆ ネル先輩、得物を持って出撃だよ! 待っててね、ノアちゃん!』

 

通信が切れ、ノアは心配と安堵のため息を着く

 

ノア「……ふぅ。C&Cの確保は完了です。私の声、震えてはいませんでしたよね。いつものセミナーの書記として、落ち着いて話せていたはずです……。ですが、問題はもう一つ。ユウカちゃんが最後に遺した‪”‬コユキ‪”‬の言葉……」

 

ノア「コユキちゃんが何らかの鍵を握っていることは間違いありません。ですが、彼女が今どこで何をしているのか……。私一人の検索能力では、ミレニアムの全ネットワークから彼女を見つけ出すには時間がかかりすぎます」

 

ノア「ここは、副部長の技術を借りるしかありませんね。いつものように、冷静に、頼み事をすればいいだけです……」

 

モモトークを開き、チヒロに電話をかける。プルルル、ピッ

 

チヒロ『はい、ヴェリタスのチヒロです。……ノア? セミナーの書記が、私のプライベート回線に直でかけてくるなんて珍しいわね。何かシステムトラブルでもあった?』

 

ノア「こんばんは、チヒロさん。お休みのところ、突然の連絡で申し訳ありません。システムトラブルではなく、個人的な調べ物をしていただきたくて、ご連絡いたしました」

 

チヒロ『個人的な調べ物? あなたが?』

 

ノア「ええ。現在、黒崎コユキちゃんがどこにいるのか、その位置情報を割り出していただきたいのです。ミレニアムのデータベース、防犯カメラのログ、何でも構いません。なるべく早急に、彼女の居場所を知りたいのですが、お願いできますか?」

 

チヒロ『コユキ? …また何かやらかして逃亡でもしたの? ……って、ちょっと待って。ノア、あなた今、どうしてそんなに焦っているの?』

 

ノア「……え? 焦る、ですか? いいえ、私はいつも通り、落ち着いてお話ししていますが……」

 

チヒロは、数秒間間を開け、ノアに問う。

 

チヒロ『誤魔化さないで。あなたの声のトーン、いつもの理路整然とした感じを装っているけど、呼吸のタイミングと、言葉と言葉の間隔ほんの少しだけ早いわ。……あなたほどの人間が、そこまで必死に冷静さを演じなきゃいけない理由があるんでしょう?』

 

ノア「……っ。……流石はチヒロさん、ですね。隠し通せると思っていませんでしたが、まさか一瞬で見抜かれるとは」

 

チヒロ『用件を言いなさい、ノア。コユキを探す理由は何?』

 

ノア「……仕方ありませんね。理由を話します。……今、恐らくですがユウカちゃんの命がかかっているんです」

 

チヒロ『――っ!? ユウカの命……!?』

 

ノア「詳しい経緯を説明している時間は一秒もありません。ただ、コユキちゃんがその原因の鍵を握っています。彼女の居場所が分からなければ、ユウカちゃんが、本当に、手遅れになってしまう……っ!」

 

チヒロ『……分かったわ、それ以上は言わなくていい。あなたのその焦り方が、何よりの証拠。ちょっと待ってて。ヴェリタスの全リソースをコユキの生体IDと端末追跡に回すわ。窓を複数作って同時に走らせるから、電話は切らずにそのままで』

 

ノア「お願いします、チヒロさん……っ。お願いします……!」

 

チヒロ『防犯カメラの顔認証システムを全区画でアクティブに……。……あ、見つけた。引っかかったわよ、ノア』

 

ノア「どこですか……っ!?」

 

チヒロが目を見開いたような声で、ノアに喋る。

 

チヒロ『驚いたわね。コユキの奴、逃亡してるわけでも、廃墟に潜伏してるわけでもないわ。……ミレニアムの街中を、普通に歩き回っているだけよ。買い食いでもしてるんじゃないかしら。完全に警戒心ゼロね。やらかした自覚も無いのかしら?』

 

ノア「ミレニアムの街中を、普通に歩き回っている……? 状況を何も分かっていない、ということですか……。いえ、好都合です。チヒロさん、彼女の正確な座標データを私の端末に送信してください」

 

チヒロ『今送ったわ。およそ5分後には、より正確なピンポイントの位置がリアルタイムで追跡できるようになる。……ノア、ユウカに何かあったら、それでこそミレニアムが崩壊しかねない。だから、諦めないで。』

 

ノア「ええ、分かっています。未来を諦めないのが、私とユウカちゃんのセミナーですから。……それでは、失礼します」

 

ピッ、と通信が切れる音

 

ノア「位置情報の同期、完了しました。コユキちゃんはミレニアムの街中……。……待っていてくださいね、ユウカちゃん。私は、絶対に諦めませんから。何があったのか……さて、まずは動ける戦力の回収です」

 

ノアは公用車の運転席に飛び乗り、エンジンを始動させ、アクセルを踏み込み、激しいタイヤの摩擦音とともに地上へ飛び出す法定速度関係無くガン飛ばしで走る。

数分後、C&Cのメイド部が入る建物の前に、ブレーキ音とともに車を滑り込ませる

 

ノア「ネル先輩! アスナさん! 乗ってください、早く!!」

 

ネル「おうノア! 待たせたな! で、これからどこに向かうんだ? さっき言ってた突撃する家ってのは、どこにあるんだよ?」

 

ノア「いいえ、そちらへ向かう前に、まずはミレニアムの市街地、商業区画へと向かいます」

 

ネル:「あぁん? 商業区画だと? なんで突撃の前に、そんな人の多いところに行くんだよ。意味が分かんねえな」

 

ノア「ええ、理由を説明します。現在の目的は、突撃の前に、あるトラブルの引き金となった重要参考人…もとい、保護するべき人以外で唯一関係がありそうな生徒の確保です。対象は、黒崎コユキちゃんです」

 

アスナ「えーっ! コユキちゃん!? あはは、あの子また何か悪戯して、ノアちゃんに怒られちゃうようなことしたの〜?」

 

ノア「ええ、今回は少しばかり質が悪い悪戯になるかもしれません。チヒロさんからの情報によると、コユキちゃんは現在、ミレニアムの市街地をのんきにブラブラと歩いているだけのようです。自分が何をしたのか、あるいは何に巻き込まれているのか、全く理解していない様子で」

 

ネル「チッ、あのクソガキ、またお前らの手を焼かせてんのか。で、そのコユキを見つけたら、どうするんだ? いつもみたいに耳引っ張ってセミナーの執室に連行か?」

 

ノア「いいえ。今回は時間がありません。見つけ次第、即座に身柄を拘束します。作戦は……そうですね、拉致みたいな形で、問答無用で車の中に引きずり込みます」

 

アスナ「わお! 拉致作戦! すっごくスパイ映画みたいでワクワクしちゃうね〜」

 

ネル「へっ、拉致かよ。お前らしからぬ、随分と強引で過激な作戦じゃねえか。気に入ったぜ。具体的にはどう動くんだ?」

 

ノア「チヒロさんから送られてくるリアルタイムの座標を元に、私が車を走らせます。ブラブラと歩いているコユキちゃんの、すぐ隣の歩道に、この車を急停車させて進路を塞ぎます」

 

ノア「車が止まった瞬間に、後部座席のネル先輩と、助手席のアスナさんでドアを開け、彼女が逃げ出す隙を与える前に、両脇を掴んで無理やりこの後部座席の中に引きずり込んでください。私はそのままアクセルを踏んで、その場を離脱します」

 

ネル「なるほどな。周囲の一般人に気づかれて騒がれる前に、一瞬で車内にハメ込むわけだ。腕が鳴るじゃねえか。あいつ、すばしっこいからな、容赦なく力づくで引っ張るぞ」

 

アスナ「はーい! 私、コユキちゃんをキャッチする担当!頑張っちゃうぞ〜!」

 

ノア「ええ、コユキちゃんの安全は二の次で構いません。怪我をしない程度に、確実に、一瞬で車内へ引きずり込んでください。……見えてきましたね。あの先の交差点、クレープを片手にのんきに歩いている、ピンク色の髪の毛……間違いなくコユキちゃんです」

 

ネル「へっ、本当に何も知らねえ顔してやがるな。よし、ノア、いつでもいけるぜ。お前のタイミングで、そのガキの隣に車を滑り込ませろ!」

 

アスナ「作戦開始だね〜☆」

 

ノア「……はい。コユキちゃんの隣で駐車します。……行きますよ、二人とも。準備はいいですね?」

 

そういうとノアは、コユキの真横でブレーキを切る。

 

コユキ「ふふーん♪ 今日は本当に素晴らしい土曜日です! セミナーの予算会議もなければ、ユウカ先輩の説教もない! 誰も私を怒らない、この自由! この平和! ああ、クレープの生クリームが五臓六腑にしみわたりますねぇ。怒られない日って、どうしてこんなに幸せなんでしょうか……うひひっ、あ、あそこにあるゲームセンター、新作が入ってるじゃないですか〜」

 

コユキの真横に凄まじいブレーキ音とともに公用車が急停車する。

コユキ「ひゃうんっ!? なん、なんですかぁ!? 運転が荒すぎますよ! 轢かれるかと思ったじゃ――え?」

 

コユキ「え、ネ、ネル先輩……!? な、なんでそんな鬼のような形相で――ひゃあああ!? ちょっと、襟首を掴まないで、引っ張らないでえええええ!!」

 

ネル「アスナっ!パスだ」

 

問答無用でコユキの身体を持ち上げ、車内へと乱暴に投げ入れる。

 

コユキ「わっちゃああっ! 宙を舞ったぁ!?」

 

アスナ「はい、キャーッチ! コユキちゃん、いらっしゃ〜い☆」

 

ネルがコユキの後を追いかけるように車に入り込む。

そして、何事も無かったかのようにブレーキを踏む。

 

コユキ「え、ええええ!? ちょっと待ってください! なんですかこれ!? 誘拐!? 拉致ですか!? アスナ先輩、ネル先輩、それに運転してるのノア先輩じゃないですか! 」

 

コユキ「私、今回は本当に何もしてませんよ!? 誓って、今週は何もハッキングしてないし、セミナーの備品も売却してないし、ただお小遣いでクレープを食べてただけですってばぁぁぁぁ!!」

 

ネル「おい、静かにしろクソガキ。お前の言い訳を聞くために拾ったんじゃねえんだよ」

 

コユキ「拾ったって言わないでください! 後クソガキもダメです!完全に暴力的な手段で車内に投げ込まれたんですけど!? ノア先輩、何とか言ってくださいよぉ! いつもみたいに理路整然と私を諭してくださいよぉ!」

 

ノア「……」

 

コユキ「む、無視!? あのノア先輩が、私を視界にすら入れてくれない……!? う、嘘でしょ、これ、私これからミレニアムの地下深くに永久監禁されるパターンのやつですかぁ!? ひえぇぇ、誰か助けてぇ!!」

 

アスナ「あはは! コユキちゃん、相変わらず元気だね〜。でもね、ノアちゃん、すっごく真面目な顔をしてるから、今は静かにしてた方がいいと思うな〜」

 

ノア「……着きました。ここが、ユウカちゃんの自宅です。皆さん、降りてください」

 

バタン、バタンと、全員が車から降り、ユウカの家の前に立つ

 

アスナ「あれ……? ここって、ユウカちゃんの家だよね? C&Cの任務で、何回か書類の受け渡しとかで来たことあるけど……。ねぇ、ノアちゃん、さっき電話で『不審者が家に立てこもってる』って言ってたよね……?」

 

ネル「おい、ノア。どういうことだ? ここは会計の家じゃねえか。なんであいつの家に不審者が立てこもるんだよ。防犯システムはどうした。あいつ、自分の家のセキュリティはガチガチに固めてるはずだろうが」

 

ノア「……。……嘘をついて、申し訳ありません、お二人とも。……本当の真実を、今からお話しします」

 

アスナ「……本当の、真実……?」

 

ノア「不審者が立てこもっているというのは、C&Cを今すぐ動かすための、私のカモフラージュです。……実際には、ユウカちゃんが今、この家の中で『自傷行為』を行っているか……最悪の場合、すでに、誰かにやられてしまっているケースを想定して、お二人を連れてきました」

 

ネル「――あぁん!? 自傷だと!? あのお堅いユウカが、自分を傷つけるわけねえだろうが! 誰かにやられたって、理不尽なセキュリティを突破して自宅を襲撃できる奴がキヴォトスにそう何人もいるかよ!」

 

ノア「いいえ、物理的な襲撃ではありません。彼女の精神が、完全に破壊されてしまったんです。……先ほど、ユウカちゃんから私に、掠れた、絶望した涙声で、何度も謝罪をする電話がありました。そして最後に『バイバイ』と告げて、通信を切られたのです。……あのユウカちゃんが、です」

 

アスナ「ユウカちゃんが……バイバイって……? うそ……、そんなの、絶対に何かおかしいよ……!」

 

ノア「ええ、確実におかしいです。だからこそ、私一人の力では、もし万が一の事態が起きていたときに、ドアを破ることも、部屋を制圧することもできない。だから……C&Cの圧倒的な力が、どうしても必要だったんです」

 

コユキ「え……? ユ、ユウカ先輩が……? 嘘ですよね……? いつも私を怒鳴り散らして、追いかけてくる、あの先輩が……自分から、そんな……?」

 

ノア「時間はありません。ネル先輩、鍵を」

 

ネル「……チッ、わけ分かんねえが、そういうことなら話は別だ。どきな、ノア!」

 

轟音を建てて、ネルが容赦なく玄関のドアを蹴り破る。

凄まじい破壊音と共に、これが正解だろ?と言いたげな顔で見つめてくる。

 

ネル「おいアスナ! 部屋を隈なく探すぞ! 不審者が潜んでる可能性もゼロじゃねえ、クリアリングだ!」

 

アスナ「了解! 私、奥の部屋を見てくるね!」

 

バタバタバタと忙しなくC&Cの二人が室内に突入し、部屋中を捜索する。

ノアとコユキも室内に足を踏み入れ

コユキ「うぅ……。ユウカ先輩の家、いつもはすっごく綺麗なのに、なんだか雰囲気が……重苦しいです……ホラーゲームに入り込んだかのような…」

 

ノア「コユキちゃんは、そこでじっとしていてください。……私も、部屋を探します」

 

ノア「リビングには……誰もいませんね。ただ、テレビの電源がついたまま、画面が砂嵐になっています。そして、その下にあるビデオデッキには……流しかけの、ビデオテープが、一時停止のまま……。そしてその横に、メモ帳から引きちぎられたような、紙切れが……」

 

部屋の真ん中にあるダンボールの中を見ると、紙切れが入っていた。

 

ノア「これは……数式の羅列……? いいえ、違います。これは……暗号、ですね。極めて高度な、何重にもプロテクトがかけられた、嫌がらせのような暗号……」

 

ノア「……なるほど。そういうことですか」

 

コユキ「ノア先輩? 何か分かったんですか……?」

ノア「ユウカちゃんが、宅急便を受け取った形跡がある。中身はこの、ラベルのないビデオテープと、この暗号の紙。……そして、ユウカちゃんはテレビでこのテープを再生した。……おそらくですが何か、恐ろしい映像を……」

 

ノア「おそらく……このビデオテープが、ユウカちゃんの心を完全に破壊し、自傷に走らせた、すべての原因です。……そして、この暗号。ユウカちゃんが、死の間際に、掠れた声で最後に遺した言葉が『コユキちゃん』だった理由。暗号を解読できるのは、ミレニアムで唯一、あなたしかいないからですよ、コユキちゃん」

 

コユキ「えっ……!? わ、私が、その暗号を……?」

 

ノア「ユウカちゃんは、何かを見てしまった。だからこそ、コユキちゃん、あなたが必要だったんです。……ですが、まずはユウカちゃんの身の安全を…」

 

アスナ『ネル先輩! ノアちゃん! 来て、こっち!!』

 

ノア「アスナさん!?」

 

素早くリビングを飛び出し、廊下の奥へと走る。

 

ネル『おい! ユウカ!! 開けろ、ユウカ!! クソっ、反応がねえ!!』

 

ノア『アスナさん、ネル先輩! 何があったのですか!?』

 

アスナ「ノアちゃん、ここ! トイレだけ、中からガッチリ鍵がかかってるの! ネル先輩が何度もドアを叩いて、大声で呼んでるんだけど……全然、応答もないらしいの……っ!」

 

ネル「チッ、このドア、内側から何かしらで完全に固定されてやがる! おいユウカ!! 生きてるなら返事をしやがれ!! ユウカ!!」

 

アスナ「うーん、これじゃあネル先輩の力でも、扉を蹴り破るのにちょっと時間がかかっちゃいそうだね〜。……あ、そうだ! ネル先輩、ノアちゃん、いいこと思いついちゃった! これあるよー!」

 

ネル「あぁん!? アスナ、お前いつの間にそんなゴツいC4爆弾なんて引っ提げてやがったんだよ!?」

 

ノア「アスナさん!? 待ってください、人の自宅のトイレのドアに、無断で爆弾を設置するなんて正気の沙汰では――」

 

アスナ「えいっ、ぺたっと! よーし、設置完了☆ 二人とも、危ないからちょっと下がっててね〜! スリー、ツー、ワン、ぽちっと!」

 

(狭い廊下に凄まじい爆発音と爆風が吹き荒れる。

 

ネル「げほっ、ごほっ……! おいアスナてめぇ! 加減ってものを知りやがれ! ドアどころか壁まで消し飛んでんじゃねえか!」

 

アスナ「あはは、ごめんごめ〜ん! でもほら、ドアは綺麗になくなっちゃったよ! ノアちゃん、早く中に入ろう!」

 

ノア「……はぁ。アスナさん、後でお説教です……。……いえ、今はそんなことを言っている場合ではありませんね! ユウカちゃん!!」

 

バタバタと、三人が破壊されたトイレの室内へ飛び込む。

上半身裸で、爆発の煤を体に付けた姿でお出まししてきた

 

ノア「ユウカちゃん……っ!! 嘘、床に倒れて……。アスナさん、ネル先輩、早く彼女の容態を確認してください!」

 

アスナ「うん、任せて! ええと、首の横の血管に触って……。……あ、脈はあるよ! ひとまず安心、だね……。でも、すごく弱いよ。トックン、トックン、って、今にも消えちゃいそう……」

 

ネル「……息も死ぬほど弱いな比喩表現抜きでガチで死にそうだぞ…おい、見ろよこの顔色……。完全に真っ白じゃねえか。血の気がこれっぽっちも残ってねえ」

 

アスナ「わ、見て……ユウカちゃんの首……。自分で自分の首を、青紫色になるまでぎゅーって強く掴んだ跡が、生々しく残ってる……。一体どれだけの力で締め上げたら、こんな痕になっちゃうの……?」

 

ユウカの悲惨な姿に意識を取られていたが、すぐに意識を正して、救急車を呼ぶ。

 

ノア「……もしもし、ミレニアム救急本部ですか!? 緊急搬送を要請します! 場所はセミナー会計、早瀬ユウカの自宅! 呼吸、心拍ともに微弱、自傷による窒息の恐れがあります! 至急、救急車を回してください!」

 

ノア「救急車の要請は完了しました。ですが、到着までに数分はかかります。……アスナさん、ネル先輩。救急車が来るまでの間、ユウカちゃんの心肺蘇生をお二人に預けてもよろしいですか?」

 

ネル「おう、任せとけ! C&Cの救急救命プロトコルは伊達じゃねえ。こっちも破壊だけを専業にしてるわけでは無いからな。アスナ、お前は気道を確保しろ! 私は胸骨圧迫をやる」

 

ノア「……ユウカちゃんをよろしくお願いします。私は……リビングに残っているコユキちゃんのところに行ってきます」

 

コユキ「う、うぅ……。奥の部屋からすっごい爆発音が聞こえたんですけど……。え、ノア先輩……? ユウカ先輩は無事だったんですか……? 首がどうとか聞こえて、私、怖くて……」

 

作り物の笑顔を浮かべ、コユキに応える

 

ノア「ええ、コユキちゃん。ユウカちゃんはまだ生きていますよ。脈も息も弱いですが、C&Cの二人が今、必死に命を繋ぎ止めてくれています。……ですから、私たちは私たちの仕事をしましょう?」

 

コユキ「え、仕事……ですか……?」

 

ノア「はい。先ほど見つけた、この暗号の紙切れ。ユウカがあんな風になる原因、元凶が書かれているはずです。コユキちゃん、今すぐ、この暗号の解読を求めます」

 

コユキ「え、えええ〜っ!? 私が今からですか!? いや、でもこれ、すっごく複雑ですよ? エニグマ暗号に近しい…古臭い暗号なのに強度だけは完璧ですからね。それが何重にもなってて、解くのにはすっごく頭を使うというか、私でも本気を出さないとダメなレベルというか、……うーん、ちょっとめんどくさ」

 

ノア「コユキちゃん? 今、めんどくさい、と言いましたか? ユウカちゃんが今、あそこで死にかけているんですよ? 私が今、どんな気持ちであなたと笑顔でお話しているか、解読してみますか?」

 

コユキ「ひゃ、ひゃううううっ!? ごめんなさい! 解きます! 今すぐ解きますから、その般若みたいな笑顔をやめてくださいぃぃぃ!! 脳みそフル回転させますからぁ!!」

 

ノア「ええ、期待していますよ、コユキちゃん。」

 

コユキ「う、うーん……。ええと、これをこうして…こっちにハメ込んで……。……あれ? この暗号の組み方、エニグマでもわかりやすい方を引きました……私が運が良いですね。あ、分かった! ここをこうして、」

 

コユキ「……え? なにこれ。解読できた、みたいですけど……。……『地獄の悪魔の宴』……? というフレーズが、ひとつ、ぽつんと出てきました……」

 

ノア「地獄の悪魔の宴……。それが、この暗号の答えですか?」

 

コユキ「はい、間違いなくそう読めます。でも、これだけじゃ意味不明ですよ。何かのパスワードですかね? それとも、ただの悪戯のメッセージ――」

 

ノア「………コユキちゃん。この紙の裏を、よく見てください。何か書かれています」

 

コユキ「え? 裏ですか? ……あ、本当だ。すっごく薄い文字で、何か書いてありますね……」

 

ノア「『このフレーズは、全体のほんの一部に過ぎない。この裏に隠された、複数の暗号を正しく組み合わせることで、初めて全ての真実が完成する』……と、そう書かれていますね」

 

コユキ「複数の暗号を組み合わせる……? ってことは、この紙切れに書かれている暗号の他にも、まだ別の暗号の紙が存在するってことですか!?」

 

ノア「そういうことになりますね。……『地獄の悪魔の宴』。おそらく、何かの集団の名前……あるいは、その事件そのものを指すコードネーム…または場所でしょうか。そして、残りの暗号の紙は……」

 

ノア「キヴォトスのどこかに、まだ散らばっている。それをすべて集めて解読しなければ、その真実にさえ辿り着けない……」

 

ノアは深い溜息をつく。

 

ノア「……さあ、救急車が来ましたね。まずはユウカちゃんを病院へ。そして……」

 

ノア「コユキちゃん、もっとです。もっとこの『地獄の悪魔の宴』というフレーズから、何か想像できる、別の暗号や隠されたコードはありませんか!? 急いでください!」

 

コユキ「ひゃうんっ!? そんなに急かされても、コユキちゃんの超天才的頭脳をもってしてもこれが限界ですよぉ! データの復元は完璧ですし、これ以上は削りようがないですってば!」

 

ノア「本当に、これだけですか……?」

 

コユキ「う、うーん……でも、ただの文字列として見るんじゃなくて、推測するなら、この暗号の規格は『3つで1つの完成形』になるように作られてます! だから、この紙の他にもあと2つ、同じ暗号の断片があるはずです!」

 

ノア「あと2つ……。では、この『地獄の悪魔の宴』というフレーズそのものからは、何が読み取れますか?」

コユキ「地獄、悪魔、宴……キヴォトスに関係のある言葉と逆算するなら、これって……確実に『ゲヘナ学園』のことを表してます! ゲヘナを指す隠語、あるいはゲヘナの過激派のコードネームの可能性がすっごくめちゃくちゃ高いです!」

 

ノア「ゲヘナが絡んでいて、3つの暗号が存在する……。ならば、考えるよりも先に動くべきですね。早速、ゲヘナの生徒会、万魔殿の議長、羽沼マコトに連絡を取ってみます」

 

コユキ「えええっ!? いきなり生徒会長に直談判ですか!?」

 

そういうと、ノアはスマートフォンの画面を操作し、ゲヘナ生徒会……万魔殿に電話をかけた

 

マコト『ハーーーハッハッハ! どうした、ミレニアムの書記官殿! ようやく我がゲヘナ学園の偉大さに気づき、ミレニアムも我が万魔殿に併合される気になったか!? 議長であるこの羽沼マコト直々に、話を聞いてやってもいいぞ!』

 

ノア「……マコト議長。お手数ですが、今すぐ私の質問に答えてください。そちらの万魔殿に、先生からの不審な荷物、あるいはダンボールなどは届いていませんか?」

 

マコト『あぁん!? なんだその不躾な態度は! 挨拶もなしに、我が万魔殿のメールボックスの心配だと? 先生からの荷物など、届いているわけがなかろう! だが……ふん、待てよ。それならおそらく、あの忌々しい風紀委員長、空崎ヒナの方だな』

 

ノア「ヒナさんのところに……荷物が?」

 

マコト『そうだ! 先ほどな、我が優秀な部下が独自の情報網を伝って私に教えてくれたのだ。『風紀委員会に、シャーレの先生から謎のビデオテープと紙切れが届き、委員長室が大変な騒ぎになっている』とな! ハーハッハ、あの小賢しいヒナが慌てふためいている姿が目に浮かぶわ! 一体何があったんだ? おい、ミレニアムの書記、何が起きて――』

 

ノアはマコトの質問をフル無視して電話を切る。

 

コユキ「わ、わわわ、生徒会長の話を途中でぶった切った!? ノア先輩、いくらなんでも容赦なさすぎませんか!?」

 

ノア「無駄な会話に割く時間は一秒もありません。ゲヘナの風紀委員会……空崎ヒナさんに、直接電話をかけます」

 

プルルル、プルルル……カチャッ

 

ヒナ『……だれ……?』

 

即行動の精神で、ヒナに電話をかけると覇気のない声が広がった。

 

ノア「こんばんは、ヒナさん。ミレニアムサイエンススクール、セミナー書記の生塩ノアです。突然の不躾なお電話、お許しください。単刀直入にお伺いします。……先生から、ビデオテープの入った荷物は届いていませんでしたか?」

 

ヒナ『――ッッ!!!』

 

ノア「ヒナさん……?」

 

ヒナ『あなたが……あなたがやったの……!?!?(狂ったように、怒り散らす叫び声)』

 

ノア「え……?」

 

ヒナ『あの動画を……!! あんなことをしたの、あなたたちミレニアムなの!? ノアッッ!!』

 

理性の欠片も無い、感情に任せそんな声だった。しかし、ノアも引けはしない。

 

ノア「落ち着いてください、空崎ヒナさん! 私たちがそんなことをするはずがないでしょう! 私があなたに電話をしたのは、犯人だからではありません! その動画の先に隠された、暗号みたいな紙を、今すぐ私にください!」

 

ヒナ『暗号……? 何を、言っているの……! 目の前で……あんな……』

 

ノア「モモトークでいいので、今すぐその紙の画像を送ってください! 私の友人であり、セミナーの会計である早瀬ユウカが……その、あなたが見た動画と全く同じらしき映像を見てしまい、自責の念から、自傷行為に及んで……今、命の危機に追い詰められているんです……っ!!」

 

ヒナ『会計が……? 自傷……?』

 

ノア「ええ、そうです! ユウカちゃんは今、呼吸も脈も微弱な状態で、救急車の到着を待っています! 彼女の心を完全に破壊したあのビデオの正体を、そして真実を暴くには、あなたの元にある暗号が必要なんです!」

 

ノア「お願いします、ヒナさん…… あなたなら、あの映像の凄惨さを理解しているはずです。絶望して立ち止まっている時間はありません」

 

ヒナ『……っ。……分かったわ……。今、画像を送る……。……でも、動画は絶対見ないで……おかしくなっちゃうから……』

 

ノア「……画像の受信、確認しました。ありがとうございます、ヒナさん。……」


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