王道ロボット戦記小説、血巡る戦場の記憶 作:dwwyakata@2024
あまりにも非道すぎる侵略者の指導者。
彼にとっては宇宙の全てが彼の私物であり、それには命は当然全ての物資も含まれると彼は考えています。
故にどのような非道も平気で出来ます。
何しろ支援者の行動は彼にとっては「不当な反抗」であり「勝手な財産の略奪」なのですから。
指導者は彼の脳内では被害者です。恐ろしい話ですが。
序、第五惑星攻略戦
コヴァルライト星系第六惑星攻略戦が終わって数日。予定通り増援との合流が終わり、第四艦隊はほぼ規模が倍増した。
これに加えて、様々な事態に備えた工作艦も来ている。
念には念を入れた編成だ。
パドフ中将はとにかく堅実な指揮官であり、それが最大の強みだ。そしてその強みを敵に押しつける戦いを今している。
問題は、それが最適だと言うこと。
侵略者の指導者は、文字通り何をしでかすか分からない。
第六惑星の攻略戦でも、ミランはそれを嫌になるほど理解させられた。
敵は第五惑星の衛星軌道上に、大規模な艦隊を集結させている。恐らくは、守備艦隊の主力である。
勿論第五惑星に何かしら仕掛けがある可能性もある。
惑星系と言っても、実際にはスカスカで、拠点となるような場所は限られている。惑星や、大きめの小惑星。衛星などがそうだが。
このコヴァルライト星系では、既にどの惑星にも衛星の存在は確認できない。
もともと第四惑星である惑星コヴァルライトには衛星があったようなのだが。それも既に侵略者に資源化されて撤去されてしまったようだ。
いずれ、代替となる何かを設置しなければならない可能性もある。
侵略者に土地を取られるというのは、そういうことだ。
とにかく今は、まずは奴らを追い出さなければならないのである。
「ミラン少佐」
顔を上げると、ハコトだった。
心配そうにしている。
同室で休むことを許してから、距離が縮まったような気がするが。相手はAI搭載のロボットである。よく分からない。
同性ということもあるし、そもそも種族が違う。
別になんとも思わない。
「私のお姉ちゃんが見つかるかも知れません」
「ああ、そういう設定のAIがあるんでしたね」
「はい。 この間の任務で、古い侵略者のテクノロジーが多数発掘されているそうです」
多くの犠牲を払った。
その結果は知らされている。
侵略者の指導者は、古くは皇帝と名乗っていた可能性が高いこと。
侵略者には娯楽や芸術が存在していたこと、などだ。
あの第六惑星の地獄絵図を見る限り、現状の侵略者がそんなものを必要とするとは思えない。
つまり。
侵略者を変えたのは。
あの指導者なのかもしれないということだ。
それも最悪の方向に、である。
「あの捨てられていたデータセンタとDBについても、どうして捨てられたのか、分かってきたそうです」
「何があったんですか」
「命令が記録されていました。 自分が作ったものではないからいらない。 そう指導者がいって、捨てさせたとか」
「……?」
意味が分からなかった。
だが、ハコトが補足してくれる。
侵略者の指導者にとって、芸術も娯楽も興味は皆無。
ましてや完璧な存在である自身が作ったものではない芸術など、存在そのものに意味がないのだとか。
それを聞いて、ミランは絶句する。
新たの民は、それほど芸術に詳しくはない。元々牧畜の素朴な民である。それぞれの群れごとに子供を寝かしつける歌とか、ファーガをおとなしくさせる演奏とか。そのために使う楽器とか。そういうものは持っている。
それらは極めて素朴なものだが、それでもくだらないものの筈がない。
自分以外の存在が作ったものをくだらないと一蹴するその思考は。
どこから湧いてくるのか理解できなかった。
「そもそも第六惑星はゴミ捨て場として活用されていたようです。 中間拠点としてゴミを捨て、最終的にブラックホールにゴミを投じていたとか」
「放置しておけば、データを得られなかった可能性も高いという訳ですね」
「はい。 犠牲には悲しくなります。 しかし、侵略者という種族が、指導者にどう壊されていったのかが分かれば……」
確かに、現時点の状況では、指導者を潰しても解決にならないだろう。
あの意思も思考も奪われた侵略者の群れ。
アレを見る限り、指導者がいなければ侵略者は勝手に全滅してしまうだけだ。
恐ろしい話である。
本当に全てを私物だと思い込んでいるんだ。
それが分かるだけで、作戦には価値があったのかもしれなかった。
冷えた水を口にして、それから自室を出る。宇宙服は既に着込んである。ウォーリア三型で、シミュレーションでもしようと思ったのだが。
思ったよりも敵が近づいてきていたらしい。
アラームが鳴る。
周囲の兵士達が、持ち場に駆けていく。
巨大な空母の中だ。
それでも相当数の人間がいる。
それもあって、殺気だった兵士達が、喧嘩寸前の雰囲気になりながら、走り回っていた。
ミランは淡々とその間をいきながら、ウォーリア三型に乗り込む。
すぐに通信が来た。
アリカ中佐だった。
「敵の艦隊が出てきています。 数は二万隻ほど」
「現在交戦範囲にいる味方はどれくらいですか」
「十五万隻ほどですね」
そうか、ならば勝てるだろう。
出撃指示すら出ないかも知れない。
しかし何があるか分からないのが戦場だ。ともかく、待機して待つ。
戦闘が開始されたようだ。
味方の戦力は敵の七倍以上だ。猛烈な火力投射で、敵艦隊を崩していく。敵が崩れて、後退を開始するが。
遅れて連絡が入る。
パドフ中将からだった。
「一旦停止。 追撃を中止します」
「し、しかし」
「この数で前線を進めてくるのは怪しい。 別にいつでも現状の敵は始末できます。 今深追いして、反撃を受けるのは愚かなことです」
それもそうだな。
だが、まだ何が起きるか分からない。
出撃を待つミランは。
警告音を聞いた。
「第五惑星に高エネルギー反応!」
「!」
「全艦密集隊形。 位相変換シールドを展開して、何があっても耐えられるように備えなさい。 戦闘機隊は格納。 急いで」
一気に慌ただしくなる。
そして、後退しようとしていた敵艦隊が、いきなり反転して猛烈な攻撃を仕掛けてくる。
一部の艦艇は反撃しようとしたが、パドフ中将が叱責して止めさせる。
ほどなく、それがほとばしっていた。
艦隊を直撃したのは、光の巨大な束だ。
十五万隻が、激しく揺動する。
仕掛けてきていた敵艦隊は、今ので消滅。
味方にも、特に前衛に大きな被害が出たようだった。
「即時後退。 今の兵器を解析します」
「な、なんだよ今の!」
「反物質砲か何かか?」
「いや、解析が出た! 重粒子だ! 超加速された重粒子! とんでもない出力だ!」
とにかく、味方が後退を開始。
敵は連発できるわけではないようで、すぐに追撃が飛んでくることはなかった。なかったが。
尋常な攻撃ではなかったのも事実だ。
誰もが黙り込む中、パドフ中将からの指示が来る。
「偵察艦隊を派遣。 今の火力であれば、恐らく第五惑星に集結している敵の艦隊も無事ではすまなかったでしょう」
「は……」
「被害が出た艦は、すぐに報告を。 一度距離を取り、再度布陣します」
とりあえず出撃は無しか。
偵察艦隊はどれも無人艦だ。すぐにドローンよりは大きい程度の偵察艦隊が、わらわらと出て行く。
敵の第五惑星には何が仕掛けられているのか。
ミランはため息をつきながら、ウォーリア三型を降りる。
正式に、出撃中止の指示が出たからだった。
数日、訓練だけをする。
それで、入ってきた情報を聞いて、それで内容を把握することに努めていた。
アリカ中佐から聞いた内容は、以下のようなものだった。
あの攻撃は、第五惑星全域を砲身として放たれた、重粒子による加速砲。
超新星爆発などで粒子が超加速されて、大威力を発揮するケースは実在しているらしいのだが。
それを惑星で起こすとなると、尋常ではない工夫がいる。
その工夫についても、偵察艦隊が突き止めてきたようだ。
元々コヴァルライト星系は、侵略者にとってはゴミ捨て場であり、その中継基地だった。工場も全ては、本来はゴミ捨て用に使われ。
侵略者も、その作業に従事していた。
それが、明確に変わっているという。
膨大な侵略者が、工場をつないでいる。
それぞれが手をつないで、工場を直接つなぐ回路になっているそうである。
「要するに、どういうことですか」
「侵略者を回路に、工場の出力全てを砲に回して、惑星自体を重粒子砲にしたてたと言う訳ですね。 侵略者の体は、ナノマシンで全身を冒されています。 それを利用もしたんでしょう」
「しかし元はゴミ捨て場なのでは」
「はい。 ですから使い捨てです。 第一射ですら、侵略者が10億人以上、出力に耐えられなくて爆ぜ飛んだようです」
アリカ中佐はさらりというが。
ミランとしては絶句するだけである。
今、第五惑星には70億ほど侵略者が残っているらしい。
つまり、十五万隻が守りに徹して、それで更に戦力を削られたあの規模の攻撃を後七回放てるし。
なんならもっと火力を上げる一撃を放つことが出来ると言うことでもあるのか。
ただ、人を焼き尽くしながらそれをやる理屈が意味が分からない。
「今までにこういう兵器の使用例は」
「ないですね。 今回は恐らく、敵にとっては実験なのかと思います」
「10億人を消し飛ばしておいて実験……?」
「ミラン少佐、私に怒っても何の意味もありませんよ」
アリカ中佐に言われるが。
これをさらりと言えるアリカ中佐も大概だと思う。
ミランがむすっと黙り込んだのを察したのだろう。アリカ中佐は、咳払いをしていた。
「第六惑星の攻略戦で見たと思いますが、侵略者は今のところ指導者の私物で、気分次第で生産されて、気分次第で使い捨てられます。 今回は規模が大きいだけで、それが如実に出ただけです」
「許せませんね」
「ええ、ですから侵略者の指導者を倒さなければならないですね」
「……」
作戦について、現在いくつかを検討しているらしい。
まず、第五惑星の軌道上に集結している敵艦隊、およそ十万。これをどうにかする必要がある。
今回の前哨戦で敵は二万を失ったが、それを痛くも痒くも思っていないらしい。
まあそうだろう。
指導者の私物で。
その命令が絶対なのだとすれば。
どれだけ身内が死のうと、なんとも思わないだろう。
「作戦は何段階かに別れます。 ただ、はっきりしていることがありますが、これ以上はあの砲を撃たせるわけにはいきません」
「当然でしょう」
「いや、恐らくその意味が違います。 今回のが実験だったとした場合、侵略者の指導者は、成果ありと見なしたら他の惑星でも使ってきます。 大火力の重粒子ビームは、防ぐのが非常に難しい。 旗艦級戦艦の主砲なんかの比ではありませんからね」
そうか、あれを支配下に置いた惑星系全てでやってくるというわけか。
だとすると、どうするべきか。
「敵は乱戦になっても、躊躇なくあの砲を撃ってくると見て良いでしょう。 そうなると、こちらも対策を練る必要があります」
「特務の出番ですか」
「ええ。 今、作戦を詰めています。 ミラン少佐は、英気を養って、戦闘に備えてください」
通信が切れた。
アリカ中佐も大概だな。
そうミランは思ったが、だが考えてみればAIだし、必要に応じて必要なことだけを話しているだけだ。
自室で会話を終えると、ハコトが心配そうにミランを見ていた。
「話は伺いました。 恐らくですが、第五惑星に強襲を仕掛けるような作戦になると思います。 大丈夫でしょうか」
「大丈夫です。 対策を先に示してしまえば、あの屑……侵略者の指導者も、何度も同じ事をしようとは思わないはずです」
変に小賢しいやからだ。
だったら、それが恐らく想定される行動だろう。
無言でしばし考え込む。
「私、お姉ちゃんに会いたいです」
「あくまで設定だけの存在でも、ですか」
「はい。 だからこそです。 私は所詮設定しかないAIで、ずっと周りから厳しい目を向けられてきました。 侵略者に使われていた頃の記憶はありません。 その時も、恐らくは……」
全機廃棄されたのだった。
そしてこのガワ。
子供を相手に、侵略者は昔。
そう考えると、指導者が出る前から、許しがたいゴミカスだったのではないかとも思えてくる。
「本来のガワに戻りたいですか?」
「え? は、はい。 出来るのであれば。 ただ私も100期以上はこの姿で活動しているので……」
型番がかなり若いという話も聞く。
それはあるのだろう。
支援者としても、試験的にハコトを再生して利用しているのだろうし。勿論、戦闘タイプのロボットではないから、その身体能力にはだいぶリミッターが掛かる事になるが。
「今回の特務が終わったら、本来の設定に近いガワを用意してもらえるように、自分から交渉してみます」
「分かりました。 もしも元の姿に戻れるのであれば、嬉しい話です」
「……」
色々とろくでもないな。
ミランに出来る事なんて、本当に限られている。
ウォーリア三型をもらって、親衛軍ウォーリアとも互角に渡り合えるようになった。エネルギーの残量を気にしながら、戦う事もだいぶ減った。
それでも無敵でもなんでもない。
あれだけ群れていた侵略者。あれらを皆殺しにしなければならない。
生きていても自爆してくる。
死んでいても体はナノマシンで満たされていて、死んだ後一定時間で爆発して消えてしまう。
尊厳を全て奪われた存在。
だけれども、ハコトを見る限り、本当に最初からそうだったのだろうかとも思ってしまう。
それに、色々な話が聞こえてきている。
本来は自主的な意思を持っていた侵略者は、或いは自分でその自主的な意思を捨てたのではあるまいか。
だとしたら、今までの凶行は。
侵略者の指導者だけじゃない。侵略者という種の総意という可能性はあるまいか。
だとしたら。
いや、それは考えなくてもいい。
今は雑念を全て捨てて。
ウォーリア三型でどう戦って行くかを、考えていくしかない。
無言でいるうちに招集が掛かる。
やはり特務の出番だ。
パドフ中将が、直接連絡をくれた。
「今回の任務はかなり危険なものとなります。 貴方以外には任せられそうにありません」
「なんとかします。 それで具体的に何をすれば良いのでしょうか」
「コヴァルライト星系第五惑星の調査が終わりました。 それにより、重粒子ビーム砲の砲口となっている工場を特定。 ミラン少佐は、精鋭とともに其処におり、宇宙艦隊が戦闘を開始すると同時に、工場の破壊をお願いいたします」
そうか、また敵地に強襲しての危険任務か。
だが、あの重粒子砲の破壊力を見る限り、それ以外に策はない。宇宙からの攻撃で破壊している間に、二発か三発、重粒子砲の直撃を受ける。それだけでどれだけの損害が出るか分かったものじゃない。
惑星に直に人工惑星などの大質量兵器をたたき込む策もあるが、敵も当然邪魔してくるし。
制圧した後のテラフォーミングがとんでもない事になる。
何よりこの星系はコヴァルライトのものだ。彼らに対して、そんな手段を執っていては顔向けできない。
勿論宇宙から工場を破壊できればいい。被害を出さずに出来ればなおいいのだが。
どうせ対宙兵装でガチガチに固めているだろう。
それにだ。
最悪の場合、大量に工場に群れている侵略者を、あらかた片付けてしまえば。
それで重粒子砲を撃てなくなる。
其処まで考えて、ミランは激しい自己嫌悪を感じたが。今は、多くの命が掛かっているのだ。
雑念は捨てなければいけない。
雑念がどうしても湧いてくる。
敵の状況を見ると、どうしてもだ。
また今度の任務の後、メンタルケアプログラムを受けなければならないだろう。ここまで侵略者が色々と強烈な社会を作っているとはミランも思わなかった。
もしも侵略者が支援者と同じように、笑ったり悲しんだりしている存在だったら。
ここまで酷い戦争になる前に、色々と出来たはずだ。
だが、そうではなかった。
ただ、それだけなのだ。
深呼吸して、一旦心を落ち着かせる。
今回も特務はクラフ中佐が指揮をとる。
投入される戦力は、盾艦10隻、駆逐艦20隻。ただし、高度な隠蔽が施されたカスタム艦だ。
主力が正面から攻撃を仕掛けるのと同時に、この別働隊が敵地のど真ん中に乗り込み。
地上付近まで降りてから、戦車隊、ウォーリア隊、戦闘機隊、攻撃機隊を出して、一気に工場を落とす。
一秒を争う戦闘である。
ブリーフィングが行われ、それで敵工場近辺の地形が示される。完全に更地だ。本当に必要がないと判断したものは全て排除しているのだと、それだけで分かる。その他は住居だが、殆ど調整装置だ。寝床や食堂なんて存在しない。侵略者はただ栄養を必要なだけ摂取し、壊れるまで動かされる。そのための整備がされる。消耗品を長持ちさせるためだけの装置。
ただ。それだけだ。
「侵略者に意思がある一般人はほぼ存在しない。 以前研究惑星を落とした時ですら、研究者もろくな意思を持っていなかった。 彼らは生体爆弾で、こちらを見かけ次第襲ってくる。 それは事実だ。 皆、それが分かったら、とにかく近づけないように破壊しろ」
「……了解」
これは、つらいのはミランだけではないな。
参加する人員のうち、特務はミランとクラフ中佐だけだ。
それ以外の兵員は戦歴など優れた戦士ばかりだが、どれだけ生き残れるのだろう。
パドフ中将は、最善を尽くしてくれるはず。工場さえ黙らせれば、援軍だって出してくれるだろう。
今は。そう考えて、作戦に参加するしかなかった。
※重粒子砲
粒子の中には超加速された結果、とんでもない運動エネルギーを持つに至った存在があります。近年だと「アマテラス粒子」なんてものが有名ですね。
侵略者が用いる重粒子砲はこれを戦略級対艦隊兵器として活用したものです。
ただしその燃料は、侵略者の一般個体そのものですが。
一発で10億人以上が消し飛ぶという、非人道の究極とも言える兵器です。
本作にどういった要素がほしいですか。要望があれば遠慮なくどうぞ。
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詳細なマシンデザイン
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圧倒的な武力による蹂躙
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緻密な人間ドラマ
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種族や文明の描写
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近接した力量のライバルとの死闘